プレイレポート
新世代のハック&スラッシュが登場! 北米版「Hellgate:London」CBTプレイレポート<前編>
HellgateはRPGとFPSの良いところを,絶妙なさじ加減でミックスしたタイトル。その結果,ハック&スラッシュのファンにとってはこたえられないタイトルに仕上がっているのだ |
最初にHellgateの名前が公表されたのは,2005年春のことである。Blizzard Entertainmentは製品クオリティにいっさい妥協をしないことで有名だが,Flagship Studiosもそれを受け継いでいるのか,Hellgateは長い間ファンをやきもきさせてきた。しかしついに,2007年10月31日に,製品版(北米版)がリリースされたのだ。
筆者もHellgateのリリースを心から待ち焦がれていた一人で,北米で行われたクローズドβテストにも飛びつくように参加した。そして実際にプレイしてみたところ,ゲームの出来栄えは期待を大きく上回るものであった。
本稿では,北米版クローズドβテストで判明したHellgateに関して,ゲームの基本要素や特徴的なゲームシステムについて紹介していく。これを<前編>とし,本作に登場する全6クラスを詳解する<後編>も,近日中にお届けする予定だ。日本語版Hellgateの登場を心待ちにしている人や,当分北米版をプレイする予定がないという人は,本稿および<後編>に,ぜひとも目を通してほしい。
悪魔に蹂躙された近未来のロンドンで
人類最後の戦いが始まる
2038年のロンドン市街地はこのような有様。悪魔の襲撃によりアスファルトがえぐり取られ、地下鉄駅構内へと続いている |
というのも,ある日突然地獄へと通じる門(ヘルゲート)が開いたことで,悪魔が大量になだれ込んできてしまったのだ。人間達の抵抗もむなしく,ロンドンは瞬く間に悪魔に蹂躙されてしまう。そのような状況が長らく続き,世界は壊滅的な打撃を受けるが,一部の人達は戦う勇気を失っていなかった……。というのが,本作のバックグラウンドストーリーである。プレイヤーはヘルゲートを閉じるべく,悪魔と壮絶な戦いを繰り広げていくのだ。
ロンドンという実在する都市をモチーフとしているため,ゲーム内には実在の名所が数多く登場するが,そのどれもが完膚なきまでに破壊されている。一方の人間達はというと,かつての地下鉄駅構内などに追いやられ,細々とした活動を余儀なくされているのだ。
プレイヤーキャラクターは,各駅構内を拠点に,NPCからクエストを受けたり,装備を整えたりしつつ,ロンドンの各地へと赴くことになる。ゲームはロンドン市内を中心に展開し,いずれは悪魔の本拠地である“地獄”にも,直接足を踏み入れることになるのだ。
ロンドンに巣食う悪魔と果てなき戦いを繰り広げていく。マップは,Diabloシリーズと同様に毎回ランダム生成される |
ゲームに登場するエリアの多くが,実在するロンドンの地理に関係している。画面は有名なピカデリー・サーカスの様子だ |
生き延びた人達は,地下鉄の駅を改造して生活拠点としている。これら地下鉄の駅は、あらかじめ悪魔を想定して整備されたという世界設定だ |
拠点エリアにいても戦士に休息は許されない。このグリーンパーク・ステーションでは,悪魔がお構いなしに襲い掛かってくるのだ |
各地下鉄駅には,必要最低限の施設が用意されている。冒険者はここを拠点に,悪魔との壮絶な戦いを繰り広げていく |
Hellgateのマルチプレイは,最大5名によるパーティ編成が可能。Diabloシリーズの経験者なら,この面白さは今更説明するまでもないだろう |
続いて本作の戦闘システムについてだが,プレイヤーの使用する武器に応じて一人称と三人称の視点を使い分けるという,独特のシステムが採用されている。具体的には,近接攻撃用の武器を使うときは三人称視点のみで,この場合はDiabloシリーズの俯瞰視点から,カメラアングルをやや寄せた感じのプレイフィールだ。そして遠隔攻撃用の武器を使うときは,一人称視点の選択も可能で,こちらはFPSに比較的近い。
ただし,ある程度照準を定めると,自動的に命中補正をしてくれ,広範囲を対象とする武器も多数登場するため,純然たるFPSジャンルというわけではない。また,“遠隔攻撃用武器+三人称視点”という組み合わせも選べるため,Aiming(照準合わせ)があまり得意ではなかったり,一人称視点だと3D酔いをしてしまうような人でも,遠隔攻撃の楽しさを味わえる造りになっているのだ。
一方で,その気になれば50m以上離れた距離からのスナイプ(狙撃)も可能で,FPSプレイヤーにとっても十分楽しめる。このように,プレイヤーの好みに応じた遊び方が選べる懐の深さが,Hellgateの強みの一つだ。
プレイヤーが選べるクラスは,現在のところ6種類。クラスのタイプを大まかに分けると,近接攻撃系の“Blademaster”と“Guardian”,銃器による遠隔攻撃を得意とする“Marksman”と“Engineer”,そして魔法攻撃に長けた“Evoker”と“Summoner”の三つだ。 とはいえ,例えば同タイプのBlademasterとGuardianでも,実際のプレイスタイルは大きく違っている。このあたりについては,後日掲載予定の<後編>で,たっぷりと解説しよう。
もう一つ,戦闘に関して特筆すべきは,ヘルス(体力)をカバーする形で“シールド”が設けられていることだ。敵からの攻撃を受けた場合,まず最初にシールドが削られていき,これがゼロになった時点で初めて,ヘルスが減る。そしてシールドは,ある程度攻撃を受けずにいると徐々に回復していくが,ヘルスは(基本的に)自然回復しない。
つまり,例えば無茶な突撃を行ったりしなければ,シールドだけで大半の被ダメージを吸収させながら戦うことが可能なのだ。
また,ヘルスやマジックポイント(MP)の回復用アイテムは,約10秒のクールダウンタイム(再使用可能になるまでの待ち時間)が設定されており,いわゆる“ポーションがぶ飲みプレイ”はできない。プレイヤーキャラクターは,身を守るためにさまざまなスキルやシールドの特性を駆使しつつ,敵と戦っていくのだ。
実際に遊んでみると,このシールドのシステムは,斬新かつテクニカルなプレイフィールを実現していることに気づく。今後リリースされるアクションRPGに,さまざまな形で模倣されていきそうだと,個人的には感じた。Diabloのヒットによって形成されたクリックタイプのMMORPGの「基本」が,Hellgateによって徐々に変化していくのかもしれない。……というのは言いすぎだろうか。
キャラクターレベルやステータスのほか
武器を成長させるのも面白い
Hellgateのキャラクター育成は,武器強化の方向性も含めて考えたい。実はこのシステムだけに絞っても,特集記事がさらりと一本書けてしまうほどのボリュームがある |
これまでのアクションRPGを振り返ると,レベルやステータスといった条件を満たせば,比較的自由にアイテムを装備できるものが多かった。しかしHellgateの場合,ステータスごとに装備条件のキャパシティが設けられており,装備したアイテムの“合計”が,それを超えないように気をつけねばならない。
例えば,多くのStrengthを要する武器を装備すると,ほかの鎧などが(Strengthのキャパ不足によって)着られなくなる恐れがある。実際には四つのステータスがまんべんなく求められるため,特定のステータスのみにポイントを割り振ってしまうと,特定の箇所にしか強力なアイテムが装備できなくなってしまう。レベルやクラスといった装備条件をカバーしたうえで,ステータスのキャパシティを考えつつキャラクターの能力を引き上げていくというバランス感覚が,Hellgateでは求められるのだ。
スキルの習得についてはツリー形式が採用されており,レベルアップ時に得られるスキルポイントを注ぎ込んで,スキルを強化/習得していく。キャラクターは5レベルごとに新たなスキルを習得できるのだが,だいたいレベル10で習得できるスキルを身につけると,クラスの特徴が強く感じられるようになる。
ちなみに,開発当初におけるHellgateのスキルシステムは,“Concentration(集中力)”のステータスによるキャパシティ制が採用されていたが,最終的にはお馴染みのツリー形式に落ち着いたようだ。
ちなみに筆者は,当初は全クラスを軽くプレイするに留めておこうと考えていたのだが,気が付くと全クラスをレベル15前後まで育ててしまっていた。その経験を踏まえてHellgateのクラス/スキルバランスを考えてみると,序盤〜中盤のゲームバランスに,ほぼ不満は感じなかった。
小さな虫の群れを放つ“Wasp Hive”を使用しているシーン。いったいどこからアイデアを引き出してきたのか,思わず呆然としてしまう武器も多い |
科学と魔術が共存する2038年のロンドンには,両方の特性を生かした武器がふんだんに登場する。とくに遠隔攻撃用武器の多彩さは特筆モノで,ライフルやロケットランチャー,火炎放射器などのミリタリー系は当たり前。そのほかにも,離れた敵をたぐり寄せる武器や,無数の虫を放って相手に襲い掛からせるといったユニークなものが,多数存在するのだ。武器のベースジャンルだけでも,ちょっと思い返すだけでも20前後があり,弾道などの細かい違いを含めると,最低でも50種類は下らないだろう。
武器の種類が豊富なので,プレイスタイルの幅はとても広い。マルチプレイ時には,パーティメンバーの使用武器にじっと見入ってしまうことも |
これはアイテムの詳細ウィンドウ画面。中央にある6個の黄色いアイコンが,Modを装着するためのスロットだ |
より強力な武器を作り上げるべく,さまざまなModを装着していく。画面は遠隔攻撃時の飛距離が伸びるModで,かなり有用なものの一つだ |
そして,これらの武器に対して“Mod”と呼ばれるマジックパーツをはめ込み,自分好みの性能にカスタマイズができる。これは簡単に言うと,「Diablo2」におけるソケットアイテムのアップグレード版だが,今回は多いものだと一つの武器に6〜7個のMod用スロットがある。うまく活用すれば,最終的な性能はノーマル状態の倍以上になるだろう。にもかかわらず,Modの装着は手軽かつノーリスクで行えるのがありがたい。
Modの具体的な効果は,属性ダメージを付加させたり,シールドを貫通して直接ヘルスにダメージを与えたり,遠隔攻撃武器の射程距離を伸ばしたりと,枚挙に暇がない。しかも適度に処分していかないと,インベントリがModで溢れかえってしまうほどの数を得られる。これらのModを武器と組み合わせて,自分のプレイスタイルに合った武器にカスタマイズしていくのが,たまらなく面白いのだ。
ちなみに,冒険中に入手した不要なアイテムは,その場で直ちに“分解”し,スクラップとして確保しておける。それらスクラップは,拠点エリアでアイテムをアップグレードさせたり,Modを作成したりするときの材料となるのだ。
ここまでをまとめると,Hellgateにおける武器は使い捨てではなく,任意の方向へ比較的自由に成長させられるほか,強力なModであれば,それを取り外して別の武器にはめることもできる。よって,武器を“成長させる”楽しみが,非常に強く味わえるのだ。
分かりやすく理に適った
ユーザーインタフェースの数々
クエストの依頼を受けられるNPCは,“!”マークで表示される。あらゆる面が直感的にプレイできるようになっており,テキストを読む必要性はさほど高くない |
まずは移動システムについて説明しよう。各拠点エリアは複数の冒険エリアへと続いているが,キャラクターは最初からどこへでも行けるわけではない。クエストを遂行することで,徐々に冒険エリアがアンロックされていくのだ。なおHellgateでは,拠点に隣接するエリアの名前の色を見るだけで,移動可能かどうかが直ちに判別できる。
具体的には,エリア名の色が黄色なら“クエストに関係するもの”,青色なら“クエストに関係しないが移動可能”,赤色なら“移動不可”となっている。この色はミニマップでも確認できるため,仮に複数のクエストを受けていても,次にどこへ行くべきなのかが一目で分かるのだ。
文章で説明するとややこしく思えるかもしれないが,要するに,エリア名が黄色い場所を目指せば,クエストは自然と進んでいく。さらに実際のクエスト内容についても同様,目的とするエリアでプレイを続けていれば,なんとなく察しがつくものばかりだ。
ちなみにクエストログは「***で***を行え」といった風に,あえて一文のみで簡潔に説明されている。Diabloシリーズと比べると,クエストの比重は若干高くなっているが,「英語が苦手だからちょっと……」といった心配は,ほぼ無用だろう。
そしてマルチプレイ時における移動システムも秀逸だ。Hellgateでは,相手がオンライン状態であれば,たとえ相手がどのエリアにいようとも,パーティに招待できる。そしてパーティメンバーがいる場所へ直通ポータルを開き,直ちに合流できるのだ。とくにMMORPGでありがちな,移動や合流に要する煩わしさは,ほとんどゼロといってよい。
パーティを編成した次の瞬間には,現地での戦闘に参加できる。ただし複数の拠点エリアをまたぐような,大幅なショートカットは不可能だ |
それで本当にゲームがプレイできるのかと,不安に思う人もいるだろう。しかし冒険中の基本動作は,例えば“Fキー:近くのアイテムを拾う”などといったショートカットキーが用意されており,それによってマウス操作を視点変更とAimingだけに限定できるのだ。誤操作の心配をせずにマウスをのびのびと操作できるのは,おそらく未経験者が想像するよりも遥かに快適である。
ショートカットキーについてもう少し詳しく述べると,ShiftキーとCtrlキーの用途もなかなかユニークだ。まずShiftキーについては,クラスに関係なく“Sprint”というダッシュ用のスキルが割り当てられている。このSprintは,戦闘時のみならず拠点エリアでも使え,これによって移動全般がスピーディに行える。
もう一方のCtrlキーは,キャラクターの状況によって次になすべき行動が,リアルタイムで切り替わっていく。例えばヘルスやマナが大幅に減ったら回復用アイテム,頭上にモンスターが来れば迎撃用スキルのアイコンが表示され,それを見て必要だと思ったらCtrlキーを押せばよい。頻繁には使わないが,特定の状況下において必要とするスキルが的確にスロットに反映されると,思わず感心してしまうこと請け合いだ。
このようにHellgateのインタフェースは,斬新なシステムが多いものの,一度慣れると今までなかったのが不思議に思えるくらい,自然にプレイできるのだから驚きだ。
一度訪れた拠点エリア間は,このようなシステムを通じて瞬時に移動できる。戦闘以外の余計なシステムは,極限までそぎ落とされたタイトルだ |
アイテムを調べる/捨てる/分解するなどのアクションは,ドラッグするだけで可能。あらゆるUIが直感的だ |
Shift&Ctrlキーの便利さは,一度慣れると病みつきになってしまうだろう。キーボードの左半分の配列を見ると,無駄なものが一つとしてない |
さて,Hellgateのゲームシステムの概要を中心に話を進めてみたが,とりあえず本稿はここまで。後日掲載する<後編>では,プレイヤーが選べる6種類のクラスの魅力を中心にお届けしていこう。ぜひ楽しみにしていてほしい。
- 関連タイトル:
HELLGATE
- この記事のURL:
キーワード
Copyright (c)2010 HANBITSOFT INC. All Rights Reserved. Developed By T3 Entertainment Co., Ltd. Published by Hanbit Ubiquitous Entertainment Inc.