イベント
島津義弘のCVは武内駿輔さん。鹿児島県が作った「うたた往時のなつかしや」は,地域愛に溢れた完全無料の乙女ゲームだった[TGS2024]
本作は,鹿児島三大行事の1つである「妙円寺詣り」をはじめ,鹿児島地域(鹿児島市,日置市,いちき串木野市,三島村,十島村)の歴史や観光地などに興味を持ってもらい,妙円寺詣りの参加者や鹿児島地域への観光客を増やすことを目的として開発されたものだ。鹿児島地域振興局が携わっており,ダウンロードはもちろん,ガチャを含むアプリ内課金もない,完全無料のゲームとなっている。
今回,鹿児島地域振興局の中條ひな乃氏と,ゲーム開発会社アプリファクトリーはるniの室屋智亮氏に,ゲーム開発のきっかけや,本作の魅力をうかがってきたのでお届けしよう。
「うたた往時のなつかしや」公式X
「うたた往時のなつかしや」ダウンロードページ
「うたた往時のなつかしや」ダウンロードページ
鹿児島県の若手職員たちによる
地域振興プロジェクトとして
4Gamer:
「うたた往時のなつかしや」の開発経緯を教えてください。
中條ひな乃氏(以下,中條氏):
令和3年度に,鹿児島県の若手職員や鹿児島地域の市村の若手職員などで構成するワーキンググループが発足し,鹿児島地域の振興を目指して活動を始めました。そのなかで妙円寺詣り(毎年10月に開催)の振興プロジェクトとして,「どうやって地域を賑やかに盛り上げるか」という会議があり,ゲームを使って人を呼び込むのはどうかという提案が出ました。
室屋智亮氏(以下,室屋氏):
乙女ゲームという提案は,弊社から出させていただきました。「推し活」や「聖地巡礼」をテーマにしつつ,ほかの地方自治体が作るゲームとは違う,大きなフックを持ったものを作ることで,鹿児島に人を呼び込むきっかけを作れるのではないかと考えたんです。それが,乙女ゲームの提案につながりました。
中條氏:
いろいろな提案があるなかで,はるniさんが提案してくれた「10代から30代の女性をターゲットにした乙女ゲーム」に決まりました。女性はとくに好きなものに対する情熱が強いと思うので,聖地巡礼として鹿児島を訪れてくれるのではないかと考えたんです。それにはるniさん側の「鹿児島県を一緒に盛り上げていこう」という強い心意気を感じて,安心して任せられると判断し,契約に至りました。
4Gamer:
提案時点でキャラクタービジュアルなども決まっていたのでしょうか。
室屋氏:
そうですね。企画段階でラフやプロトタイプをある程度作成していたので,完成イメージがしやすい状態だったかと思います。
4Gamer:
もう形が見えていたんですね。
中條氏:
はい,キャラクターの設定やゲームシステムについても形になっていたので,だからこそこれは面白いんじゃないかと思いました。
4Gamer:
ではゲーム制作で意識されたことを教えていただけますか。
室屋氏:
やはり「島津義弘」をメインに立たせることと,「妙円寺詣り」にフィーチャーすることは決めていました。歴史的な背景を生かしつつも,そのイメージを壊さないように,それでいて女性に受け入れられるようにシナリオやキャラクター設定を工夫しています。それは弊社のシナリオライターが頑張ってくれました。
また,弊社は鹿児島のゲーム開発会社なのですが,ミッションとして鹿児島にゲーム業界を作ることを掲げているんです。今回の乙女ゲームを鹿児島県と一緒に制作することで,より業界を盛り上げていけるのではと期待しています。
4Gamer:
鹿児島県が作ったゲームとあって,イメージを崩さないことは大事そうですね。ゲームシステムはどのような感じでしょう。
室屋氏:
弊社は普段,ソーシャルゲームの開発をしているので,ガチャやゲーム内イベントなどのソーシャルゲームの要素も取り入れた乙女ゲームになっています。ただ,このゲームは完全無料の無課金ゲームです。行政が関わっているため収益を上げられないというのもありますが,一番の目的は地域に訪れてもらい,特産品を購入していただくことなんです。
4Gamer:
なるほど!
中條氏:
鹿児島県に訪れていただくための手段の1つ……ですね。運用や追加ストーリーの予算なども県が出しています。
4Gamer:
“鹿児島愛”を感じますね。
室屋氏:
このゲームをきっかけに鹿児島に興味を持ってもらえればと思います。とはいえ,このゲームを使ってどのように人を呼ぶのか……というのも考えなければいけません。そのため今回,東京ゲームショウにも出展しました。
4Gamer:
そういったきっかけだったんですね。
室屋氏:
とくに県外の人への認知が課題だったので,こうした大きなイベントでの広報が重要だったんです。チラシやノベルティを配布し,「鹿児島でもこんな面白いゲームが作れるんだ」と思ってもらえればいいなと思っています。実際,鹿児島出身の方や住んでいたという方など,鹿児島にゆかりのある方も訪れてくれました。そうでない方にも鹿児島に興味を持ってもらって,鹿児島にぜひ遊びに来ていただければうれしいです。
中條氏:
たくさんの方が来場してくれて,予想以上の反響がありました。実際にゲームを遊んでくださる方も多かったです。ノベルティやチラシも多くの方に受け取ってもらえたので,これをきっかけにダウンロードしてもらえればうれしいですね。
4Gamer:
私もブース内の試遊用アプリをプレイさせていただいたんですが,ゲーム内で挑戦できる鹿児島クイズが難しかったです(笑)。
室屋氏:
実際,めっちゃ難しいんですよ(笑)。私は32年,鹿児島に住んでいますが,それでも半分くらいしか分からなくて。
中條氏:
鹿児島の地理や歴史に相当詳しくないと難しいと思います。それには理由がありまして,私たちは鹿児島市,日置市,いちき串木野市,三島村,十島村を管轄地域とする鹿児島地域振興局なので,ゲーム内のクイズはその地域や人にからむ問題になっているからなんです。
4Gamer:
コアな問題も多いんですね!
中條氏:
そうなんです。クイズの問題は,はるniさんがメインで作ってくださるんですけど,県の職員や鹿児島地域の市村職員にも協力してもらって作成しています。そのため,ローカルな問題が多くなってしまうんです。
4Gamer:
クイズは今収録されているもの以外にも,どんどん増えていくんですよね。
室屋氏:
はい,クイズ以外にも定期的にアップデートしています。メインシナリオとは別に,特別なイベントシナリオも読めます。直近だと「六月灯」(鹿児島県鹿児島市で7月に開催された祭り)をフィーチャーしたイベントや,クイズの追加を追加しました。
9月20日にも「妙円寺詣り」にあわせたアップデートを行い,イベントシナリオやキャラクターの新衣装を追加しています。そのあたりのアップデートに関しては,弊社のノウハウを生かして,常に新しいコンテンツを楽しんでいただけるようにしています。
4Gamer:
無料ゲームとは思えない更新頻度ですね。
室屋氏:
そうなんですよ。かなり力を入れて作っています。
4Gamer:
鹿児島振興をコンセプトにしているので,アプリとリアルイベントと連動した企画もあるんですか。
中條氏:
10月26日と27日に,島津義弘の関ケ原の戦いでの苦闘をしのぶ「妙円寺詣り」という鹿児島三大行事の1つが開催されるので,それにあわせたイベントなども企画しています。実際にお祭りへ来ていただいた方が楽しめるような準備もたくさんしているので,ぜひ楽しみにしてほしいです。
ほかにはイベントではないですが,アプリから鹿児島県の特産品サイトに飛べるようになっているので,ゲーム内に出てくるさつま揚げや黒豚,鹿児島黒牛などの鹿児島の特産品が購入できるようになっています。そのあたりはリアルと現実をつなげている部分ですね。
4Gamer:
面白いですね。
室屋氏:
今回の東京ゲームショウでも,多くの方に鹿児島の魅力を知っていただけたと思います。このゲームを通じて鹿児島をもっと身近に感じてもらえればうれしいです。
4Gamer:
最後にあらためて本作と鹿児島県のアピールをお願いします。
中條氏:
このゲームは,鹿児島の魅力を楽しく学んでもらうために作りました。完全無料で遊べますし,スマホ1つで気軽に始められるので,ぜひプレイしてキャラクターを好きになって,鹿児島にも興味を持っていただければと思います。鹿児島に実際に足を運んで,現地の魅力を体感していただければとてもうれしいです。
室屋氏:
鹿児島県は魅力的な歴史や,偉人などがたくさんいて,観光資源にとても溢れています。おいしい食べ物だったり,泊まるところだったり,本当に見るところ,楽しいところが尽きない地域です。このゲームをきっかけに鹿児島県に足を運んでいただければ,このゲームを作った甲斐があると思います。本当に魅力的な歴史や食べ物,観光地がたくさんありますので,鹿児島に来て,ぜひその魅力を味わってください。
4Gamer:
ありがとうございました!
「うたた往時のなつかしや」公式X
「うたた往時のなつかしや」ダウンロードページ
「うたた往時のなつかしや」ダウンロードページ
4Gamer「東京ゲームショウ2024」記事一覧
(C)2024 Kagoshima Prefecture. All Rights Reserved.