インタビュー
「オンラインカート ステア」はリニューアルでどう変わった? 開発者達が語るその狙いとは
だが,いざクローズドβテストが始まってみると,評判がいいとは決して言えず,第2次クローズドβテストでは,まともにプレイできない状況になり,予定を大幅に繰り上げて終了された。
その後,約4か月間をかけて作り直しを行い(関連記事),第3次クローズドβテストを2007年2月に実施。ようやく2007年4月に,オープンβテスト開始へと漕ぎ着けたのだ。
ところが,順調にいけば5月に開始されるはずだった正式サービスは一向に始まらず,9月になってから届いた知らせは,“大規模リニューアル”を行い,タイトル名を「オンラインカート ステアDASH」に変えるというもの。
しかも,変わったのはタイトル名だけでなく,開発会社も元気/元気モバイルからダイスネットワークスになっていたのだ。
今回は,開発会社を変更してまで挑んだリニューアルによって,ステアがどのように生まれ変わったのか,今後どのようなアップデートを行っていくのかを,クロスゲームズの柴田岳寛氏,齋藤一望氏,そしてダイスネットワークスの平沢久義氏に,直接聞いてきたのでお伝えしよう。
クラスの実装によって,いままで以上に白熱したバトルが味わえる
コースにも変更が加えられ,全体的に道幅が広くなった。狭いコースで細かいドライビングテクニックを競うのもいいが,広いコースで魔法を使いつつ相手を蹴散らす,という本作らしさが際だつようになった変更だろう |
以前は,性能が根本的に違うステアに乗ったプレイヤー同士が対戦する機会が多く,ゲームを始めたばかりの人は“勝てない勝負”を繰り返し行い,ステアの基本性能を一定のレベルまで上げなければならなかった。
その問題点を解消すべく考案されたのがクラスであり,この存在によって,実力が近いプレイヤー同士が対戦できるようになったのだ。
また,いままでは,“スプリガン”しかカスタマイズできなかったが,リニューアルにより,すべてのステアがカスタマイズ可能になった。ウイングやタイヤなど3カテゴリーのパーツを交換可能で,各パーツには障害物にぶつかったときの減速の度合いが減る“ショック吸収”や,コースを外れたときのスピードが下がりづらくなる“悪路走行”といった能力がある。プレイヤーはこれらをコースや自分のドライビングスタイルに合わせてステアにセットして,自分好みのマシンに仕上げていくのだ。
システム変更により混戦必至。演出面もパワーアップ
また,魔法システムも変わり,魔法を獲得してから発動するまでに,約3秒かかるようになった。以前は獲得後すぐに使用できたため,魔法を取ったらすぐに使い,続けざまに新しい魔法を取って後ろのプレイヤーに魔法を取らせない,といった戦法が使えた。つまり,システム的に一度後ろになると,なかなか前に出られないようになっていたのだが,それが改善されたことになる。
演出面もパワーアップしており,レース中は画面左に順位が表示され,順位によってキャラクターの表情が変わるようになった。当然,上位に位置するキャラクター表情は明るく,下に行くほど暗い。順位の変動が分かりやすくなり,競い合っているさまがより感じやすくなったのだ。
また,魔法を受けたときは使った相手,使ったときは当てた相手キャラクターの顔が画面に表示されるようになった。いままでは,誰が使った魔法にやられたのか分からなかったので,怒りのやり場に困ることもあったが,ステアDASHではそんなことはない。きっちり“お礼”ができるようになったのだ。
衣装に能力上昇効果が追加。キャラクターの見せ場も増えて,着せ替えがより楽しく
また,各キャラクターは,トップ,ボトム,靴,アクセサリの4カテゴリーごとに衣装を替えられるのだが,各衣装には,魔法の発動時間短縮,回避率がアップするなど,魔法に関連した特殊効果が設定された。プレイヤーはこれらを組み合わせて,キャラクターに個性をつけられるようになったのだ。見た目だけでなく,中身も異なるので,よりキャラクターに愛着が湧くだろう。
リニューアルの狙いと,今後の予定についてキーマンにインタビュー
リニューアルでの主な変更点は,上でまとめたとおりだ。ここからはクロスゲームズの柴田岳寛氏,齋藤一望氏,そしてダイスネットワークスの平沢久義氏に聞いてきた,その狙いと今後の予定についてお伝えしよう。
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。早速ですが,各社の役割を説明してください。
クロスゲームズ 柴田岳寛氏 |
クロスゲームズがゲームの企画担当で,ダイスネットワークスが開発,ゲームポットが運営という役割分担です。開発は,もともと元気さんだったのですが,ゲームの土台部分が完成し,運用フェーズへ移行したのを機に,ダイスネットワークスに依頼したんですよ。
4Gamer:
では,OBT中にプレイヤーからはどのような要望が寄せられていたのか教えてください。
柴田氏:
一番多かったのは,ゲームを長く遊んでいる人が絶対的に有利で,始めたばかりの人やプレイ時間が短い人は勝ちづらいから直してほしいといった内容の,ゲームバランスに関わる意見でしたね。
クロスゲームズ 齋藤一望氏(以下,齋藤氏):
いままでは,ステア(カート)の絶対的な性能が,プレイ時間に比例して上げられるようになっていました。同じような性能のステアに乗っている人同士が対戦すれば問題ないですが,なかなかそうもいかないですよね。ですのでバランス調整は,ステアDASHに移行するときの最優先事項として挙げられており,その改善策の一つとしてクラスの概念を設けたんですよ。
柴田氏:
正直,「今までなんでなかったんだ!」っていう気はしますが……。とにかく,要望の多かったゲームバランスの調整に注力して,新規プレイヤーと上級者の両方に満足してもらえるものを目指し,今回のリニューアルを行ったんです。
齋藤氏:
ですから,ステアのカスタマイズによってアップする能力は基本性能ではなく,ドラゴンブーストの加速スピードが数%上がるといった,微妙な部分に抑えたんです。順位が一位だと出現しない魔法もありますし,レース中は順位が後ろだと若干有利なので,いままでよりも混戦になりやすくなったはずですよ。
ダイスネットワークス 平沢久義氏 |
レース中はいつも画面内に数台のステアがいる,という状況になることが増えたと思います。前は,強いステアを持っている人と対戦すると,スタートからちぎられて,ゴールまでそのまま……。なんていうことも,少なくなかったですからね。
4Gamer:
全体的に,かなり新規プレイヤーにやさしくなったと考えていいですか。
柴田氏:
長く遊んでいる人が有利なことが多かったので,結果的にはそうなります。とはいえ,コースの直線を以前よりも短くしてトリッキーにしたり,ショートカットを用意したりしています。なので,長く遊んでいてコースを熟知しているほうが,勝つ可能性は高いでしょう。
平沢氏:
難度の高いコースは,ゲームを始めたばかりの人にとって,周るだけで精一杯ですよ。
齋藤氏:
もちろん,そこまで難しいコースはAクラスでないと登場しないので安心してください。
平沢氏:
そうそう,Bクラスにあるラマイリンクというコースは,それこそアクセルはベタ踏みで,ドリフトは使わずに全コーナーを周れるほど簡単です。
4Gamer:
ベタ踏みで周れるんですか。それ以上やさしいコースはちょっと作れなそうですね。
クロスゲームズ 齋藤一望氏 |
ええ,これ以上簡単なのは無理,といえるレベルですよ。もっと簡単にしようと思ったら,直線にするしかないですね(笑)。もちろん,その一方で,上級者の人達に満足してもらえるような難しいコースを用意していますし,ステアの基本性能差がなくなったので,レースでの駆け引きも楽しんでもらえると思いますよ。
4Gamer:
分かりました。今回お話を聞いた部分に注目してOBTをプレイさせていただきますね。
では,OBT以降のお話を。正式サービスへの移行はいつ頃を予定しているのでしょうか。
柴田氏:
OBTを実施して,ある程度反応を見つつ修正を加えて行きますので,現段階では確定していないんですよ。とはいえ,あまりお待たせしたくはありませんので,クリスマスぐらいまでには間に合わせたいですね。
4Gamer:
ところでビジネスモデルは,以前のお話のとおり,基本プレイ無料のアイテム課金と考えてよろしいでしょうか。
柴田氏:
これもまだ決定ではないですが,そうなる予定です。
4Gamer:
ではアイテム課金となることを前提に話を進めますが,有料アイテムにはどのようなものを考えているのでしょうか。
柴田氏:
まだ構想中ではありますが,使い切りの「消費アイテム」がメインになると思います。
4Gamer:
具体的にはどんなものを予定していますか。
柴田氏:
例えば,ドリフトしたときに星が出るようになって,レース終了後にもらえるPPが増える,といったものです。
齋藤氏:
同じような感じで,獲得経験値が増えるものや,パーツが持つ効果がちょっとだけアップするものも考えています。
4Gamer:
では,ほかに実装を予定している機能などはありますか。
柴田氏:
プレイスタイルによって付く,「称号」なども準備しています。
4Gamer:
それは夜中に遊んでばかりいると,「ミッドナイト〜」とか付くようなものですかね。
キャラクター,衣装,ステア,パーツは,レース終了後にもらえるPP(プレイポイント)によって購入できる |
具体的にどんなものを付けるかなどは決まっていませんが,基本的にそんな感じです。プレイスタイルに合わせてかなりの数を用意して,特殊な条件を達成しないと獲得できない,レアものなども用意したいですね,「ドリフト大将」とか(笑)
柴田氏:
称号が付いたほうが有利になるとか,そういうものではなく,あくまでもお楽しみ要素ですね。
齋藤氏:
それと,いわゆるギルドに相当するチームの実装も考えていて,上位のチームはアイテムがもらえるといった対抗戦なども行いたいと思っています。
4Gamer:
チームがあると,メンバー同士で衣装を揃えるといったこともしたくなりますね。
柴田氏:
具体的には決まっていないですが,そういったものも追加していき,ゲームの幅を広げていきたいです。
4Gamer:
それでは最後に,読者に向けてのメッセージをお願いします。
初心者は気軽に遊べ,それでいて常にハラハラドキドキできるゲームに生まれ変わりました。なかなか言葉では伝わらない部分ですので,ぜひOBTに参加して体験してみてください。
柴田氏:
イベントやキャンペーンなどを,どんどん行っていき,長期間楽しんでもらえるようにしていきます。
平沢氏:
ドリフトが簡単に出せるようになり,それが無駄に出したくなるほど,かなり気持ちいいですよ(笑)。どれだけ気持ちいいかは,実際にOBTで確かめてください。
4Gamer:
ありがとうございました。
だが,以前のバージョンでは,プレイヤーを長期間遊ばせるための方法として,ステアの基本性能が上げられるようになっており,それはゲームバランスを崩すことにつながり,結果としてプレイヤー達のモチベーションを維持できなかったようだ。
インタビューでも触れられているように,プレイヤーからの要望はゲームバランスを調整してほしいという内容が一番多く,その声に真正面から向き合い,より対戦が楽しくなるように,さまざまな調整や変更が加えられた。現在は,ステアDASHとしてのOBTが行われているので,本当に熱中できるようになっているのか,実際にその目で確かめよう。
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