インタビュー
「HELLGATE(仮)」はいかにして蘇ったのか? CEOインタビュー&先行体験レポート
今回は,HUEのCEOである金 裕羅 (Yoo Ra Kim)氏に,HELLGATEの過去から現在,そして未来について話を聞いてきた。また同時に,同作の運営プロデューサーを務める中尾圭吾氏の説明を受けつつ,開発真っ只中の最新バージョンをチェックしてきた。そこで得た情報を,2部構成の記事でたっぷりとお届けしたい。まずはYoo Ra Kim氏へのインタビューから紹介しよう。
HELLGATE再生への道
本日はよろしくお願いします。
Kimさんとは2008年のG★のときのインタビュー以来ですね。当時はT3 Entertainmentの所属でしたが,日本でサービスを行うHUEのCEOに就任されたのはいつごろでしょうか?
HUE代表取締役CEO 金 裕羅 (Yoo Ra Kim)氏:
2009年の6月に,CEOに就任しました。それからは以前と比べても,日本のタイトルの運営に力を入れているので,注目してください(笑)。
4Gamer:
確かに最近のHUEは,大型タイトルを次々とリリースしていますよね。
今日はその中の一つ,HELLGATEについてお伺いしたいと思います。HUEが日本国内におけるサービス権を獲得してから,約4か月が経過しましたが,現在の心境はいかがですか?
今までいろいろなことがあったタイトルなので,現在このように再出発に向けて動き出しているのは感慨深いですね。先行してサービスを開始している韓国では,大型アップデートの「HELLGATE:Tokyo」も無事にリリースできましたし,今は日本の皆さんに向けて,このHELLGATEをお見せする日が待ち遠しいです。
4Gamer:
Flagship Studiosから開発を引き継いだ形になりますが,そのあたりの作業は順調に進みましたか?
Yoo Ra Kim氏:
今だから話せることですが,2年前に引き継いだ当時は,もう本当に大変で,再びリリースできるのかを疑問視する声が,社内からも挙がるほどでした。
4Gamer:
どのあたりがとくに大変でしたか。
まずは,他社のプログラマが開発したソースコードを引き継ぐことです。これに関しては,運営移管に関する法的問題をクリアしたあとに,私自身がFlagshipのスタジオがあるサンフランシスコまで飛び,旧開発スタッフを20名近く集めました。
そしてしばらくの間,彼らと共に作業しながら,Flagship流のプログラミングスタイルを吸収していきました。いま振り返ると,当時私が所属していたT3 Entertainmentが,根っからの開発会社ということもあって,なんとか達成できたのかもしれません。そう思えるくらいハードな作業でした。
4Gamer:
ソースコードの解析が終わり,本格的に開発作業が始まってからはどうでしたか?
Yoo Ra Kim氏:
そこからはもっと大変でした(苦笑)。
旧バージョンのHELLGATEをプレイされた人ならお分かりかと思いますが,このゲームは,RPGとTPSをミックスさせたシステムなど,ゲームとしての面白さはたくさん持っています。しかし,これを“オンラインゲーム”として見ると,不十分な箇所が多く,不足点を一つずつ補っていく必要がありました。
4Gamer:
当時のHELLGATEは,オンラインゲームとしてどの部分が欠けていると感じましたか?
Yoo Ra Kim氏:
一言で述べると“持続性”でしょうか。
HELLGATEをプレイすると,最初の数日から数週間は非常に楽しめます。しかし,それが1か月くらい経ってしまうと,コンテンツを消費し尽くしてしまい,遊ぶことがなくなってしまうのです。オンラインゲームは何年も続くことが前提のサービスですので,それでは大きな問題があります。
4Gamer:
なるほど。
本当は,Flagship Studiosとの権利問題をクリアしたら,すぐにでもサービスを再開したかったんです。しかし,仮に当時のままのバージョンで再開させたとしても,オンラインゲームとしては成功できなかったことでしょう。
そこで,現代のオンラインゲームとして通用する,最低限の環境を整えるために,大規模なリニューアル作業を行いました。それが“HELLGATE:Resurrection”(再生)プロジェクトです。
4Gamer:
韓国では2009年11月に,「HELLGATE:Resurrection」としてサービスが開始されました。それから5か月半が経過していますが,現地プレイヤーの反響はいかがですか?
Yoo Ra Kim氏:
Diabloシリーズから受け継ぐハック&スラッシュとしての面白さや,アクションの爽快さは,依然として評価が高いですね。それらがRPG+TPSのシステム上で実現されているのが,HELLGATEの一番の醍醐味だと思います。我々も,Flagshipのソースコードを解析するにつれ,いかに彼らの開発力が高かったのかを実感しました。
そして,それらのHELLGATEが元々持っていた面白さに加え,T3とHanbitグループが持っている,持続的に遊ぶコンテンツを作るノウハウが組み合わさることで,トータルバリューが高くなっています。
4Gamer:
引き継いだ当初に見受けられたオンラインゲームとしての弱点は,現状ではひととおりカバーしきれているのでしょうか。
Yoo Ra Kim氏:
まだ完璧とはいえず,現在も開発中の項目が多数あります。ですが,問題の根っこの部分に関してはほとんど対処できているかな,と思っています。
あらゆる部分が変わる? 日本での再生第2段階
4Gamer:
新生HELLGATEのワールドワイド展開は,どのような予定でしょうか。
サービスを予定している国に関しては,運営契約がほぼすべて終了しています。あとはローカライズ作業が終わり次第,順次サービスを開始していきます。まずは韓国でサービスを行いましたが,その次は日本です。続いて東南アジア,中国,台湾,北米といった国々でのサービスを予定しています。
ただし,東南アジア以降は,日本のバージョンをベースに翻訳していきます。今年一杯は日本バージョンの開発に専念する予定なので,他国へのローカライズ作業が始まるのはそのあとで,早くても来年初頭からになります。最終的にすべての国でのサービス開始は,2011年中を目標としています。
4Gamer:
HELLGATEは世界中で注目されているタイトルですが,最初のローカライズ国に日本を選び,しかもこのタイミングで大きく作り変えているのはなぜでしょうか?
いくつか理由がありますが,その一つは,私がHUEのCEOに就任したことです。現在のHUEのタイトルラインナップを見渡すと,足りないゲームジャンルがまだまだあります。そういった状況を踏まえ,現在弊社で何ができるのかを考えた結果,HELLGATEのローカライズを徹底的に行うことにしました。
また,日本バージョンを大々的に作り直す理由は,日本のユーザーさん達のゲームに対する目がとくに厳しいからです。逆にいうと,日本で評価されるクオリティのゲームを作り上げれば,それに微調整を加えることで,ほかの国でも成功できる可能性があると考えています。
4Gamer:
日本向けのバージョンでは,具体的にどういった部分が変わるのでしょうか?
Yoo Ra Kim氏:
あらゆる部分が変わる可能性があります。詳しくはのちほど,プロデューサーの中尾から説明させていただきますが,我々の認識としては,現在のHELLGATEはまだまだ“開発途上”です。
4Gamer:
韓国ではすでにHELLGATEのサービスが再開しており,“Resurrection”と銘打っていることから,もう再生は終わったという印象を持っていました。どうやら違うようですね。
ええ,ここでのResurrectionのニュアンスとしては,“現在再生中”といったところでしょうか。Resurrectionプロジェクトでは,ビジネスモデルを“基本プレイ無料+アイテム課金”に変更したり,マルチプレイのサーバーを用意したりといった,オンラインゲームとしては,ごく当たり前の環境を整えただけです。本当の意味で,HELLGATEが再生を遂げるのは,日本バージョンのリリース時だと考えています。
4Gamer:
それはかなりの意気込みを感じますね。
Yoo Ra Kim氏:
HELLGATEでは二度の失敗は許されないものと考えています。これから,日本のユーザーさん達から,“評価・改善テスト”でのフィードバックを受け付ける体制を準備しますので,ぜひとも参加していただければと思います。
4Gamer:
韓国では4月6日に,大型アップデートの「HELLGATE:Tokyo」が実施されましたが,これも来るべき日本でのサービスを踏まえてのことだったのでしょうか?
Yoo Ra Kim氏:
それもありますね。世界的に認知度の高い都市をいくつかピックアップしていき,最後は東京とソウルの二つまで絞り込みました。Tokyoアップデートでは“東京”のほかにも,横浜や大阪などの都市が登場しますが,屋外のエリアが多いのが特徴です。なので以前Londonをプレイしていた人でも新鮮に遊べると思いますよ。もちろん,日本人のプレイヤーにとっては,見覚えのある景色を次々と見られることでしょう。
4Gamer:
それでは,旧HELLGATEをプレイしていた人向けに,コメントをお願いします。
世界中のコミュニティを見て回っていると,今でも多くの人達がこのタイトルを愛してくださっていることを実感します。そういった人に向けて,再びサービスを提供できることを光栄に思います。オンラインゲームとしての問題点や,足りない部分もたくさんありましたが,今はそれらを補うべく頑張って開発しています。
これまで2年間開発を行ってきましたが,今後は日本のユーザーさんに向けても積極的に情報を公開していきたいと考えています。本当は新しくなったHELLGATEを1日も早く見てもらいたいのですが,評価・改善テストが始まるまで,もう少しだけお待ちください。
4Gamer:
続いて,今回新たにHELLGATEに興味を持った人に向けて,コメントをお願いします。
Yoo Ra Kim氏:
Diabloシリーズの面白さは折り紙付きですが,HELLGATEはあの面白さをそのまま引き継いでいます。また,RPGとTPSをミックスさせたゲーム内容は,現在プレイしても非常に新鮮だと思います。そして,これらの面白さを,今までオンラインゲームを知らなかった人でも楽しめるように,現在ローカライズしています。新規タイトルのつもりで開発しているので,ぜひ注目してください。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
多くの人が夢見る「RPGとFPS(TPS)の融合」は,数々の試みを巻き起こしたものの,なかなか実を結ぶことがない。そんななかで「Hellgate:London」は,かなりよいところまでいっていたタイトルだった。全世界でのサービスが決まり,順調にスタートしたものの,オンラインゲームとして,持続的に楽しめるコンテンツ作りに欠けており,タイトルとしては完全に失敗に終わっていた。
Flagship Studiosのスタッフを加えたT3 Entertainmentは,自社のノウハウをもってResurectionプロジェクトでHellgateをオンラインゲームとして蘇らせた。そのプロジェクトで大なたを振るったのがYoo Ra Kim氏である。そして,氏が日本のHUEのCEOに就任し,HELLGATEも大きな転機を向かえている。Diablo直系ともいえるハック&スラッシュの面白さを保持しつつ,新しい次元のゲームとして完成させるため,ゲームを見る目の肥えている日本市場が選ばれたのだ。これから始まる「評価・改善テスト」を含め,日本での展開はHELLGATEにとって大きな意味を持ったものになりそうだ。
最初に断りを入れておくと,先日発表された「評価・改善テスト」は,一般的な“βテスト”よりも前に行われるもので,どちらかといえば社内テストに近いものである。普通のβテストでは,スケジュールの都合上,正式サービス時にβテストのフィードバックを反映させることは難しいのが実際のところだ。そこで前倒しで公開することで,ユーザーのフィードバックをゲーム内容に確実に反映させるのが主な狙いだ。
最近の例だと,「ファイナルファンタジーXIV」が現在行っているαテストをイメージしてもらうと分かりやすいかもしれない。プロモーション目的ではなく,純粋にタイトルの完成度を上げるべく,このような手法を選ぶオンラインゲームメーカーがちらほらと出てきている。
プレイヤーのニーズを取り込むことが目的であるため,無茶な要望(「オフラインでも遊べるようにしてほしい」とか,「萌えキャラを登場させてほしい」とか)ではなく,いわゆるカルチャライズレベルで対応できる内容であれば,(フィードバックの内容によっては)通る可能性はある。なかでもHUEがとくに重点的にチェックしたいとする項目は,レベリングのペースやアイテムのドロップ率,マルチプレイの難度など,ゲームのバランス調整全般だ。ここの最終チェックを怠ったせいで,商業的に失敗してしまったタイトルは多いのではないかと中尾氏は語る。
HELLGATEには,今でも熱心なファンが大勢いると思われるが,逆に,今までこのタイトルをプレイしたことがない人の視点も重要である。再出発とはいえ,2010年に新たに登場するタイトルでもあるわけで,新規プレイヤーにもアプローチできなければ意味がない。中尾氏は「説明書を読まずともプレイできる」ことも目標の一つとして掲げており,HELLGATE未経験者からもテスターとしてある程度の人数をピックアップするという。
実際に社内サーバーに接続してプレイしてみたのだが,旧HELLGATEから変わっている点をいくつか確認できた。下に列挙しておくが,一般ユーザーからフィードバックを受け付けるまでもなく分かる部分については,すでに修正されているようだ。
- フェイスタイプを一新
- チュートリアルが作り直されている
- ゲーム序盤にポータル用のエリアが追加
- 攻撃の際,血が吹き出す演出がカット
- スキルツリーは3系統に分割&各バランスは大幅に変更
- チャット時は頭上に吹き出しで表現
- やりこみ系の実績システムが実装
- 実績システムにより称号獲得,パッシブスキルのような効果が (対Demonでダメージ+2%など)
繰り返すが,これらの変更内容は確定事項ではなく,触ったのは“評価・改善テスト”のバージョンですらない。例えばこの中だと,“血が吹き出す”演出についてはさっそく物議を醸しそうだが,むしろそういった点を軒並み洗い出していくのも,今回のテストの大きな目的というわけだ。
具体的な部分については,説明するより,末尾に載せたスクリーンショットを見て想像を膨らませてほしい。
本気でHELLGATEをよくしたい,あるいは新たなハック&スラッシュの誕生に立ち会いたいという人にとって,今回の評価・改善テストは大いにやり甲斐があるものとなるだろう。我こそはと思った人は奮って応募してみてほしい。
評価・改善テスト関連記事はこちら(応募は6月1日まで)
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HELLGATE
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