プレイレポート
三島平八が帰ってきた「鉄拳8」の最新バージョンを先行プレイ。新たなストーリーの追加など,シリーズ30周年を記念した充実の内容に
本稿ではアップデートに先がけて行われた,メディア向け試遊会で確認できた内容と合同インタビューの模様をお届けする。
三島平八や新たなストーリーモードなどが追加される大型アップデート
今回のアップデートで追加される主なトピックは「三島平八の参戦」「新ストーリーの追加」「新ステージの追加」「コラボアイテムの追加」の4つだ。
●新プレイアブルキャラクター,三島平八の参戦(ダウンロードコンテンツ,アーリーアクセス:10月1日,一般アクセス:10月4日)
前作「鉄拳7」で今度こそ絶命したと思われた,三島平八が早くも復活。「鉄拳8」の平八は死の淵から蘇る過程で,“鉄拳僧”を名乗る集団と遭遇し,彼らが住むGENMAJI TEMPLEで修行を行っている。
その影響で平八は,新たに「風神呼法」「雷神呼法」というふたつの構えと「武の境地」を習得している。従来の主要技,風神ステップからの攻めといった強みは残ったまま,新たな技やシステムにより,新しい平八となって蘇っている。
風神呼法,雷神呼法はいずれも入力すると独特の構えを取り,その後にさまざまな派生技を繰り出せる。どちらの構えにも発生の早い上段技,中段技,下段技,投げ技といった派生技が用意されているので,相手のガードを揺さぶれる。
試遊時間の都合上,構えからの派生技一つひとつの細かい性能までは把握できなかった。触った印象としては,雷神呼法は派生技の火力が高く,風神呼法はヒット後の攻め継続に長けた派生技や相手の反撃を封じる技(パワークラッシュ)といった,小回りの利く技が多かったように感じた。
そして,武の境地は1試合に1回だけ使える,平八独自のパワーアップシステムだ。ヒート状態に移行する技(ヒートバースト,ヒート発動技)を当てると体力ゲージ下のアイコンがひとつずつ溜まっていき,みっつ溜まると発動可能になる。効果中は多くの技が「究極」状態となり,ダメージの増加やヒットorガード後の硬直軽減など,さまざまな恩恵が得られる。
また,武の境地の派手さに隠れがちだが,平八はヒート時のパワーアップ効果もかなり強烈だ。
三島一八やデビル仁と同じく風神拳が必ず最速風神拳で発動するようになるほか,通常時は出せない稲妻のエフェクトを纏った技が解禁される。さらに風神呼法の構えから相手の上中段攻撃を返せるといった強化も施される。
武の境地の発動条件を満たすためにも,ほかのキャラクター以上に積極的にヒート状態を活用していくのがよさそうだ。
●新ステージ,GENMAJI TEMPLEの追加(ダウンロードコンテンツ)
三島平八の参戦,ストーリーモードの追加(後述)にあわせて,新ステージ,GENMAJI TEMPLEが実装される。
GENMAJI TEMPLEは前作「鉄拳7」で死亡したかに思われた平八の復活に大きく関わっている山奥の秘境で,そこでは“鉄拳僧”なる修行僧たちが日々鍛錬を重ねている……というバックボーンがあるステージだ。
迫力満点の仏像,背景で動き回る鉄拳僧,昼と夜の2パターンから選択可能など,凝った演出が見られるGENMAJI TEMPLEだが,広さは24m×24mとなっており,ウォールブレイク,バルコニーブレイクといった特殊なギミックがない,かなりオーソドックスな仕様となっている。
●新ストーリー,Unforgotten Echoesの追加 (無料アップデート)
「鉄拳8」本体に収録されているストーリーモード,The Dark Awakensを補完する追加エピソードだ。風間 仁やラースたちが三島一八率いるG社と熾烈な戦いを繰り広げている裏で,何が起こっていたのかが描かれる。
Unforgotten Echoesではおもにエディ,リディア,平八といった,発売後に追加されたキャラクターを操作し,一八側についたプレイアブルキャラクター,G社の兵士,Unforgotten Echoes用に作られた謎多き敵たちと戦っていく。
なお,Unforgotten EchoesはVer.1.08へのバージョンアップが完了した時点で自動で追加される。無料でエディ,リディア,平八が使えるゲームモードとしても楽しめるので,ダウンロードコンテンツをまだ購入していないという人は,追加キャラクター3体の性能をチェックするために触ってみるのもいいだろう。
●NIKE,GENTLE MONSTERとのゲーム内コラボ(無料アップデート)
現実世界で発売される「鉄拳8」とのコラボアイテムが,ゲーム内にも登場する。NIKEからは仁と一八からインスパイアを受けたコラボスニーカー,GENTLE MONSTERからは一八をイメージしたコラボサングラスがカスタマイズアイテムとして実装され,期間限定で入手できる。
“今までで最大級バージョンアップ”という言葉に相応しく,今回のアップデートは,従来どおりの有料ダウンロードコンテンツでのキャラクター追加に加えて,無料アップデートも充実している。
このほかにも,メインメニューの表示キャラクターを自由に変更できる新機能も実装されているのでアップデート後にお気に入りのキャラクターを設定してみよう。
新たな構えを習得した新しい平八を表現。ゲームディレクター&マーケティングプロデューサー合同インタビュー
――追加ストーリーUnforgotten Echoesが本編(The Dark Awakens)の続きではなく,間を埋めるような話になった理由を教えてください。
池田幸平氏(以下,池田氏):
DLCで追加されたエディ,リディア,平八がThe Dark Awakens中に何をしていたのかを描くことは,追加のストーリーを作るにあたってかなり初期段階で決まりました。とくに平八がどうやって復活したのかは,ていねいに描こうと。
安田イースポーツ氏(以下,安田氏):
エディ,リディア,平八を主軸にしたのは,マーケティング的な意味合いもあります。この3キャラはDLCを購入しないとプレイできないので,まだDLCを買っていないユーザーに対して,追加キャラクターを触ってもらえる場を作りたかったんです。
――The Dark Awakensでは1対多数の変則的なバトルもありましたが,Unforgotten Echoesにはそういった仕掛けはありますか。
池田氏:
今回はDLCキャラクターを触ってほしいという狙いもあるので,1対1の戦いがメインですね。鉄拳僧や鉄拳僧が呼び出した霊体など,対戦相手が変わった存在なことはありますが,戦いの内容自体は奇をてらわないようにしました。
――今後追加されるであろうDLCキャラクターにも,今回のようなストーリーが用意されるのでしょうか。
池田氏:
どうでしょうね……。今回はシリーズ30周年というタイミングで平八を復活させるということで,ストーリーの追加が決まった特別なケースなので。
ちなみにシーズン1のDLCキャラクターである,エディ,リディア,平八の3人は,追加ストーリーや「鉄拳8」からの新キャラクターである麗奈を描くうえで必要なキャラクターという観点から実装を決めた側面があります。
ただ,今後もそこに引っ張られすぎてしまうと,ストーリーに関係ないキャラクターだったり,新キャラクターだったりが出しにくくなってしまいますので,それはちょっと避けたいなと思っています。
安田氏:
正直なところ,予算の問題もあります。今回はシリーズ30周年の節目というタイミングだったので実現できましたが,無料アップデートでここまで大型の追加ストーリーを実装するというのは,なかなか簡単ではないと思います。
池田氏:
やりたい思いはものすごくあるんですけどね……。
安田氏:
今回の追加ストーリーもかなりのボリュームになってますが,私の方から「ここまでやってくれ」とは言ってませんからね。本編を作ってる時から思ってましたが,開発チームはアクセルを全力で踏み過ぎるんですよ(笑)。そのぶんユーザーの皆さんには楽しんでもらえると思っていますが。
池田氏:
気づいたら「やりすぎですよ」って言われてましたね(笑)。メインストーリーがおかげさまで好評だったので,その反応を見て追加ストーリーも,無料とはいえしっかり楽しんでもらえるものを提供したいと思ってやってきました。
――Unforgotten Echoesでは平八の姿には驚かされました。髪を下ろしていて瞳がキレイで邪気が消えたような姿になっていました。対戦で使える平八はおなじみの顔つきでしたが,キレイな平八を対戦で使えるような案はなかったのでしょうか。
池田氏:
やはり平八はシリーズを通じて暴君であり,邪悪なことをやってきたキャラクターなので,皆さんの中にある悪役というイメージを大事にしました。一方ストーリーでは,皆さんが見たことのない平八を出すことで,「なぜ平八はこんな姿になったんだろう」とシナリオに興味を持ってもらいたかった面があります。
キレイな平八がいつもの平八に戻っていく過程は,ストーリーを進めていけばわかるようになっているので,プレイして楽しんでいただければと思います。
――今回のストーリーに大きく関わってくる,鉄拳僧は三島家でどのような立ち位置にいる存在なのでしょう。
池田氏:
鉄拳僧は数百年前に悪鬼退治で知られた“三島流拳術”の継承者争いに敗れ,仏門に入った一族になります。彼らの悲願は失伝した最終奥義の復活を成し遂げ,三島流を正しき道に戻すことで,現在は秘境で武を追究し続けているという立ち位置になります。
――平八の参戦は,どの段階で決まりましたか。ソフトがリリースされる前から,シーズン1で追加するつもりだったのでしょうか。
池田氏:
そういうわけではないですね。「鉄拳7」で一八と平八の親子喧嘩の決着をしっかり見せましたし,そこから復活させようと決めるまでにはいろんな議論もしましたし,検討を重ねました。
このタイミングで平八を出そうと決めたのは,ストーリーモードの追加とあわせてしっかり復活の過程を描けるなと思ったのと,ユーザーからの要望が多かったからです。「鉄拳」の30周年に平八がいないとちょっと寂しいと感じることもありましたし。
――「鉄拳8」の平八をデザインするにあたって,力を入れたポイントはありますか。
池田氏:
大きなコンセプトとして掲げたのは,“ひと目で鉄拳シリーズの平八だとわかるデザインにする”という点です。そのうえで胴着の中にGENMAJI TEMPLEや鉄拳僧のマークを入れる,おなじみの黒い胴着を肩出しのデザインにする,背中の虎に仏具を咥えさせるといった「鉄拳8」らしさを出しています。
あと,今回の平八にはダボっとしたパンツをはかせていますが,これはデザインいただいたヒロアキさんのこだわりを反映しています。おかげでどっしりした平八の力強さがシルエットからも伝わるデザインになったと思います。
――キャラクター性能も今回ガラッと変わった印象があります。構えや固有システムといった新要素を追加した理由を聞かせてください。
池田氏:
風神呼法,雷神呼法というふたつの構えを追加したのは,新しい平八を表現したいという意図があります。昔からの平八使いであれば構えを使わなくても戦えますし,構えを使えば攻めの幅やコンボのバリエーションが広がるので,楽しく遊べると思います。
一方で新たに平八に触れる人や風神ステップができない人にとっては,2つの構えは攻めの起点や流れを作る技として重宝するはずです。麗奈の旋体に近い感覚ですね。
初心者,中〜上級者,どちらにとっても能動的に三島キャラを動かせる要素になったので,いいバランスに落ち着いてくれた手ごたえはあります。
安田氏:
知名度が高いキャラクターなので,ハードルをあまり上げたくなかったという思いもあります。ただ,やりこむ人にとっては,技術介入できるポイントがあったほうがいいだろうということで今の形になりました。DLCキャラクターはそこのバランス取りがいつも難しいですね。
――攻めの幅が広がることで競技シーンでの活躍も期待できそうですね。
池田氏:
「鉄拳7」の時はジャブと左アッパー,ホーミングアタックで戦っていくという,地味な立ち回りになりがちだったので,そこは改善したいと思っていました。全技を見直したうえで,構えや武の境地といった新要素を入れたことで,非常に激しく,力強く戦えるようになっているので,トーナメントシーンでの活躍も見てみたいですね。
安田氏:
一八使いと平八使いがどこかの大会のグランドファイナルで戦う姿が見られたら,開発的にはうれしいです。
――細かい話になりますが,無双連拳が入っていることにすごくテンションが上がりました。昔から平八好きな人は「復活してほしい」と願っていた技だと思います。
池田氏:
まさに昔からの平八使いを喜ばせたかったから実装した形になります。「鉄拳王の平八が帰ってきた!」というキャッチコピーを入れた手前,往年のファンの人たちが喜ぶ要素をなるべく入れるようにしました。
――武の境地中にしか出せないとはいえ,発生13フレームの浮かせ技っていう部分を変えなかったのがすごいと思いました。
池田氏:
いまの時代に無双連拳が打ち放題だと,バランスブレイカーになってしまう可能性が高いですが,試合の中盤から後半に入らないと使えない武の境地限定の技であれば,対戦しているプレイヤーはもちろん,見るほうとしても盛り上がるポイントになるかなと思っています。
そういった点に気づいてもらえると,我々としては実装した甲斐があったなあと思います。細かいところまで作りこんでいますので,ぜひ見てほしいですね。
――平八の追加と合わせてGENMAJI TEMPLEステージも追加されます。このステージは背景にいる鉄拳僧の動きなど,演出はかなり凝っていますが,ウォールブレイクのような対戦に影響を与えるギミックは存在しないのでしょうか。
池田氏:
そうですね。見た目のナラティブ性とBGMで盛り上がる作りにはなっていますが,わりと戦いやすいステージになっています。おっしゃるとおり後ろにいる鉄拳僧が修行している姿は見てほしいですね。すごくコミカルな動きしています。
――雷神拳のモーションで岩から岩へ飛び移ってる人がいますよね。
池田氏:
なぜか風神ステップやステステを火渡りで練習してたりします。ただ,鉄拳僧の動きはわざとあまりうまくないモーションにしています(笑)。
――メインメニューに表示されるキャラクターを変更できるようになったのも,大きな追加要素だと思います。
池田氏:
もともと発売初期に「一八の上半身ばっかり見るのは嫌だ」という要望があったんです。最初は何でこんなに要望があるんだろうと思っていたんですが,DLCでエディやリディアが表示されるようになって,みなさんの気持ちがわかったんです。
対戦で負けたあとにメインメニュー画面にいくと,エディだと睨まれてるようでテンションが下がるんですが,リディアだったらもうちょっとがんばってみようかなっていう気分になる。メインメニューって大事な場所なんだなと気づかされました。
安田氏:
実際に作り始めたのはエディが追加されたあたりで,平八実装までには間に合わせようということで,このタイミングでの実装になりました。
池田氏:
ちなみにメインメニューは,ただキャラクターを映すんじゃなくて,アートディレクターがいちからライティングして時間をかけて作っています。各キャラクターのプリセット衣装,4パターンぶん全部を表示できるようにしていますし,35キャラクターの個性が出るような演出も入っています。
たとえばファランだと基本的には目を合わせてくれないんですが,何秒かメインメニューで放置しているとまばたきしてこちらをチラッと見ます。
安田氏:
作業量としてはかなり膨大なんですよね。
池田氏:
ライティングもキャラクターごとに違うので。麗奈だったら,二面性やミステリアスな部分を感じさせるライティングや表情をつけないとダメなんですよ。
アートディレクターからも「ここはこだわらせてほしい」と言われましたし,いろいろな人の想いが入ったぶん,お待たせすることにはなりました。キャラクターの魅力が一番出てるんじゃないかというぐらい作りこんでいるので,ぜひいろいろなキャラを見てほしいですね。
安田氏:
ダメもとで,「カスタマイズした状態のキャラはアップにできないのか」と聞いてみたんですが,さすがに難しいと言われました。
池田氏:
いつかはやってみたいですが,いったんは好きなキャラのデフォルトコスチュームを眺めてもらえればと思います。
――最後に,実現可能かは置いておいて,こういうことをやってみたいという企画はありますか。
池田氏:
それでいうと自分の場合,今回のNIKEコラボで夢がひとつ実現しましたね。私自身がスニーカーとNIKEが好きなので,仁モデルと一八モデルが発売されるっていうのは,お話が来た時にテンションが上がりました。
安田氏:
実現できるかどうかはともかく,「鉄拳8」の内部で,初代「鉄拳」から「鉄拳7」まで,全部遊べたらいいなあとは思いますね。言い出しておいて,「鉄拳7」はどうやって「鉄拳8」の内部で動かせるのか,見当もつきませんけど(笑)。
池田氏:
原田も言ってましたが,鉄拳ファイトラウンジで他社の格闘ゲームをふくめてゲームセンターみたいに遊べるようになったらいいですよね。そういった格闘ゲームのコミュニティが活性化するようなコラボレージョンはいつかやってみたいですね。
「鉄拳8」公式サイト
キーワード
TEKKEN™8 & (C)Bandai Namco Entertainment Inc.
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