インタビュー
「マビノギ チャプター3〜アルケミスト〜」開発者インタビューで分かった新要素のあれこれ
錬金術が加わることで“変化の時代”を迎えるマビノギが,これからどのような展開を見せるのか,その詳細と今後の展開などを韓国側開発スタッフdevCAT マビノギチーム チーム長 ハン・ジェホ氏,海外サービスパート キム・キョンヨプ氏,ネクソンジャパン 運用1チームの佐々木浩明氏に聞いてみた。
新しく加わる「錬金術」ってそもそもどんなもの?
4Gamer:
ハン・ジェホ氏:
ジェネレーション9(G9)の間には8種類のアルケミスキルが実装されます。APの消費はスキルによっても異なりますが,例えば上級スキル「ライフドレイン」をランクアップする場合には,100〜200という少し多めのAPを消費します。ただ,それ以外のスキルであれば,魔法の「ボルト」と同じぐらいに設定されています。
新しいスキルが一挙に増えたために,より多くのAPが必要になることは我々も理解しています。その分は,キャラクターの成長周期や転生時のボーナスで調整してみました。
アルケミ独自の戦闘方法として,シリンダーが追加されますよね。発表会のムービーや資料を見る限り,基本の戦闘スタイルは魔法職に近いものになるんでしょうか? あるいはシリンダーの形状からいって,従来のマビノギにはなかった銃器に近い扱いになるのかと気になっています。
ハン・ジェホ氏:
マビノギの世界には,アイス/ライトニング/ファイアという3系統の魔法が存在しますが,アルケミは,発表会でもお話ししたとおり,世界のすべての原理をコントロールできる能力ですから,もっと多様なスキルを使いこなせます。もともとある魔法というルールで制約を設けてしまうと,想像力も制約されてしまいますからね。それと同時に科学的な面も持っていて,シリンダーと結晶を使って物理的にダメージを与えられるというのも,アルケミの特徴となっています。
先ほど銃器のようなといわれましたね。シリンダーのデザインを見ていただくと,マビノギのベースである中世ファンタジーからはかけ離れたものになっていますが,実はそういったことも意図しています。
4Gamer:
このシリンダーですが,種族共通で装備できるのでしょうか。また,NPC販売のものと生産品で能力に違いが出るのかというところもお聞きしたいです。
すべての種族共通になっています。生産品と販売品に差は今のところありませんが,今後のアップデートでシリンダーに属性が付与されると,状況にあわせて使い分けや適正が変わってくるでしょう。
シリンダーとセットで必要な結晶は矢と同じように,1回スキルを使うごとに一定数を消費します。もちろん,その個数はスキルによって異なりますが。
4Gamer:
そうなるとパーティでダンジョンへ出かけよう,という場合には途中で切らさないように大量の結晶を持ち運ばねばならず,不便そうですけれど? お金もかかりそうですし……。
ハン・ジェホ氏:
結晶のサイズは,インベントリでは1×1のスペースで,しかも同じ種類の結晶は100個までスタックできますから,それほどかさばる荷物でもないはずです。また,基本的な結晶はNPCから購入する形になるため,値段も安く設定してありますよ。
錬金ではどんなものが作れる?
確か先日の発表によると,結晶は二つのかまどのうち「湿式かまど」で生産するのではなかったでしょうか? NPCから安価に購入できるとなると,かまどではなにが作れるのでしょう。
ハン・ジェホ氏:
湿式かまどで作る結晶は,威力の高い上級スキルのためのものと考えてください。例えば,ライフドレインを使うための結晶は,4属性すべての結晶が材料になっていて,それを揃えてかまどを使えばライフドレインのための結晶が1個できるという感じです。そのほかにもいくつか上級スキルはありますが,一部は影の世界のミッションを通して入手できるアイテムが材料になっています。
ムービーの中にチラリとゴーレムの姿があったと思いますが,ゴーレムの作り方,使い方について教えてください。
ハン・ジェホ氏:
ゴーレムの練成にはシリンダーと「ゴーレムの結晶」が必要になります。ゴーレムにもいくつかの種類があり,強いゴーレムを作るための結晶は入手がちょっと難しくなってます。練成したゴーレムはプレイヤーが操作して,一緒に戦ってくれますよ。一度練成したゴーレムの稼動時間は,素材になった結晶ごとに一定時間が設定されていて,どの結晶をどれだけ使ったかで変わります。たくさん使えば長時間稼働させることができます。
4Gamer:
アルケミスキルはシリンダーと結晶を使って,今までとは違う新しい戦闘スタイルをプレイヤーが研究する楽しみがありますね。
ハン・ジェホ氏:
ええ,戦略的にゲームをプレイできるようにという点については,常に我々も考えています。例えば,影の世界でモンスターの動きを妨害できる「防護壁」や,プレイヤーがダメージを与える「ウォーターキャノン」や「ウィンドブラスト」など,プレイヤーの使い方次第で戦略が変わるスキルをアルケミには用意しています。
もう一つの乾式かまどについてお聞きします。こちらは合成/分解ができるかまどと説明されましたが,具体的にどんなものが合成で作れますか。
ハン・ジェホ氏:
合成には,そもそも「レシピ合成」と「ランダム合成」の2種類の方法があります。レシピ合成は通常の料理と同じように,レシピどおりの決まった素材を使えば,そのとおりのアイテムができあがります。一方のランダム合成は,その名のとおりなにができるか分からない,ちょっとギャンブル要素のある合成ですね。とはいえ,ある程度の法則はもちろんあって,武器を材料に合成すると,まったく新しい武器ができるといった感じです。その法則についてはプレイヤーの皆さんで研究していってほしいですね。
レシピ合成で具体的に作れるものは,例えばポーション類やゴールドインゴット,シルバーインゴットなどです。やはり,錬金術といえば金を生み出すイメージですからね。
4Gamer:
アルケミでポーションが作れてしまうとなると,既存の「ポーション調合」スキルをがんばって上げてきた人が不満に感じるのでは?
ハン・ジェホ氏:
錬金術という技は無から有を生み出すことはできません。アルケミでは通常よりも,ちょっと効果の高いポーションが作れますが,合成するためには,その触媒となるポーションが別途必要になりますので,従来のポーション調合スキルとの共存にはまったく問題ありません。
4Gamer:
なるほど。では,かまどでの「分解」はどのようなものでしょうか。
こちらは生産でできたアイテムから,元の素材の一部を取り出せるというものですね。
4Gamer:
取り出せる素材の種類や量は,分解スキルのレベルに依存するのでしょうか。
ハン・ジェホ氏:
そのとおりです。ただし,元のアイテムを作るのに必要だった素材よりも多く取り出すことはできません。
多彩なミッションが用意された「影の世界」
では次に,影の世界に話を移します。暗殺・救出・基地防衛といった多彩なミッションが用意されているそうですが,各ミッションの詳細について,できる範囲でかまいませんので教えていただけますか。
ハン・ジェホ氏:
既存のダンジョンですと,ボスを退治するのが最終目標というタイプが多かったのですが,影の世界のミッションにはNPCの救出,敵の本拠地を奪う,敵から基地を防衛するなど,さまざまなタイプのミッションがあります。防衛タイプのミッションの場合を見ると,インスタンスダンジョンの内部に入るといきなり目の前で戦闘が繰り広げられており,この戦いを勝利に導くため手助けするのがミッションの目標となります。
4Gamer:
聞いているだけでも,かなり楽しそうなミッションばかりですね。韓国で人気の高いミッションはどれでしょうか。
ハン・ジェホ氏:
佐々木氏:
強い人がさらに強くなってしまう,というバランシングでは,やはり問題がありますので,高レベルな人も低レベルな人も楽しめるように,優遇しすぎないように調整しました。
4Gamer:
なるほど。ミッションごとに参加できる制限レベルは設定されているんでしょうか。
ハン・ジェホ氏:
はい,同じタイプのミッションでも初級・中級・上級の三つに分かれていまして,初級にはレベル制限はありませんが,中級以上には最低レベルが要求されます。ミッションの中身は基本的に同じで,出現するモンスターのレベルや使ってくる攻撃スキルが異なります。また,完全なランダムではありませんが,同じタイプ同じ初級のミッションでも,受けるたびにモンスターの出てくる順番や位置は多少違いをつけてありますよ。
バイヴ・カハのストーリーが(一応)完結
えー,そろそろ時間が厳しいということで,次に話を移しまして……メインストリームではいよいよ,3人目の女神「ネヴァン」が登場しますね。これでいったんは話に区切りがつくわけですが,次にはどんなケルト神話の神々が登場するのか,先の話などちょっと聞かせていただけないでしょうか?
ハン・ジェホ氏:
チャプター3の間にネヴァンが登場して,ようやく話が完結する予定ですので,さすがにその先のことはまだお話しできません(笑)。
4Gamer:
お話は完結するとはいえ,過去のメインストリームでNPCが謎めいた言葉を残していたり,伏線が消化されてなかったりする部分もまだまだ多いですよね? そういった部分については今後サイドストーリーといった形で組み込んでいかれるのか,気になるところです。
ハン・ジェホ氏:
はい,シーズン2では「ビハインドストーリー」という形で,プレイヤーが気になっていた謎を明かしていくつもりです。
4Gamer:
ちなみに今,G1やG2を進めているプレイヤーにとっては,同時進行になるんですか?
ハン・ジェホ氏:
同時進行してもいいですし,G1やG2をやらなくてもG9はプレイできますので安心してください。
では,チャプター3の話から少し離れて,今後のアップデート予定について伺います。発表会では「タルティーン農場」がレンタルできるようになり,新レシピも登場するという話でしたので,もう少し詳しいことを教えてください。例えばレンタル料金と期間ですね。
ハン・ジェホ氏:
すみません,正確な金額は忘れてしまったのですが,たしか1万〜3万の間ぐらいで1週間レンタルできて,1種類の作物を育てられます。高いと思われるかもしれませんが,そこで採れた収穫物を売ると,もっと大きな利益が得られるので,韓国のプレイヤーにはとても人気がありますよ。
そのほかにも,影のミッションの種類の追加,先ほどお話ししたメインストーリー以外のビハインドストーリーの実装,魔法ダメージの向上といったバランス調整を予定しています。
気になる日本でのバランス調整は?
次に課金システムについて,こちらはネクソンジャパンの佐々木さんにお聞きします。いよいよ日本でも無料転生の導入,転生周期の変更が行われるわけですが,韓国ではこれによってゲームバランスが大幅に崩れてプレイヤーには不評だったと聞いています。周期そのものは韓国と日本では違うようですが,同様に日本でもゲームバランスが崩れてしまう心配はないのでしょうか?
佐々木氏:
2週間に一度の転生は,「少し早いかな」と思われるかもしれませんが,その分,無料転生を6週に1回という周期にして,バランスを取りました。価格体系の見直しは,もっと気軽にプレイしていただきたいというのが目的ですので,無料化の導入は以前から考えていました。
キャラクターカードが安くなっているのも,転生周期が短くなりますから,プレイヤーへの負担を少なくするために踏み切ったものです。
4Gamer:
発表会では「ユーザーが自ら作るコンテンツ」という話も出ていましたが,それについてなにかお話しいただけることはありますでしょうか。
韓国での導入はジェネレーション10になります。現在開発中ですので,あまり詳しくは申し上げられないのですが,例えば,スポーツのようなものとか,コミュニティの活性化を促すようなものを考えています。
4Gamer:
それはゲーム内でできることなのでしょうか,あるいはWebとの連動といった形のものでしょうか。
ハン・ジェホ氏:
なかなか鋭い質問ですね(笑)。Webと連動ももちろん考えていますが,まだお話しできることはあまりなくて,すみません。
4Gamer:
それでは最後に,日本の読者向けのメッセージをお願いいたします。
ハン・ジェホ氏:
チャプター3は,長い期間をかけて準備したアップデートですので,ようやく日本にも導入されることになって嬉しく思っています。プレイヤーの皆さんには,これからもマビノギを楽しんでいただきたいです。
キム・キョンヨプ氏:
チャプター3は,韓国でもよい反応が得られたアップデートですので,ぜひ日本の皆さんにも楽しんでほしいです。
4Gamer:
本日は長い時間,ありがとうございました。
チャプター3で「錬金術」という新しい要素が加わり,ゲームの楽しみ方も大きく変わってきそうな今回のアップデート。どちらかといえば,中級向けの要素ではないかと思っていたのだが,錬金術の鍵となる結晶は安価で販売されるので,初心者にもかなり手軽に使えるものになるとのこと。Str,Dex,Intなどの影響を受けないので,誰でも平等に扱える点もアピールされていた。まったくの新要素となる錬金術も,開発者の話を聞くことでなんとなくイメージはつかめてきたのではないだろうか。想像を膨らませつつチャプター3に備えよう。
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