インタビュー
「グラナド・エスパダ プラス」の今後,そして次回作は? 韓国IMC Gamesキム・ハッキュ氏インタビュー
大規模アップデート「東洋の女剣士」を本日実施(7月28日)
「グラナド・エスパダ プラス」公式サイト
より受け入れられやすくするため序盤をリニューアル
党員募集掲示板も設置
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。GEは,日本での正式サービス開始から3年が経ちます。今現在,GEではどういった方針で開発を進めているのですか?
キム・ハッキュ氏:
というのも,新コンテンツを積み重ねていくという作業は,ずっとGEを続けてきた既存のプレイヤーを対象にしたものだからです。今まで作ってきたものの,さまざまな部分を見直し,手を加えることで,新規の方でも違和感なくゲームに入り込めるようにしたいと考えたのです。
4Gamer:
より多くの人に受け入れられやすい形にするわけですね。
キム・ハッキュ氏:
私がGEの開発に着手したころは,“GE独自の仕様”や“GEらしさ”というものにこだわっていました。現在プレイしているのは,それについて来てくださった皆さんです。しかし残念ながら受け入れてくださらなかった方もいましたし,またこれから新たにGEに触れる方もいらっしゃるでしょう。そこで,こだわりを残したまま,より親しみやすいものに作り変えているんです。
4Gamer:
具体的に,どういった形になるのでしょう?
キム・ハッキュ氏:
導入部分のクエストを中心に,より初心者に分かりやすい内容にしています。継続してプレイしている方は,積み重ねられてきたストーリーを一つ一つ段階的に追ってきていますが,初めての方はそうはいきません。そこで広がりすぎたストーリーを,一つの明確なラインに沿ったシンプルな形にまとめています。もちろん,チュートリアルにもかなり手を加えています。
4Gamer:
序盤のストーリーが変わってしまうということですか? 個人的な話で恐縮ですが,GEの序盤は何度も繰り返してプレイしたので,あのストーリーが変わってしまうのであれば少々残念です。
キム・ハッキュ氏:
いえいえ,ストーリー自体はそのままですよ。ただ,同じ作業を反復させるようなクエストや,意味もなくあっちこっちに移動しなければならないといった部分を見直してシンプルにしています。その方が,よりストーリーに入り込めますよね。
4Gamer:
なるほど,安心しました。
キム・ハッキュ氏:
コミュニティの形成についても,今まではプレイヤーの自主性に任せていました。しかし,より自然に,かつ必然的に交流が図れるよう,サポートするシステムを導入します。例えば,以前から要望の多かった「メールシステム」です。このシステムがあれば,ログインしている時間が合わないプレイヤー同士でも交流が図れますし,アイテムを添付できるのでプレゼントを贈るのにも使えます。
4Gamer:
新しく党に加入した人に,お祝いメールを送ったり記念プレゼントをあげたりなんてこともできますね。
キム・ハッキュ氏:
また,党メンバーの募集もシステム的にサポートします。募集掲示板をゲーム内に設置して,クリックするだけで党の募集要項を確認できるようにしたり,加入申請を行ったりできるようになります。
4Gamer:
コロニー戦やレイドボス討伐を次々に導入し,プレイヤーに党(ギルド)加入を推奨していたことを考えると,今までなかったことが不思議なくらいですよね。
キム・ハッキュ氏:
それこそ,これまでMMORPG慣れしている人を優先して開発してきた我々の姿勢を物語っています。今回は,そういった点にも配慮して改善しています。
日本からの要望に応じたレイドボスのミッション化
今後も要望には積極的に対応
キム・ハッキュ氏:
4Gamer:
何か変更の理由はあるのですか?
キム・ハッキュ氏:
GEのプレイヤーの多くは社会人ですから,それほど長いプレイ時間を作れません。しかし従来のレイドボスに採用していた仕様は,いわば早い者勝ちですから,プレイ時間が長い人ほどチャンスが多くなってしまいます。そこでミッション化することにより,例え週末しかプレイできない人であっても,等しくレイドボス討伐のチャンスが与えられるようにと考えたんですよ。
4Gamer:
うーん,GEの初期仕様って,やはりレイドボスはミッション形式でしたよね。そこでサーバー負荷などの問題が生じたのでオープン形式に変化したと記憶しています。そうした問題は解決しているのでしょうか?
キム・ハッキュ氏:
サーバー負荷に関しては,もう問題ありません。
また,当時オープン形式にした理由の一つは,先行したプレイヤーがレイドボスを討伐しまくった結果,私達が想定していた以上に多くのレアアイテムを手に入れてしまったからなんです。それではゲームバランスも崩れますし,コンテンツの消費速度も上がってしまいますから,やむなくミッション形式を廃止したんです。
4Gamer:
再び同じ問題が起きる懸念はないのでしょうか?
キム・ハッキュ氏:
4Gamer:
最新最強のレアアイテムを入手できるのは,今までのように限られたプレイヤーになる,と。その一方で,二番手三番手のレアアイテムなら,より多くの人が手にするチャンスを与えられるんですね。
キム・ハッキュ氏:
そういうことです。ちなみにこの仕様変更は,日本のプレイヤーの皆さんから多くの要望をいただいた結果,実現したものなんですよ。そのほか,細かい点でも日本の皆さんから指摘を受けた部分を改善しています。
4Gamer:
日本のプレイヤーは,結構,開発者の意図と異なる要望を出しているんじゃないですか?
キム・ハッキュ氏:
GEはプレイしてくださる方々もの,と認識していますから,要望には積極的に応える方向です。とはいえ,我々が作り出す根本の部分はやはり我々が作っています。皆さんは,そこに味付けをすると考えてください。基本となるメインストーリーは変えられませんが,どんなキャストに活躍してほしいか,どんなコスチュームを着ていると嬉しいかといった要望は随時受け付けています。
4Gamer:
日本から来る要望で印象に残っているものはありますか?
キム・ハッキュ氏:
非常に手の込んだ綺麗なデザイン画をいただいたことがありますね。あとはトイハンマー(ピコピコハンマー)が,ちょっと困りました。取っ手に飾りを付けたりと,アレンジを施したんですけれど……うまく再現できたとはとても言えなくて(笑)。
4Gamer:
美麗なデザイン画といえば,久しぶりにデザイナー/イラストレーターの小林智美さんがGEのコスチュームを手がけますけれども,今回,発注するにあたって何かコンセプトはあるのですか?
キム・ハッキュ氏:
4Gamer:
日本限定ですか。となると何か日本的な要素が入るとか?
キム・ハッキュ氏:
うーん,何かしら日本的なイメージを持たせることに異論はないです。ただ,お話したように私自身は小林さんに自由にデザインしてほしいですから,“着物風”とかそういった制約を課したくはないんですよ。細かいことは,これから小林さんを交えて相談することになります。
4Gamer:
それでは,今後のストーリーはどういった展開になるのでしょう?
キム・ハッキュ氏:
これまで続々と登場させたキャストやNPCのストーリーを進めていきます。それぞれの関係であるとか,大きなところでは「十人貴族」の陰謀といったところが明らかになっていきます。長編映画のような展開も用意していますので,期待してください。
4Gamer:
そのほかGEに関して,お話していただけることはありますか?
キム・ハッキュ氏:
お話してきたように,今後も皆さんの要望に応じたアップデートを行っていきます。韓国ではどうしても対人戦寄りの要望が多いのですが,日本ではかなり傾向が異なります。同じゲームですから丸っきり変えてしまうことはできないのですが,今後もより日本の皆さんに好まれる内容にしていきます。
独自のこだわりで開発を続けてきたGE
続く次回作は武侠モチーフのMMORPG?
4Gamer:
キム・ハッキュ氏:
この数年間,大きく変わった印象はないです。また私自身,“生活と両立できるゲーム”という独自のこだわりを持ってGEの開発に取り組んできました。したがって,現在の市場で人気のあるゲームを分析したり,参考にしたりすることは少なくなっています。ただ,機能面で便利だと思うものを取り入れることはありますよ。
4Gamer:
なるほど。それでは,オンライン/オフライン問わず,何か最近気になっているゲームタイトルはありますか?
キム・ハッキュ氏:
私は一つのゲームを,経済活動などさまざまなことを内包する“一つの世界”と捉えています。そうなると,“長く”“自然に”続いていく世界が望ましい。そう考えたときに,PROTOTYPEは非常に魅力的です。
4Gamer:
なるほど。
キム・ハッキュ氏:
2008年の金融危機のようなものも,ゲーム内では頻繁に発生します。例えばGEでも新しい武器や防具が登場すると,それまで最高とされて限定的に流通していたものが一般的になり,いわゆる強さのインフレが起こります。それに伴ってゲーム内通貨の価値も変わり,経済が一変するでしょう。私は適度なタイミングでプレイヤーに混乱を与え,それをまた収束させるようなゲームに魅力を感じるんです。
4Gamer:
GEとPROTOTYPE以外に,そういった魅力を感じるゲームはありますか?
キム・ハッキュ氏:
実は,この3年間で私にも子供ができました。そのため,家でゲームを遊ぶ機会がかなり少なくなってしまったんですよ。今では寝る前に携帯ゲーム機で遊ぶくらいです。
4Gamer:
なるほど。仕事と家庭があって,さらに趣味としてゲームを遊ぶのは,かなり困難ですよね。
それでは,GEの開発も長きに及んでいますが,そろそろ次回作をお考えになってもいい頃じゃないですか?
キム・ハッキュ氏:
実は,もう取り組んでいます。武侠をモチーフにしているMMORPGです。GEで中世ヨーロッパやアメリカ開拓史を扱ったので,今度は東洋にしてみよう,と。
4Gamer:
ということは,中国市場をターゲットに据えているんですか?
キム・ハッキュ氏:
当初はそう考えたこともありました。しかし企画を進めるうちに,そうではないことに気づいたんです。というのは,私は中国の人から見て外国人です。そういう人間が作ったものを,現地の人が受け入れるとは思えません。例えば,私が日本の戦国時代のゲームを作ったとしても,日本のプレイヤーは受け入れてくれないでしょう? それと同じですよ。
4Gamer:
確かにそうかもしれません。
キム・ハッキュ氏:
そこで武侠という素材は同じだとしても,もっと自分らしさを出そうと考えました。昔の中国に憧れを持っている人が魅力を感じて,楽しめるようなものを目指しています。
4Gamer:
水を差すようで申し訳ないのですが,実は武侠モチーフのタイトルは,日本の市場ではなぜか今一つ人気が出ないんですよね。ここ数年,韓国/中国/台湾産の武侠タイトルは続々とサービスを開始しているのですが……。
キム・ハッキュ氏:
ともかく私は開発者ですから,皆さんにお見せするまでは自分の理想,自分の作りたいものを可能な限り追求します。公開できるようになったら,いろいろとご意見をいただいて,ゆくゆくは現在のGEのように皆さんにご協力を仰ぐことになるでしょう。
4Gamer:
楽しみにしています。それでは,日本のGEプレイヤーと,ハッキュさんのファン,そして4Gamerの読者にメッセージをお願いします。
キム・ハッキュ氏:
皆さんのおかげで,GEはここまでサービスを継続できました。並行して新作にも取り組んでいますが,実は17年間ゲームの仕事に携わってきて,初めて自己資金のみで開発を行っています。これもまた,皆さんにGEを応援していただけたからです。GEは今後もよりよいもの,より皆さんに愛されるものを目指して開発を続けていきます。よろしくお願いします。
4Gamer:
ありがとうございました。
実はこのインタビューは,先日行われたGEの3周年記念パーティ前日に収録したもの。したがってGEの直近の予定に関して,主だったところは既にお伝えしているのだが,その意図や経緯などをこのインタビューから読み取ってもらえれば幸いだ。
気になるキム・ハッキュ氏の新作は武侠モチーフとのことで,若干,独自性(と,インタビューで言及した日本市場への訴求)に疑問を感じる人もいるかもしれないが,よく考えてみてほしい。GEも,中世ヨーロッパモチーフのファンタジーというありふれた素材で,現在の独自性を確立しているのだ。無闇にハードルを上げるつもりはないが,従来の武侠タイトルのイメージを覆すような,キム・ハッキュ謹製とでもいうべき独自性に期待したい。
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グラナド・エスパダ
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