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[インタビュー]「Microsoft Flight Simulator 2024」はサードパーティやMOD開発者と共に巨大なエコシステムを構築。ヨーグ・ニューマン氏に話を聞いた
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印刷2024/09/19 22:00

インタビュー

[インタビュー]「Microsoft Flight Simulator 2024」はサードパーティやMOD開発者と共に巨大なエコシステムを構築。ヨーグ・ニューマン氏に話を聞いた

 2024年9月12日(米国時間),アメリカのアリゾナ州ツサヤンにあるSquire Resort at the Grand Canyon, BW Signature Collectionにて,Xbox Game Studiosがメディアイベントを開催し,フライトシムの最新作となる「Microsoft Flight Simulator 2024」PC / Xbox Series X|S)の詳細をアナウンスした。本誌もイベントに招待されてプレゼンテーションやプレイアブルデモをチェックしてきたので,その内容をお届けしよう。

画像集 No.007のサムネイル画像 / [インタビュー]「Microsoft Flight Simulator 2024」はサードパーティやMOD開発者と共に巨大なエコシステムを構築。ヨーグ・ニューマン氏に話を聞いた

 2020年9月にリリースされた「Microsoft Flight Simulator」は,BingマップでMicrosoftが収集している8ペタバイトにも及ぶビッグデータをバックボーンにし,クラウドサーバー,AI,衛星データ,フォトグラメトリー,リアルタイムでの気象情報との連動などを行うことで地球の“デジタルツイン”を作り出すという,次世代ゲームの決定版のような技術力を凝縮させた本格派フライトシミュレーターだ。
 1作目から42年が経過するというMicrosoftにとっては「Windows」や「Office」などより長い歴史を誇り,通算で4500万人,2020年版だけでも1500万人ものプレイヤーがいることがアナウンスされた。

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 2023年6月のXbox Games Showcaseで正式にアナウンスされた「Microsoft Flight Simulator 2024」は,その続編として「キャリアモード」を実装する。たんにA地点からB地点へと飛行するだけでなく,人員&物資運搬,空中消火,捜査&救命,山岳救助支援,農薬散布,航空宣伝,民間航空業務,建設補助活動,大型物資運搬,気象調査,低空飛行活動,VIPチャーター機,スカイダイビングや気球操作のような観光業務といった様々なミッションを,自分のペースでクリアしながら,パイロットとしてのキャリアを積みあげていく。
 そうした,「Microsoft Flight Simulator 2024」の新しいテクノロジーやゲームプレイの側面については,別記事にまとめているので,ぜひご一読いただきたい。

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 今回のメディア向けイベントにおいては,エグゼクティブプロデューサーであるXbox Game Studiosのヨーグ・ニューマン(Jorg Newmann)が,1〜2か月に一回のペースで続けられる開発者のストリーミングや,不定期のファンミーティングなどを頻繁に行うことで,強固なコミュニティ作りを行ってきたことを強調した。
 これまでに得てきたフィードバックである,ゲームのスタビリティやクオリティのさらなる向上,シミュレーション性の追求,フライトセッションをマンネリにさせないための目標や目的の追加,初心者向けのラーニングカーブの緩みやチュートリアルの充実,そして地上のビジュアルクオリティの向上を目指した結果が,「Microsoft Flight Simulator 2024」に昇華したものだと話した。
 それでは,もはや本誌では恒例とも言えるニューマン氏とのインタビューを以下に紹介しよう。

Xbox Game StudiosでFlight Simulator部門を率いる,お馴染みのヨーグ・ニューマン氏。「来年は東京ゲームショウに行く」と話していたのは,何らかのヒントになっていたのだろうか
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開発者インタビュー 〜 さらに精密になった地上は800種の動物たちで溢れる

 
4Gamer:
 「Microsoft Flight Simulator」(2020年版)では無料のアップデートが何度も繰り返されてきましたが,なぜ「Microsoft Flight Simulator 2024」はスタンドアローンになるのでしょうか?

ヨーグ・ニューマン氏:
 これまでの4年間,49か月で50種の無料ワールドアップデート,シティアップデート,そしてシム・アップデートを公開し,過去の希少な航空機をフィーチャーするローカル・レジェンドやフェイマス・フライヤーは33種をリリースしてきました。
 2021年にはXbox Series X|S,2022年にはXbox Cloud Gamingに対応するとともに「Microsoft Flight Simulator: 40th Anniversary Edition」をリリースしたことで,現在のユーザー総数は1500万人,フライトセッションは10億回に達しています。
 また,クリエイターコミュニティも盛り上がっており,すでにサードパーティによるDLCコンテンツも,我々の当初の予想を超える4200種に及んでいます。

 ただ,現行のアーキテクチャではコンテンツが1万種になると問題が生じることが予想されており,例えばニューヨークからロンドンに飛ぶだけで何百ギガものデータをインストールしなくてはならないようなことも増えてきています。新しいシステムで最大限にストリーミング化することで,スムーズで負担のないプレイを楽しめるようアーキテクチャ部分に大きな手を加える必要があったのです。

4Gamer:
 2020年版に新しいテクノロジーやフィーチャーはアップデートされないのでしょうか?

ニューマン氏:
 それはもちろん,できる部分はできる限り行いますよ。お話ししたような技術的な問題はありますが,コンテンツについてはプレイヤーがいる限り2020年版もこれまでと同等のサポートを続けます。2024年版のリリース以降にセール対象になることが増えれば,さらにプレイヤーが多くなるかもしれません。
 実際,2012年にリリースされた「マイクロソフト フライト シミュレータ X」を今でも購入してプレイしてくれている人もいて,この間チェックすると300人ほどがプレイしていました。

 2024年版に飽きたプレイヤーが2020年版を購入することだって少なくないでしょうから,楽しんでくれている人がいる以上はサポートしていこうと思います。今のところ,2020年版のロードマップは2026年までありますからね。ワールドアップデートだけなら38くらいまでだったかな(笑)。

4Gamer:
 「Microsoft Flight Simulator 2024」は,やはり地表の精密化が大きなポイントですね。

ニューマン氏:
 ええ,現行のゲームエンジンではできない部分ですね。市街地は精密なデータが整っているのですが,郊外の森林や岩,草原などはドイツのVexcel Imagine社による航空写真の提供を受けて,15cm単位で精密データ化を行っています。こうした地域は北米やヨーロッパ,オーストラリアやニュージーランド,そして東日本にあります。
 また,Maxter社との提携による衛生画像データは2mから50cmにまで精密化されています。これによって必要になるのが地面の草や樹木の自動生成機能ですが,これも前作と比べると格段に向上して細かく表現されているのにお気づきになるでしょう。

2020年度版(左)と2024年度版の富士山の風景の比較
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4Gamer:
 動物も増えてるそうですね。

ニューマン氏:
 ええ,それも精密化の一環ですが,元々私は「Zoo Tycoon」シリーズのプロデューサーも務めていました。「Microsoft Flight Simulator 2024」ではさらに動物の数を増やしたかったので,開発元の幹部で私と付き合いの長いFrontier Developmentsのジョニー・ワッツ(Johnny Watts)さんに連絡してアセットの提供をお願いしました。
 「(競合になる)動物園シムを作るんじゃないよね?」って何度も訝しがられましたが,動物のモデルを1つ1つ作るのは大変ですからね。彼らのおかげで前作の200種から800種に増えたことは,ゲーマーの皆さんにも喜んでもらえるだろうと思います。

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4Gamer:
 よりリアルな空港を目指す中で,各国の航空会社からの協賛を仰いだとプレゼンテーションでは話していましたが,日本の航空会社は含まれていますか?

ニューマン氏:
 おおよそ,世界の航空会社の25%が賛同してくれました。ほとんどの企業が交渉に入ることもなくノーでしたし,日本の企業からも良い返事はもらえませんでした。でも,これは彼らにとって前例のないリクエストなので仕方のないことかもしれません。
 賛同してくれた25%の企業は,たいていは連絡を取った幹部や広報の人が,フライトシムのファンだったというような場合が多いですね。交渉がすぐにまとまったのはアラスカ航空で,幹部の人が熱烈なプレイヤーだったと聞いています。また,面白いところでは1991年に廃業したパンナム(パンアメリカン)航空もローンチリストに入っています。

4Gamer:
 今回のイベントには,Working Title SimulationsやGot Friendsといったサードパーティの開発チームも参加していましたね。

ニューマン氏:
 はい。Working Title Simulationsは,自分たちでGarminからライセンス供与を受けて,「G1000NXi」「G3X Touch」,そして「G3000」といったセスナなどに取り付けられる“フライト・デッキ”や“フライト・ディレクター”と呼ばれるアビオニクス機器のDLCを開発しているメーカーです。
 元々はアマチュアだったのが我々の支援を受けて開発会社となり,今では26人のメンバーが「Collins Proline 21」「Honeywell Primus Epic 2」,さらには「Boeing 737 Max 8」のアビオニクスを専門に手掛けています。

 God Friendsは5人ほどのメンバーで,DoubleEnderのようなセスナ機や,ワイルドキャット(F4F-4)など小型の航空機に特化したペイウェアを開発してきたグループです。こちらも我々のパートナーとして「Microsoft Flight Simulator 2024」でも協力してもらっています。

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Working Title Simulationsの共同創業者でもあるChristopher Burnett氏(左)と,Got Friendsの設立者でプロジェクトリードのBrandon Yaeger氏(右)。本業として「Microsoft Flight Simulator 2024」のコンテンツ開発に専念できることに誇りを持っているようだ
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4Gamer:
 まるで「Roblox」のように1つの経済的なエコシステムを作っているみたいですね。

ニューマン氏:
 そうとも言えますね。1500万人というユーザーが,それぞれのバラエティ豊かな目的を持って「Microsoft Flight Simulator」をプレイしてくださっているわけです。
 彼らの情熱により,アドオンを作ってくれるMOD開発者さんが何千人と存在する大きなコミュニティができあがっています。Xbox Game StudiosのFlight Simulator部門とAsobo Studioを合わせて300人ほどになりますが,Working Title SimulationsのようなMOD開発チーム25社と提携することで,我々にない部分を補佐してもらったり,専門性の高い能力を持つ彼らをサポートしたりと共存できる体制にしているのです。

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4Gamer:
 以前,希少な航空機をゲーム内で保存する“デジタル・プリザベーション”というお話をされていましたね。

ニューマン氏:
 今でも我々の使命のようなものであると思っています。数週間前には,ローカル・レジェンドとして「Focke-Wulf Fw 200 Condor」をリリースしました。
 これは,第二次世界大戦開始の直前に製造が始まった,初の大西洋間飛行を可能にした民間旅客機だったのですが,戦争が始まったことで大量生産されることはなく,多くは軍事転用されたために戦後は残っていません。1943年にノルウェーのフィヨルドで墜落した機体が近年になって発見され,22年かけて復元されたという幻の一機なのです。
 こうした試みはゲームとしてだけでなく,文化的・歴史的な価値も非常に高いと思っていますし,今後も機会があればできるだけ多くの名機でフライトを楽しめるよう情報収集や復元サポートを行っていこうと思います。

4Gamer:
 ありがとうございました。これからの発展が楽しみですね。

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 「Microsoft Flight Simulator 2024」のローンチは11月19日を予定している。前作からアップグレードされた航空機40種,新規航空機30種,つまり合計70機のラインアップとなるスタンダード版をはじめ,80機収録のデラックス版,95機収録のプレミアムデラックス版,そして125機収録のアビエーター版がPCおよびXbox Series X|S向けにリリースされる。
 別記事でも紹介しているように最新の物理エンジンやクラウドストリーミングに対応したアーキテクチャに加え,「キャリアモード」や「チャレンジ」,「フォトグラファーモード」など,様々な角度からのプレイを楽しめるのは間違いなさそうだ。

「Microsoft Flight Simulator 2024」公式サイト

  • 関連タイトル:

    Microsoft Flight Simulator 2024

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    Microsoft Flight Simulator 2024

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