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「ドルフロ2」羽中氏インタビュー。道具的存在でしかなかった戦術人形たちが,身分を変え,生まれ変わったことの表現[TGS2024]
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印刷2024/09/28 20:41

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「ドルフロ2」羽中氏インタビュー。道具的存在でしかなかった戦術人形たちが,身分を変え,生まれ変わったことの表現[TGS2024]

 東京ゲームショウ2024で,新作ゲーム「ドールズフロントライン2:エクシリウム」PC / iOS / Android,以下,ドルフロ2)のインタビューを行った。

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 お相手は,本作の開発を手がけている中国のゲームメーカー,上海散爆(サンボーン)の代表取締役社長 兼「少女前戦」(=ドールズフロントライン)シリーズの総合プロデューサーでおなじみ,羽中(ウチュウ)氏だ。

※日本パブリッシングは,サンボーンジャパンとHaoPlayが担当

 ドルフロ2は中国で2023年12月21日にリリースされ,現在サービス開始から9か月目となる。今回は開発時の苦労や中国で配信した後の反響,さらに前作「ドールズフロントライン」(iOS / Android)との今後の二人三脚についてなど,気になったことを尋ねてきた。

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 東京ゲームショウ2024で,サンボーンジャパンの新作ゲーム「ドールズフロントライン2:エクシリウム」プレイアブルを体験した。前作よりも荒廃が加速した未来だけど,戦術人形たちのイキイキ感はとっても増している。

[2024/09/26 15:45]


世界観とともに,見せ方を変える挑戦


4Gamer:
 本日はお時間をいただき,ありがとうございます。
 まずはあらためて,本作のコンセプトを教えてください。

羽中氏:
 ドルフロ2は前作ドルフロと違い,3Dグラフィックスが主体のゲームです。今回はあらゆる場面で3Dモデルを用いており,ストーリーでもバトルでも,これまでできなかった表現が可能になっています。
 今でも3Dキャラクターだからこその表現力を磨き,シリーズの世界観をより深く体験してもらえるよう,努力している最中です。

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4Gamer:
 前作では「戦術人形の名前はモチーフとなった銃器の名称」でしたが,本作では「人らしい愛称の名付け」に変更されています。
 この命名規則は,どのような判断をもって変えたのでしょう。

羽中氏:
 ドルフロ2では戦術指揮官の身分が変わったことに加えて,戦術人形たちとの関わり方にも大きな変化があります。人形たちの姿もより人間らしい一面を見せたかったので,前作のように道具の名で呼ぶのはうまくマッチしないと考え,思いきって変更しました。
 彼女たちが人間のような名を持つことで,プレイヤーの皆さんにもより親しみを持ってもらえるかと思いますので,前作とはまた違う雰囲気を楽しんでいただきたいです。

4Gamer:
 逆に,ドルフロで戦術人形に銃器の名称を付けた理由を今になって振り返ると,当時はどのような心境でしたか。

羽中氏:
 当時は,ドルフロの世界観を「軍事と戦争」に寄せたいと考えていて,そのための手法として,戦術人形たちが軍事的な存在であるという印象をより強めるべく,銃器の名を与えることにしました。
 これもまた“そういう道具的存在でしかなかった彼女たちが,身分も変わって生まれ変わった”ことの温度差につながります。

4Gamer:
 見せ方をガラッと変えることも挑戦だったんですね。

羽中氏:
 そのとおりです。

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4Gamer:
 ドルフロ2が発表されたのは2020年のことでしたが,リリースに至るまでの開発には紆余曲折はあったのでしょうか。

羽中氏:
 大きな方針転換はありませんでしたが,常に変化させ続けていました。より伝わりやすいゲーム内容や遊び方のために,クローズドβテストを何度も重ねて磨いていき,1つ前のバージョンの問題を改善していく。その地道な繰り返しが変化を生んでいたわけです。
 上海散爆自体,3Dゲームの開発もそれに付随する試みも,すべて模索しながらやっていたことではありましたしね。

4Gamer:
 ここ数年,ゲーム市場ではいろいろな人気作品が生まれましたが,開発中に「こういうのも入れてみたい」と思ったことはありますか。

羽中氏:
 ありましたね。ドルフロ2の開発中もたくさんのすばらしいゲームたちが生まれていましたので。今言った変化の流れのなかには,そうした作品を参考にした要素も含まれています。
 そのうえで,私たちのドルフロ2もまた,これからゲーム業界の方々に“参考にされる側”になりたいと考えています。ほかの会社さんにドルフロ2のいいところを見つけてもらい,参考にしてもらう。これもまたゲーム業界のコミュニケーションのあり方だと思っています。

4Gamer:
 例えば,中国版ではミニゲーム「強襲演繹」を目にしましたが,あれというのは,そうしたリスペクトの一環で?

羽中氏:
 そうですね(笑)。ドルフロ2ではとくに3D表現を追求したいと思っていたところ,斬新な体験に感心させられたため,あくまで小規模のミニゲーム的な要素ではありますが,お試しとして導入したものです。

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4Gamer:
 中国版はリリースから約9か月ですが,反響はどうでしょう。

羽中氏:
 配信当初から多くの人たちに遊んでいただくことができて,とてもうれしく思っています。配信初期に関しては,ゲームとしても未成熟な面が多くあり,良い・悪いの意見が半々といった次期もありましたが,更新を重ねたことで現在は好評に転じています。
 今後も皆さんの意見を反映し,ゲームの内容をより良くしていく流れを絶やさず,その勢いも保ちながら開発を進めていきたいです。

4Gamer:
 中国版はリリースされたばかりの時に炎上しましたが,個人的には中国ゲーマー層のコンテンツに対する見方が見えて,申し訳ないことに参考になりました。振り返るといかがですか?

※詳細は書きづらいが,「なるほどなあ」と思う事件があった

羽中氏:
 その問題については私たちの見方で話させてもらいますが,中国のゲーム市場はここ数年,環境が高速で発達し,競争も激化しています。ゲーマー層も昔では考えられなかったくらい爆増していて,皆さんの欲求や嗜好も多岐にわたるようになりました。
 そんな環境のなかでも私たちはゲーム開発のために,自らの開発理念とプレイヤーの需給をすり合わせて対応してきました。そのバランス感を,あのときは自分たち側に寄せすぎてしまった結果,一部表現が炎上してしまい,その部分を変更させてもらったという流れです。
 それでも,私はゲーム作りの方法論のすべてを市場に委ねず,自分たちならではの理念を堅持していきたいと考えています。現状,多種多様なニーズをすべてクリアするのは難しい時代ですが,改善できることはできる限りする。そのうえで,上海散爆なりの考えで,自分たちのためのレールも敷く。そうした気持ちを忘れずにいきたいです。

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4Gamer:
 今後,日本や韓国でもドルフロ2が配信されますが,これらは言語は違えど運営進捗は同じの「グローバル版」と見ていいのでしょうか。

羽中氏:
 はい。同時リリースを目指したうえで,そうしたいと思っています。

4Gamer:
 日本パブリッシングについては,日本支社のサンボーンジャパンのほかに,韓国展開を強みとする中国のパブリッシャ「HAOPLAY」も名を連ねています。ここはどのような判断で手を組んだのでしょう。

羽中氏:
 端的に,彼らは長年協調してきた信頼に足るパートナーであり,パブリッシャとして非常に優秀だからです。
 そもそも上海散爆の源流はゲーム開発スタジオで,今もパブリッシング機能が強いとは言いがたいです。そこはサンポーンジャパンも同じです。そのため,今回の日本配信ではパブリッシングの専門家と組み,日本の皆さんにより良いサービスを届けられるようにしました。

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4Gamer:
 前作ドルフロに関しては,今後もサービスを継続するんですよね。

羽中氏:
 ええ。ドルフロ2を公開したからといって,前作の歩みを止めることはしません。今後もストーリーに磨きをかけていきます。

4Gamer:
 ドルフロ2の登場により,10年後の世界を確定させてしまったわけですが,以降はどのような方針で物語を紡いでいくのでしょう。

羽中氏:
 ドルフロシリーズは世界観に対して,一連の時の流れの一部にスポットを浴びせ,そのシーンを切り取っていく手法を取っています。
 そして,ドルフロ2に至るまでの10年間というのは,ゲームシナリオで提供しようと思うと“ちょうどいい長さ”です。1年だと短すぎる。20年だと長すぎる。でも10年なら,物語の密度と登場人物の情感を保ちつつ,皆さんに楽しんでもらえるシナリオを提供しやすい。
 また,今後はドルフロ2に至るまでの変化を,プレイヤーの皆さんにより自然に体験してもらいたいと考えています。これを達成することで,シリーズ全体の世界観の完成にもつながると信じています。

4Gamer:
 上海散爆はこれまで「パン屋の少女(逆コーラップス:パン屋作戦)」「ドールズフロントライン」「ドールズフロントライン:ニューラルクラウド」,そしてドルフロ2と展開してきて,このほかに発表されてきたものもすべて“1つIP”に連なるプロジェクト作品でした。
 この点,同シリーズ以外のIPの創出は考えているのでしょうか。

羽中氏:
 我々の作品はすべて,パン屋の少女に至る“100年ほど続くこの世界”を主題としてきました。現時点ではドルフロ2を含めても,まだ構想しているすべての事象を描ききれていません。ですので,当面はやはり,この世界の空白を埋めていこうと考えています。

4Gamer:
 セールス的な判断は今後どうなるか分からないとしても,羽中さん自身は「この100年の空白を埋めたい」と思っていますか?

羽中氏:
 思っています。私はそのためにゲームを作ってきましたから。シリーズの長期的な展開はさまざまな影響が考えられますが,それでも私はこのシリーズを広げていきたい。
 もちろん,私が作りたいのはゲームですので,これまでのように新作のたびにゲームジャンルを変えるなど,新しい体験をしてもらうためのチャレンジは欠かさないつもりです。

4Gamer:
 それではお時間が迫っているので最後に。
 今後,グローバル版をリリースしたあと,正否はそのとき次第かとは思いますが,展望としてやっていきたいことはなんでしょうか。

羽中氏:
 まずは目先の課題として,ドルフロ2の長期運用を目指します。これまでの中国サービスでさまざまな知見を得てきたので,グローバル版は最初からさらに磨きをかけられるよう開発してきました。
 もしもこの一歩を踏み越えられたのなら,今回のゲーム開発で培った3D技術のノウハウをさらに研究し,将来的にはこの技術を投入して,次なるなにかを目指していきたいとも思っています。

4Gamer:
 なるほど。本日はありがとうございました。
 日本でのドルフロ2の配信,大いに期待しております。

羽中氏:
 ありがとうございます!

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