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[OGC 2009#05]1億5000万人の巨大プラットフォーム「Facebook」がとんでもないことになっている
赤羽氏の「Facebook,iPhone,Android等,拡大するゲーム・アプリ流通プラットフォームの最新状況と参入ノウハウ」と題したセッションでは,タイトルにもあるようにiPhoneやAndroidなどの携帯電話をテーマにした話も行われたのだが,その大半を費やされたのは「Facebook」に関する話だった。
いまや空前の超巨大ゲーム市場となったFacebook
そのSNSでゲーム配信が行われているのだと考えると分かりやすいだろうか。日本でいうと,mixiよりはアバター系のコミュニティでゲーム配信もしているハンゲームのノリに近いかもしれない。
とにかく,最大の特徴はその人数と口コミを中心とした展開の強さである。口コミの情報に対しては財布の紐が緩くなる人が多いというのはよくいわれることであるが,これだけのユーザー数を母体として,なおかつ躊躇なくお金を使ってくれる。そんな市場がFacebookにできあがっており,いまなおものすごい勢いで拡大しつつある。現在,公開されているゲーム/アプリ数は5万2000本以上,開発者数は60万人に達するという。
さて,ゲームとして見ると,全然面白くもなさそうなタイトルが,どうしてそんなに稼ぎを上げられるのか? 実は,ゲーム自体は主目的ではないのだという。Facebookの本体はあくまでもSNSであり,友達との話のネタになるものであれば,ゲーム内容は二の次。いかにコミュニケーションに役立つかが重要なのだ。
裏を返せば,低予算でもアイデア次第で濡れ手に粟という図式が見えてくるわけだ。まあ,似たような話は別のプラットフォームでも,これまで何度も繰り返されているのだが,今回はちょっと規模が違う。(比較的卑近な)iPhoneでの同様な話と比べても軽く桁が一つ違っている。
実際問題として,どうってことないようなゲームで大儲けしている人が続出しているわけだが,この巨大市場はまったくオープンかつ無償で開放されており,まさに空前絶後のチャンスが到来していると赤羽氏は語る。
Facebookによる収益モデルはゲームを作った側が勝手にやるという感じなのか,課金形態は千差万別。チップなどのゲーム内で使う通貨を買わせたり,バナー広告,アイテム課金,有料のプロ版の販売,あるいはそれらの組み合わせでやっているところが多いようだ。
すでに66万人と,Facebookには世界中のゲーム開発者が殺到しているわけだが,なぜか日本ではまったく知られていないといってよい状況だ。日本のゲーム開発会社,とくに中小の開発会社にとっては,アイデア一つで市場を席巻できる大チャンスであり,赤羽氏も声を大にして啓蒙に務めている。
さて,ではFacebookで世界に打って出るにはなにが必要か?
開発力や企画力も必要だろうが,重要なのはコミュニケーション力だと氏は語る。英語を中心とした市場なので,英語対応も必須だろう。
iPhoneで始まりつつあるソーシャルゲームとは?
Androidについては,40〜50種の端末が登場すると見られ,年内に900万台に達するとの見方もある。iPhoneを上回る市場になるのではという観測もあり,参入するなら,いますぐ準備を進めることが重要とのこと。
さて,iPhoneのゲームで氏が注目していたのが,ソーシャルゲームの流れだ。ソニックライターというアプリは,単体ではiPhoneにライターの火が燃える絵が出てくるだけの簡単なアプリなのだが,世界地図上で同じように火を点けている人の位置が確認できる。当然,火を点けている人が多いところは明るく表示されるわけだが,どの都市が最も明るく表示されるかなどを世界中で競い合うなど,大きな反響を呼んでいる。
ソニックライターを作ったSmuleのiPhone用アプリ第2弾となったオカリナは,オカリナを演奏する楽器だ。iPhoneのマイクに息を吹き込むと,音の強弱として認識され綺麗なオカリナの音が出てくる。楽器としては演奏の難しいものに属するのだろうが,これも世界的な規模で展開しており,世界地図上で現在オカリナを演奏している人の位置が表示される。そして,地球の裏側の見知らぬプレイヤーの演奏をLiveで聞けるのである。
そして氏が,史上初のリアルタイムソーシャルゲームと位置づけているのが,ライブポーカーというiPhone用のポーカーゲームである。基本無料で毎日1000枚のチップが支給され,チップを買い足すこともできる。見たところ普通のポーカーという気はするのだが,50万人のプレイヤーと対戦でき,FacebookやMySpaceなどともつなぎ込みがされている。
巨大コミュニティを背景とした新しい広告戦略
まず,ゲームではないものの,事例として挙げられたのは,最近話題になっていたバーガーキングのWHOPPER SACRIFICEの例だ。これはWHOPPERという主力商品のプロモーションの一環で行われたもので,「Facebookで友達を10人削除するとハンバーガー1個がもらえる」というキャンペーンだ。かなりの悪乗りぶりではあるが,さらに「この人はハンバーガーのために友達から捨てられました」といった一覧が表示されるという徹底ぶりだった。プライバシーの問題があるとされてすぐに中止されたのだが,実際に23万人以上の友達が削除されるという反響を見せており,プロモーション効果は絶大だったといわざるをえない。
単なるWeb上のプロモーションだが,ゲーム要素もあり,今後の広告のあり方を見るうえで重要である。赤羽氏は,こういったものをゲームでやるとさらに効果的ではないかと見ているようだ。氏に「これからのCMは,すべてゲームになるかもしれない」と言わしめるくらいだが,うまくやれば恐ろしいほどの効果が期待できる媒体になる可能性は否定できない。
日本のゲーム制作力については疑う人は少ないだろうが,Facebookで人気のゲームは,一見低品質のどうということはないゲームである。ゲームそのものよりも,コミュニケーションの道具としてのあり方が重要と,これまでのゲームの評価軸とは別次元の発想が必要なのだが,そこに乗り越えるべき心理的障壁があると赤羽氏は指摘している。またとない大儲けの機会は確かにそこにあるのだが,それをよしとできるか? ゲーム業界は大きなパラダイムシフトを求められているのかもしれない。
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