紹介記事
いまから始めるオンラインゲーム:第2回「グラナド・エスパダ」いまなお斬新なシステムを誇るMMORPGは,時代の変化に合わせた「遊びやすさ」を追求する
数多くあるオンラインゲームの中で,充実したコンテンツを備えた作品を改めて紹介してみようという「いまから始めるオンラインゲーム」企画では,ある種「殿堂入り」とも呼べる作品を取り上げていく。
その第2弾として紹介するのが,ハンビットユビキタスエンターテインメント(HUE)がサービス中のMMORPG「グラナド・エスパダ」(以下,GE)である。このタイトルでは,大型アップデートや周年記念といった節目に,大がかりなオフラインイベントの開催や特別番組のネット配信を行っており,4Gamerでもその都度,記事として取り上げているので,名前を目にしたことのある読者も多いのではないだろうか。本稿では,2014年7月にサービスイン8周年を迎え,今なお活気ある話題を振りまくGEの魅力を,あらためて紹介してみよう。
Part1 次世代MMORPGがたどった栄光と凋落,そして復興
当時の韓国では山のように3D MMORPGが作られていた。その多くが本企画の第1弾として取り上げた「リネージュII」を踏襲したものだったが,残念ながらシステム的にもグラフィックス的にもリネージュIIを凌駕するものはなかったと言っていいだろう。誰もが新世代MMORPGを待ち望んでいた,そんな時期だ。
実際,3人のキャラクターを同時に操作する「MCC(マルチ・キャラクター・コントロール)」システムや,キム・ハッキュ氏が語る政治的概念の導入,そして公開された開発中のスクリーンショットは,リネージュIIを超える“次世代のMMORPG”と呼ばれるのにふさわしい内容だった。また2005年に数回実施されたクローズドβテストも,「このタイトルが完成し,サービスインした暁にはきっとすごいものになる」と予想させるのに十分だったと言える。
さらに日本人ゲームクリエイターの起用も大きな話題となった。「ロマンシング サガ」シリーズで有名なイラストレーターの小林智美氏が手がけた,GEキャラの美麗な衣装デザイン画を目にしたことのある4Gamer読者は少なくないだろう。またプレイヤーが最初に探索するダンジョン「アル・ケルト・モレッツァ」の印象的なBGMは,「BEMANI」シリーズの楽曲を手がけた久保田修氏が作曲したものだ。
そして,日本における注目のあと押しとなったのが,サービスイン時におけるプロモーション展開である。HUEは,山手線の中吊り広告をGE一色にしたり,パッケージをコンビニの店頭に並べて販売したりと,まさに人気コンシューマタイトルシリーズ並みの展開を行ったのだ。
ところが,そうした期待感を煽る展開とは裏腹に,サービスイン直後のGEは,早くもコンテンツ不足に直面する。MCCに代表されるゲームシステムは斬新だし,グラフィックスも当時の最先端を行くものだった。驚くほど細部までこだわって作られており,出来上がっている部分の完成度は非常に高かった。しかし,それだけに新コンテンツを拡充していくのは容易ではない。用意されている遊びの幅は狭く,ゲームのポテンシャルを引き出せていたとは言えなかった。コンテンツ消費を抑えるために施されていた,当時の異様にマゾい仕様を覚えている人も多いだろう。
しかし,手ぐすね引いてサービスインを待ち受けていたコアなオンラインゲーマー達は,あっという間にコンテンツを遊び尽くし,なかなか進まないアップデートにしびれを切らしてGEから離れていったのである。
「ルネッサンス」はまさに再生の一歩だった
この一連の流れは,読者の皆さんもよくご存じのとおり,「大型MMORPG到来!」などと喧伝され,大きく期待されたオンラインゲームタイトルが,サービスインから数か月で凋落していくパターンの典型と言える。むしろGEは,その最初の事例だったかもしれない。
そして一度,人の離れたオンラインゲームが,再び人気を取り戻すのは困難だ。GEもまた,サービス終了に追い込まれたほかのMMORPGのように,残ったプレイヤーに向けたアップデートを繰り返し,さして盛り上がる話題を提供することなく続いていくのだろう……と思っていた人も少なくないかもしれない。
しかし,GEは,その圧倒的不利な状況を見事に覆してみせた。その先駆けとなる出来事はいくつかあったが,決め手となったのは2010年に行われた大規模なリニューアルアップデート「ルネッサンス」だ。
中尾氏:
ハッキュさんは,クリエイターとして,GEが自分の求めるゲームの水準に達していないと常々考えていたようです。HUEでも「GEはこんなものじゃないはずだ」と考えていましたので,1年以上前からハッキュさんと共にGEルネッサンスへのリニューアル作業を水面下で進めてきました(「グラナド・エスパダ ルネッサンス」でのインタビューより)。
4年分のコンテンツを備えた時点で,GEはより完成したMMORPGとして再構成された。当時は,大型コンテンツとなる「覇権戦争」などにも目途がつき,コンテンツ不足への対応に追われ続けていた開発と運営が,より重要なゲームのあり方へと目を向ける余裕が出てきた時期とも言えるだろう。GEが本来目指していた方向へと舵を切り直したわけだ。
HUEは,ルネッサンスのリニューアルと前後して大がかりなプロモーションをあらためて展開し,それまで重ねてきたアップデートにより充実したコンテンツと新たに導入される要素を知らしめ,新規プレイヤー獲得および休眠プレイヤー復帰を促す施策を実施したのである。ここからGEは変わり始めた。すべてが成功というわけではなかったが,失敗を糧とし,いまなお変革を続けている。
そして,このときのアクティブプレイヤー数の増加やプレイヤーからの反響を受け,GEの運営開発スタイルはゲーム内の動向だけでなく,GEを取り巻く日本のゲーム市場を視野に入れたものへとシフトしていく。現在のGEの運営開発方針は,MMORPGやオンラインゲームはもちろんのこと,オンライン要素を取り入れたコンシューマゲーム,あるいはソーシャルゲームやスマートフォンアプリの台頭により,変化し続ける日本のゲーム市場全体を見据えたものとなっているのだ。
新機軸なMMORPGを目指して作られたGEは,確かに新しいMMORPGの姿を示していた。いまもって,これよりも斬新なMMORPGを挙げることは簡単ではない。むしろ新しすぎたのかもしれないくらいだ。コンテンツが十分に用意され,実験的なシステムの調整が終わるまでに4年を費やし,それらはルネッサンスとして開花した。ここから新しいGEが始まったのだ。
舞台は中世ヨーロッパ,新大陸の謎を追う冒険が始まる
とくに中世ヨーロッパという部分に関しては,剣と鎧でガチガチに固めた騎士がいる古代に近いところから,銃器が発達し飛行船が飛んでいるような比較的近代に近いところまで,地域によってさまざまな描かれ方をしている。
社会情勢については,イギリスとスペインの間で起きた英西戦争における「アルマダの海戦」にて,スペイン無敵艦隊が勝っていたらどうなっていたかという,ifの歴史に基づいて描かれている。ちなみにGEでは,リアル世界のイギリスを「ブリスティア」,スペインを「ベスパニョーラ」,英西戦争を「3年戦争」として描いている。
実際のところ,“Granado Espada”というのはスペイン語で「名高き剣」といった意味の言葉となる。中国語版タイトルの「卓越之剣」というのは,原題を直訳したものであろう。ただし,ゲーム内ではあくまでもゲームの舞台となる大陸の名前として扱われている。
プレイヤーは,3年戦争に参加した経験があり,旧大陸から新大陸に渡ってきた開拓者の一人という設定だ。ゲーム開始当初のプレイヤーは「家門」と呼ばれる一団を率い,都市「リボルドウェ」にある「新大陸拓殖株式会社」の要請のもと,新大陸の開拓と,それを邪魔するモンスターの討伐に明け暮れる。その開拓の道中,プレイヤーは新大陸の住人達と知り合い,彼らを仲間として家門に編入していく過程で,フェルッチオ・エスパダの遺産をめぐる冒険に巻き込まれていくのだ。
加えてストーリーには,さまざまな伏線が張られている。例えばコインブラのアイテム商「エミリア」は,当初クエストを通じて,ロレンジョ博士の実娘ということが何気なく語られるが,のちのちキーパーソンとして大きくフィーチャーされる。
また,プレイヤーが最初に対峙するボス「ディロスラテム」は,ストーリーを進めていくと別の形で再登場する。さらに十人貴族は,ブリスティアとベスパニョーラの間で暗躍する悪役として,今後もプレイヤーの前に現れるだろう。
こうしたアップデートごとの観点の違いや張り巡らされた伏線のため,GEのストーリーは,なかなか一つの流れとして捉えにくかったりもする。
その背景には,GEを,コミック/アニメ「ワンピース」のように,主人公が行く先々で多彩なエピソードに遭遇し,新たな仲間との出会いが繰り広げられる壮大な冒険譚として描きたいという,キム。ハッキュ氏の意向があるとのことだ。
120体以上の個性あふれるキャラクターと,それを組み合わせて遊ぶMCCシステム
GEをゲームとして見た場合の,もっとも分かりやすい魅力は,ゲーム進行の過程でプレイヤーの仲間になっていく多彩なプレイアブルキャラクターだろう。
昨今の3DグラフィックスのMMORPGでは,用意されたパーツを組み合わせたり,パーツの大小を調整したりしながら,プレイヤー各自の好みに合わせたキャラクターを作成してプレイするのが一般的だ。
しかし,GEにはそうしたキャラクリエイトの概念がなく,各キャラクターの性別と容姿はすべて固定となっている。そこには,用意されたキャラクターを使い,GEの世界観とストーリーを堪能してほしいという開発チームの思いが存在する。
それでも,やはり自分の好きなキャラクターでゲームを遊びたいという人は少なくないかもしれない。そこをカバーするのが毎月1〜2体のペースで追加され,2014年8月現在では120体以上に及んだプレイアブルキャラクターの数々だ。
また,それだけ数が多いにも関わらず,各キャラクターのクオリティが高い水準で保たれていることも,大きなポイントである。一時期,質より量を優先していたこともあったのだが,運営開発チームでは「クオリティが下がるようではGEではない」との見解から見直しを図り,現在では質と量を両立させる体制を確立している。
各キャラクターは,複数のスタンスを習得可能で,必要に応じてそれらを使い分けられる。スタンスについては,Part2で詳しく説明しているので,そちらを参照してほしい。
そうしたバランス調整の中には,例えば純粋な攻撃力ではトップに立てなくとも,ある属性攻撃をさせた場合には誰にも負けないといったような,特定の場面での役割を明確にするようなものも多数含まれるという。この調整により,将来的には「容姿が好きなんだけど,弱くて使えない……」と,泣く泣く使用をあきらめていたキャラクターが,とあるフィールドでは大活躍するというようなシーンも増えるのではないだろうか。
こうして120体を超えるキャラクターを有していることで,GEではほかのMMORPGとは違ったエコシステムが働くことになった。すなわち,1人2人をカンストさせてもゲームとしてはまだまだ序盤,やり込み要素が半端ないのだ。
そして,GEにおける,もう一つの代表的な特徴が,多彩なキャラクターの中から最大3体を組み合わせて同時に操作するMCCシステムである。MCCシステムを使ってタンク系スタンス,アタッカー系スタンス,ヒーラー系スタンスを所持するキャラクターを揃えられれば,一人のプレイヤーがパーティプレイを完結させることも可能となる。
そして,MCCシステムのキモとなるのが,「キープモード」だ。これは,そもそもプレイヤーが何かの事情でPCの前を離れなければならないとき,一時的にAIを使って自動戦闘を行うための機能だったのだが,現在のGEでは「放置狩り」という一つの遊びとして認識されており,運営開発チームでもレベリングの手段として推奨している。
(従来のMMORPGでは時間的な拘束が大きすぎるという話に対し)
キム・ハッキュ氏:
そうです。そして,そういった従来のMMORPGの考え方は限界に来ています。そこでGEでは,プレイヤーが監督に近い立場となり,多様なキャスト(キャラクター)を集めて操作するという観点を打ち出したんです(「グラナド・エスパダ プラス」アップデート時のインタビューより)。
そのような指針で設計されたGEの戦闘システムは,キープモードを使った放置狩りで極められている。プレイヤーがなんら直接的な操作をしなくても継続した狩りができるのだ。
キープモードを使った放置狩りが,ほかのMMORPGにおけるオート(自動戦闘)モードと異なるのは,味方の配置や敵の特性などを考慮しないと,失敗する可能性がある点だ。基本的な組み合わせは,遠くにいる敵を認知する遠距離攻撃系,近寄ってきた敵を始末する近接攻撃系,そしてダメージを迅速に回復するヒーラー系というものだが,出現する敵に合わせて効果の高い属性攻撃や範囲攻撃が可能なキャラクターに入れ替えられないかなど,いろいろ考える余地が生まれる。
放置狩りがうまくいけば,長時間操作をしなくともどんどんキャラクターのレベルが上がり,ドロップアイテムも手に入るが,失敗すればまたキャラクターの組み合わせから考え直さなければならない。実際にプレイすると分かるが,ここにはシミュレーションゲームや,あるいはパズルゲームを遊んでいるかのような楽しさがあるのだ。
そのほか,GEならではのシステム的な特徴としては,マウスで移動先の地点をクリックすると,障害物を巧みに避けながら進んでいくことが挙げられる。そんなことなら,ほかのMMORPGでもできるじゃないかと思うかもしれないが,GEではシステムの完成度が極めて高く,障害物に引っかかって進めないということがまず発生しないのだ。
比較的最近のタイトルでも,障害物が原因でうまく移動できず,ストレスを感じることがあるだけに,2006年にサービスインしたGEが,このスムーズさを誇っているのは驚異的ですらある。
自動戦闘や自動移動などを見ると,GEがほかのゲームと異なる点がはっきり見えてくるだろう。GEでは,プレイヤーの操作に対してAIによるサポートが非常に充実しているのである。だからこそ,3キャラクターを使う複雑なシステムでもストレスなく扱うことができ,プレイヤーは煩雑な操作から解放されているわけだ。
うまく使えば,PvPや上位ボスモンスターとの戦闘など,素早い操作を求められる局面で役立つので,興味のあるプレイヤーはぜひ試してみるといいだろう。……実はこの機能,サービスイン前は,セールスポイントの一つだったように筆者は記憶しているのだが,最近ではごく一部のプレイヤーしか使っていないようなので,ぜひテクニックの一つに加えてほしいところである。
日本のゲーム市場に沿った,ソロ&短時間化というスタイル
それでは,現在におけるGEの運営開発状況をあらためて紹介しよう。GEでは,2013年秋以降,デベロッパの韓国IMC Gamesの開発したコンテンツを,HUEに設けられた運営開発チームが日本のゲーム市場に合わせて調整する「日本開発」という体制を取っている。
これは「HUE側に調整の権限が与えられる」という点において,海外産オンラインゲームにおける一般的なローカライズや,あるいは“日本独自”のコンテンツ提供/バランス調整とは一線を画す希有なケースだ。
というのは,一般的な海外産オンラインゲームの場合,日本の運営チームから寄せられたリクエストをもとに,本国の開発チームがバランス調整を行うのが普通だからだ。
GEにおける現在の運営開発体制は,HUEが長年にわたってGEを運営してきた実績と,GEというゲームに対する深い理解,およびIMC Gamesとの間に構築してきた信頼関係があったからこそ実現できたものである。
その二つのコンセプトに基づき,具体的にゲームをどう変えたかというと,まずゲームのメインストーリーを,多数のプレイヤーによるパーティ(GEではスクワッドという)を組まずともプレイヤー人ですべて楽しめるよう設計し直した。これは,ストーリーに関連するクエストを一人でクリアできるよう難度を下げたというような単純なものではなく,必要となる武具をも,一人で入手可能にするなど,かなり大規模な変更である。
また,上記で紹介した遊びの一つ,放置狩りを大きくフィーチャーした。こちらでは,大がかりなバランス調整によって,放置狩りによるレベリングやゲーム内通貨収集を効率よく行えるフィールドを増やしたことにより,ゲームの操作に必要となる時間を大幅に短縮した。さらに2014年7月からは,放置狩りだけでも十分にゲームを進行できるようなバランス調整を続けている。
加えて,一部ミッションのソロプレイ専用化と,プレイヤーがどこまで進めるかを試すソロ専用コンテンツ「インフィニットチャレンジ」の導入を行った。これは一人で遊べるコンテンツを増やしただけでなく,パーティの頭数がそろわないとミッションをスタートすることができないような状況を解消しているという意味で,短時間化にも貢献しているのである。
こうした施策の展開により,アクティブプレヤー数が約2倍に増加したGEだが,今後さらにソロ&短時間化を進めるにあたっては,いくつか課題もある。例えば,メインストーリーを簡単に進められるようになったことに伴い,プレイヤーがチャレンジする要素が少なくなってしまったことが挙げられる。
この点については,好評の「インフィニットチャレンジ」をさらに遊びやすく,かつプレイヤー各自が狙ったアイテムを入手しやすくするような改善を図る。
また,このコンテンツはプレイするごとにダンジョンの構造や登場するボスが変わり,一本道の攻略法が存在しないところがポイントなので,さらなる変化のバリエーションを展開していく。
また,ミッションは,これまでもハードモードの追加を行ってきたが,新たなギミックを追加していく形でチャレンジ要素を用意する。つまり,単純に登場する敵のパラメータを上げるだけでは,攻略法自体はノーマルモードと変わらないので,チャレンジでも何でもなくなってしまわないように変化を加えるわけだ。
このように,GEではさまざまな形でソロ&短時間化を推進しつつ,プレイヤーのゲームプレイに向かうモチベーションをどう保つか,日々試行錯誤している。とくに難度の調整にあたっては,数値ベースではなく,実際にスタッフがプレイして,狙ったとおりの体感を実現できているかどうかを検証しているとのことだ。
また今後のさらなるソロ&短時間化にあたっては,非同期で遊べる要素──つまりログインしていない時間を利用して何かを行い,その結果をログインしてからのゲームプレイで活用できるようなコンテンツの導入を検討しているという。
繰り返しとなるが,GEは,日本のゲーム市場に沿った形で運営開発方針やアップデートのコンセプトを変えていくスタイルを取っている。したがって,今後また市場動向が変化するようであれば,現在のソロ&短時間化とは異なる方針とコンセプトを打ち立てていくこととなるだろう。そのとき,GEはどのような遊びを提供してくれるのだろうか。
なお,日本での開発は,これまでミッションの難度や報酬の調整といった,バランス調整の部分が主であった。それだけでもゲームの面白さは格段に変わってくるのだが,最近ではさらに一歩進んで,ミッション自体を日本である程度作れるようになっているという。8周年記念として作られた「夢幻のモントロ」は日本開発によるミッションの第1弾だそうだ。
ルネサンス以降,日本運営チームの方向性は「よりプレイしやすいMMORPG」の実現に向けたものに終始している。実績を重ねて勝ち得た「日本開発」によって,その流れは加速しており,その結果,ゲーム自体も「それまでとは明らかに違う」遊びやすさになっていると言っていいだろう。今後,開発スキルが上がるにつれて,日本独自のコンテンツで,より日本のプレイヤーが楽しめるゲームが作られていく可能性がある。
これまで,GEがさまざまな面でほかのMMORPGとは異なることを記してきたが,サービスインから8年経ってなお将来が楽しみになるという意味においても,GEはほかに例のないオンラインゲームタイトルである。
このPart1を読んでGEに興味を持ったという人は,ぜひPart2のプレイガイドを参考にしつつ,ぜひ実際にプレイしてみてほしい。
Part2. 「グラナド・エスパダ」プレイガイドはこちら
いまから始めるオンラインゲーム企画趣旨
かつてショウペンハウエルは,実績を持った良書に目を向けず,とかく新しい本を読みたがる人が多いことを嘆いた。
毎年多くの書籍が発行されるが,その中で人の評価を得るものはごくわずかだ。多くの書籍から選び抜かれた少数の本は,やがて古典として受け継がれていくのに対し,新作の大半は忘れ去られる運命にある。貴重な時間を費やすならどちらに投資すべきか。ショウペンハウエルはそれを指摘したのだ。
ゲームについても似たようなことが言える。オンラインゲームで見ても,新作のリリース時は最大の盛り上がり場となる。しかし,サービスを開始したばかりでは,当然ながらコンテンツは多くない。熱心なプレイヤーはたちまちのうちにすべてのコンテンツをやり尽くしてしまい,コンテンツ不足を指摘されることになる。不具合や要調整の部分があっても,プログラム開発は瞬時にできるわけではない。対応の遅れから人が離れていき,苦情ばかりが目立つことになりがちになる。ここ数年の新作タイトルを思い起こせば,ほぼすべての作品が同じパターンをたどっていることに気づくはずだ。
それに対して,各運営会社で看板タイトルとなっているゲームがある。たいていはサービスから5年以上経過しているが,いまだに人気を保っている作品である。これらの作品も,新作時代には上記のような洗礼を受けてきているが,それでも多くのプレイヤーに支持されて生き延びてきたのだ。どんなタイトルでも手放しで賞賛されることはありえない。批判され,修正され,絶えず進化していくのがオンラインゲームというものだ。その結果,不具合の多くは解決され,サービス体制も安定し,そして,なにより蓄積されたコンテンツ量が違ってくる。サービス開始当初は整っていなかった部分が完備され,ようやく完成した形で提供されているともいえるだろう。
オンラインゲームの新作が減ってきた現在,あえて「殿堂入り」ともいえるゲームを取り上げて,その魅力を明らかにしてみたいというのが今回の企画の趣旨だ。しかし,いくら安定した実力を持つタイトルでも,いきなり始めて楽しめるかというと,そうではないのがオンラインゲームの難しいところでもある。新作が楽しいのは,一緒に始める仲間が一定数いることが大きな要因ともいえる。逆に,そのタイミングを外すとプレイを始めにくくなるのもオンラインゲームだ。
そこで,今回は,ちょっとうれしい特典を付け,運営側とも連携して新規参入者を盛り上げつつ,「みんなで一斉に始めてみようぜ」と思える機会を作っていきたいと思う。タイトルに懐かしさを感じる人も,手を出しそびれていた人も,この機会に「名作の今」を味わってみてほしい。
- 関連タイトル:
グラナド・エスパダ
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