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  • CCP Games
  • 発売日:2012/03/29
  • 価格:月額14.95ドル
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解毒剤でもあり,毒でもある:EVE Onlineとギャンブルの腐れ縁
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印刷2020/03/03 17:00

企画記事

解毒剤でもあり,毒でもある:EVE Onlineとギャンブルの腐れ縁

下記の記事は,游研社(→リンク)に掲載された記事を,許可を得て翻訳したものです。可能な限りオリジナルのまま翻訳することに注力していますが,一部,画面写真などを変更したり,文化的な背景などで理解されづらいものについては日本向けに表現を変えたりしている箇所があります。→元記事

EVEのゲーム内通貨で賭けるギャンブルサイトは,EVEと同じ長い歴史を経ている


 すでにさんざん聞いているであろう宇宙のストーリー以外で,「EVE Online」(EVE)のニュースはおそらく久しぶりだろう。棺桶の中から,蓋をドンドン叩くかのような感じだ。

 2019年末,宇宙を舞台としているこのMMOに,新しく「Hypernet」という機能が搭載された。プレイヤーはレアアイテムをスペシャルマーケットに出し,チケットでばら売りできる。チケット一枚あたりの金額は,アイテム自体の価値よりはるかに安いが,アイテムを入手できる(権利が与えられる)のは,チケットの購入者のうち「当たり」を買った1名だけだ。

画像集#001のサムネイル/解毒剤でもあり,毒でもある:EVE Onlineとギャンブルの腐れ縁

 ルールはさも違うものですと言わんばかりだが,これの本質が宝くじであるということは,プレイヤーから見れば一目瞭然だろう。
 この“宝くじ”を利用するには「Hyper Core」というトークンを使わないといけない。また期限までに指定数のチケットを売り切れなかった場合,すでに売られたチケットは失効となる。チケットを買ったプレイヤーは,何も得ることなく損をするだけだ。要するに,このビジネスで絶対に損しないのはゲームデベロッパだけで,マーケットで取引をする両方のプレイヤーに対して金銭的なリスクがあるのだ。

 EVEプレイヤーの,このシステムに対する反応は容易に想像がつくと思うが,がっかりする声が絶えなかった。

画像集#002のサムネイル/解毒剤でもあり,毒でもある:EVE Onlineとギャンブルの腐れ縁

Forums:Introducing the HyperNet Relay


 とても皮肉なことにこの機能は,2014年,運営によってオフィシャルにブロックされた第三者ギャンブルサイト「Somer Blink」の運営方式にかなり似ている。「当時オフィシャルがSomer Blinkをシャットアウトした理由がようやく分かったよ,あれから5年をかけた綿密な計画だということだ」というプレイヤーの声もある。

2014年当時最大のギャンブルサイトだった「Somer Blink」。EVEが今回導入したシステムは,とてもよく似ている
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 EVEのゲーム内通貨で賭けるギャンブルサイトは,EVEと同じくらい長い歴史を持っている。もっと言うと,EVEというゲームの盛衰は,ギャンブルサイトに大きく関わっているといえる。何年か前に,EVEオフィシャルが第三者ギャンブルサイトに対して行った撲滅行動は,EVEが衰える原因の一つになったと言ってもいい。

 EVEはそもそもエリートギーク寄りの雰囲気が強く,拡張機能フレンドリーのMMOだと言ってもいい。ゲーム内のすべてのマップやキャラクター,取引記録でさえ,オープンになっているAPIを使ってデータを取得できるのだ。

Dotlanのような第三者ツールの方が,ゲーム内搭載のマップより使いやすい。EVEのコアプレイヤーにとっては欠かせないものだ
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 APIを公開しているEVEは,プレイヤー達がゲーム体験をより良くするツールを作ることを促したが,それは想定外の影響ももたらした。EVEのゲーム内通貨「ISK」で取引するギャンブルサイトも盛んになってきたのだ。
 EVE APIのデータを使い,プレイヤーはゲーム内で特定の人にISKを振り込むことで,ギャンブルサイトの通貨を買える。ギャンブルサイトで得た商品はまた,ISKやゲーム内アイテムの形式でプレイヤーに支払われる。
 プレイヤー視点から見ると,取り引きプロセスでクレジットカードを使わず,口座番号も書かなくてよいので安心安全。このシステムは多くのプレイヤーを引き寄せ,ギャンブルサイトに莫大な中間利益をもたらした。

 EVEに関わる大半のギャンブルサイトは,簡単に言うならばRMT(Real Money Trade)業者である。ゲーム通貨を稼ぎ,それを売ってリアルマネーを儲ける。ギャンブルサイトの運営は完全にゲームから独立しているため,一般的なゲームアカウントを作ってゲームリソースを奪う手口より安全だし収益性も高い。

 それらギャンブルサイトに対するEVEオフィシャルの態度は,長い間不明瞭なままだった。一般的なRMTをやらない限り,こういうギャンブルサイトもまたEVEが推奨する「エリート主義」「自然淘汰」に則っているのだ。利益のために手段を選ばず,仲間を裏切ることなどは,EVEが推奨している行為でもある。ゆえに,ギャンブルサイトは長い間生き生きと活動していた。


 2014年あたりから,オフィシャルのRMT撲滅行動が強くなった。最大のギャンブルサイトSomer Blinkを含め,大量のギャンブルサイトのアカウントが停止された。幸いにもそれをまぬがれたギャンブルサイトも,粛々とブラックマーケットの通貨取引量を抑え,RMT活動のエビデンスが残らないようにした。

 2013~2015年,EVEの有力勢力Goonswarm Federationが二回の星域戦争とEVE歴史上もっとも被害が大きい「B-R5RBの大虐殺」で,徹底的にEVEのゲーム内勢力の均衡を崩し,Goonswarmの相手はいなくなった。状況がカオスだった群雄割拠の時代なら一戦できたような中小アライアンスの地盤は奪われ,エリートPvPプレイヤーたちが収入源を失い,プレイヤーの流失が徐々に進んだ。

※「Fountain War」と「Halloween War」を指すと思われる(→外部リンク

75隻以上のタイタン級戦艦が撃沈され,ゲーム内通貨に換算して11兆ISK(インターステラー・クレジット)におよぶ損害(リアルマネーで33万ドル相当)を出した,EVE史上最大の戦闘であるB-R5RBの大虐殺
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 そして2016年,Goonswarm勢力がEVE宇宙を統一しつつある時,Lennyというプレイヤーが登場した。

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 彼は,EVEギャンブルサイト「I Want ISK」の設立者だ。アクティブプレイヤーが減ることが彼のサイトの収入にも大きく影響したことで,彼は手持ちの大量のゲーム通貨を使って,Goonswarmに追い出されたアライアンスをファンディングし,Goonswarmへの反撃をスタートした。ゆるい組織ではあったが,戦力の強いプレイヤーの集まりだったので,十分な資金援助を受けて,Goonswarmに手痛い打撃を与えた。


 その後たった数か月で,「宇宙の統一」に王手をかけたGoonswarmは所有したすべてのテリトリーを失い,NPCエリアに避難した。だがその時,EVEオフィシャルが手を出した。Lennyのアカウントをブロックし,I Want ISKのサイトをシャットアウトした。噂によると,オフィシャルが消し去ったゲーム通貨価値は62万ドルにおよぶ。Lennyのファンディングで動いていたプレイヤーは資金源を失うこととなり,敗退し続けて,Goonswarmがテリトリー奪還を果たした。

「Funded we will win」(ファンドされた僕たちは勝つ)をスローガンにしたLennyの自由同盟軍だが,カネがなくなってすぐ散り散りに
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 これが,事実上EVE最後の繁栄となった。Goonswarmがのし上がるときには無数の敵を作ったが,潰されたプレイヤーから見ると,Goonswarmが最終的に支配を確立し,リベンジの希望も失われた。そして一部の古参プレイヤーがEVEから離れ,プレイヤーが減ると共にバトルの頻度とクオリティも低くなっていった。自由に宇宙世界でPvPバトルすることを売りとしているゲームにとって,これが致命的な打撃となった。
 オフィシャルはそれからアップデートを重ねて,プレイヤーを維持するために様々な試みをしたが,ゲームの衰えはすでに雪崩のように押し寄せており,阻止できなくなっていた。

 なにしろ15年も運営してきた長寿MMOである。そもそも根本的に解決できない問題もあるだろうし,遅かれ早かれ人気はなくなっていくだろう。しかしもし,当時オフィシャルがLennyおよび彼のギャンブルサイトに対するアクションを数か月後ろにズラしたら,もしかしたらGoonswarmが耐えきれず解散していたかもしれない。一つの勢力がEVEを支配する局面も,こんなに早く訪れなかったかもしれない。そしてEVEの人気も,もう少し,場合によっては数年続いたかもしれない。まあ全部「もしも」の話でしかないが。

Lenny勢が皆殺しにされなかったら,EVEの繁栄はもう少し延びたか……?
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 2018年,EVEのデベロッパーCCP Gamesが韓国のPearl Abyss(代表作「黒い砂漠」)に買収され,同年には基本無料で遊べるアカウント配布を始めた。ゲーム内の経済は崩壊こそしなかったとはいえ,ゲーム内通貨は急速に価値を下げていった。マンスリーパスの市場価格は,数年前の5億ISKから数倍の20億ISK近くにまでなった。

 それから大きなアップデートを数回行ったが,どれも成功とは言えず,新しく搭載した「Hypernet」システムが“フラグを立ててしまった”ことは,たぶん開発チームも自覚しているはずだ。残っていたゲームの残価値を,絞り出したようなものなのだから。

 Hypernetをリリースしてからのパフォーマンスから見ると,絞り出せる価値も残りわずかかもしれない。なにせこのロットシステム最初の大きい取引は,稀に見る「レイブン連合仕様」(Raven State Issue:2006年の3rd Alliance Tournament 準優勝賞品として4隻配布したもの)だった。出品者は512枚のチケットを発行し,一枚当たりの価値は約80億ISK,ビッド総額は4兆ISKに近く,リアルマネーに換算すると約4〜5万ドルとなる。

EVEプレイヤーにとっては夢の戦艦「レイブン連合仕様」
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 ビッドに参加したプレイヤーは,惜しむことなく参加を呼び掛けていた。これは「歴史に残るビッド」であり,参加することは歴史に名を残すのだ,と。しかも,EVEでは貴重かつレアな船を入手できる可能性があるのだ。しかし残念ながら,期限が切れるまでに3分の1のチケットしか売れず,「歴史に残る」ビッドは不成立という結果で終わったのだ。(著者:青春喜相逢

2020年3月9日追記:
本翻訳記事に対し,複数のEVE Onlineプレイヤーからご指摘をいただきました。記事の性質上,本文に修正を加えることはできませんが,共通して指摘された誤りを以下に追記として示します。

・「同年には基本無料で遊べるアカウント配布を始めた。」
※記事をそのまま読むと2018年に無料化に見えますが,EVE Onlineの基本プレイ無料化は2016年,CCP Gamesの買収が2018年と,それぞれの出来事の年代は異なります。

・「Goonswarmが最終的に支配を確立」
・「Goonswarmがテリトリー奪還を果たした。」
※WorldWarBee以降,Goonswarmは元のテリトリーを奪還できてはいません。別地域へ侵攻し,新しい領土を手に入れて,そこを拠点としています。世界支配の確立も行えてはいません。

・アクティブプレイヤーが減ることが彼のサイトの収入にも大きく影響
※Lennyが対Goonswarmを各プレイヤーに呼びかけたのは,Goonswarmの「I want ISK(Lennyの運営するサイト)はRMTをしている」という批判に対するリアクションであり,アクティブプレイヤーの増減と交戦の間に直接的な因果関係はありません。

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