インタビュー
「グラナド・エスパダ」今年度リニューアルの集大成「ブリスティア」。4か月に及ぶアップデートの目標,中身を運営プロデューサーに隅々まで聞いてみた
今回,4Gamerでは,GEの日本運営プロデューサーを務めるHUEの中尾圭吾氏に,今回のアップデートについて詳細や意図するところを聞いた。
プレイヤーの抱く“薄すぎ”という意見への回答となるアップデートに
GEでは,2012年7月の大規模なリニューアル以降,有料アイテムの大幅値下げや,キャラクターとキャラクターを最高レベルまで引き上げる「ジャンピングキャンペーン」を実施するなど,2012年のオンラインRPGに求められるプレイ環境の整備を進めている。直近ではワールド(サーバー)移住サービスの開始と,スマートフォン版「GEMOCON」による一部ゲーム機能の遠隔操作を実現したことも記憶に新しいところだ。
「リニューアルで行った施策の中では,まだ短期間ですが,ワールド移住サービスの効果が印象的でしたね。移住した本人の体感が大きく変わるのはもちろんですが,有力プレイヤーが移住すると,ワールドの空気が少し変わるんですよね。これまで,新規プレイヤーの方が大量に入っても,ワールドの空気に大きな変化はなかったのですが,有力プレイヤーは1人が移住するだけで,やはり話題性が大きいですね。これは本当に驚かされます。今後どうなるか,まだまだいろいろと変化が起きるかもしれません」(中尾氏)
同時に,リニューアルで掲げられた,アップデートについてプレイヤーが抱く“遅すぎ”“ズレ過ぎ”“薄すぎ”という意見に対する施策も進められている。
まず,アップデートが遅すぎるという点への対策としては,本格運用が始まった「週間アップデート」が挙げられる。これは“ゲーム内に,毎週,何かしらの変化を起こそう”というコンセプトの試みだが,変化が速すぎて混乱を招いているなどの理由から,現在は2週に一度のペースで継続している。
その結果は上記の週間アップデートに反映されていく。アップデートへの評価が思わしくない場合には,次回のGE大会議にて,再びプレイヤーと一緒に議論することとなる。とはいえ,すでにある程度の手ごたえを得ているようだが,始めたばかりの試みであるため,どのように進行すればよりよい結果となるのかなど,運営チームでもまだ模索しているようだ。
「現状は,プレイヤーの期待に対して,大きくは応えられていないという感触です。運営チームとプレイヤーの間で解決できる課題だけでなく,開発チームが関わるケースも多いですし,ゲームのコアとなる部分に絡む内容の場合はやりすぎて失敗すると本当に危ないので,少しずつ調整力を上げていきたいですね。いずれ,こういったプロセスをなくてはならないものにしたいと目標にしています」(中尾氏)
その一方で,GEの目指すべき将来像を中尾氏と運営ディレクターらが語り合う不定期の生放送も始まった。中尾氏いわく,GE大会議がゲーム内のコンテンツの微調整,例えば,スキルの調整やミッション報酬など,現状を踏まえた具体性のある議論であるのに対し,こちらは,より大枠の方向性を模索するような内容であるとのこと。実は,この試みから,今回発表された無限のバリエーションや短時間でも遊べるMMORPGのコンセプトが生まれてきたのだという。
一連のリニューアルを通して上記のような流れがあり,さらに一歩踏み込んだところに手がつけられようとしている。アップデートが薄すぎる──すなわち,アップデートされるコンテンツのボリュームが足りない,クオリティが見劣りするといった意見への対応が,今回の大型アップデート以降で行われることになる。このアップデートでは,4か月間,毎月大型コンテンツを投入し,国家「ブリスティア」を舞台としたメインシナリオを完結させる予定だ。
4か月にわたるアップデートで,新しい世界・無限のバリエーション・短時間で遊べるMMORPGを成立させることを目標にしています。ブリスティアでは,フィールド,インスタンスミッション,新キャラ,それに伴う新シナリオ,新モンスター,新武器シリーズなど,すべての要素を多数用意しています。もちろん,その間も週間アップデートは並行して継続します」(中尾氏)
中尾氏は,ブリスティアアップデートまでを,これまでのGEとして足りなかった部分を補う土台整備のように捉えており,下準備の終わったところで,次のアップデート以降,GEを次世代のゲームとして作り変えていこうとしているという。
7月アップデート以降,GEの開発ラインは,速度重視の週間アップデートのチームとクオリティ重視の大型アップデートチームに分けて作業が進められており,大型アップデートチームによる,たっぷり時間と手間をかけて開発したコンテンツ群がいよいよ投入されるわけだ。
以下では,新要素の具体的な内容を見ていこう。
歩き回るNPC! 街中のバトル! “躍動感”をコンセプトにした新しい世界を提示
しかし,これまでのGEのストーリーの進行に伴い,「十人貴族」が倒されたり離反したりなどの理由で10人中8人が欠け,ベスパニョーラ本国は混乱状態に陥ってしまう。その混乱に乗じたブリスティアの新総督は,ベスパニョーラによって閉ざされていた他国や新大陸との外交を復活させてしまうのである。そのおかげで,新大陸の開拓民たるプレイヤーもブリスティアへと移動できるようになるわけだが,その一方で,ブリスティアとベスパニョーラとの確執も再燃してしまうのだ。
「ブリスティアの街並みは,これまで登場したGEの街よりも近代化が進んでいます。人々の服装や建造物の装飾などが近代ヨーロッパ風になり,飛行場のような施設も登場します。
また,ストーリー上で渦中の人物となるブリスティアの新総督は,敗戦当時の総督の息子で,ブリスティア側から見れば“裏切り者の一族”であり,ベスパニョーラ側からは組みしやすいと見なされていた人物です。そんな人物がベスパニョーラの意に反して外交を復活させたわけですから,両国とも相当に混乱しています。この混乱がいろいろなコンテンツの良いスパイスになっているんですよね」(中尾氏)
また,ブリスティアのコンセプトは,“躍動感”とのことで,例を挙げると,街を歩き回るNPC,昼夜で異なる街の顔,街の中で発生する戦闘(PvE)といった,これまでのGEにはなかった要素が多数登場するという。さらにこれらの要素は,それぞれが連動し,ストーリーを盛り上げていくと中尾氏は語る。
「GEのキャラは,街のNPCもそうなんですが,キャラのカスタマイズシステムではなくて,1体1体,デザイナー表情や動きもすべて手作りで作りこんでいますので大変なんですよ。
今回,NPCに話しかけるとちょっとした返事を返してきたり,別の誰かのところに歩いていったりと動きが加わるようになりました。こういった“世界が動いている感じ”は,以前からずっと表現したかったのですが,ようやく実現できたというところです。
1体1体を作り込むようなやり方は大量生産には向かないのですが,その分,味わいがあるキャラが作れます。ブリスティアにいるNPC紳士のおじ様やバレルみたいな中年キャラは,本当に良い味を出してますよ(笑)。
また,今回,プレイヤーが進入できるブリスティアの港町「キエルチェ」は,昼間こそ美しい街なのですが,夜間には“ブリスティア解放軍”を自称する盗賊団が跋扈するという,二つの側面を持っています。「昼」と「夜」は,別々のマップとして用意されており,それぞれ進入できる部分も変わります。プレイヤーは,その両面を交互に渡り歩きながらストーリーを進行していくことになるのですが,ストーリーが進むとともに,街の様子もどんどん変わっていく予定です。この街では,すべての要素が連動していますので,これまでとはかなり異なるプレイ体験ができるようになっているんです。日本のRPGっぽい要素が取り入れられていますので,このあたりは日本でウケるかもしれませんね」(中尾氏)
ブリスティアのストーリーには,上記の新総督のほか,ベスパニョーラからエスペランダ女王やフェリペ大公,そして“新”十人貴族といった重要人物が表舞台に登場し,両国および新大陸のそれぞれの思惑が交錯しながら進行していく。その過程では,さまざまな事実が浮かびあってくるという。
新しいマップが追加されるということで,当然ながら新しく編入可能なキャラクターも用意される。
「ブリスティアに登場する7人の新キャラクターを開発するにあたって,新しい魔導書や対戦車ライフル,格闘,キューブ……といった,これまでと異なる戦闘スタイルとスタンスを持たせたのはもちろんのこと,表情やモーションでも“生命感”が出るよう心がけています。したがって,単に個性的というだけには留まらず,これまでのキャラクターとは異なる空気を感じ取っていただけるのではないでしょうか。
とくにオッサンキャラの『バレル』は面白い動きをするので,ぜひ実際に見てほしいですね。また彼のボイスには,ベテラン俳優の石塚運昇さんにお願いして重厚感を出しています。そのほかストーリーでは,グレイスをはじめ,これまで登場したブリスティア出身のキャラクターがシナリオに絡んでくるのも見どころです」(中尾氏)
ブリスティアで編入可能になる7人のキャラクター。右の「?」マークは新大陸のキャラクター以外にも編入キャラが登場することを意味するものだそうだ |
戦闘シーンはグッと戦略的に! 敵モンスターも躍動する
ただし,中尾氏が確認したのは,ブリスティア第1次アップデートの状態であり,今後の調整によって敵の設定が変動する可能性もあるという。氏は,2013年1月実装予定の第4次アップデートで登場する敵は,恐ろしい頻度でスキルを使ってくる設定になるかもしれないと話していた。しかし,これはプレイヤーの様子を見ながらの調整になるようだ。
「さらに新しい武器シリーズも登場します。デザインは,やはり近代的なものになり,少し機械っぽい要素が垣間見えるものとなっています。またドロップで取得できる武器に関しては,まだ検討段階ではあるのですが,少しハック&スラッシュ的な要素が盛り込まれる可能性があります。ただし,これは検討だけで消える可能性も十分にありますが(笑)。うまく企画開発が進めば,新しい姿で第2次か3次あたりに登場するかもしれません」(中尾氏)
「家門スキル」の登場で,より深くなる戦略/戦術の組み立て
次のテーマ,“GEだけができる無限のバリエーションの創造”の軸となるのは,新たに導入する「家門スキル」である,中尾氏は,このシステムにより,プレイヤーが状況に応じてプレイスタイルを選択できるようになると説明する。
なお,一度作ったビルドを作り直したいときには,街にいるマスターガーディアンに話しかければ無料でリセットすることができるとのことである。
「北米のオンラインRPGなどでよく見る方式ですが,それに慣れていないアジア系の人からすると少々マニアックになってしまい,プレイヤーにとって難しくなりすぎないかという意見も挙がりました。しかし,現状より確実に強くなる方向ですのでストレスは発生しませんし,GEにはもともとキャラクターを組み合わせて戦略/戦術を構築するという要素があって,やはりカスタマイズの主体となるのはキャラクターの調整です。今回導入した方式は,数値情報だけと睨めっこする戦いではなく,見た目や武器による直感操作も十分に可能です。キャラクターに合わせて必要なスキルを組み合わせていくだけでも楽しめますので,たぶん,いけるんじゃないかなと踏み切った感じです。それでも厳しいようであれば,いろいろと調整してみたり,または,GE新聞などでプレイヤーに助けてもらうことになるかもしれません」(中尾氏)
中尾氏は,この家門スキルがGEというゲームの根幹を大きく変えるシステムであることも指摘する。したがって,最初に実装した状態のままサービスを継続するつもりはなく,プレイヤーの意見とプレイの実態を踏まえて随時調整を重ねていく。無論,GE大会議の議題に上る可能性も高いだろう。
「キャラクターのステータスと装備アイテムのパラメータに加え,今後は家門スキルの要素が加わるわけですから,これまで以上にカスタマイズが楽しくなるのは間違いありません。そこは我々としてもチャレンジしていきたい部分です」(中尾氏)
「家門スキル」だけではない,バリエーションの広がり
さらに1家門につき一つしか所有できない「ユニークアーティファクト」というものも存在し,よりキャラクターの特性を強調できるようになるとのこと。所有制限を設けたのは,プレイヤーの個性を出すためとのことで,今までとは位置付けが少々異なるコンテンツのようだ。
「アーティファクトや家門スキルも重要ですが,それ以上に重要になってくるのは,キャラクター間のバランス調整です。オンラインRPGでプレイヤーの強さに多少のばらつきが必要なのは確実ですが,度を超えるのはよくないんですよね。これは開発元により強く要望していくことになりそうです」(中尾氏)
GEの大きな魅力の一つであるキャラクターでは,上記のとおり,全7体がアップデートごとの4回に分けて実装される。並行して中世ヨーロッパをイメージしたキャラも追加していき,毎月1体以上の追加を予定しているそうだ。
「キャラクターに関しては,当面,総数100体以上を目指しています。これまでは年間10体程度の追加だったところを,現状の予定では2倍近くの18体追加します。その中には,これまで登場したキャラクターのバリエーション違い──つまり,あるキャラクターの少年少女期や青年期,未来の姿といったものも含まれます。もちろん,バリエーションが異なればステータスもスタンスも異なります。その一方で,従来のキャラクターも,新キャラクターと比較して見劣りしないよう,性能の上方修正を図ります。すべてのキャラクターを揃えることは難しいのですが,こうして“使える”キャラクターを増やしていくことで,定番の数体から3体を固定化して遊ぶのではなく,プレイヤーが状況に応じて,ある程度のキャラクター群の中から適したキャラクターをチョイスできるような環境を作ります」(中尾氏)
クエストの内容やコンテンツのピークタイムを見直し,誰でも気軽に遊べる内容に
3つめのテーマとなる“短時間でも遊べるMMORPGに挑戦”では,中尾氏いわく,プレイ時間が短くとも楽しめるコンテンツ作りを進めるとのことである。とはいえ,これはオンラインRPGによくある,時間のない人のためにレベルアップを速めるコンテンツを導入したり,経験値倍増キャンペーンを展開したりという趣旨だけではない。
その一方で,ミッションやレイドボス戦,そしてPvPなど,パーティプレイで楽しむコンテンツは,ランダムないしオンラインゲームのゴールデンタイムにする予定です。おおよそ,連日21:00〜23:00くらいにピークがくるようにとは考えています。例えば,ルシフェル城のレイドボスだと,これまでは(確実にボスがいる)メンテナンス直後にログインできるプレイヤーが有利でしたが,今後はより多くの人が楽しめるようになるでしょう」(中尾氏)
さらに新規プレイヤーを,ジャンプアップキャンペーンとリアルタイムインゲームサポートをさらにアップグレードして迎えるとのことだ。中尾氏によれば,今回は開発が間に合わなかったものの,GEMOCON拡張するなどで全サーバーのプレイヤーをチャットでフォローできるリアルタイムサポートなどもいずれは実現したいと述べた。
最後に,中尾氏が今後のGEについて語った展望を掲載して,本インタビュー記事の締めとしよう。
「6年以上サービスを行ってきましたが,運営も開発も,まだまだ挑戦したいことが山ほどあります。これまでも多くの挑戦によって,今やっている週間アップデートと並行しての大型アップデート,課金全般の見直し,GE大会議を通しての調整,先日行ったオフラインイベント『豪華オーケストラ IN ニコファーレ』など,昔の我々では絶対にできなかったことが多数できるようになりました。まだまだ至らない点が多数ありますが,継続して努力していきますので,今までと変わらず,プレイヤーの皆様から良いご意見をいただければと思っています」(中尾氏)
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