インタビュー
「グラナド・エスパダ」インフィニティ効果でプレイヤー数が1.5倍に。その裏側と,新キャラなどについて現場の運営開発チームに聞いてみた
インフィニティアップデートは,2013年後半にHUEに設置された運営開発チームが,GEの日本向けコンテンツの企画や調整を本格的に手がけた,初の大型アップデートでもある。
今回,4Gamerでは,GEの運営ディレクターを務めるHUEの田山佳裕氏と,プランナーの松田勇樹氏および森 大輔氏といった,実際にインフィニティアップデートを進めてきた“現場”3名に,今回のアップデートで新たに追加される要素とともに,開始から約1か月半となるインフィニティアップデートの手応えなどを聞いた。
HUEに運営開発チームを設置したことで生じたメリットとは?
GE日本運営ディレクター 田山佳裕氏 |
GE日本運営チーム 松田勇樹氏 |
GE日本運営チーム 森 大輔氏 |
本日はよろしくお願いします。まずは,お三方が,どういう立場でインフィニティアップデートに関わったのかを教えてください。
田山佳裕氏(以下,田山氏):
この場にいる3人は,GE 日本運営プロデューサーである弊社の中尾(圭吾氏)が立てる方針を受け,現場でのコンテンツの企画や調整を行っています。
松田勇樹氏(以下,松田氏):
その中で,私と森はプランナーとして,各コンテンツの具体的な内容を決め,企画立案しています。
田山氏:
そして自分はディレクターとして,この二人が立てた企画に基づき,運営チーム内に指示を出したり,進行管理をしたりしています。
今回のインフィニティアップデートは,韓国IMC Gamesの開発チームがもともと用意していたバハマルアップデートに,二人が大幅に内容を加えたので,ボリュームが2倍以上になってしまい,進行が難航しました(笑)。
森 大輔氏(以下,森氏):
もともとのバハマルアップデートの量も結構あったのですが,既存コンテンツをよりよくすべく調整していった結果,どんどんボリュームが膨れあがってしまったんです。
4Gamer:
インフィニティアップデートで,HUEで企画開発した新コンテンツはあるんですか?
松田氏:
以前,中尾が説明したと思うのですが,基本的にコンテンツ開発はIMC Gamesの開発チームがやっています。私達が日本向けコンテンツの企画を提案することもありますが,インフィニティアップデートでは,主に出来上がってきたコンテンツや既存コンテンツに対して,日本におけるGEの遊ばれ方を基準にして調整しています。
4Gamer:
なるほど。今回は,調整部分のボリュームが多かったというわけですか。
松田氏:
はい。我々には,プレイヤーの皆さんに楽しんでいただけるものを提供したいという思いがありますので。
森氏:
2013年12月4日に実装したばかりのコンテンツに,翌週,ゲーム内の反響を踏まえた微調整を入れるなんてこともやりました。
田山氏:
開発チームに調整を依頼するしかなかった頃だと,反映に1か月〜2か月かかっていた調整が,内容にもよりますが,今は早ければその日のうちに終わりますからね。これは大きな進歩です。
「インフィニティ」最終アップデートで追加される新キャラクターとレイドボス
4Gamer:
それでは,1月22日のインフィニティ最終アップデートで実装される要素について教えてください。
田山氏:
インフィニティアップデートでは,新キャラクターのシエラ・ローズが仲間になるなどの展開がありましたが,今回はいよいよバハマルアップデートの山場を迎えます。新マップ「天空祭壇」を中心として,さまざまな展開があります。新しく遊べる要素も加わりますので,プレイヤーの皆さんはご期待ください。
松田氏:
また,すでに姿を見せているNPC「ネナ」が,今回実装されるストーリーで編入できるようになります。
4Gamer:
ネナは,プロモーションムービーでもちょっと目を引く仕上がりですね。
森氏:
そうですね。イメージイラストを公開した時点でも,「仲間にしたい」という反響が大きかったです。
松田氏:
ただ,ストーリーの山場ですから,ネナを編入するのは結構苦労しますよ。
プレイヤーからは,シエラの編入が難しいという声が上がっていましたが,それと同じくらい苦労すると考えていいですか?
松田氏:
ネナは,作業的に大変という感じはあまりないですが,バハマルの山場ということもあって,難度はシエラと比べると若干高いです。
森氏:
ストーリーの山場ですからね。若干というより,かなり難度が高めかもしれません。その分,ネナはかなり強いキャラクターに仕上がっています。
4Gamer:
プロモーションムービーでは,新しいボスモンスターの姿も見られましたが。
森氏:
神獣「ディヴィノ」ですね。見た目には少し可愛らしく見えるところもありますが,今までの最上級ボスとして登場します。祭壇を守護する神獣にふさわしい“特殊な守護能力”も持っていますので,本当に強敵です。
松田氏:
以前実装したルーインクルーガーは,バハマル序盤のボスということで,強さはそれなり程度でした。ディヴィノは物語の佳境で登場するレイドボスですので,そう簡単には倒されないんじゃないかなと思っています。
森氏:
ルーインクルーガーでは「GEの最強ボスはこの程度か」みたいな感想もいただいてしまいましたが,そういった方でも今回は楽しめるんじゃないでしょうか。
4Gamer:
ディヴィノとは,ストーリー上で戦うんですよね? あまり強いとストーリーを進められないプレイヤーが出てきてしまいそうですけれど。
松田氏:
確かにディヴィノは重要な存在ですが,ストーリー上では直接戦う必要はありません。“祭壇を守るディヴィノ”討伐は,あくまでも強さを求めるうえでの目標のようなものだと捉えてください。
田山氏:
また,ディヴィノは新ミッション「天空の祭壇の守護」でも,ほかの新ボスと一緒に登場します。こちらのディヴィノは“祭壇を守護している状態ではない”ので,頑張れば倒せるかもしれません。
4Gamer:
なんとなく分かりました。それでは,開発チームが注力しているとのアナウンスがあった,新キャラクター3体の進捗などを教えてください。
はい。1月22日には,その中から「イリュージョン」が実装されます。マジシャンがモチーフになっており,スタンスもトリッキーな仕上がりです。もちろん,ビジュアル面もこだわっています。
森氏:
スキルエフェクトもマジシャンを意識していますね。
4Gamer:
ちなみに,イリュージョンの強さはどれくらいになるのでしょう?
松田氏:
最上級クラスです。今後の新キャラクターは,少なくとも「使い道がない」と感じられることがないように調整していきます。
田山氏:
我々としては,やはり新しいキャラクターを使ってほしいという気持ちがあります。それには,どういう場面で使えるキャラクターなのかを明確にすることが重要ですので,今は,最初に明確なコンセプトを立て,それに沿った調整を施したうえで実装していきます。すべてが万能な強さというわけではありませんが,それぞれ,必ず使いどころが見つかると思います。
ミッションの追加ルーレットを含め,ゲーム内の全報酬の調整が出揃う
そのほか,今回のアップデートの新要素はありますか?
森氏:
インフィニティアップデートでは,各種報酬の上方修正を進めてきました。今回は,ミッションの追加報酬ルーレットを回すのに必要なvis(ゲーム内通貨)額のリニューアルも行います。一部,ほとんど変更のないミッションもありますが,基本的には必要なvisの額が減ります。
松田氏:
報酬を見直ししていく中で,追加ルーレット費用には長らく手を付けていなかったのですが,今回,全面的にメスを入れました。
4Gamer:
調整というのは,上方修正という意味と捉えていいですか?
森氏:
そうです。もっとも,ルーレットはギャンブル性のあるものですから,一概に言い切るのは難しいですが,以前と比較してレアが出やすくなっていますし,大きく「損をした」と感じるケースは減ると思います。
いままでの調整ではルーレットのないミッションに関しては,報酬を調整していなかったのですが,今回はルーレットがないボスモンスターではアイテムドロップを調整しています。
皆さんから寄せられるご意見を見ると,報酬に関するものが圧倒的に多いんですよ。「時間を掛けてミッションをクリアしているのに,報酬が見合っていない」とか。したがって今回,インフィニティアップデートでは,そこに優先的に手を付けたわけです。
4Gamer:
実際,報酬を調整したことによるゲーム内の変化はありましたか?
松田氏:
自分一人しかいない時間帯にはフィールドで,ギルドメンバーやフレンドが集まる時間帯にはミッションを攻略するというように,遊び方を状況に応じて使い分ける人が増えましたね。とくに熱い反響をいただいたのは変則シフトの社会人の方です。今なら昼間でもある程度,フィールドで遊べるようですね。
森氏:
ひと口にフィールドプレイと言っても,放置狩りをしている人もいれば,手動で狩りをしている人もいますし,フィールドレイドボスを探している人もいます。インフィニティ以降は,いままで人がいなかった場所で狩りをする人を見かけるようになりましたし,遊び方が増えたという意味では,やってよかったんじゃないでしょうか。
松田氏:
全体として,ゲーム内の活性化は進みましたね。とはいえ,まだまだ足りないという意見も多いですから,引き続き対応していきたいです。とりあえず,要望の多いアレハンドロ専用マップの開発あたりでしょうか。
森氏:
インフィニティアップデートの要素は,1月22日でひととおり出揃いますが,遊び方を広げたり,報酬を上げたりといったコンセプト自体は今後のアップデートでも継続していきます。
4Gamer:
ちなみに,インフィニティアップデートの開始前に発表された,「アップデート選択システム」はどうなっていますか? 1月17日に第1弾が発表されたようですが。
あらためて説明しておくと,これは我々からアップデートの方向性に関する選択肢をいくつか提示し,プレイヤーの皆さんにどれがいいかを選択していただくというものです。
オンラインゲームの運営開発では,私達が目指す方向性と,皆さんが期待する内容が一致することが理想なのですが,なかなか思うようにはいきません。そこで,この手法を採用したんです。
森氏:
今までも,直接対話したり,ディスカッションボードを用意したりと,プレイヤーの皆さんとの意見交換を試みてきましたが,なかなか意見が合致することはありませんでした。今回のシステムは,これまでのやり方を踏まえたうえでの採用です。
4Gamer:
アップデート選択の最初のテーマは,何になるのでしょう?
松田氏:
まずはキャラクターの調整についてです。私達としても初めての取り組みですから,あまり大枠のテーマを取り上げるのではなく,小さなことから一つ一つ試していこうと。
森氏:
キャラクターの調整は,以前にも「弱いキャラを強化する」という趣旨で意見を募ったのですが,結局,「このキャラを強くしてほしい」という人気投票に陥ってしまったんです。
松田氏:
それを突き詰めると,「自分のお気に入りのキャラを,PvPでもPvEでも活躍できるよう万能にしてほしい」ということになってしまうんですよね。
森氏:
僕達もプレイヤーですから,その気持ちはよく分かるのですが,それはやはりマズいので,今回は「この武器/スタンスなら,こういう調整をしてはどうか」という提案をいくつか用意し,賛成意見の多いものに沿った方向で調整をしていきます。
松田氏:
具体的な内容を考えるのはこちらの仕事ですので,“選ぶ”というだけならうまくいくのではないかと思っています。できれば,最終的にはかなりの量をヒヤリングして決めれたらなと思ってはいるのですが,あまり建設的に進まないようであれば,ユーザーの方にも負担が掛かりますので,スパッっと中止するつもりです。そのときは諦めるか,また別の形を考えます。
インフィニティアップデート前と比較して,アクティブプレイヤー数が1.5倍に
4Gamer:
先ほど,インフィニティアップデートでプレイヤーの遊び方が変わったという話がありましたが,データ上で具体的に変化したことはありますか?
田山氏:
アクティブプレイヤー数がかなり増えました。インフィニティアップデート直後は,それ以前と比較して1.2倍程度,そして2014年1月中旬で1.5倍にまで伸びており,今も継続しています。レベル帯で見ても,かなり広い層でプレイヤーが増えています。
松田氏:
このアップデートでは装備の製造にメスを入れ,+5以上の装備を作りやすくしたのですが,結果として利用数が約8倍に伸びました。以前は装備の完成品をマーケットで売買することが主流で,自分で製造することが少なかったのですが,かなり状況が変わりましたね。
森氏:
新しくなった製造システムを試してもらうイベントを実施したので,その影響でかなり製造の利用が増えた感があります。
田山氏:
同じくマーケットの利用数は1.5倍,ミッションの挑戦数は1.4倍と増えています。これはアクティブプレイヤーが増え,ゲーム内が活性化した結果であると捉えています。
また1プレイヤーとして遊んでいるときも,ゲーム内に人が増えたことが実感できますね。やっぱりオンラインゲームは人が多いと,それだけで活気があり,楽しく感じます。
4Gamer:
プレイヤーが増えた結果,特定の狩り場が混雑している傾向も見られるようですが。
田山氏:
はい。お話ししてきたように報酬の調整をしたこともあって,一部のマップに人気が集中する傾向もあります。
松田氏:
おいしいマップに人が集まってきているわけですから,対策としては,おいしいマップをもっと増やしていく方向で調整する予定です。このマップは素材収集,また別のマップはレベルアップ用といったように,目的に合わせて選べるマップを各種用意しようと考えています。
森氏:
たとえば「アイテム収集のマップが混んでいて場所が取れなかったから,今日はレベルアップをしてみよう」というような選択ができるといいんじゃないでしょうか。
4Gamer:
なるほど。まとめると,インフィニティアップデートは,数字から見ても好調であると。しかしやれることが増えた分,運営開発チームは大変になったんじゃないでしょうか。休みがないとか,年末年始も出勤していたというお話もありましたが。
森氏:
そうですね。たとえば,今回のミッションルーレットの調整にしても,HUE側でやろうという話をしていたときに,中尾が「それで,1か月でいくつくらい調整できるの?」と聞いてきたことがあったんです。それで「やろうと思えば,80ミッションくらい可能じゃないですかねえ」とうっかり返答したら,「じゃあ,100以上あるけど全部やろう」と中尾が言い出して大変なことになりました。
4Gamer:
1ミッションの調整には,どのくらい時間が掛かるものなんですか
森氏:
ミッションの内容にもよりけりですが,これまで1か月に多くて5つくらいしか調整できていなかったんです。もっとも開発側は,ほかのコンテンツの開発や調整もあったり,日本の市場動向も把握していませんので,数はこなせません。現在は日本での運営開発体制ができましたので,先ほども述べたように,簡単なミッションなら1日かからずに調整できます。
松田氏:
ともあれ,インフィニティアップデートでは,体感を重視した調整を目指していましたから,森と二人で調整して検証して,また調整してを繰り返しました。
田山氏:
二人が行った調整を,チーム総出で検証したのですが,丸1日掛けてやっと半分,結局,土日2日間を使って全部終わらせたんです。これも大変でしたね。
森氏:
まあ,これからはまずいところがあったら随時直していけますので,今回みたいな量にはなりませんよ。今回は,今までに積み重なった課題をまとめて片付けたから大変だったんです。今後は,量を絞ることで精度も上げていけると思います。
4Gamer:
そのほか運営開発上での裏話的なところはありますか?
田山氏:
いろいろありますよ。この3人でいろいろ企画を練って中尾に見せたら,「面白くない」とバッサリ切り捨てられたり。まあ切り捨てられた結果,追加でさまざまなアイデアが生まれて,より大きな企画になったりもするので,何が幸いするか分かりませんね。
森氏:
膨れあがった結果,新しいコンテンツにしたほうがいいんじゃないかと,次回以降に実装が先送りされてしまう企画もありますしね。今は,いつ開発しようかというコンテンツの企画がいくつかストックしている状態です。
4Gamer:
なるほど。それでは最後に,GEのここ最近の動向や今後の展開に注目している人達に向けて,メッセージをお願いします。
森氏:
中尾がよく,「MMORPGは遊園地」という話をするのですが,それは僕らも同じ気持ちです。たとえばジェットコースターを新しく設置したら,皆さんに遊んでほしいですから,大きくアピールします。しかし時が経ち新しいコンテンツが出てくると,そのジェットコースターは古いものになってしまいます。そのとき,きちんとジェットコースターをリニューアルしていけば,常に遊べるコンテンツが充実した状態を保つことができます。GEでも,そうしたアプローチを継続していきます。
今回のアップデートでは,とくにミッションのルーレットに注目してください。以前の状態しか知らないという人には,ぜひ一度試してほしいですね。
田山氏:
遊びたいコンテンツがない遊園地ほどつまらないものはありません。1月22日には,お話ししてきたような新コンテンツの実装と各種の調整が入ります。またストーリーとしては,「原点」のシナリオに回帰していきます。同時に休眠プレイヤーの復帰キャンペーンも行いますので,ぜひ,遊園地としてのGEを楽しんでください。
松田氏:
今のアップデートを楽しんでもらうのもそうですが,インフィニティの先として発表していた内容にも裏でこっそりと力を入れています。今までにない,もっと新しい遊び方も必要だと思っていますので,そちらにもご期待ください。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
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