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[GCA 08#02]ピーター・モリニュー氏へのインタビューを掲載。「ゴッドゲームの父」は今,何を考えているのか
ピーター・モリニュー氏 |
レクチャーの直前ということで,持ち時間も少なく,また複数のメディアが同時に質問をするという形式だったが,最近ちょっとごぶさた気味だったモリニュー氏が今,何を考えているか,ゲーム業界の過去と将来についてどう思っているかを直接聞くよいチャンスであった。
Fable 2についての話は少なめだが,彼の作るゲームにハマった経験がある,あるいは今もハマっているという人はぜひどうぞ。
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。ではまず,欧米とアジアのゲーム市場に何か違いがあるとすれば,それをどのように見ているかをお聞きしたいのですが。
そうですね。ヨーロッパとアメリカ,そしてアジアのゲームはそれぞれ本当に違うと思います。私はそうした違いを認識したうえでゲームをデザインするのは面白いと思いますし,アイテム課金のオンラインゲームなど,欧米にはほとんど見られないタイプのゲームが多く,それらを見比べるのも好きです。
アジアの人々に本当に楽しんでもらえるゲームを作れたらいいですね。
4Gamer:
あなたの作るゲームは「ゴッドゲーム」として知られていますが,“ゴッドゲームの父”などと呼ばれるのはどういう感じですか?
モリニュー氏:
それについては大変ラッキーでした。私の「ポピュラス」がゴッドゲームと呼ばれたため,人々がそれってなんだろう? と興味を持ってくれたのです。いや,驚くべきことでした。
4Gamer:
アジア全体で見ると,オンラインゲームがコンシューマ機用のゲームをしのぐ勢いです。どうですか,もう一度会社を立ち上げてアジア向けのゲームを作ってみるというのは。
モリニュー氏:
それはどうですかね。いずれにせよ,アジアの人達はオンラインゲームでフィーリングを共有したりコミュニティを作ったりすることを好み,そのためとても多くのタイトルが開発され,遊ばれているということについて,欧米のゲームデベロッパはもっと刺激を受けるべきでしょう。
ここ数年で,欧米のコンシューマゲームのタイトルがどんどんオンライン化しています。Xbox 360やPLAYSTATION 3,そしてもちろんWiiのタイトルもそうですね。この流れはPCゲームから来たものです。アジアの人達の動きを参考に,その流れを加速させられれば,非常に興味深いタイトルが,それほど時間をおかず登場するでしょう。
4Gamer:
なるほど。もしあなたがアジア向けの――できればゴッドゲームがいいのですが――オンラインゲームを作るとしたら,それはどのようなものになりますか。
うーん,そうですねえ……。ええ,私の頭の中にアイデアはありますよ。アイデアだけですけどね。私だったら以前作ったゴッドゲーム,例えばポピュラスみたいなものをもう一度オンライン向けにアレンジします。オンライン上の神々が一つのフィールドで神の力を振るい合うのは,興味深いと思いませんか。
以前から,ポピュラスの神がたくさんいて,それぞれに小さい世界を持っており,それらがリンクし合うというアイデアに惹かれていました。ここでは,良い神と悪い神に分かれたプレイヤーがインターネットを介して真剣に戦うのです。この場合,キーとなるのはシンプルですが効果的な操作法になるしょう。簡単な操作で神の怒りを下したり,土地を作り上げたりできる必要があります。
4Gamer:
なるほど。作る準備はできていそうですね。
モリニュー氏:
とんでもない。忙しくてそれどころじゃありませんよ。
4Gamer:
ゲーム開発は大変なんですね……。ところであなたは長いキャリアを持っていますが,いまだにゲーム作りを楽しんでいますか?
モリニュー氏:
そうでないわけがありますか? 私は夢を持っており,その夢といつもたわむれているんです。飽きたことなんかありません。夜になって疲れて帰ってきて,そのうち入院して生命維持装置につながれることになるとしても,ゲームの制作に携わることは何にもまして面白いことです。
4Gamer:
でも,年齢を重ねるにつれて,アイデアを出したりすることは大変な作業になっていくのではないでしょうか。どうやってモチベーションを維持しているのですか。
「Fable 2」コンセプトアート |
ああ,いい質問ですね。たしかに,ここ数年は自分でも“歳を取ったなあ”と感じることがしばしばあります。
私は以前プログラマーでした。私は本当にコードを書くのが好きで,20年以上,自分の椅子に座り,吸い殻で山盛りになった灰皿をキーボードの隣に置いて仕事をしてきました。「ああ,もう死にそうだ」とつぶやきながらね。テクニカルデザインをし,方程式を解き,数字を並べてきたんです。ですが,それは過去のこと。若い人達は,私にはもうできない効果的なやり方とスピードで問題を解決してしまいます。
歳をとるにつれ,私は自分の役割が変化してきたことに気づきました。
ここ数年,私はチームデザイナーであり,つまりはチームの全員をインスパイアさせることが重要な仕事になっています。チームを活気づけることが,チームの一員である自分を活気づけることになり,それが私のモチベーションを維持させているのです。
付け加えるなら,いくら歳をとっても私の頭の中にある夢は,決してなくなりません。ベッドに横になっていても,シャワーを浴びていても,車を運転していても,それはそこにあり続けるのです。夢に近づく方法は変わってきましたが,実現したいいくつものアイデアが,私の中には依然として存在しています。
4Gamer:
ということは,(Fable 2に続く)次のプロジェクトも始まっているのですか?
モリニュー氏:
もちろんです。すでに二つほどのプロジェクトが同時に動き出しています。とはいえ,近頃のプロフェッショナルな業界では,これ以上お話しできないのです(笑)。
これが5年や10年前だったら,私はすべてをしゃべっていたでしょう。ノートPCの中にあるものを自慢げに見せていたはずです。ですが,そういう時代ではなくなりました。
二つのプロジェクトはまったく違ったものですが,いずれも,これまでになかったような魅力的な作品になるはずです。それらは,私がずっとやりたかったことで,私の持つ長い経験が,「それは本当に素晴らしい作品になる」と言っています。
4Gamer:
なるほど,非常に気になりますね……。少しだけ教えてもらえませんか。
言ったら,PR担当者が私を撃つでしょう。
開発に数百万,数千万ドルの経費がかかる現在,製品寿命は慎重に検討する必要があります。かつて私はメディアになんでもアイデアをしゃべってしまうことで定評がありました。時として,アイデアだけのこともね。私も含めて,業界は以前に比べて大人になったということなのでしょう。
4Gamer:
ゲームの作り方も変わってきたということなんでしょうね。それを悲しく思うことって何かありますか。
モリニュー氏:
繰り返すようですが,もうプログラムを書けないことが本当に悲しいですね。昔に戻れるなら戻りたいと,心から思うときがあります。
あの頃は,チームの全員が一つの小さな部屋に集まっていたから,こう言うだけで良かった「なあ,このアイデアどう思う?」。そこで全員の考えはすぐに分かりました。子供っぽいやり方だったとは思いますが,今よりもゲーム作りは面白かった。
4Gamer:
なにか妙なことを聞いちゃったみたいですね……。最後に,ゲームの制作を志す若い人達にアドバイスがありましたら,お願いします。
モリニュー氏:
簡単です。それは情熱に身を捧げる意志をいつも持ち続けること。重要なのは,ゲームの一つの部分に拘泥せず,変化を恐れないことです。人々は,何か以前とは違ったこと,新しいことをいつも求めており,若い人達がそれに応えることができる。
いつも「オレはやるぞ,オレはやるぞ」という気持ちを持ち続けることです。
4Gamer:
本日はどうもありがとうございました。
複数のメディアでのインタビューということで,話題が前後したり話柄が大きく変わってしまったり,あるいは日本の状況とはいささか異なる話が出てきたりしたが,そのあたりはある程度整理してお伝えした。「オンラインゲームがコンシューマをしのぐ勢い」というくだりに首をかしげる人もいるかもしれないが,アジア全般で見ればそういう傾向があるということで,一つご理解を。
きわめて個人的な話で恐縮だが,20年ほど前,私はブルフロッグ時代のモリニュー氏のオフィスを取材したことがある。そこでは,彼が思い出として語ってくれたように,イギリスの古い建物の小さな部屋にチーム全員が集まり,あれやこれやアイデアを出し合ってゲームが作られていたのである。「日本からわざわざ(変な)客が来た」ということで,その日は半休になり,全員でパブに繰り出したことも覚えている。
あれからかなりの月日が経ったが,モリニュー氏は現在も現役であり,やり方こそ変わったものの,カリスマ的なゲームプロデューサーとしての立場を維持している。
変化の激しいゲーム業界にあって,これはおそらく珍しいことだろう。今後も,彼の動静には注目を続けてみたい。企画中の新作もやはり気になるところ。……やっぱり,オンライン版ポピュラスですかね?
- 関連タイトル:
マイクロソフト フェイブル:ロスト チャプター
- 関連タイトル:
Fable II
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