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印刷2004/04/30 18:49

レビュー

 「BEYOND DIVINITY 完全日本語版」のプレビュー記事をUp - 2004/04/30 18:49


「BEYOND DIVINITY 完全日本語版」プレビュー

Text by Iwahama

 よく編集部内で「2004年で最も期待しているタイトルは?」なんて話をする。そのとき,「Half-Life 2」や「Sid Meier's Pirates!」という超ビッグタイトルと並んで高い票を集めるのが,なぜかこの「Beyond Divinity」(旧題「Riftrunner」。以下,BD)だ。日本では,MYSTIX STUDIOSから5月28日に「BEYOND DIVINITY 完全日本語版」(税込1万290円)として発売予定である。
 BDに期待するのは,同じ開発元Larian Studios「Divine Divinity」(邦題「ディヴァイン・ディヴィニティ 完全日本語版」。以下,DD)が非常に魅力的だったからだ(DDのプレビュー記事は「こちら」,レビュー記事は「こちら」)。しかもそのDDで不満だったところ(後述)が改善されていると聞けば,なおさらである。
 と,こんな根拠を書いたところで,DDを未プレイの人にはご理解頂けないだろう。正直いってグラフィックスは前世紀のレベルだし,インタフェースもこなれているとは言い難い。パッと見で,本作に興味を失ってしまう人も多いだろう。
 でも,繰り返しになるが本作は"2004年の期待作の一つ"だ。とにかくこのプレビュー記事を最後まで読んでほしい。



セーブ/ロード時にヒントが表示されるのはDDと同じ
■DDのエンジンを利用して作られた,もう一つのDD

 猫も杓子もやれオンラインだやれネットワークだといってるこのご時世だが,BDはシングルプレイ専用RPGである。
 DDと世界観を共有しており,"リヴェロン" "デモーナ" "神なりし者"といったDDでお馴染みの単語もチラホラと見かけるが,続編ではなく,DDの番外編という位置付けだ(続編「Divinity2」の開発もアナウンスされている)。当然主人公もDDとは違って,今回はとある人間……と,なんとデスナイトの二人が主人公である。理由は,以下を読めば分かるだろう。

 ある神の信徒(人間主人公)が悪名高いネクロマンサーと戦っているとき,サムエルという恐るべき悪魔によって魔界に引き込まれてしまう。そして気づくと,牢屋の中……という状況で本作は始まる。
 しばらくするとデスナイト(DDでは召喚して戦わせたり,逆に敵に召喚されて襲いかかってきたアイツだ)がやってきて,彼ら二人が,サムエルに呪いをかけられ,魂を融合されてしまったことを教えてくれる。そのためどちらかが死ぬと,もう片方も死んでしまうというのだ。
 元々は敵同士である二人だが,今は共に囚人であり,すぐにも殺されかねない"のっぴきならぬ"状況。そこで一時的に協定を結び,まずはこの監獄から脱出し,呪いを解く秘法<Riftrunner>(日本語版αでは<狭間渡り>と表記されている)を探す……というのが当面の目的となる。

 そんなわけで,BDでは基本的に二人のキャラクターを同時に操作することになる。NPCが加わって,3人を動かす場面もあるようだ。といっても「キャラクターを選択」という行為が先にくるだけで,あとはDD(つまりディアブロ系アクションRPG)とほぼ同じ。左クリックで第一アクション(移動/会話/スキル発動など),右クリックで第二アクション(スキル発動など)となっている。
 例えばデスナイトを選択してレバーを操作してドアを開け,次に人間を選択してドアの奥にある別のレバーを操作して……みたいなことができるのだ(これを利用したパズルっぽいところもある)。とはいえ,実際はほぼ常に二人共選択した状態なので,操作感はさほど変わっていない。

 そのほかのインタフェースもほぼ同じ。ただ多少は進化していて,ミニマップ上をクリックするとその地点に移動するし,アイテムを右クリックすると,ほかのメンバーに渡すなどの"右クリックメニュー"が出てくる。が,正直どちらもあまり使わない。インタフェースに関しては,相変わらず,"可もなく不可もなし"といった感じである。



新スキルシステムでは,同じスキルでもスキルポイントの割り振り方で,効果がずいぶん違ってくる
■"王道"でありながら"小粋"な面も併せ持つ,"超"本格シングルRPG

 ここまでをまとめると,BDは"キャラクターを複数操作するディアブロ"と表現できるだろう。「マイクロソフト ダンジョンシージ」や「天覇光芒記〜プリンス・オブ・シン〜」に近いというか。
 しかしこの言葉だけでは,BDのすべてを表しているとは言い難い。BDの最大の魅力は,DDから受け継がれた,その独特のセンスの良さだろう。本作もローカライズ担当者の悲鳴が聞こえてきそうなほどのテキスト量だそうだが,どのテキストも面白いので,"読まされている"という感じがしない。なお国内代理店こそ違うが,BDのローカライズチームはDDと同じ。そのクオリティの高さは折り紙付きである。

 BDを語るうえで外せないのが,「バルダーズ・ゲート」ばりのクエストの数々。サブクエストを含め合計300以上のクエストが用意されている。これは,「魅力的なクエストが多い」と評判だったDDの約200という数字を大きく上回っている。その内容も相変わらず面白く,「牢獄からの脱出」などメインストーリーに絡むシリアスなものから,上官に睨まれている新兵にイタズラする(仕事中に笑わせてしまう)「愉快な新兵」なんてものまで,実にバリエーション豊かだ。
 このところ,MMOは別として,RPGのキャラクターのジョークで笑う,という経験がほとんどなかった("苦笑"なら多いが)。ところが,BDではクスクス笑いっぱなしだ。そもそも主人公が二人なので,日常会話からして「ボケ(人間≒プレイヤー)とツッコミ(デスナイト)」である。出てくる600人以上のNPC達も,若い兵士を診察するのが楽しくてたまらない男色家の医者とか,実の祖母を「塩一袋」と引き替えにしたと噂の軍用商人(本人はこの噂を否定して「売ったのはババアの歯だけやさかいな!(中略)歯なんかなくても構わへんやんか!」と言い,続けて「いや,今のも冗談やで」と笑う。このあとデスナイトの「……冗談,なのか?」という言葉が秀逸だ)など,なんとも個性的だ。

 ……こう書くと"イロモノ"っぽく感じる人もいるかもしれないが,本来RPGとは,「ウィザードリィ」にしろ「ウルティマ」にしろ,ユーモアのセンスを多分にもっていた。日本で最も有名なRPG「ドラゴンクエスト」だってそうだろう。
 BDはイロモノどころか,DDと同様に"超"が付くほど"本格"なRPGである。主人公が顔ばかり美形でやせ細った体の持ち主で,幼なじみの女の子と一緒に冒険に出るようなコンシューマのお子様向けRPGとは違うのだ。
 ……このまま終わっちゃうと各方面から怒られそうなので,具体例を挙げておこう。先述したような魅力的なテキストで綴られた,全5章からなる壮大なストーリー,ディアブロライクな痛快なアクション,広大な世界,ひと筋縄にはいかない数多くの謎,謎,謎。シングルRPGファンが望む多くの要素が,BDにはあるのである。
 なおBDでは,謎解きに失敗すると,平気で悲惨な目に遭う。ゲームオーバーだってあり得る。しかし,この平気でゲームオーバーになる"厳しさ"というのは,決してマイナス要因ではない。そもそもPCゲーム黎明期のRPGは,しょっちゅうゲームオーバーになったもんである。それでも面白かった。
 これをもって本格と呼ぶのに抵抗がある人もいるかもしれないが,筆者にとっては,非常に"本格"と感じるタイトルであるというのはご理解頂きたい。



■無限に遊べる異空間,「Battlefield」(戦場)

 DDは,多くの点で素晴らしいゲームだったが,それでも当然不満があった。最大の不満は,世界が有限であるということだ。ずっとその世界で遊んでいたいのだが,いずれモンスターは死に絶え,中身の入った宝箱もなくなってしまう(そこまでプレイするのにエラい時間かかるが)。
 そこでBDには,「Battlefield」(日本語αでは「戦場」と表記)というものが用意されている。これは,ゲーム本編とはまったく関係のない別世界のことで,BDの五つのAct(章)にそれぞれ用意された入り口(鍵)を発見することで,そこへいつでも行けるようになる。
 戦場では,登場NPC,そのNPCから受けられるクエスト,登場モンスター,登場ダンジョン,そのダンジョン内のアイテムなどが,すべてランダムに作成される。そしてこの戦場で得た経験値,アイテムなどのすべては,BD本編へ持ち帰ることができる。

 Larian Studiosによれば,別に戦場に一度も行かなくても,BDはクリアできる。ただ戦場でレベルを上げたり,良いアイテムを手に入れることで,よりプレイが楽になるというわけだ。
 プレイヤーは,BD本編をプレイ中に,"レベル上げ"や"NPCとの取り引き(買い物)",あるいは"息抜き"のために,この戦場を利用するといいのだろう。

 まだα版を少し触った程度の筆者は,Act1の戦場にしか入ったことがないが,確かに興味深いシステムだと感じた。
 まぁ自動生成されるクエストは,基本的に何か特定のアイテムを見つけてこい,というシンプルなもので,クリア方法も,闇雲にモンスターの登場するダンジョンの奥深くに行くとそのアイテムがあるので持って帰るだけと,そこにBDのクエストの持つ人間臭さは感じられない(初期の「ルナティック・ドーン」のクエストを思わせるというか)。
 しかし,確かに息抜きにはもってこいである。NPCとの濃厚な会話や,頭を抱えるような謎は本編でお腹いっぱい楽しめるので,戦場では,純粋に敵を倒すことや,良いアイテムを探す(結構いいものが出る)ことに専念すればいい。

 またこの戦場へは,本作をクリアしたキャラクターデータでも,行ける。クリア後も延々と遊べるというのは,DDファンの念願だったのではないだろうか。

すべてBattlefield(戦場)の画像。あくまでもα版の画像なので,ご了承を


敵を誘導して,(敵自身の)罠にかからせたところ。こういう"律儀さ"もDDシリーズの魅力
■ノートPCでも遊べる!

 ここでは大きく触れなかったが,海外でのBDのプレビュー記事を読むと,キャラクターが3D化されたことと,新スキルシステムも本作の特徴として紹介されている。
 前者は,画面写真を見てもらえば一目瞭然だ。まだまだ地味さは否めないが,DDと比べれば,若干見栄えが良くなった。
 新スキルシステムは確かにユニークだが,BDの魅力には直接結びついていないので,今回のプレビューでは割愛した。簡単にいえば,BDでは,書物やNPCから学んだスキルにしかポイントを触れず,また1スキルに対して複数のパラメータがあり,そのどのパラメータにポイントを振るかで,スキルの効果が変わってくる,というものになっている

 最後に,動作スペックについて触れておこう。英語版の必要動作環境は,PentiumIII/800MHz以上,メモリ 256MB以上,空きHDD容量 2GB以上,メモリ64MB以上搭載したビデオカード,DirectX 8.1以降。体感としては,DDより若干重たいようだ(キャラクターが3D化された影響?)。
 ただ解像度を800×600ドットにすれば,筆者のノートPC(PentiumM/1GHz,インテル855GM,メモリ 512MB)でも十分快適に動作する。このプレビュー記事を読んでいる人のほとんどのPCで,問題なく動作するだろう。
 なおプレビュー記事作成のため,α版を計10時間以上プレイしたが,一度もクラッシュしなかったことを付記しておく。

 余談だが,次の海外出張では,空いた時間はこのノートPCを使ってBDをプレイして過ごすつもりである。

「BEYOND DIVINITY 完全日本語版」のスクリーンショット集は,「こちら」
「BEYOND DIVINITY 完全日本語版」の記事一覧は,「こちら」
→関連作「ディヴァイン・ディヴィニティ 完全日本語版」のプレビュー記事は「こちら」,レビュー記事は「こちら」

※掲載したすべての画面は開発中のものです

Copyright © 2003-2004 Larian Studios. All rights reserved. Divinity Universe, Divine Divinity, Beyond Divinity are registered trademarks of Larian Studios.

一番左は,巡回中の敵デスナイトに見つからないように,スキル「忍び足」でコソコソ行動中の画像。こいつは相当強いので,誰もが忍び足を使うことになるだろう。ちょっとしたスニークゲームのようで,結構楽しい

  • 関連タイトル:

    BEYOND DIVINITY 完全日本語版

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