インタビュー
「グラナド・エスパダ」が優れたアップデートを目指して新開発体制のスタートを宣言。さらに新地域「アルモニア」などの概要を聞いた
4Gamerでは,新開発体制下にて開発中の新コンテンツや,新章「アルモニア」の概要,そして課金アイテムなどに対する新しい運営施策について,オンライン事業部部長兼,GEの日本運営プロデューサーを務めるHUEの中尾圭吾氏と,デベロッパである韓国 IMC Gamesから本部長イ・ヨンシク氏と企画統括責任者ペ・ソンウォン氏というキーパーソンに話を聞いてきた。
HUEとIMC Gamesとの新たな契約で実現されるプレイヤー向けの長期開発体制
今回の取り組みの発端となったのは,2012年10月から2013年7月にかけて行われた一連の「ブリスティア」アップデートの不振である。同アップデートは,メインストーリーの新展開をもたらす内容で,世界観やキャラクターの設定,ビジュアル面などが好評を得た半面,ゲームバランスの調整不足により,新コンテンツ実装であったにもかかわらず,アクティブプレイヤーが減少する結果をもたらしていた。
ここ数年,グローバル単位でMMORPG全般の人気が低下しているなか,GEの不振を重く見たHUEとIMC Gamesは,従来の体制では現状を乗り切れないと判断し,2013年夏,GEのさらなる開発体制の強化と,よりプレイヤーに喜ばれるコンテンツの企画開発の推進という点で合意し,2014年に日本におけるGEの長期運営契約を更新することを早々に決定したという。
「今回,HUEとIMC Gamesの間で結んだ運営契約は,これまでよりも長期に及んでいます。これは過去6年間における両社の関係と実績によるもので,正直なところ,これでようやくGEは本当の長期的展望に立った事業展開ができるようになったと言えます。
プレイヤーの皆さんには,これまで以上に迅速かつ安定したコンテンツや,日本独自の調整などをお届けできるようになるわけです」(中尾氏)
しかし今回,弊社のキム・ハッキュ代表とHUEのキム・ユラ代表が早い段階で合意しましたので,2014年の契約更新までの開発もスムーズに進められます。すでに新体制下の開発チームは,開発メンバーの増員を進めており,これまでより開発量も増えている状況です。
また,同時にHUEからは,日々のサービス内容や直近のコンテンツ開発に関する提案のみならず,中長期的な大型アップデートのコンテンツ案もいただいています。日本はプレイヤーの方の意見も,汲み取る運営者の質も高いので,日本から提案を受けたコンテンツ案を有効活用することで,国内だけではなく世界中で面白いゲームを提供していくことができそうです。
今年の夏に行った開発座談会では,日本のプレイヤーの皆さんからの強い熱意を受け取りましたので,それに負けないよう,日々,開発に取り組んでいきます」(イ・ヨンシク氏)
今後のアップデート方針は「プレイヤーの遊び方」を大幅に拡大していくこと
そうした新開発体制のなか,GE開発チームは,先日発表されたばかりの「PvP装備統一モード」に加え,具体的に三つの新コンテンツの開発を進めている。
PvP装備統一モードは9月11日に実装された。ご存じのとおり,グラナド・エスパダは100体のキャラクターから3キャラクターを自由に選んで操作できるゲームである。装備統一モードを投入した背景には,気軽にいろいろなキャラクターを楽しんでもらいたいという狙いがあるようだ。GEでは全キャラクターの装備を揃えるのは大変なので,どうしても手持ちの武器の状況によって使うキャラクターが固定される傾向がある。装備統一戦であれば,武器が揃っていないキャラクターでも気軽に試せるわけだ。
「シエラは2007年にNPCとして登場して以来,家門に編入できるようにしてほしいというリクエストが多かったキャラクターです。彼女は,GEの核心を握るフェルッチオ・エスパダとの関係が深く,謎の多い存在でした。このアップデートを通して,そうした謎めいた部分にも触れながら物語が進んでいきます。当時から設定されていた内容が明かされますので,その正体はぜひ皆さんご自身でお確かめください。
シエラのビジュアルや戦い方も,キャラクターチームの努力により,非常にクオリティの高い自信作となっていますので,こちらもご期待ください」(ペ・ソンウォン氏)
また,バハマルアップデートでは,想定される「プレイヤーの遊び方」の幅を拡大することも目標の一つとされており,単調になりがちなフィールド上でのモンスター討伐が楽しくなるように,倒すごとに戦闘シーンが変化していくなど,単調さを解消する新しい仕様も導入される。
同様な意図で作られていた既存コンテンツのコースター村は,さまざまなプレイヤーニーズを狙いすぎて,あまり良い結果にはならなかったが,今度のバハマルマップはライトプレイヤーとシングルプレイに焦点を合わせて作り込まれていくとのこと。また,ベテランプレイヤーのパーティプレイ向けコンテンツは別に用意される。
このコンテンツは,GEの独自のシステムであるMCC(マルチ・キャラクター・コントロール=3キャラ同時操作ができる)で多数のキャラクターを駆使して,試行錯誤しながらさまざまなエリアをクリアしていく内容となるという。プレイヤー個々でキャラ編成・プレイヤースキル・装備編成を追求していくことが鍵となりそうだ。
また,本コンテンツは,一度クリアしたら終了というものではなく,プレイヤーがすべてのエリアをクリアすると,そのたびに拡張されていく仕組みが用意されており,継続してチャレンジできるようになっているとのこと。ちなみに,これは今回,日本から一番強く提案された内容に基づいて開発が決定されたというコンテンツだ。
このコンテンツでは,100体の選択肢から『この組み合わせではダメだった。じゃあ,次はどうしよう』といったように,考えながら3体を選んで挑戦してもらうという遊びを提供していきます。現在はPvEプレイヤーの方に対して明確な目標や遊び方が提示できていませんので,今後のために必須のコンテンツだと考えました」(ぺ・ソンウォン氏)
三つめは,次々期大型アップデートの開発だ。このアップデートでは,旧大陸の国家「アルモニア」が舞台となる。アルモニアについては,ゲーム中で「神聖市国」として名前だけが登場していたのだが,ついに実装されることになった。
ブリスティアに劣らないボリュームになるのはもちろん,プレイヤーに新しい遊び方も提案していけるように,フィールドを盤上に見立て,プレイヤー同士がスクワッド(パーティ)単位で放置狩りに挑む「協力型 放置プレイ」という新しい遊びの仕組みを開発することや,ダンジョンのギミックなどもこだわったものになるとのこと。
「アルモニアは,唯一神を信仰する宗教国家で,精神世界を重んじる社会のため,ブリスティアとは対照的に文明の発展が遅れています。この国は,旧大陸に空いた『深淵の穴』に蓋をし,邪悪な気が流出するのを防いでいるという設定です。ブリスティアはGEの社会情勢というのがテーマでしたが,アルモニアはGEの世界の成り立ちが分かるというのが大事な設定の一つとしてあります。
ビジュアル面では,中世の聖騎士や聖女のような雰囲気をお見せしていこうと考えています。これまでのGEの世界よりも精神性であったり,魔法に代表されるようなGE本来の中世ファンタジー性を追求した世界観になります。
ともあれ,アルモニアに関しては開発がスタートしたばかりなので,今はまだ多くをお話しできません。まずは,バハマルアップデートをお楽しみください」(ペ・ソンウォン氏)
「日本から提案した内容の多くは,バハマルから順次入っていきますのでお楽しみにというところですが,『そこまで待てない!』という方も多いと思うので,それまではバウンティやアルセンのような既存コンテンツのハードモードで間を持たせてもらえるように,ささやかな努力をいたします。個人的に面白そうなものを,何点か投入する予定です」(中尾氏)
また,ペ氏は,これらの新コンテンツ開発に関して,プレイヤーから寄せられた意見を踏まえ,報酬設定が甘いとの意見が多かったブリスティアアップデートの不振を払拭できるよう,細心の注意を払って開発を進めていると付け加えている。
「私達は,クリエイターとして作ってみたいと思うコンテンツを企画開発し,プレイヤーの皆さんに『どうですか?』とご提案することが仕事です。オンラインという特性を生かしてリアルタイムにサービスを提供できるゲームを作っているわけですから,企画開発の前提には,過去の失敗の反省を生かし,可能な限り皆さんに喜んでいただけるものを作ろうと思っています」(ペ・ソンウォン氏)
運営面ではリアルタイムサービスの実現と課金必須の撤廃を目標へ
さて,上記の開発体制の刷新および開発中のコンテンツの話を受け,中尾氏からは今後のGEの運営方針が明かされた。
まず,今後は運営チームとプレイヤーとの座談会の場を設け,プレイヤーの方の反応を確認し,開発チームに伝えるリクエストの精度を高めていくというものが挙げられた。
「これは自分自身の話ですが,過去1年間,少しプロモーション活動に傾倒しすぎたなと反省しています。もっとゲームの中身の調整を重視すべきでした。立場的に,運営というのは何でも屋ですので,この辺りのバランス取りは本当に難しいのですが,ニコファーレの展開など変わったプロモや放送と連動したサービス&イベントなども,またいずれやりたいと考えています。しかし,とりあえず現状の方針はゲーム内の強化に専念します」(中尾氏)
GEでは,多くのアイテムが無料化されてきたが,装備アイテムの強化に必要なアイテムである,バレロンパウダー・消失防止剤・ソケット加工安定剤は有料のみだった。これらをゲームの攻略報酬などで提供し,ある程度は無料でも提供できるようにするとのこと。中尾氏は,この施策により,ゲームのプレイを継続していれば,装備品の強化なども無料で楽しめるようになると語る。
また,今回,この施策を推進するにあたっては『艦隊これくしょん -艦これ-』のヒットを参考にしました。まだ該当タイトルのサービスの期間が短いので,もう少し様子を見てからと思っていましたが,現時点でも宣伝の謳い文句ではなく本当の意味で『無料で遊べる』という部分が好評を博していることは間違いない事実です。
今後,長くプレイヤーの方と付き合っていくためには,ある程度プレイヤー側の負担を下げていく必要があると考えました。今なら,まだまだ売り上げの下落に耐えられますので,体力に余裕があるうちに未来につなげるための手を打っておきたかったという考えです」(中尾氏)
そのほか,かねてより長時間対応や選任チームを作るなど,リアルタイム化を進めてきていたプレイヤーサポート体制も,これまで以上に拡充していくという。
「プレイヤーサポートにしても,返答で丸1日待たせるなどというのは論外なので,継続して強化していきます。例えば価値の高いアイテムが消失したら,プレイヤーにとっては大きなストレスです。それが,いつ頃復旧できる見込みなのか即座に分からないようでは,そのまま離脱につながってしまってもおかしくありません。したがって,今後はサービスをいかにリアルタイムに近い形で提供できるか,というのが一つの鍵となるでしょう」(中尾氏)
サービスイン7周年を迎えて,なお,開発体制を強化するIMC Gamesと,無料で遊べる部分の拡大にチャレンジするHUE。それらの取り組みは,ひとえにプレイヤーに優れたゲームを届けたいという彼らの願いに端を発している。今回のインタビューで取り上げられた今後のアップデートの情報や,運営施策に関する詳細は,順次,あらためてアナウンスされる予定だ。時代の流れに合わせて努力する彼らの姿勢にメディアとして期待し,見守っていきたい。
最後に,中尾氏が今後のGEの運営開発に関し,プレイヤーに向けて送るメッセージをもらったので,これを掲載して本稿の締めとしよう。
「より面白いコンテンツを提供するうえで必須であった契約の部分が解決しましたので,根本的に必要だった『遊びの幅を広げる新しいコンテンツ』の開発をこれから一気に行えそうです。長らくお待たせしまして,すいません。ただ,この先,より面白くなればALL OKだと考えています。(ブリスティアの失敗という)根本的な問題が起きたことで,雨が降って地が固まるように結果が良くなったと,あとで笑い話にできるように頑張ります」(中尾氏)
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