2004/09/22 23:53 |
「ブラッドレイン」プロデューサー
尾崎邦彦
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「ブラッドレイン」緊急インタビュー
エレクトロニック・アーツ プロデューサー 尾崎邦彦
尾崎邦彦氏といえば,エレクトロニック・アーツのゴシックホラー調お色気吸血アクション「ブラッドレイン」の制作プロデューサーとして,「BRマガジン」でもインタビュー記事が連載されている人物。相当シャイな性格で,これまでプロデューサーとしてメディアなどに出たことはほとんどなかったにも関わらず,「ブラッドレイン」では,どうしても語りたいことが多くあるという。「BRマガジン」では語りづらかった(?)氏の思いを,今回4Gamerでぶちまけてもらうことにした。
■なぜEAが「ブラッドレイン」なのか? その謎が明かされる
4Gamer: プロデューサーの尾崎氏が,「ブラッドレイン」について語りたいことが次から次へと頭に浮かんで止まらないというので,お話を伺いに来ました。
尾崎: そうなんです。
4Gamer: それではジャンジャン語ってください。
尾崎: はい,えーと。それが頭の中でうまくまとまっていないので,質問形式でお願いします。
4Gamer: いいんですか? それではお聞きします。まず「ブラッドレイン」って,ちょっぴり古いゲームですよね。たしか欧米で,ちょうど1年前に発売されましたよね。
尾崎: ええ。
4Gamer: 天下のEAジャパンには珍しく,ローカライズに1年かかった,いや,欧米での発売当初はEAから日本で出す予定はなかったタイトルですよね。なんというか,EAの中でもいろんな意味で異色なタイトルに思えるのですが,この作品を日本で出そうとした,そのあたりの話をお聞きしたいです。
尾崎: ストレートに言いますと,私が惚れ込んで,「これはなんとしてもEAから出さねば!」と思い,上層部に猛プッシュしたのです。
4Gamer: なるほど。「ブラッドレイン」は,尾崎氏個人の情熱によって日本で発売されたのですね。
尾崎: もともと海外での情報を目にするたびに,気になってはいたんです。2003年12月にデモ版が出て,やはりこれは気になるということで社内でプッシュしまして,2004年春にようやくローカライズにこぎつけました。
4Gamer: BRマガジンのインタビュー記事では,メッセージの脚本を一から作り直したなどの苦労話が語られていますが,「語りたくて仕方がない」ほどの秘話が,実はまだ隠されているのでは?
尾崎: 「ブラッドレイン」を日本で出すうえで本当に大変だったのは,プレイステーション2版でCECAの審査を通すことだったんです。何度も何度も長い時間をかけて交渉を続け,もう本当にギリギリのところで通したんですよ。普通なら日本では絶対に発売が許されない,それこそ話にもならないようなゴア表現レベルだったんです,「ブラッドレイン」は。
4Gamer: 見えないところで難産だったのですね。
尾崎: もちろんゲーム中の残酷描写をばっさりカットしてしまえば,問題なく審査を通ったでしょうけど,そういう妥協はしたくない。そこで出血量を微妙〜に調整したりしつつ,とにかく細かい交渉を続けて,ついに審査通過までこぎつけました。ちゃんとチートのリッパーモード(死体を切り刻むモード)も収録されているんですよ。
4Gamer: なるほど。ちなみにPC版は?
尾崎: もちろん素通りです(笑)。オリジナルそのままのゴア描写をお楽しみください。
4Gamer: 気になる続編「ブラッドレイン2」についての予定はどうですか? 海外ではもうすぐ発売されますよね。
尾崎: 日本では今のところ未定です。ただ,2の世界での発売に向けて,日本でもブラッドレインを盛り上げていきたいと考えています。
■尾崎氏は「ベトコン」を日本に持ってきた人物だった!
4Gamer: そんな尾崎氏が過去にどんな作品を手がけてきたのか,ぜひ伺いたいですね。
尾崎: 実はコンシューマが多くて,現在はPSPのコンテンツをやっています。PS2版「メダル オブ オナー 史上最大の作戦」などもやりました。
4Gamer: あれま,てっきりPC専門だと思っておりました。PCの過去作品では?
尾崎: 去年は「ベトコン」に惚れ込んで,上層部に「もう,これしかない!」ってゴリ押しして,無理やり出しました。遊ぶ前は「チェコが作ったベトナム戦争モノなんて,ねぇ」と思っていたんですが。これが遊んでみると,面白いのなんの!
4Gamer: 「ベトコン」は本当に面白かったですね。開発元は,「マフィア」や「ヒドゥン&デンジャラス」のIllusion Softworksですが,これもワールドワイドではEAはパブリッシュを行っていないものを,尾崎氏の猛プッシュでEAジャパンが日本語化したわけですね。見た目が旧世代のFPS風でちょっと損してますが,内容はミリタリーFPSの中でもトップクラスでしたよ。
尾崎: そうなんですよ!(その後の意気投合は割愛)。そんなわけで年に1本くらい,惚れ込んだPCゲームをプロデュースしていますね。かなり昔の話ですが,もともとヴァージン インタラクティブから出る予定だった「SUPERBIKE World Championship」というゲームも,すっかり見惚れてあれこれ関わっているうちに,いつのまにかEAスポーツに引っ張ってきちゃいまして。ええ,バイク好きなもので。
4Gamer: なんというか,ジャンルがものっすごくバラバラですね。どういうゲームに惚れ込むタチですか?
尾崎: もちろん,実際にプレイしたときの感覚というか手ごたえが直感的な判断基準ではあるのですが。既存のジャンルの中でも,ただの"亜流"ではなく,新しいアイデアをしっかりと取り入れている作品に心惹かれます。「ベトコン」なんて,ミリタリーFPSの中でも細かなアイデアの宝庫ですよね。
4Gamer: 「ブラッドレイン」も,佃煮にするほどある三人称視点アクションの中ではかなり異彩を放っていますね。
アナザーストーリーが描かれたお色気たっぷりのコミックスは,ブラッドレインのWEBマガジン「BRマガジン」にて絶賛公開中
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■日本のPCゲームのために尾崎氏の出世を食い止めよう
4Gamer: では,ぜひ尾崎氏が次に日本で発売されるよう,上層部にプッシュするつもりのゲームを教えてください。
尾崎: えええっ!? それは……(大弱り)。
4Gamer: という質問には答えていただけないでしょうから,尾崎氏が個人的にハマっているゲームについてお聞きしたいですね。
尾崎: うーむ,いいのかな……。「次はこれをプッシュする」という話とは,まったく別物として聞いてくださいよ。あくまで個人的に気に入っているゲームはですね,まず,フライトシムの"IL-2シリーズ"が大好きなんですよ。
4Gamer: また徹底的に違うジャンル!
尾崎: ほかには「Pacific Fighters」や「Richard Burns Rally」にも注目していて,公式サイトを社内で毎日チェックしては,新着スクリーンショットなどが公開されるたびに一人で大騒ぎしています。
4Gamer: PCゲームばかりですね。職業柄ではなく,趣味なんですか?
尾崎: 個人の趣味ですよ。家では「エイジ オブ ミソロジー」をずーっとやってますね。オンラインで1000戦ぐらいやってるんですが,勝率は4割くらい……。そうそう,最近の注目は「Warhammer 40000:Dawn of War」ですね。これはシングルデモとマルチのクローズドβ,両方やり込んでます。
4Gamer: おおっ,さすが目ざとい! 「Warhammer 40000」は,最近のRTSの中では相当デキの良い作品ですね。
尾崎: もともと「ホームワールド」が好きで好きで,その開発者が手がけたということで注目していた作品ですが,これがまた面白くて(ホームワールド談義で意気投合するも割愛)。
4Gamer: なんといいますか,尾崎氏がいる限り,EAは今後もまったく予想外の名作を日本で出してくれるであろうことが分かりました。日本のPCゲーマーにとって,尾崎氏はまさに希望の光ですね。
尾崎: なぜか出世もせずに9年も現場にいるおかげで,今でも自分の好きな作品をプッシュできる立場にいます。今後も現場にいる限り,惚れ込んだゲームはEAから出せるよう働きかけるでしょうね。
4Gamer: ではぜひ,いつまでも出世しないでください! 応援します!
尾崎: それ,応援ですか……。
というわけで,エールを送ったにも関わらず最後ちょっとブルーになっていた尾崎氏であったが,その情熱は伝わっただろうか。「いいゲームなんだけど,日本語化は難しいかも」という海外タイトルが,エレクトロニック・アーツから突然リリースされるという出来事は,自ら積極的に名作を求め続ける尾崎氏が今後も起こしてくれるに違いない。日本には,こんな情熱的プロデューサーがまだまだ潜んでいるのではなかろうか。「俺のことかも?」なんて心当たりのある方,ぜひ4Gamerにご一報を!(Kawamura)
■「ブラッドレイン」読者プレゼント
今回のインタビューで,エレクトロニック・アーツから「ブラッドレイン」のグッズを読者プレゼント用に頂いた。詳しくは9月27日の当サイト内「今週のプレゼント」をお楽しみに!
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