業界動向
THQの資産に関する競売が終了。「Saint's Row」のVolitionはDeep Silverが,Relic EntertainmentはSEGAが落札するなど,開発中のタイトルやスタジオの行き先が決まる
資産の売却先と落札金額は,以下のように報道されている。
SEGA Sammy Holdings
・Relic Entertainment(Company of Heroesなど)を約2660万ドルで落札
Koch Media(Deep Silver)
・Volition(Saint's Rowシリーズなど)を約2230万ドルで落札
・4A Gamesの「Metro」シリーズの販売権を約590万ドルで落札
Crytek
・「Homefront」の知的財産権を約54万ドルで落札
Take‐Two Interactive
・「Evolve」(Turtle Rock Studios)の販売権を約1090万ドルで落札
Ubisoft Entertainment
・THQ Montrealを約250万ドルで落札
・Obsidian Entertainmentの「South Park: The Stick of the Truth」の販売権を約330万ドルで落札
12月20日に掲載した記事でもお伝えしたように,THQを買収したClearlake Capitol Groupは倒産した企業の資産整理を専門に行う会社であり,同社の持つさまざまな資産が売却されることは当初から予想されていた。北米の情報サイトKotakuに掲載された,THQ幹部が全社員に配信したというメールにもあるように,一括して売却されるよりも個々のスタジオや知的財産などを競売にかけるほうがより多くの収益が得られる可能性が高く,今回のような分割しての売却に至ったようだ。
落札した各企業について簡単に説明すると,まず,「Total War」シリーズでストラテジーゲーマーにはすっかりおなじみのSEGAは今回,「Company of Heroes」シリーズで知られるRelic Entertainmentを新たに手に入れたことで,歴史ストラテジージャンルでは揺るぎない存在感を発揮することになりそうだ。
また,Koch Mediaのゲーム販売部門であるDeep Silverは,400万本のヒットとなった「Dead Island」シリーズが好調ということもあって,ファンにアピールする新たなアセットを熱望していたはず。落札金額はかなりのものだが,「Saint's Row」シリーズや「Metro」シリーズの販売権を手に入れたことを考えれば,安いかもしれない。
一方,ロンドンのスタジオが「Homefront 2」の開発を担当していたこともあり,Crytekの落札金額はかなりリーズナブルだ。
このあたりの顛末は,4Gamerの連載記事「奥谷海人のAccess Accepted」の第299回「モントリオールで起きた,人材引き抜きをめぐる出来事」で紹介しているので,デジーレ氏の心境を想像してみたい人は,ぜひ参照してほしい。THQ Montrealではデジーレ氏を中心に,「1666」というコードネームで呼ばれるゲームを開発中だった。
Take‐Two Interactiveが落札した「Evolve」についてはほとんど情報が出ていないが,「Left 4 Dead」シリーズを開発したTurtle Rock Studiosの作品であることや,1000万ドル以上という高額で販売権を落札しているところから,かなりのゲームであるようだ。
競売にあたってClearlake Capitol Groupが提示していた売却希望額は総額で4290万ドルほどだったというから,債権者にとって今回の競売は満足のいくものになったはずだ。
ただし今回の競売では,「Darksiders」シリーズを手がけるVigil Gamesの落札が成立しておらず,同社の去就は不明だ。
いずれにせよ,欧米で3月5日にリリースされるSouth Park: Stick of the Truthを初めとして,開発中の新作はすべて売却先が決まったことになり,我々ゲーマーとしても一安心といえるだろう。
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