レビュー
DRIVER PARALLEL LINES 日本語マニュアル付英語版
» クライムアクションゲームの代表作の一つであるドライバーシリーズ。その4作目にあたる「DRIVER PARALLEL LINES 日本語マニュアル付き英語版」のレビュー記事を,同作の連載記事も担当したライターUHAUHA氏がお届けする。車ゲーなら手当たり次第に遊んできているUHAUHA氏だが,本作をどのように評価しているのだろうか?
“ドライバー”らしさが復活した
シリーズ4作目が登場
車やバイクの運転ならば右に出る者はいない,主人公のT.K.(キッド)。ヤバい仕事をこなしながら成金を目指すが,仲間達に裏切られ刑務所に入るハメになる。なんというか,最初から企まれていた気がしないでもないが,刑期を終えたキッドは復讐の道を選ぶのだった |
本作はドライバーシリーズの4作目に当たるタイトルだが,前作「ドライバー3」とは主人公もストーリーもまったく異なる。ゲーム内容も,TPS要素が強く,運転よりも殺人に重きが置かれて賛否両論あった前作とは異なり,TPS要素は必要最低限にし,車の運転自体に主体が置かれるなど,ある意味,ドライバーシリーズらしさが戻っている。
また,前作とはストーリーのつながりがないため,今までドライバーシリーズをプレイしたことがない人でも,すんなりとゲーム世界に没入できる点はありがたいところ。もちろん,シリーズを通してプレイしてきた人であれば,面白さは倍増するというものである。
ちなみに,本作は日本語マニュアル付き英語版となっており,ゲーム中の音声,テキストはすべて英語だ。音声と併せて英語字幕も表示できるが,表示時間が短いため,読んでいる暇がないことも多い。ストーリー性が高く,登場人物が多数登場し,その人間模様を理解するのも重要な要素になるだけに,内容が理解できないと面白みも半減してしまうだろう。
そこで,当サイトでは多くの人に本作を楽しんでもらえるよう,週刊連載「DRIVER PARALLEL LINES 摩天楼はパラ色に」にて,ストーリーの紹介と攻略ポイントを簡単に紹介している。記事の特性上,盛大にネタバレしているのは許していただきたいが,そちらも併せてご覧いただきたい。
1978年/2006年のニューヨークを舞台とする
ドライブ重視のアクションゲーム
1978年のニューヨーク。抜群の運転技術を持つ主人公T.K.(キッド)は,仲間達とともにさまざまなヤバい仕事を引き受けながら,大金持ちを目指す18歳だ。しかし,仲間の裏切りにより逮捕されて28年の懲役を受ける。そして時は流れて2006年。刑期を終えてシャバに戻ってきたキッドは,裏切り者への復讐を誓うのであった……。
ミッションの前後にムービーシーンが挿入される。前半と後半で話の流れが大きく変わるのは,ストーリーを盛り上げる要素の一つだ。登場人物が多いので,ストーリーを把握できていないと人間模様を楽しめないかもしれない |
ゲーム自体はミッション形式で進められ,合計32ミッションで構成されている。ミッションは,マップ上に現れるミッション開始地点(黄色い点)に出向くことで始まり,パートごとに幾つかのミッション開始地点が登場し,マップ上のすべてのミッションをクリアすると次のパートへと進める。
ストーリーに沿って強制的に進むのではなく,プレイするミッションの順番は自由だ。とはいえ,すべてのミッションをクリアしないと先に進めないし,ストーリーの変化もないので,自由に選択できる意味はあまりないかも知れない。
ストーリーの前半では,1978年のニューヨークで仲間達と悪行の限りを尽くし,後半では2006年のニューヨークで,裏切った仲間達への復讐をこなしていく。冒頭にも書いたように,本作では一部のミッションでTPS要素が楽しめるものの,基本的には車を使ったミッションがメインとなる。前作ではできなかった「車からの銃撃」が可能になっているが,ドライブアクション重視のミッション構成だと考えていい。
面白いミッションとしては,ギャングの車を盗んでパトカーに追われる走りをし,それをこっそり元の場所に戻しておく(逮捕されるのはT.K.ではなくギャングだ)という「ミッション ホットホイール」や,邪魔するヤツらを蹴散らしながら,制限時間内に3か所のバーを回って売上金を回収する「ミッション ブレッドラン」などがある。ほかにも,護送車で刑務所に突入して脱走の手助けをしたり,警察署に乗り込んで一暴れしたりと,バリエーションに富んだ(無茶苦茶な)ミッションが用意されている。
ゲーム自体に難度設定はないが,難しくてクリアできないようなミッションはなく,全体的に易しめのバランシングだ。さすがにコツを掴むまで何度か失敗することもあるが,リトライを繰り返しているうちにクリアできるようになるという感じである。そのため,この手のゲームに慣れていない人でも,難しくて途中で投げ出すということにはならないだろう。
もちろん,キッドのライフがなくなるとゲームオーバーとなるが,ライフ回復アイテムである救急箱が,ミッション中に多めに用意されている。そういったところも,ゲームの難度を微妙に下げている要因かも知れない。
ちなみに,ミッションの前後にはムービーシーンも挿入される。ストーリーはあたかもアクション映画のように展開していくため,プレイヤーはエンディングまで,ドライバーの世界に没頭できるはずだ。
2種類の“手配度”の存在が
ゲーム性をより高めている
リアルに再現されたニューヨークは,行ったことがなくても行った気分にさせてくれる。観光名所なども再現されているので,ドライブしているだけでも楽しい。ちなみに遠方に見える自由の女神は,残念ながら背景グラフィックスだ |
1978年,2006年と,異なる時代のニューヨークが再現されているのも大きな魅力だ。1978年にはあった建物が2006年にはなくなっていたり,新しい建物に造り替えられていたり,走っている車が年代によって異なったりと,まったく雰囲気の異なるニューヨークを味わえる。1978年あたりにニューヨークを訪れたことがある人ならば,当時の雰囲気をちょっぴり味わえるかもしれない。
また,天候の変化はないものの,朝昼晩といった時間帯の変化が再現されている。ライトアップされた摩天楼の夜景は,一見の価値ありだ。
個人的に非常に気に入ったのが,街中を走行している一般車が非常に多いことだ。正直,多すぎないか? とも思ったのだが,映画などで見かけるニューヨークも同じくらい混雑しているので,これはなかなかの再現度なのではないだろうか。
地域により道路の混雑状況に変化があったり,マンハッタン中心部ではイエローキャブが多かったりと,細かい部分も見逃さずに走り回ってほしいところだ。
そんな感じなので,下手に道路に飛びだそうものなら,思いきり車に跳ね飛ばされることもしばしば。また,車で走る場合も,一般車の間を縫って走るドライビングテクニックが必要となる。アクセル全開で吹っ飛ばすにはかなりの腕が必要だ。
なお,マップ上にあるミッション開始地点に行かなければ,行動は自由だ。その気になればミッションなんか進めず,自由気ままにニューヨークでの生活を堪能できたりする。 交通ルールを守ってのんびりとドライブを楽しむのもいいと思うが,やはり一般市民や警察に向けて銃を撃ちまくったり,車で跳ね飛ばしたり,パトカーとのカーチェイスを味わったりするのが,クライムアクション流の楽しみ方といえるだろう。
本作には,悪党っぷりを示す「手配度」というパラメータが用意されている。本作の特徴は「車の手配度」と「キッドの手配度」の二つが用意されているところだ。車を運転中にスピード違反や事故を起こすと車の手配度が上がり,徒歩時に犯罪を犯すとキッドの手配度が上がる。当然だが,車を運転しながら銃撃すれば,車もキッドも見られてしまうため,車の手配度,キッドの手配度はともに上がることになる。
手配度はどちらも,パトカー(警察)の視界内にいるときに犯罪を犯すことでバーが上がり,犯罪を繰り返して手配度が高くなると,パトカーだけでなくSWATや警察ヘリまで登場するので,ほどほどにしておきたい。
しかし,パトカーの視界にいなければ何をしても手配度は上がらない。銃を撃ちまくって一般市民を恐怖のどん底に陥れても,パトカーが駆けつけたときに銃をしまっていれば,大丈夫なのだ。一般市民も「あいつです!」とT.K.をチクることはない。チクったら面白かったのにと思うのは筆者だけだろうか。
そんなことはさておき,この二つの手配度があることで,本作のゲーム性は結果的に豊かになっている。例えば,車の手配度は別の車に乗り換えることによりリセットされるし(手配度の高い車に乗り換えたら意味がないが),キッドの手配度が上がった状態でも,車に乗れば一時的に手配度を下げられ,追跡の手から逃れることが可能だ。上手く立ち回れば,どのような状況からでも脱出できるというゲームバランスが,本作の大きな魅力なのである。
使用可能な武器や車はかなり豊富
車のアップグレードも楽しい
ミッションで使いたくても,特殊すぎて乗りにくい車もあるが,いろいろな車を乗り回せるのもドライバーシリーズならではの魅力。ゲームに登場する車はすべて入手可能なので,挙動の違いなどを味わいつつ走り回ってみよう |
使用できる銃は拳銃,マシンガン,ライフル,バズーカなど,各年代で7種類ずつ用意されている。すべての銃を持ち歩けるので,銃弾さえあればあれこれと撃ちまくれる。銃撃は徒歩時は当然のこと,車を運転中にも可能だが,運転しながらの銃撃となると,運転か銃撃のどちらかに気を取られて,難度が若干高くなる。とはいえ,標的を捕捉し続けるロックオン機能があるため,慣れれば普通に行えるようになるだろう。
登場する車は,大衆車,セダン,スポーツカー,バイクなどのほか,トラックヘッド,レッカー車,タクシー,消防車,救急車,ブルドーザーなど,80種類以上が用意されている。もちろん,パトカーを奪って乗り回すことも可能だ。
挙動自体はアーケードライク(厳密な物理シミュレートはされていない)になっており,車種ごとに最高速,加速性能,ハンドリングの違いが再現されている。乗り比べて好みの車でミッションに挑戦すれば,クリアが少しラクになるかもしれない。もちろん,スピードの出ない大衆車でドライビングテクニックを駆使し,パトカーからの逃走劇を楽しむのもありだ。
本作には車を購入するという概念はなく,街に停めてある車を自由に使えるし,誰かが運転中の車に乗り込んで奪い取ることも可能だ。とはいえ,入手した車などは,もちろん自分の物ではない。自分のものにするには,3つのうちいずれかの整備工場で登録(セーブ)する必要がある。
登録してある車は,どこで乗り捨てても勝手にレッカー車で整備工場まで運ばれてくるので,整備工場に行けばいつでも乗り換えられて便利だ。登録は一車種につき一台となっており,すべての車をコレクションする楽しみも味わえる。
ドライバーシリーズの売りでもある車体ダメージの再現は,軽い接触から大きなクラッシュまで,細かく反映される。追突すればライトは割れてボンネットがひしゃげるし,銃撃されればクッキリと銃弾の跡が刻まれていく。細かいダメージでも,それが蓄積されていくと大きなダメージとなって表現されるので,破損バリエーションはかなり豊富である。
車のダメージゲージは用意されていないが,徐々に煙が吹き出してきたり,エンジンが吹け上がらなくなってきたりするので,車の状態はある程度判断できる。いつ止まってしまうのか,いつ爆発してしまうのかとハラハラしながらドライブするのも,本作らしい楽しみ方かもしれない。
なお,整備工場では車の手配度を下げたり,修理/性能のアップグレードをしたりも可能だ。車の入手に資金はかからないが,修理やアップグレードには資金が必要になるのでご注意を。
ここでエンジン(ステージI〜III),ニトロ注入キットを装着してアップグレードすれば,ストリートレースやパトカーからの逃走時に有利だ。細かいセッティングはできないものの,サスペンションやブレーキのパーツ交換により,挙動を変えられる。アクセサリーとして防弾ガラス,防弾タイヤを付ければ,銃撃によるダメージを受けにくくなり,スモークガラスを付ければキッドの手配度が高くても見つかりにくくなるなど,お金を払う価値のあるものばかりだ。
ちなみにどういうわけか,整備工場では銃弾も購入できる。撃って撃って撃ちまくりたい人は,ついでに銃弾も購入しておくといいだろう。
ややオーソドックスな造りだが
シリーズ本来の魅力は健在
一度エンディングを見ておけば,時代の行き来が自由にできる。これは1978年のニューヨークに2006年の車を持ち込んで一暴れしているところ。さすがは未来カー,1978年のパトカーなんて余裕でぶっちぎれる |
マップ上にはミッションのほかに,ストリートレースやレッカー車を使った車の盗み出しなどを行うサイドミッション(赤いマーク)が表示されている。難度の異なるサイドミッションが点在しているので,好みの難度に挑戦すればいいだろう。
また,マップには表示されないが,街中を走り回っていると稀に紫色のアイコンを見かける。これがミニゲームのスタート地点だ。ミニゲームには客を乗せて目的地まで走る「タクシードライバー」,次々に登場するチェックポイントを通過していく「チェックポイントレース」,大量に押し寄せるパトカーや警察ヘリから逃げる「サバイバル」など,合計11種類がある。サイドミッションとミニゲームで得た賞金を貯めて,手持ちの車をどんどん改良していこう。
ちなみに,資金稼ぎとは異なるが,街中を走り回っていると黄色い星を見かけることがある。これはスタートークンと呼ばれるもので,1978年,2006年それぞれのマップ上に50個ずつ配置されている。このスタートークンを獲得していくのも楽しみの一つだ。
というのも,これを10個集めればライフが50%アップ,20個集めればニトロ倍増といった具合にボーナスが加算され,ゲームが少しずつ有利になっていくのだ。見つけたら忘れずに獲得しておこう。中には「どうやって取るんだ?」と頭を悩ますものもあるので,車だけでなくバイクを使うなどしつつ,スタートークンのコンプリートを目指したい。
なお,サイドミッションやミニゲーム,登場車種などは,ミッションを進めていくと次第に増えていく。さらにゲームのエンディングを見ておけば,年代の行き来やミッションの選択がラクになるので,やり込みプレイをしたいならば,まずは一通りのミッションをクリアしておくのがいいかもしれない。自由気ままなニューヨーク生活は,そのあとでもじっくり楽しめる。
総合的に見ると,あまり目立った欠点のない本作だが,筆者は一つだけガッカリしたことがある。ドライバーファンであればご存じであろうリプレイ編集機能(ディレクターモード)が,本作には盛り込まれていないのだ。リプレイ機能の面影を残す外部視点モードがあるにはあるが,ゲーム進行中の画面をそのまま妙なカメラアングルで眺めるだけのモードなので,格好いいシーンを切り貼りしてオリジナルのリプレイファイルなどは作れない。ディレクターモードはファンからの評判が高かった機能だけに,その点は実に残念だ。
しかし,ゲーム全体を見てみると,ストーリーがシリアスな割にミッションがハチャメチャだったり,車を使う要素が多く仕込まれていたりして,前作と比べるとドライバーらしい面白さは増している。行動の自由度が高く,プレイヤーのスタイルに合わせてゲームを進めていけるし,全体的にゲーム難度が低めなので,クライムアクションゲーム初心者にも,安心しておすすめできる仕上がりだ。
その反面,昔ながらのクライムアクションのゲームシステムがそのまま受け継がれている印象が強く,全体的にオーソドックス。そのため,この手のゲームに明るい人にとっては,少し物足りないかもしれない。
懐かしさを醸し出すクライムアクションと言えなくもないが,ドライバーシリーズならではの面白さは健在だ。未だにドライバーシリーズを遊んだことがないという人も,この機会にプレイしてみてはいかがだろうか。
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