インタビュー
「ファンタジーアース ゼロ」が「クロニクルズ」をリニューアル。その内容とサービスの現状,そして2013年のアップデート予定をプロデューサーに聞いた
今回4Gamerでは,FEZのプロデューサー2名に,クロニクルズがどうリニューアルしたのかを聞くとともに,公式に不正行為と認定された“キャラクターの位置情報を意図的にずらす行為”(プレイヤー間では俗に「半歩」と呼ばれる行為)の取り締まりの現状,そして2013年度のFEZの展開について語ってもらった。
「ファンタジーアース ゼロ」公式サイト
取り締まりの実施で不正行為が激減
とはいえ,今なお課題は残る
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まずは,この1年間を振り返っての所感を教えてください。
内山スグル氏(以下,内山氏):
具体的な活動としては,常習的に利用しているアカウントの停止,および関連アカウントの監視/停止を,日々行っています。
その一方では,システムの都合上,お客様が意図していないのに発生してしまうケースもあります。これは,お客様同士のトラブルに発展しやすい問題ですから,2013年4月以降,あらためて該当行為に関する公式見解を更新したり,マナーについて言及したりしています。
4Gamer:
1年前は,システム的な監視が難しいということで,目視によって利用者を取り締まっているとのお話でしたけれども。
内山氏:
はい。専門調査も進めているのですが,現在もシステム的な監視を重点とした環境は未完成なため,日々,スタッフによる監視を中心とした地道な活動を行っています。
4Gamer:
なるほど。公式に半歩を不正行為と認定したことで,逆に愉快犯的に半歩を使うプレイヤーはいませんでしたか?
内山氏:
一部には確かにいます。多くのお客様のご理解とご協力もあり,半歩の利用は確実に減っていますが,継続して監視・取り締まりを強化していきます。
リー・ユノ氏(以下,リー氏):
また,ここで皆さんに伝えておきたいのは,半歩を見たらぜひ通報フォームを利用してくださいということです。その場で注意することで,お客様同士のトラブルを引き起こしてしまいかねません。
内山氏:
繰り返しですが,半歩は意図しなくとも出てしまうケースがあります。ただ,お客様同士では,それが故意なのかそうでないのか判定が難しく,トラブルの原因の一つになっています。運営開発チームでは基準を定めており,それに沿って動画や目視などで判定します。お客様同士で解決しようとせず,ぜひ怪しいプレイヤーを見かけたら通報をお願いします。
マッチングを改修し参戦しやすくなった「クロニクルズ」
今後はルール変更も視野に
4Gamer:
それでは,振り返りの一環として,2013年4月に行われたクロニクルズの改修についても教えてください。
内山氏:
まず,改修前のクロニクルズには,マッチングシステムがお客様の望むとおりに機能しないという課題がありました。ゲームのルールや内容以前に,そもそも遊びたいのに遊べない状況に陥っていたんです。
そこで今回,お客様が好きな任務戦争を能動的に選んで遊べるよう,改修を施しました。
4Gamer:
改修によって,プレイヤーにどんなメリットが生じたのでしょう?
内山氏:
ルールに応じてクラスを変更したり,繰り返し同じルールをプレイして戦略を練ることができたりと,FEZの新たな楽しみが増えたと考えております。
リー氏:
また改修前のクロニクルズでは,ストーリーの進行に伴って過去のマップを選べなくなってしまい,城門戦や砦戦で遊ぶケースがほとんどだったと思います。
それが改修後,多くのお客様に,資源争奪戦などにも参加していただけるようになりました。やはり参加者が増えると,それだけ新たな戦略/戦術が生まれます。このことで,1戦あたりの戦争時間にも変化が見られるようになりました。
内山氏:
国ごと,サーバーごとに,本当にさまざまな作戦があるんですよね。またクロニクルズは,「勝ちに行く」という意識の強いお客様が多く,コミュニケーションも盛んです。まだクロニクルズを遊んだことのないお客様も,ぜひ気軽に参戦して楽しんでください。
リー氏:
クロニクルズの任務戦争では,キープの位置が固定されているので,通常戦争でのキープの立て方がよく分からないというお客様でも,遊びやすいと思います。今回の改修では,そうやって誰もが参加できる形になったところが大きいです。
内山氏:
今後は,そうしたお客様の動向やバランスの変化を踏まえて,ルールの変更や改善を行い,クロニクルズにさらなる遊びを提供していきます。
4Gamer:
クロニクルズへの参戦を促すような運営施策は考えていますか?
内山氏:
クロニクルズを使ったイベントの実施などを検討しています。またクロニクルズの任務戦争を利用して,通常の戦争とは異なる,ちょっと変わったマップやルールの試験的な導入も考えています。
4Gamer:
なるほど。それでは,ユーザーインタフェースの変更や,司令官ボイスの追加について,反響はどうですか?
内山氏:
ユーザーインタフェースに関しては,グラフィカルにした結果,自国の侵攻状況が分かりやすくなったと好評です。またシナリオに関係なく,ルールに沿った戦争を楽しみたいというお客様からも,すぐに戦争を起こせるようになったとの評価をいただいています。
司令官ボイスについては,戦場に国王以外のボイスが流れることを新鮮に受け止めていただけたようです。また「この司令官は,こんな声だったのか」という感想も多いですね。FEZのお客様は声優さんへの興味関心が高いのですが,ピッタリの配役だったと捉えています。
フェンサー/セスタスの見直し
現状より扱いやすく汎用性のある存在へ
4Gamer:
それでは2013年のアップデートについて,お話を聞かせてください。
内山氏:
2012年は,プロモーションの意味も含めて,オフラインイベントにてお客様との交流を深めてきましたが,2013年は,より多くの方にアピールすべく,多数のゲーム内コンテンツを追加していきます。やはりオフラインイベントとなると,事情によって参加したくてもできないお客様もいらっしゃいますので,あらためてゲーム本編に力を入れていこうと。
4Gamer:
ぜひ,具体的なアップデートの内容を教えてください。
内山氏:
今,お話できるのは二つです。まず,2013年の夏から秋にかけて,各クラスのバランスを見直すアップデートを実施します。主な内容は,あとから追加されたフェンサーおよびセスタスの大規模な調整で,これまでのような新スキルの追加だけでなく,既存スキルの見直しも行います。
4Gamer:
というと,スキルの入れ替えもあるんですか?
内山氏:
はい,入れ替えも予定しています。今回はこの2クラスについて,一部コンセプトの見直しを図ることで,今のFEZに必要な存在に仕上げることを目指しています。
リー氏:
フェンサーとセスタスに関しては,あとから追加したクラスということで,最初の3クラスと連携を取りにくい部分があると思います。正直,プロジェクトチームの中でも,FEZが築いてきた世界とは違う動きになっていると感じることもあり,単にスキルを追加しただけでは解決できない問題であると判断しました。
4Gamer:
具体的に,どういう問題が生じているのでしょう?
内山氏:
先日行ったアンケートの結果でも,FEZの魅力として多くのお客様が「戦略/戦術性のある歩兵戦」を挙げてくださったのですが,ほかの3クラスと比較して,セスタスは戦略/戦術性に,フェンサーは歩兵戦にそれぞれ偏ってしまっているんです。
加えて,フェンサーとセスタスは,ほかの3クラスと比較してスキルが少ないんです。そのため,派生が少なく,どうしても遊び方が限定されていました。
リー氏:
とくにフェンサーは,50人の中でどう動けばいいのか把握しにくいんですよね。もちろん,うまい立ち回りをされているお客様もいらっしゃるのですが,多くの人にとっては,なかなか扱いが難しいクラスなんです。
内山氏:
戦争の醍醐味の一つとして,味方と団結して敵軍のオベリスクを破壊することが挙げられますが,フェンサーは特性上,なかなかオベリスク折りに参加できないといった欠点もあります。
リー氏:
またセスタスには「建築」という大きな役割がありますが,その一方で,かなり上手な方でないと前線には出られないという問題があります。
内山氏:
両クラスとも,他のクラスと比べて戦闘の組み立てが難しいと考えています。それを踏まえて,フェンサー/セスタスをこれまで以上に扱いやすく,他のクラスのようにある程度汎用性のあるクラスにしようと。
さらに今回はスキルの取得方法によって,プレイスタイルの幅を広げられるようにしたいと考えています。
4Gamer:
スキルツリーが大きく変わって,いろいろな組み合わせができるようになる感じですか?
内山氏:
そこはまだ伏せておきたい部分なのですが,よりよい形になるよう検討を重ねています。ともあれ,「フェンサーはこのタイプ一択」「セスタスはこれでないとダメ」ということにならないよう,試行錯誤を重ねています。
リー氏:
それだけでは何ですので,一つ捕捉させていただきますと,武器が追加されるということではありません。今ある武器に,新しい遊びを追加するような形ですね。
内山氏:
戦闘の軸になるのは,従来どおり,ウォリアー/スカウト/ソーサラーの3クラスになりますが,そこにフェンサーとセスタスが加わることで,これまでとは違う効果をもたらすような,連携を重視した調整を目指しています。
リー氏:
とくにフェンサーに関しては,格好いい装備も多いので,このアップデート以降,それを試しに着るだけでもしてみてほしいところです。
4Gamer:
それでは,もう一つのアップデートについて教えてください。
内山氏:
もう一つは,「部隊連合戦」(仮)で,2013年秋から冬にかけての実装を予定しています。こちらは,部隊活動やバンクェットのように連携を楽しんだり,戦術を練って勝利を目指したりするようなプレイヤーに向けたコンテンツです。
やはりFEZの醍醐味は大規模戦争ですから,建築や召喚も含めて,いつものルールの真剣勝負で実力を競い合っていただきたいという思いがあります。
4Gamer:
そうはいっても,プレイヤーを同じ時間帯に数十人ずつ集めるのは難しいですよね。
内山氏:
我々プロジェクトチームとしては,この部隊連合戦を,日々のプレイで磨いた腕前を発揮する場として提供したいと考えています。実現は難しいでしょうが,ゆくゆくは,50人フルメンバーの部隊同士が雌雄を決するコンテンツに発展させたいですね。
リー氏:
今,部隊連合戦を自国の部隊同士でも行えないかと検討しているところです。仮にこれが実現すると,自国の部隊とも戦えるようになりますから,ほかの部隊の戦略/戦術を参考にしたり交流を図ったりと,コミュニケーションが活性化することを期待しています。
4Gamer:
「あの部隊がいれば勝てる」「あそこは召喚に定評があるから,俺達は前線に出よう」というような展開にもなるといいですよね。
リー氏:
はい。いい意味で,部隊同士の交流の場になることが理想です。FEZはシステム上,なかなか部隊同士でコミュニケーションを取ることが難しいですから。部隊単体のコミュニティの活発化にも期待しています。
内山氏:
部隊連合戦の企画を進めるにあたっては,一人でも大規模戦争に参加できるというFEZの長所を損なわないためにも,完全な切り分けとならないよう注意したいと考えています。そのため,実装当初は部隊連合戦の開催を特定の日時に限定します。つまり,時間が来たら部隊員や部隊戦に参加したい人が集まってきて,真剣勝負を楽しむといったスタイルを想定しています。
リー氏:
ほかの部隊がどう連携し動いているのかを実際に見ることで,通常の戦争に生かせる何かを学べると思うんですよ。現在部隊に加入していない方も少人数の部隊の方も,ぜひ,部隊連合戦を体験していただきたいと考えています。
内山氏:
4Gamer:
なるほど。部隊連合戦の実装前にテストサーバーを設けたりしますか?
内山氏:
ええ,やはり実装前にバランスを確認したいですから,プレテストなどを実施する予定です。こちらは決定次第,あらためてお伝えします。
好評のコラボ企画や細かな機能の追加は随時実施。大規模オフイベントの開催も
4Gamer:
それでは,アップデート以外の今後の展開を教えてください。
内山氏:
まずは2012年に引き続き,さまざまなコラボレーションを展開します。すでに告知済みですが,5月末から「英雄伝説 軌跡シリーズ」コラボ企画第二弾がスタートします。以降も,お客様にご期待いただけるようなものを提供していきますので,ぜひご期待ください。
4Gamer:
コラボの選定基準はあるんですか?
内山氏:
基本的にはFEZの世界観を損なわないことです。2012年の例だと「BRAVELY DEFAULT」とのコラボが,お客様から非常に好評でした。「BRAVELY DEFAULT」はゲーム本編も高評価ですから,大きな相乗効果が得られましたね。
リー氏:
スクウェア・エニックスの社内でも,FEZと「BRAVELY DEFAULT」や「戦国IXA」とのコラボの評価は高かったんです。そこでまた,社内タイトルと何かできないか色々と話をうかがっているところです。もちろん,社外コラボの企画も進めており,気になったコンテンツ元に現在も積極的にお声がけをさせていただいています。
4Gamer:
分かりました。ちなみに2013年はアップデートに注力するとは言っても,オフラインイベントを開催しないという意味ではありませんよね。
内山氏:
また大規模なオフラインイベントも,現在,企画を進めています。これまで培ってきたお客様との距離感や連帯感を育てていくことも,引き続き行っていきます。
リー氏:
あとは近々,FEZ関連のまったく新しい展開を発表できるかと思います。ぜひ期待していてください。
4Gamer:
まったく新しい展開……気になりますね。
内山氏:
それと,大きなアップデートはお話した二つですが,それ以外に,現在出現している召喚獣の数をカウントするユーザーインタフェースなどのサポート機能を実装する予定です。これは,初心者や裏方プレイヤーの負担を軽減し,より真剣勝負に集中できる環境を作り出すためです。
これまでお客様が育ててきた,有志が召喚数をカウントする文化が存在することは重々承知しているのですが,FEZはプレイする上で覚えることの多いゲームですので,熟練者には当たり前のことでも,初心者の方にとっては大きな負担となり,ひいては離脱の原因になりかねないですから,今回,実装を決定しました。
また,戦争中に意図せずゲームから切断された場合,戦場に復帰できるよう一定時間待機枠を設けることも検討しています。そういった,これまで以上に遊びやすくなるような機能も随時追加していきます。
4Gamer:
分かりました。それでは,2013年のFEZの展開に期待している人に向けて,メッセージをお願いします。
内山氏:
自分はこれまで,ゲームプレイやオフラインイベント,生放送やTwitterなどを通じてお客様と触れ合ってきた期間が非常に長いです。その中で重視してきたのは,お客様と体験を共有することでした。自分で直に体験し,お客様の視点に立てるような運営を目指してきたわけですが,それはプロデューサーになっても変わりません。その上で,お客様の期待に沿い,今後もFEZを遊んでいただけるよう,責任を持って努めてまいります。
リー氏:
4Gamer:
新体制によるFEZ開発/運営に期待しています。本日はありがとうございました。
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