インタビュー
SAGA8で実装されたPK要素撤廃などドミニオン世界が大きく変わる「ECO」。運営スタッフにその仕様変更の真意を聞いてみた
そのSAGA8の仕様を大幅に変更,というよりも根幹の部分を撤廃する形で,新たなるドミニオン世界の構築を行なうことが,2011年8月11日にガンホー・オンライン・エンターテイメント(以下,ガンホー)より発表されたのだ(関連記事)。
2011年7月21日にSAGA14「深緑の扉」が実装,そこから1か月もしないうちに発表された,今回のSAGA8の仕様変更。なぜ今になってSAGA8に手を入れるのか。その真意を,ECO運営チーム製作担当の寺田美絵氏と,マーケティング担当の榊田 毅氏にインタビューしてみた。
「新生ドミニオン世界 誕生」特設ページ
「エミル・クロニクル・オンライン」公式サイト
遊びの障害になりつつあるSAGA8のコンテンツ
未来のECOを見据えた結果,仕様変更に踏み切る
本日はよろしくお願いします。
まず,改めてSAGA8について,今回の仕様変更に至った経緯を教えてください。
寺田氏:
SAGA8は,2008年の5月に一度実装しましたが,プレイヤーからの多くのご意見があり,8月に「新フィールドチャンプ」という形に仕様を変えて再実装して現在に至ります。
SAGA8以降,メインストーリーも進み,ECOの世界を知る上でドミニオン世界やタイタニア世界に足を踏み入れる機会が多くなっています。タイタニア世界については天まで続く塔から直接行って天空の世界で冒険することができるのですが,ドミニオン世界においては,レベルが1になってしまう“次元転生”がネックとなっていました。
4Gamer:
一度レベルがリセットされてしまうのは,厳しいですよね。
寺田氏:
ええ。3つの世界を行き来しながら遊ぶにあたり,現状の次元転生は障害になっていました。この影響が大きかったのが,2010年のSAGA12で実装した“飛空城”です。これは時空を超えて航行するお城という設定ですが,組み立てるための材料を,エミル世界,タイタニア世界,ドミニオン世界でそれぞれ集める仕組みになっています。
そのため,ドミニオン世界で遊べているプレイヤーさんは飛空城を手に入れるのが早かった一方で,ドミニオン世界に行っていないプレイヤーさんにとっては,ハードルの高いコンテンツになってしまいました。
そういったことで遊びの制限ができているのであれば,改良して誰でも行きやすい世界にしようというのが,今回の仕様変更に至った経緯です。
4Gamer:
それにしても急な仕様変更だと思うのですが,これはどういった理由だったんですか?
寺田氏:
これから次のSAGA15に向けて突っ走っていくのですが,ここでドミニオン世界の仕様変更をやっておかないと,ECOが発展できないと考えました。ちょうど変更に向けて開発もうまく回っていたので,このタイミングでの実装に踏み切りました。
また飛空城を中心としたコンテンツで遊びたくても,ドミニオン世界が足かせになってしまい遊べないというプレイヤーさんが多くいます。
僕らとしても,この状況を作り出している仕様上の制限が本当に現在のECOに必要なのかということを改めて考えていました。
4Gamer:
では,今回の仕様の変更については,いつごろから手を入れようと考えていたのでしょう。
寺田氏:
大きく意識をしたのは,SAGA12の実装前後です。飛空城を制作していくにあたり,ストーリー上,次元を超える必要がありますが,当時チーム内でその企画をかなり揉んだんです。
榊田氏:
それによって(SAGA8の仕様を)改めて強く意識することになりました。ただ,いまドミニオン世界で遊んでいるプレイヤーさんに,大きく影響が出る部分なので,そこは慎重に検証していこうということになりました。
そうして議論を重ねた上で,やはりこの足かせとなっている部分を撤廃した方がいいのではないだろうか,ということになりました。
しかし,その考えがプレイヤーのみなさんと一致しているのかどうか,確認しなくてはなりません。ということで,5月にアンケートを行いしました。僕らはこう考えているんですが,遊んでくださっているみなさんはどうですか? と,包み隠さず聞いてみました。
4Gamer:
アンケートの結果を見ると,なくてもかまわないといった回答が多いですよね。
「ECO」公式サイトにおける,ドミニオン世界についてのアンケート結果。次元転生は53%,デスペナルティは52%が悪いと回答
榊田氏:
はい。半数以上のプレイヤーさんが,次元転生とデスペナルティが「嫌」だと答えています。「何とも思わない」や「その他」という意見もあったのですが,そもそもドミニオン世界に行っていないから,よく分からないということがほとんどです。アンケートを見て,やはりプレイヤーのみなさんにとっては改修したほうが良いということで,踏み込むことになったわけです。
4Gamer:
MMOのPKという要素はそんなに特殊なものではないですよね。ただ,ECOという題材では,雰囲気的にもプレイヤー層的にもあまりマッチしなかった――ということでしょうか。
榊田氏:
騎士団演習で遊んでいるプレイヤーもいますので,PvP自体に抵抗があるわけではないと思います。ただ,PKを前提とした仕様は受け入れられなかったという感じでしょうね。ドミニオン世界の,殺伐とした修羅の世界観というコンセプト自体は変わりはしないのですが,それを表現するためにPKを強いるということが,現在のECOにはそぐわないというのがプレイヤーの皆さんの答えなんだと思います。
より遊びやすく変更されるドミニオン世界
新たな狩り場としての期待感も高まる
では,実際にどう仕様が変更されるのか教えてください。
寺田氏:
大きなところでいうと,次元転生はなくなり,エミル世界と同じレベルのままでドミニオン世界に行けるようになります。
榊田氏:
今までは次元転生でレベルが下がるため,ドミニオン世界用の装備も準備しておかなければなりませんでした。
寺田氏:
次にフィールドチャンプシステムについては,これまではPKで勝ったプレイヤーさんに“WRP”というポイントが付与されて,そのポイントの上位10名がフィールドチャンプになっていました。実のところ,統計を取ってみたのですがPvP(チャンプバトル)に参加するプレイヤーさんの数が限りなく0に近かったんですよ。
4Gamer:
限りなく0というと,ほとんど機能していなかったと。
寺田氏:
はい。ですのでPKでチャンプに登りつめるというもののではなく,ドミニオン世界のモンスターを倒した貢献値としてWRPを付与し,それによってフィールドチャンプになれるという仕様に変更しました。そのほかの仕様や,フィールドチャンプになると互角に戦えるようになる“チャンプDEM”については,とくに変更はありません。
4Gamer:
なるほど。ただ,そうなるとフィールドチャンプになって,チャンプDEMを独占しようとするプレイヤーは出てこないものでしょうか?
寺田氏:
現在は,チャンプDEMを倒してもとくにレアアイテムのドロップなどは設定されていないので,力試し的な意味合いが強い状態です。今後,もしチャンプDEMに特典を追加する場合には,いわゆる張り付きへの対応なども慎重に考えます。
4Gamer:
分かりました。では,フィールド上のモンスターを倒してWRPを得るとのことですが,ドミニオン世界のフィールドは何レベル相当のモンスターが出現するのでしょうか
寺田氏:
入り口の付近はレベル10ぐらいからですが,奥まで行けばレベル60ぐらいまではフォローできるように調整しようかなと考えています。ダンジョンについては,もうちょっと上位となるレベル50〜85ぐらいで,階層が上がるごとに+10レベルぐらいの調整をかけていこうと思います。
4Gamer:
ダンジョンは,かなり高レベル対象なんですね。
寺田氏:
(侵攻してくるDEM軍団を討伐する)都市攻防戦に参加されているプレイヤー,つまり今ドミニオン世界に足を踏み入れているプレイヤーさんは,エミル世界では高レベルな方ばかりです。そういったプレイヤーさんが,ドミニオン世界で冒険したりアイテムを集めたりすることを考えて,少し高めに調整しておく必要があると思います。
ただ今回の仕様変更では,むしろドミニオン世界を隅々まで冒険してもらって,飛空城の材料となるアイテムを見つけたりするなど,新しい楽しみを見つけてほしいと思っているので,すぐにバランスをガチガチにするつもりはありません。
榊田氏:
まずは新たな冒険の場として活用してもらえると嬉しいですね。
4Gamer:
ちなみに,モンスターのドロップアイテムも現状のままなのでしょうか。
ドロップアイテムには手を入れていません。ドミニオン世界のドロップアイテムは,クエストなどに紐付いているアイテムが多いので,倉庫に貯めておくなり,露店で売るなりして活用していただけたらと思います。ドミニオン世界のクエストもそのまま受けられるので,今までどおりアイテムを集めてクエストをこなしてもらうことも可能です。
ただ,都市攻防戦で勝利した際にもらえるCPで手に入るアイテムなど,ドミニオン世界でしか手に入らないアイテムも多いんです。ネコマタやマリオネットのなかにもドミニオン世界で入手できるアイテムが必要なものがあるので,この機会に楽しんで手に入れてもらえればと思います。
4Gamer:
これまでドミニオン世界に行ったことがないプレイヤーにとって,都市攻防戦のアイテムは興味深いでしょうね。ところで,都市攻防戦はどれくらいのレベルから参加できるんですか?
寺田氏:
都市攻防戦は,いまはレベル50で調整していますが,これを引き上げてレベル60〜80ぐらいにしようと考えています。
4Gamer:
なるほど,ドミニオン世界はこれまでレベルキャップが50でしたから,エミル世界などに合わせることになるんですよね。
榊田氏:
そうなります。都市攻防戦はモンスターの数が多いので,体感的にはレベル100ぐらいで活躍できるくらいの,高レベル帯のプレイヤーさん向けにしようと思っています。
4Gamer:
そこまで対象レベルが上がってしまうと,レベルの高くない人は参加できなくなってしまうのでは?
寺田氏:
都市攻防戦はエンドコンテンツにしたいということもあります。ですので,一生懸命,最高レベルまで育てたキャラクターの力を,そこで発揮できるというコンテンツにしたいと考えていますので。
榊田氏:
都市攻防戦は最前線での戦いという位置づけなので,精鋭部隊が戦っているということになります。とはいえ,とくに入場制限をかけたりはしないので,コソっと入って活躍している高レベル帯のプレイヤーさんを見て目標にしてもらえたらと思います。
4Gamer:
その意味でも,次元転生がなくなることで,観戦(?)しやすくはなりそうです。ほかに大きな変更点として,ドミニオン世界での“デスペナルティの撤廃”がありますね。
榊田氏:
はい。ECOの世界観では,例えばモンスターに倒されるならまだ諦めがつくと思うのでですが,ほかのプレイヤーに倒されたうえに,ペナルティが付くのは抵抗があると思います。
4Gamer:
ECOって,もっとプレイヤーが気軽にプレイしているイメージがあるのですが,PvPでのデスペナルティはちょっと厳しいですよね。ドミニオン世界には,それもあって近づきたくなくなりそうです。
寺田氏:
そうなんです。それでドミニオン世界で遊ばないプレイヤーが多いのだと思います。ドミニオン世界が危機に瀕しているという世界設定は,メインストーリー上でかなり語っているので,今後はそういった世界観の表現はストーリー上で進めていけると考えています。これが,デスペナルティ撤廃の大きな理由ですね。
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