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「ラグナロクオンライン」20周年おめでとう! ROは長期運営でどのように変わったのか,筆者が撮影したSSとプレイ体験から振り返ってみたい
そもそも,MMORPG(Massively Multiplayer Online Role-Playing Game:大規模多人数同時参加型オンラインRPG)は,1997年にサービスがスタートした「Ultima Online」を皮切りに,新しいゲームの形として世界中のゲーム好きを惹きつけ,とくに2000年から2010年代中盤までを席巻したゲームジャンルである。
一方,MMORPGのサービスを長期間継続するのは想像以上に難しいようで,当時,MMORPGをプレイしていた読者であればご存じのように,さまざまなタイトルが公開されては,プレイヤー数の減少などが原因でサービス終了となっていったものだ。
そうしたことから,ジャンルの人気そのものがなくなったわけではないのだが,サービス運営も慎重にならざるを得なかったのか,リリース数は減少していったように思う。もちろん,新しいMMORPGが登場していないわけではないが,その舞台はPCからスマートフォンが主流になっているのだ。
さて,そうしたMMORPGの生存競争に生き残ってきた中でも,ROはアップデートやPRが今もしっかりと行われており,まさに現役のタイトルとして走り続けているのである(※)。
※参考までに,4Gamerでは2022年(1月〜11月30日)にRO関連の記事を52件掲載している。20周年という話題が増える年ではあるが,それでも単純に毎月しっかりと何かしらの情報が公開されていることが分かる
そんなROの20年を考えたときに,サービス開始当初はどんな感じだったっけと,昔のスクリーンショットを掘り出してみたのだが……無性に懐かしくなってしまう。実際のところ,ROはこの20年でどのように変わり続けてきたのか。スクリーンショットを見ながら,筆者のプレイ体験とともにふり返ってみたい。
作成できるのは3キャラまで,さらに性別もアカウント情報で固定されていた
この20年で,もっとも変わったのはプレイヤーの分身たるキャラクター周りではないだろうか。
筆者がROに初めて触れたβ1テスト(2001年11月)のころは,開発元のGRAVITYが直接運営していて,アカウント登録時の性別=作成できるキャラクターの性別で,キャラクタースロットも3つしかなかった。その後,2002年12月にガンホーによる正式サービスがスタートし,徐々にキャラスロットも増え,現在では5倍の15スロットも存在するのだ。
作成できるキャラクターの性別もアカウントの性別とは無関係に男女どちらも選択でき,さらにはケモナーも大満足のネコっぽいドラムという種族も追加されている。ちなみに,異性のキャラクターと結婚できるマリッジシステムだが,現在は同性や異種族間での結婚も可能になっており,時代を感じさせられる。
キャラを作ってゲームを始めたときの環境も大きく様変わりし,サービス開始からしばらくは,ただ北に向かってモンスターを狩って進み,行き着く先でなりたい一次職に関係する街へ転送してくれるだけ……という流れだったが,より初心者がゲームに入りやすくなるよう「初心者修練所」が設立された。さらにその後,冒険者アカデミーが実装され現在に至っている。
転職クエストの難度(攻略的な難しさというより,ドロップアイテム集めの面倒くささ)は職業によって多少異なるのだが,マーチャントへの転職は,なけなしのゼニー(ゲーム内マネー)を吐き出す必要があったため,とくにファーストキャラでのマーチャントの転職はいろんな意味で厳しかったなぁという記憶がある。
鮮やかな色づかいと可愛いデフォルメキャラでMMORPGのハードルは下がった……と思う
ところで,黎明期のMMORPGと言えば「好きなように遊べ」とばかりにプレイヤーを世界に放り出すタイプが少なくなかった。右も左も分からないプレイヤーは,とにかく手探りで遊び方を学んでいたものだ。
手探りで遊ぶ一方で,周囲の動いているキャラクターがすべて自分と同じプレイヤーであることに,これがMMORPGなのかと驚き,新鮮さを感じたのは筆者だけではないと思う。
画面内に飛び交うオープンチャットを見て行動の参考にするのはもちろん,ブラウザで外部サイトや匿名掲示板をめぐって情報を集めるのもゲームプレイの一部だったと感じるほどだ。この新鮮さと面白さに惹かれたプレイヤーが次々とROに集まり,β1テスト開始時にはChaosのみだったワールドもテスト終了時には3つ追加され,サービス開始以降に最大24ワールドまで増加した。現在は統合などで13ワールドとなっているが,それでもかなり多いほうだろう。
それほどまでにROに人が集まったのはなぜだろうか。筆者としては,鮮やかな色彩のフィールドや街並みとデフォルメされたキャラクターといった,グラフィックス面での功績が大きいのではと考える。
当時のMMORPGはと言えばコアなPCユーザーが手を出すもので,それを反映してかグラフィックスもリアル指向で暗く,ハードな印象なものが少なくなかった。そこへ現れたのがROだ。コンシューマゲームのゲームファンになじみ深いドットで描かれたデフォルメキャラは,それだけでもう触ってみたくなる可愛らしさがあった。さらにフィールドや街,村は明るい色調で鮮やかに描かれており,ほかのMMORPGに比べればはるかに受け入れられやすい雰囲気を持っていたのだと思う。
さらにPKがないゲームだったためか(※2005年にPKが可能な専用ワールド「Urdr」も登場した。現在は通常ワールド化している),少なくともほかのプレイヤーは敵ではなく,攻撃されることもない。それどころかゲーム内で頻繁に情報交換が行われ,コミュニティができやすい環境だったのも大きいだろう。必要なPCスペックもそれほど高くなく,問題があったとすれば,人が多すぎでログインに手間取ったり,頻繁にサーバーキャンセル(ゲームとの接続が切れてサーバーから落とされること)されるといったことぐらいだった。
こういった要素が人を集め,大きなコミュニティを産み,ROを取り巻く世界を広げていったのではないだろうか。その世界は,最盛期に比べれば少し小さくはなってしまっているが,今なお強固なコミュニティとして揺るぎない。それは,この20年の積み重ねが,いかにしっかりしていたかの証左と言っていいだろう。
キャラ育成だけだったゲームは,さまざまな遊びが楽しめるようになっていた
一躍人気MMORPGとなったROだが,その一方でコンテンツが貧弱だった。正直なところ,サービス開始前後のROはキャラクター育成,つまりレベル上げしかやることがなかったのだ。
同じ職業であっても,ステータスポイントの割り振りと習得スキルの選択次第で大きく異なるキャラ育成は,現在でも随一の幅広さがある。どんなキャラを育てるのか,外部サイトの情報を集めつつ育成していくのはとても楽しかったが,逆にいうとそれ以外することがなかったとも言える。
しかもレベル上げは,レベルが高くなるほどキツくなっていき,BaseLv98からレベルキャップのBaseLv99になるには,最高率の狩り場で1時間に1〜2%しか上がらないなんてのもザラだった。いかにも初期のMMORPGである。
徹底的に効率を上げるとまるでBOTが狩りをしているかのようにも見えたようで,しばしば「BOTですか?」なんて声を掛けられたこともある。あわてて返答するも,運悪く湧いたモンスターに対処できず死ぬことも多々あり,その日の稼ぎがデスペナルティでパーになってふて寝したものだ(デスペナルティーで失う経験値は1%。つまり1時間分の狩りがパーになる。……ちくしょう)。
そんな苦い思い出ばかり蘇るのだが,現在は20年の積み重ねとも言うべき,多彩なコンテンツが登場している。当時からときおり追加されていたストーリー性の高い長編クエストも,今では定期的に追加されるようになり,ミニストーリー的なインスタンスコンテンツや高難度のインスタンスダンジョンなど,レベル帯ごとにプレイでき,かつ経験値なども稼げるようになっている。
また,季節イベントなども以前より格段に増えており,そのつど手に入れられる便利な回復アイテムや,冒険者アカデミーで配られる初心者用ポーションなどを見ると,最良の回復アイテムとして“ミルク”と“いも”と“ニンジン”がしのぎを削っていたころとは,隔世の感がある。
レベル上げについても,現在は当時とは比べられないほどの効率で経験値を稼げるようになった。
代表的な例としては,ノービスから1次職,2次職へと転職でき,BaseLv99になると転生できるようになる。そこからまたハイノービスを経て上位1次職,上位2次職,そして3次職へと転職し,現在はBaseLv200まで至れるようになっている。
季節イベント時などはまた別格だが,普通にプレイする分にもレベルはかなり上げやすくなっており,熟練プレイヤーならば1日足らずで3次職に到達が可能だとか。プレイアブルな職業もサービス時は7つしかなかったのに,現在では57職業もあり,それぞれ複数ある育成タイプも考えると,さまざまな職業のいろいろなタイプのキャラ育成が楽しめるようになっている。
さらに先日(2022年11月29日),全プレイヤー待望の4次職が実装された。さすがに12年ぶりの上位職というのは待たせすぎじゃないかと思わないでもないが,さらに新しい遊びが体験できるのか興味深いところだ。
「ミミミのミッションマスター」詳細ページ
「モンスター大討伐2022」詳細ページ
見知らぬ人との一期一会の交流。そんなMMORPGの本質を体験させてくれた
さて,オンラインゲームにおけるコミュニケーション手段と言えばチャットだ。前述のとおり,手探りでゲームを進めることを強いられていたサービス当時は会話によるプレイヤー間の意思疎通が非常に重要で,かつ中身の濃いものだった。その最たるものが「臨時公平広場(略して臨公広場とも呼ばれていた)」という文化だろう。
そこは,臨時でパーティを組むプレイヤーを探す広場で,最初はゲームの首都としてプレイヤーに認識されているプロンテラ南東の旧剣士ギルド跡地,その後はプロンテラの南のフィールドが会場となっていた。
パーティメンバー全員に公平に経験値が入り,ゼニーも均等に分けるというルールで認知されていて,経験値もゼニーも稼ぎやすく,またソロでは行けない狩り場へも行けるということで人気を博していた。
もちろん,メンバーが揃わずに解散することも少なくなかったが,チャットルームで話をしているだけで十分に楽しく,毎日のように臨公広場へ赴いてパーティに参加したり,自分で募集をしていたものだ。
それというのも,筆者はROに限らず仲の良いメンバー達が集まるオンラインゲームの「ギルド」的なものに参加しないようにしてるからだ。もともとぼっち気質でもあるのだが,注意してたとしても仕事で得た情報などをポロッと漏らしたりしたら大変なことになりかねないからという,ゲームライターゆえの心配も理由にある(編注:分からないでもない)。
そんなぼっちの筆者だが,遊んでいた某ワールドのローカルコミュニティ(だと思われる)「遊公広場」では,常連として長らくお世話になっていた。遊公広場は有志のプレイヤーが緩く運営していたもので,効率にこだわらず遊び感覚で,臨公広場よりも緩く公平プレイを楽しむといった趣旨の集まりだった。ふり返ってみても,ROを一番楽しくプレイできたのは遊公広場に参加していたときで,ここがなければ長く遊び続けられなかったと思っている。
臨公広場のような,一期一会で遊ぶコンテンツで筆者が一番好きなコンテンツが2006年に始まった蜃気楼の塔だ。 |
100人のプレイヤーが一丸となってモンスターを蹴散らしながら最上階へ向かうコンテンツだが,初めて会った人とわちゃわちゃしつつお祭り気分で攻略するのは非常に楽しい。現在も少し仕様が変わった蜃気楼の塔がYggdrasillワールドでプレイできる |
臨公広場や遊公広場のみならず,プレイヤーが自分の考えで“遊び”を作り上げたり,遊びかたを紹介する場面を何度も見てきたし,また参加してきた。上級者が余った装備を格安で販売する「蚤の市」,マリッジシステム未実装時に行われた結婚式,特定の職業が集まり情報収集という駄弁りをする座談会,特定の育成タイプのみで狩りに行く「祭」,アルケミストのスキル「バイオプラント」で呼びだした植物同士を戦わせる「プラントバトル」,言いたいことを全体チャットで思いっきり叫ぶ「青年の主張」など,役立つものから結構どうでもいいものまでその内容はさまざまだ。
しかし,こういったことを思いつけるような,そしてそれを実行でき,また受け入れる運営とプレイヤーが集まれるのがMMORPGの本質であり,いいMMORPGなのではないかと思う。
最近はソロでも十分に経験値を稼げるようになったこともあってか,臨公広場は廃れていっており,ユーザーイベントなどもあまり見ることがなくなっている。ちょっと寂しい気もするが,これも時代の流れなのだろうかと,しんみりしてしまう。
20周年を越え,さらなるROの発展に期待
いつのまにやら成人の年齢は18歳になってしまったが,ROが迎えた20周年は子供が大人になるには十分な時間だ。それだけの長い間,継続してサービスが続いたことは驚くべきことだし,あらためておめでとうという言葉を贈ると同時に,続いてくれてありがとうという気持ちがある。
20年間,継続的に遊び続けてきたわけではなく,ここ数年はたまにログインする程度だった筆者ではあるが,サービス開始前から長く遊んできた作品であるし,現在は遊んでいなくとも健在であるだけで,ホッとしてしまうのだ。
この先も頑張ってほしいなと思っているのだが,筆者に言われるまでもなく,12年の時を経て待望の4次職が実装されるなど,まだまだ元気いっぱいだ。20周年を到達点ではなく通過点として,まだまだコンテンツが待ちかまえているに違いない。
美麗な3Dグラフィックスで派手な演出とカットシーンがウリな最新のMMORPGとは趣が正反対のROだが,それらでは味わえない面白さも確かに存在する。20年もの間続いてきた変化と進化は,サービス開始時と比べてより快適に,より遊びやすくなっている。20年前に生まれ,現在に適応したMMORPGがどのようなものなのか,かつてROをプレイしていた人はその違いを,ROプレイしたことのない人はぜひ話の種として,それぞれの思いで確かめてみるというのはどうだろうか。
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