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    [GDC 2011]小回りの利く小さな開発チームの特性を活かした新しいゲーム開発――Zyngaのモバイル部門が学んだ教訓とは?
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    印刷2011/03/02 20:21

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    [GDC 2011]小回りの利く小さな開発チームの特性を活かした新しいゲーム開発――Zyngaのモバイル部門が学んだ教訓とは?

    画像集#003のサムネイル/[GDC 2011]小回りの利く小さな開発チームの特性を活かした新しいゲーム開発――Zyngaのモバイル部門が学んだ教訓とは?
     GDC 2011のモバイルゲーム・サミットにおいて,「ゲーム作りの手法を変える:AAAタイトルからモバイルゲーム開発への移行の中で学んだ教訓」(Changing the Way We Make Games: Lessons Learned in the Transitions from AAA to Mobile Development)というレクチャーを,Zynga with Friendsでプログラミングを担当するヴィージェイ・タッカー(Vijay Thakkar)氏が行った。なお,本レクチャーの題名の一部にあり,今回のGDCで登壇者達がよく口にしている“AAA”タイトルとは,開発費用が何十億円もかかるような大型プロジェクトでヒットすることが要求される,いわゆる“超大作”を指していると考えてもらえばいいだろう。

    画像集#004のサムネイル/[GDC 2011]小回りの利く小さな開発チームの特性を活かした新しいゲーム開発――Zyngaのモバイル部門が学んだ教訓とは?
    画像集#005のサムネイル/[GDC 2011]小回りの利く小さな開発チームの特性を活かした新しいゲーム開発――Zyngaのモバイル部門が学んだ教訓とは?
     Zynga with Friendsは,David / Paul Battner氏という兄弟によって2008年に設立された,モバイルゲームを専門に開発するメーカーNewToyが,2010年12月にZyngaによって買収されたもの。社名にある「with Friends」 が示すように,友人と一緒に楽しむようなiPhoneやAndroid向けゲームを中心としたライブラリを持っている。
     日本でZynga with Friendsというブランドを知っている人は少ないかもしれないが,現在1300万DAU(Daily Average Users/1日あたりの平均ユーザー数)を誇るクロスワードゲーム「Words with Friends」などのヒット作をアメリカで生み出しているスタジオだ。

     タッカー氏は,もともと「Age of Empires III」(邦題:マイクロソフト エイジ オブ エンパイア III)などで知られるEnsemble Studiosに在籍していた経歴を持ち,Zynga with Friendsに移るまでは,モバイルゲームの制作に関わったことはなかったという。
     今回のレクチャーは,元々は大きなプロジェクトを動かすゲーム会社に在籍していたタッカー氏が,AAAタイトルの開発者視点で見たモバイルゲームの開発現場という趣向で,小さな開発チームゆえの小回りの良さを強調する内容となっていた。

     ちなみに,GDC 2011で3月1日に行われたZyngaの講義を担当したマーク・スカッグス(Mark Skaggs)氏やタッカー氏のように,何十億円もかかる大型プロジェクトの開発に携わっていた熟練のデベロッパー達が,モバイルゲームやソーシャルゲームの現場へと流入する例は後を絶たない。

    画像集#002のサムネイル/[GDC 2011]小回りの利く小さな開発チームの特性を活かした新しいゲーム開発――Zyngaのモバイル部門が学んだ教訓とは?
     タッカー氏が言うには,Zynga with Friendsでは,数か月でゲームを作り,何度も失敗を重ねながら成功のための方程式を導き出していく,というスタイルを採っているという。
     タッカー氏は,「大型のゲームというのは,投資もそれに見合った巨大なものになっているため,迅速かつフレキシブルに開発をする能力を失っている。また,開発の遅延や作品の失敗というリスクに対する恐怖から,新たなアイデアを試す土壌が失われている」と話す。

     Zynga with Friendsでは,ゲーム開発に関わるすべてのメンバーが,自分のアイデアをほかのメンバーとシェアする権限を持っており,どんなバカなアイデアでもじっくり聞いて真剣に考えてみるという,社風のようなものができ上がっているとのこと。
     このあたりは,前日にスカッグス氏が話した「1人のデザイナーが主導する」手法とはまったく正反対の方向にある。だがタッカー氏は,「我々はZyngaから多くのことを学んでいるし,Zyngaもまた我々から学んでいるものはある」と,社風の違いはまったく気にしていないようだった。

    Zynga with Friendsのオフィスでは机が円形に並べられ,皆が外側に向いて座る形になる。これにより,キャスター付きのオフィスチェアーを転がして,役職の異なるメンバーが気軽に話しやすくなっているというわけだ
    画像集#006のサムネイル/[GDC 2011]小回りの利く小さな開発チームの特性を活かした新しいゲーム開発――Zyngaのモバイル部門が学んだ教訓とは?
     そんなZynga with Friendsの特徴は,円形に机が並べられたオフィススペースにも顕れている。
     面白いのは,通常は皆が顔を向き合わせる,つまり円形であれば中心を向くように机を配置する会社が多いものだが,Zynga with Friendsでは全員が外を向く形になっていることだ。
     全員が外を向くことで,メンバーがより集中してゲーム開発に取り組めるだけでなく,コミュニケーションが取りやすくなっているという。例えば,デザイナーとプログラマーが話しているところに,アーティストがキャスター付きの椅子を転がしてきて会話に参加する,といった感じだ。

    NewToy時代の「Zombie Infection」というゲームは,実はゾンビの登場は当初予定されていなかったという。開発途中で大きな仕様変更を決断しやすいのも,小回りの利く開発チームならではといえるだろう
    画像集#007のサムネイル/[GDC 2011]小回りの利く小さな開発チームの特性を活かした新しいゲーム開発――Zyngaのモバイル部門が学んだ教訓とは?
     本来なら個々の仕事だけに特化した開発者達が,一丸となって個々の問題に対処していく開発手法は,欧米では“スクラム”と呼ばれる,“アジャイル・ソフトウェア開発”の手法の1つである。
     通常アジャイルは,大型化して小回りの利かない大企業の開発チームの工程を迅速にさせるために行う手法なのだが,タッカー氏はモバイルゲームの開発現場でもアジャイルは有効なのだと何度も強調していた。
     アジャイルによって,開発者がダラダラと暇を持て余すような期間が少なくなり,8時間の充実した就業時間と,残り16時間の自由時間を確保しやすくなる。結果として,プロダクティビティもおのずと向上していくというわけである。
     大規模な開発チームにおけるダラダラした時間やクランチタイム(開発終了間際,家に帰れないような状態)の繰り返しに慣れていたというタッカー氏は,当初Zynga with Friendsの健全なスケジュールに戸惑ったらしいが,今では仕事と生活スタイルの双方で無駄がなくなったことに満足しているそうだ。

     ゲーム市場のあり方が急激に変化しているような現状において,「自分の失敗は成功への第一歩であると受け止め,自らも変化に対応しやすい心構えにしておく」ことが最も大切で実践的なテクニックだとタッカー氏は促す。
     またタッカー氏は,「これが現在における我々の開発スタイルですが,あと半年も経てば変化しなければならなくなるかもしれません。小回りを利かせて,開発環境の変化に対応できるよう,いつでも用意をしておいてください」と,会場に集まった開発者達に呼びかけていた。

    タッカー氏は,「パッケージゲームとモバイルゲームの売れ方の違いはグラフを見れば一目瞭然。モバイルゲームは,長い目で諦めずに育てていくサービスのようなものだ」と話す。「プロダクトではなくサービス」という言葉は,今回のGDCで良く耳にする言葉である
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