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1プレイ10分,会話なし,脱落なしの人狼ゲーム。「会話禁止のオンライン人狼: ジャックと探偵」PC版プレイレポート[TGS2024]
「ジャックと探偵」公式サイト
本作では,東京ゲームメイカーズのボードゲーム「JACK&DETECTIVES(ジャックと探偵)」をオンラインで楽しめる。PC(Steam)のほか,iOS版,Android版がリリースされており,異なる機種間でもオンラインプレイが可能だ。
村人たちの中に紛れた「人狼」を推理と会話で見つけ出す。それが「人狼ゲーム」だ。
本作では,悪名高き殺人鬼「切り裂きジャック」が探偵の中に紛れ込み,夜な夜な犯行を繰り返す。探偵たちは殺人鬼を捕らえなければならないが,ジャックは探偵と同じ姿をしているので見分けがつかない。つまり,探偵は同時に容疑者でもあるのだ。
人狼ゲームと同様,プレイヤーの1人がジャック(人狼)役,そのほかは探偵(村人)役に指名される。ジャック役は正体を特定されないように動いて犯行に及び,最終段階の「投票」で最多票にならなければ勝利となる(自分がジャックであると見破られなければいい)。一方,探偵役はジャック役を見つけ出し,投票で特定することが目的だ。
人狼ゲームでは会話が非常に重要だが,本作では会話(チャット)が不可能。皆がどう動くかに注目して,ジャックの正体を推理したうえで投票を行う。
「会話ができない人狼ゲーム」を実現するのが,ロンドンのマップを表すタイル,探偵(と紛れ込んだジャック)の位置を示すコマだ。プレイヤーは1ターンごとにタイル上の好きな位置に移動できる。
そしてジャックはターン終了時,自分が隣接していて探偵のいないタイルを選んで犯行に及ぶ(スキップ可能だが,2連続スキップはできない)。2回の犯行後,誰がジャックなのかの投票を行うことになる。
ジャックは下手な位置で犯行を行うと,探偵に自分の正体を暴くヒントを与えてしまうことになる。そのため,ほかの探偵が疑われる位置に移動してから犯行に及ぶことが重要だ。要するに,できるだけ多くの探偵に罪をなすりつけたいということだ。
探偵はジャックの思考を踏まえたうえで,2回の犯行現場と,ほかの探偵の動きによって推理を進めていく。
ここで面白いのが,会話禁止のルール,そして脱落が起こらないことだ。探偵たちは話し合えないので,情報を共有できない。そのため,投票時の思惑はバラバラだ。オンラインプレイで見知らぬ人と会話して,場をまとめるようなスキルがなくても気軽に楽しめる。
また,人狼ゲームでは毎晩投票が行われ,人狼と疑われたプレイヤーは処刑される(以降,ゲームに参加できなくなる)。しかし,本作ではプレイヤーの誰も殺されることなく犯行が行われるので,全員が最後までプレイできるのだ。
こうした工夫については,「JACK&DETECTIVES」の作者・ミヤザキユウ氏のnote「人狼苦手な人こそ面白い、『ジャックと探偵』の逆張りゲームデザイン 」(リンク)に詳しく書かれている。
ミヤザキユウ氏は人狼ゲームの楽しさを理解しているが,ゲーム会などでは自分から提案しないことが多いという。「自分は人狼ゲームのどこが辛いと感じるのか」を抽出し,「脱落する人が出ない」「経験がなくても(口が下手でも)対等に遊べる」ゲームとして「JACK&DETECTIVES」をデザインしている。「プレイヤーが脱落すること自体は必須ではないので,人の代わりにマップを脱落させればいい」ことから犯行のシステムを考案。口が達者でなくても遊べるようにするため,会話を禁止にして,「探偵たちは名誉欲に駆られており,自分が手柄を独占するため,他者に情報を渡さない」という理由を設定している。
AIとプレイできる「ソロモード」の存在は,デジタルゲームならではの強みと言えるだろう。人狼ゲームをプレイするには仲間を集める必要があるが,ソロモードならば気軽に練習できる。また,リプレイ機能で試合を振り返ったり,分析したりもできる。
なお,開発元であるCuriousparkの田村航弥氏もnoteにて背景を明かしており,こちらも興味深い(リンク)。
人狼ゲームに興味があれば,誰でも気軽に楽しめる「ジャックと探偵」。PC版は500円(税込),スマホ版は無料でプレイできるので,ぜひ試してみてほしい。