インタビュー
チューンアップと新システム導入で「ECO」が大きく変わる! 基本プレイ無料化&「エクストラアップデート:イリス」実装直前レポート
このアップデートはECOのチューンアップを目的としたもので,以降の展開に大きな影響を与える内容だ。構想自体はすでに2008年夏に発表されていたものの,かなり大掛かりなものとなったことから,このタイミングでの実施となったようだ。具体的には,属性効果の影響を強めた戦闘バランスの調整,レベリングやコミュニティ拡大などを踏まえた導線の大幅な見直し,そして「イリスカード」による遊び要素の拡大で構成される。
そこで4Gamerでは,実装に先駆けてアップデートの意図や各要素の注目すべきポイントなどを,ガンホー・オンライン・エンターテイメントでECO制作担当の淺間達雄氏と,ECO運営スタッフの寺田美絵氏に,実際の画面を確認しながら話を聞いてみたので,両氏のコメントを交えてお届けしよう。
属性効果の影響を強めることで,戦闘だけでなくアイテムの意義が大きく変わる
まず,「エクストラアップデート:イリス」は,どのような意図で行われるのかを,淺間氏に聞いてみた。
「『エクストラアップデート:イリス』には,基本プレイ無料化にあたって,増加するであろう新規プレイヤーさんを惹きつけ,また既存のプレイヤーさんにもしっかりと継続していただけるものにしようという意図があります。その二つの本筋を踏まえ,現場の調整と新要素の実装を決定しました」(淺間氏)
ECO制作担当
淺間達雄氏
淺間氏のいう現場の調整とは,戦闘時における属性効果の影響のことだ。もともとECOには,火→水→地→風→火→……という強→弱の関係があり,加えて4属性すべてに効果があるが光に弱い闇,闇に効果があるが4属性すべてに弱い光という属性システムがある。しかし実際の戦闘では影響がそれほど大きくなく,せっかくのシステムを生かせていなかった感があった。
そこで今回は,ダンジョンごとに属性の影響を極端な形で打ち出している。筆者も水属性のモンスターが配置されているダンジョンで実例を確認したところ,火属性スキルなら一撃で2000以上のダメージを叩き出すのに対して,地属性スキルでは400〜600程度にしかならない。その差は実に5倍前後にも及び,従来の戦闘とはまったくイメージが異なるといっていい。
また属性はプレイヤーの攻撃だけでなく,防御にも影響する。すなわち,水属性のモンスターと戦う場合に地属性の防具を装備していると,それだけダメージが増えてしまうというわけだ。また戦闘にメリハリをつけるため,闇属性のモンスターもところどころに配置されており,単に4属性の関係だけに注意していれば楽勝とはならないようになっている。今後は,ダンジョンの属性に合わせて防具を選ぶ必要も出てくるだろう。
水属性のモンスターを火属性スキルで攻撃。コンスタントに2000以上のダメージを与えるので,まさに一撃必殺 |
水属性のモンスターを地属性スキルで攻撃。一気に500〜600程度までダメージが落ち,場合によっては400を切る |
ダンジョンには闇属性のモンスターも配置されているため,一筋縄では対応できないようだ |
「属性については,ECOを始めたばかりのプレイヤーさんにはあまり影響が出ないよう調整しています。影響が出るのは2次職に転職する頃からです。それ以降は,属性の効果を理解しているとより早く,より有利にゲームを進められるようになります。また,レベル50以降は特定の狩り場にプレイヤーさんが集中してしまう傾向がありましたが,それも属性効果の強化によって解消できるのではないでしょうか」(寺田氏)
ECO運営スタッフ
寺田美絵氏
「現場の調整は,既存プレイヤーさんに向けて注力しています。レベル50以上──より実際的にはレベル70以上ですが──のプレイヤーさんに戦闘が変わった,面白くなったと実感していただきたい,皆さんから今まで寄せられていた不満を解消したいと考え,粛々と調整を進めてきました。まあ粛々どころではなく,七転八倒しながらというのが本音ですけれども(笑)」(淺間氏)
属性の効果がはっきりと出るよう変更されることに併せて,モンスターにも場所/地域ごとに合った属性の特徴が持たされるほかに,冒険の導線──ゲーム進行に応じたプレイヤーの拠点やメインとなる狩り場などの移動を促す部分――にも大きな変更が加えられている。
「今までのダンジョンは一過性のものでした。例えば『氷結の坑道』だったら,レベル30〜40のプレイヤーを対象としており,そのレベル帯を過ぎると二度と訪れる必要がないといった構造でした。しかし,今回はその点を改めており,1階はレベル30〜40のままですが,2階や3階はさらにレベルを上げなければ太刀打ちできません」(淺間氏)
つまり,氷結の坑道2階を攻略するためには,まず別のダンジョンに出向いて,レベルアップを図る必要がある。さらに,そのダンジョンの上階を攻略するためには,またほかのダンジョンでレベルアップを図るというように,同じダンジョンであってもレベル帯が変わるごとに訪れる必然性が生まれるのだ。
MMORPGに限らずRPGでは,ゲームの進行上,こうした導線がどうしても直線的になってしまいがちなので,なかなか興味深い試みである。またこの変更による,プレイヤー間のコミュニケーション活性化を期待している面もあるという。
「この仕様によって,さまざまなレベル帯のプレイヤーのみなさんが同じダンジョンの周辺で交錯することになります。これまではレベル帯が異なると,すれ違う機会が少なくなっていましたから,いろんな方と触れ合えるようにという期待も込めています。……と,簡単にいっていますが,これがなかなか大変な作業でして(笑)」(淺間氏)
選択できる範囲が広がることで,レベル帯が異なるプレイヤー同士と移動ですれ違う,つまり出会う機会が多くなるわけだ。このような施策がダンジョンを含めた大部分で行われているという。思わず,「もはや全面的な改修作業に近かったのでは?」と聞いてみたところ……。
「実は,まったく新しいゲームを1本作るくらいの作業量になりました(笑)」(寺田氏)
このコメントを純粋に受け取るならば,今回のアップデートが単なるチューンアップに止まらず,新しいエミル・クロニクル・オンラインへ生まれ変わるアップデートと表現しても,不思議ではなさそうだ。
集めて楽しい,見て楽しい,しかも実用にもなる「イリスカード」とは?
次に,戦闘において大きなバランスの変更となる属性効果。この効果を支えるための新システムが,「イリスカード」だ。カード自体はモンスターからのドロップや,SHOP POINTからの購入,またはゲーム内通貨と交換という形で入手できる。しかし入手した時点では「ブランクイリスカード」という状態で,何の効果も付与されていない。特定のNPCを介して手続きを踏むことで,さまざまな効果や属性を持つイリスカードに変化するのだ。ただし,どのイリスカードに変化するかはランダム判定となる。
イリスカードは,武器や防具のスロットに装着することで効果を発揮する。イリスカードのなかには,火や水といった属性が設定されているものがあり,装備に装着することで,その属性を付与できる。さらに,同じ属性のカードを複数枚装着すれば,その属性がより強化される。
また,カードには属性とは別に「アビリティベクトル」というパラメータが設定されている。アビリティベクトルの内容は「体力増加」や「被ダメージ軽減」といったもので,カードをスロットに装着すると,その効果が「リリースアビリティ」として発揮されるようになる。
このアビリティベクトルは,カードごとに数値が設定されている。同じアビリティベクトルを持つ複数のイリスカードを組み合わせてスロットに装着し,数値の合計を一定以上にすると「リリースアビリティ」のレベルが上がり,より高い効果を得られるという仕組みだ。つまり,装着するカードの組み合わせ次第では,複数の効果を発動させたり,あるいはさらに高レベルの効果を発動させたりもできるわけだ。
「イリスカード」を装着するためには,あらかじめ武器や防具のスロットを拡張しておく必要がある |
「ブランクイリスカード」を「イリスカード」に変化させる。どのカードになるかは運次第 |
武器スロットに「イリスカード」を装着。1枚と2枚では「アビリティベクトル」と「リリースアビリティ」に変化が見られる |
またイリスカードにはそれぞれ異なるイラストと,説明文にあたる「フレーバーテキスト」が記載される。イラストが目を惹くのはもちろんだが,テキストもECOの世界観に沿った内容となっている。またイリスカードを保存するための「カードホルダー」は,ほかのプレイヤーでも内容を確認できる仕様。リアルのトレーディングカードゲーム同様に,友達同士でコレクションを比較しあったり,あるいはトレードしたりなど,各プレイヤーの所有欲/収集欲を掻き立てる存在でもあるというわけだ。
実装される「イリスカード」のサンプル。説明文にあたる「フレーバーテキスト」も,いかにもECOといった雰囲気が出ていて楽しく読める | |
「カードホルダー」で,コレクションを確認。絵柄だけでなく,所有枚数や性能などもきちんと確認できる |
「イリスカードシステムは,ECOにおけるまったく新しいゲーム要素となります。今回実施したバランス調整と絡めて,このタイミングで一番大きく打ち出せるものと考えました。戦闘に関わる仕様,世界観を増幅させるフレーバーテキスト,そしてイラストによるビジュアル面の演出という3要素のコンボで,今後もプレイヤーさんに訴求していきます」(淺間氏)
なお,有料アイテムとして「EXブランクイリスカード」も販売されるが,ゲーム内で入手できるものとは扱いが異なり,変化するイリスカードの種類もまったく異なる。初回は通常のものと有料のものが,それぞれ18枚ずつ計36枚が登場。その後,7月と9月に18枚ずつ実装されることが決定しており,2009年内には総計100枚が出揃う予定とのことだ。
エミルとマーシャ |
デス |
プルル |
マリオネット・エレキテル |
マリオネット・サラマンドラ |
聖女のシマのヨーコさん |
基本プレイ無料化で発生しうるトラブルへの対応策は?
オンラインゲームが月額課金制からアイテム課金制に移行すると,既存プレイヤーにとって不安な面が多々出てくるだろう。例えば,有料アイテムだ。極端に強力な武器が有料アイテムとして販売されてゲームバランスを崩してしまわないか,あるいはそうしたものが必須かつ高額な存在になってしまわないかという,不安や疑問だ。
「ゲームの基本となる部分は,無料で遊べるよう開放しています。しかしオーバーバランスを求めるプレイヤー──例えば,本来なら2週間かかるところを3日間のプレイで済ませたいというプレイヤーさんもいらっしゃいます。そういった場合に,少しだけお支払いただこうというのが,ECOにおける有料アイテムのコンセプトです。またポリシーとして,『ECO SHOP』は便利系アイテムに特化したラインアップ,『ECOくじ』はアバターと明確に決めています。
イリス以降,ゲームバランスが崩れている,何かおかしいと感じられるプレイヤーさんがひょっとすると出てくるかもしれません。これは,有料アイテムのせいではなく,属性効果の影響で出てくる可能性が高いと考えています。例えば初心者プレイヤーは,レベル30を越えた頃からだんだん思うようにダメージが出せなくなっていることに悩むかもしれません。それは属性の効果を知らないからです。ところが隣には,涼しい顔でモンスターに大ダメージを与えている人がいる。理想をいえば,『それ,どうやってるんですか?』『実は属性というものがあってだね……』」というやり取りがあってほしいですね(笑)。そこで,さらに戦闘システムの面からイリスカードシステムの意義を確認していただければと思っています」(淺間氏)
それでは,今回の基本プレイ料金無料化により,新規プレイヤー参入のハードルが下がることで,既存のECOプレイヤーとは性質や流儀の異なる新規プレイヤー層が流入することについてはどうだろうか。淺間氏は次のようにコメントしている。
「私達は,ECOプレイヤーのみなさんが性善説的な行動をしてくださると捉えています。とはいえ,運営/開発サイドで押さえるところは押さえなければなりません。コミュニティが阻害される最大の原因として考えられるのは,やはりRMTと不正利用者でしょう。これまでも対策に取り組んできましたし,もちろんこれからも厳正な対処を続けていきます。一時期,RMT業者に関してはお騒がせしたこともあったのですが,現在はサポートチームとの連携で状況が改善されています。今後も,随時対応となってしまうケースもあるかとは思いますが,厳正な対処という点には変わりありませんのでご安心ください」(淺間氏)
続くSAGA10以降も盛りだくさんの展開と抜かりないキャンペーンを予定
さて,エクストラアップデート:イリスは,あくまでもECOのチューンアップという位置付けだ。そのあとに実装されるであろうSAGA10をはじめ,今後の予定が気になるところだ。
「エクストラアップデート:イリスの内容を踏まえた上でやりたいことは多々あるのですが,一旦この形でプレイヤーさんに『どうですか?』と,反響を確かめたいと考えています。それを受けて,開発予定と運営方針をもう一度検討するのが今後の課題です。
首尾よくきちんと取りまとめることができたら,次はSAGA10に向かいます。SAGA10では,第4種族DEMをプレイヤーキャラクターとして実装します。DEMは従来の種族とは異なる,機械種族としての新たな成長システムを採用しています。以前からいっていたネコマタのストーリーも,2009年内にフィナーレを迎えます。
また,今回のアップデートでプレイヤーのレベルキャップを110まで開放するのですが,それ以降の展開として転生のような概念の導入を検討しています。あとは,いつ実装できるか未定なのですが,リングのコミュニティを促進させる場としての『飛空城』も考慮しています。これらの順番は,今回の反響を受けて前後する可能性があります。ともあれSAGA10,そしてそれ以降も盛りだくさんで展開していきますよ」(淺間氏)
「マーケティング面では,現在,新規プレイヤーとして登録していただくと,エクストラアップデート:イリスからすんなりと遊べるようなキャンペーンを行っています。また,休止プレイヤーさんにも基本プレイ無料化とアップデートのタイミングでぜひもう一度遊んでいただきたいという意図で,カムバックキャンペーンも実施します。
そのほか,2008年に発売した,加曽利りあらさん原作のドラマCD『エミる☆みらくる』が大変好評だったことを受けて,今回はマーシャ,ティタ,ルルイエのキャラクターイメージソングCDを展開します。新規書き下ろしの曲を季節に合わせて各キャラクター1曲ずつ,春/夏/秋/冬と計12枚のCDを特典アイテムチケット付きで,ブロッコリーさんからリリースする予定です。これは,基本プレイ無料後の企画第一弾ということで進行しており,現在はさまざまなタイアップ/コラボレーション企画が水面下で動いています。今までは既存のプレイヤーさんしか楽しめなかった商品も,今回からの基本プレイ無料化によって,これからECOを遊んでくれるユーザーさんにも,すぐに楽しんでいただけるというメリットがありますので,いろんな方向からECOに興味を持っていただけるよう考えています。ですので,今後とも注目していただきたいですね」(マーケティング担当 松田正紀氏)
繰り返しになるが,今回のアップデートではサービス開始から長きに渡ってゲームの中核にあった戦闘バランス及びゲームの導線に大きくメスを入れ,そこにカードを使った強化/コレクションの要素を導入している。見た目こそそれほど変化がないものの,中〜長期スパンでのプレイフィールは以前とは別物になってくるといっていいのではないだろうか。基本プレイ無料化によって興味を持った新規プレイヤーはもちろんのこと,休止プレイヤーにも変化をぜひ確認していただきたい。
最後に,ECOのプレイヤーと4Gamerの読者にメッセージをいただいたので,掲載しておこう。
「エクストラアップデート:イリスは,既存プレイヤーにとって“活用して”楽しめるように,新規プレイヤーには“集めて”楽しめるようになっています。もちろん,集めたカードを見るだけでも楽しいでしょう。いろんなプレイヤーが楽しめるようになっていますので,ぜひ一度触ってみてください」(寺田氏)
「今まで楽しんでくださった皆さんにも,間違いなく期待していただける内容となっています。新要素としてのイリスカードシステムはもちろんのこと,ユーザーインタフェースも少し変更を加えて使いやすくなっています。新しいプレイヤーがたくさん来ていただけるよう努力していますので,ぜひ仲良くプレイしてください。
また,相当数のマップに手を入れています。モンスターの配置も変わっていますし,属性値のバランスも変わっています。今まで休止していたという方でも,戻ってこられたら『おっ!』と思うような部分があるでしょう。今後とも末永くよろしくお願いします」(淺間氏)
5月28日に基本プレイ無料化となる本作。新規参入のハードルが下がったことで,松田氏の話すイメージソング(関連記事)など,さまざまな企画を導線として,新規プレイヤーの獲得を目指していくことになる。
また,エクストラアップデート:イリスによって,狩場のバランス/プレイヤーの狩場を求める動きが大きく変わり,これまで接点が少なかったレベル差のあるプレイヤーキャラクター同士も,街/ダンジョンですれ違う機会が多くなるだろう。
イリスカードのトレードなどを含めた,アップデートによる新しい変化と新規プレイヤーの参入と相まって,プレイヤーのコミュニティがより盛り上がることを期待できそうだし,新規プレイヤーにとっては,無料化に伴って始める同じレベル帯のプレイヤーと一緒にプレイできるチャンスでもあるわけだ。
サービス開始から4年,次々と新作も登場するなか,本作がどのように戦っていくのか引き続き見守っていきたい。
- 関連タイトル:
エミル・クロニクル・オンライン
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