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世論操作系報道ノベルゲーム「コメンテーター」プレイレポート。ニュース報道の裏側に迫る,インディーならでは意欲作[TGS2024]
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印刷2024/10/04 08:00

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世論操作系報道ノベルゲーム「コメンテーター」プレイレポート。ニュース報道の裏側に迫る,インディーならでは意欲作[TGS2024]

 ニュース番組のコメンテーターとなり,その言葉で世間を動かす。“世論操作系報道ノベルゲーム”を謳うPC向けタイトル「コメンテーター」が,東京ゲームショウ2024のインディーゲームコーナーに出展されていたので紹介しよう。辛口コメントですべてを斬るか,それともスポンサーに媚びるのか。すべてはプレイヤーの選択次第だ。

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信念に従うか,スポンサーに媚びるか。コメンテーターの心は揺れる


 Tebasaki Games(テバサキゲームズ)が開発中の「コメンテーター」は,Steamにて「近日登場」とアナウンスされている新作ノベルゲームだ。プレイヤーは大人気ニュース番組「NEWS SQUARE」のコメンテーターとなり,日々のニュースにコメントをつけていく。コメントは視聴者やスポンサーに反響を巻き起こし,やがてコメンテーターとしての自身の立場に影響を及ぼしていく。

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 コメンテーターの一日は,番組プロデューサーとの打ち合わせからスタートする。「ゴルフネタ」「俳優とモデルの結婚」「私立高校無償化」など,番組で取り上げられる話題が提示されるため,自分が取るスタンスを「強く支持」「支持」「不支持」「強く不支持」の中から選択していこう。
 同じ話題でも,自分がどのスタンスでコメントするかによって「視聴者注目度」「スポンサー満足度」が変わってくる。両者が共に高ければ,すなわち番組が盛り上がっていることは間違いない。期間内に視聴者注目度とスポンサー満足度を一定値以上にするのが,コメンテーターたるプレイヤーの目標である。

プロデューサーとの打ち合わせモード
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 しかし,本作においては複数の話題に対し,同じスタンスを取ることはできないようになっている。上記の例で言えば,ゴルフネタと私立高校無償化の2つに対し,共に「強く支持」はできないということだ。
 “強く支持したい話題だが,この枠はどうしても取り上げたい別の話題で埋まっている”なんてことも起こりえる。そのため本当に強く支持したい,あるいは強く不支持を表明したい話題は何かを考えなければならないが,打ち合わせにも時間制限があるので,熟考している時間はない。

 スタンスを決めるとニュースの放送がスタートするが,この段階に至ればプレイヤーが操作することはなにもない。日々のニュース番組でも聞かれるような話題に対し,コメンテーターが事前に選択したスタンスに応じたコメントを返してくのを眺めるのみだ。
 同じニュースでも,スタンス次第でコメントの内容は大きく変化する。例えば,「芸能人の結婚」の場合,強く支持なら「とても幸せなニュースですね! 二人の今後の人生を心から祝福します」とハッピーな取り上げ方になるし,強く不支持なら「芸能人の私生活に対して,過度な報道は必要なくないですか?」と,にべもない反応が返ってくる。当然,それを見た視聴者の反応も変わってくることになる。

いよいよ放送がスタートし,予め決めたスタンスに応じて自動で話し始めるコメンテーター。画像は「強く支持」したゴルファーの活躍を絶賛しているところだ
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番組が終わると,「視聴者注目度」と「スポンサー満足度」がそれぞれ集計される。一定期間内に,両方の値を目標値以上にしなくてはならない
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 「首相が外遊を発表」「カジノ関連で収賄の疑い」「オリムピックが開催予定だが,多額の費用に反発の声も上がる」など,ニュースの中にははっきりとスタンスを表明しづらいというか,扱いに困るものもある。そんな時は支持や不支持といった,中庸っぽいスタンスでお茶を濁すことも必要になるだろう。

 厄介なのが,たまに番組やスポンサーから「お願い」をされることだ。要するに「世論を操作したいので,自分達の都合が良くなるようなコメントをしてくれ」ということだが,あくまで命令ではなく「“ご配慮”をお願いします」「あくまで“公正に”扱ってほしいが,その意味は自分で汲み取ってくれ」といった表現なのがイヤらしい。

スポンサーから「“公正に”扱ってほしい」という“お願い”が届いた。公正の意味は察しろ,という辺りが日本らしい
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 実際,会場でプレイしたときは「電力不足の昨今だけに“電気自動車への補助金を廃止すべき”と議員が発言した」という話題に,スポンサーから“公正に〜”とお願いされてしまった。こうした話題は「スポンサー案件」とされ,意に沿うような発言をすればスポンサー満足度が上昇する。しかし,筆者は議員の言い分にも理があるように感じたので,一個人の立場からこれを強く支持するスタンスを取った。つまりスポンサーが誘導したい方向とは正反対のコメントをしたことになる。

しかし議員も電力不足を慮って反対しているわけで,そのスタンスは理解できる。というわけで「強く支持」するコメントをしてみると……
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 すると,この話題に対するスポンサー満足度はマイナスとなり,筆者は目標未達ということでコメンテーターをクビになってしまった。自分の意見は貫けたが,世間はそう甘くなかったということだろう。メールで送られてきた解雇通知の,やけにアッサリとした文面がまたリアルで,やるせない気分になったのだった。

結果,スポンサー満足度はマイナスに。以前は景気のいい言葉が並んでいたプロデューサーからのメールも,クビになると実に素っ気ない
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 会場でテバサキゲームズのスタッフに話を聞いてみたところ,報道を扱ったゲームはこれまでにも存在していたが,本作では現代日本的な雰囲気の中,さらに身近な話題を扱うことで,より深い感情移入を促したい狙いがあるという。

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 製品版ではプレイできる日数や出現する話題が増え,プレイヤーが世の中に与える影響も,さらに大きくなるとのこと。例えば事件で対立を煽りすぎると,自分の家族に脅迫メールが届くようなことも起こりえるそうだ。さらに新型肺炎の流行し,「政府が打ち出す複数の感染対策の中で,どれを支持するか」といった新しい指標も登場する。プレイヤーがどの感染対策を支持するかによって,世の中の動きも大きく変わっていくとのことである。

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 なお本作は現実の事件をモチーフに,政治的な側面にも迫っていくタイトルではあるものの,制作側としては当時なされた決断を揶揄したり,特定の主義主張に肩入れする意図はないという。曰く,「議論や話ができる環境が一番貴重」という考えのもと,制作しているとのことだった。

 テレビなどで目にする身近な話題が多いことや,プロデューサーの“大人の判断”に垣間見える狡猾さなどから,インディーゲームらしいテーマ性が感じられる「コメンテーター」。フリーゲーム投稿サイトのunityroomでは,ブラウザで遊べる試遊版も公開されているので,本稿で興味を持った人はプレイしてみてはいかがだろうか。

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unityroom「コメンテーター」試遊ページ

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