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画面を動く枠で囲むと集中力が上がる? 新機能「Focus Mode」の開発秘話が語られたIOデータ「GigaCrysta」10周年記念イベント
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印刷2024/10/17 19:02

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画面を動く枠で囲むと集中力が上がる? 新機能「Focus Mode」の開発秘話が語られたIOデータ「GigaCrysta」10周年記念イベント

画像集 No.024のサムネイル画像 / 画面を動く枠で囲むと集中力が上がる? 新機能「Focus Mode」の開発秘話が語られたIOデータ「GigaCrysta」10周年記念イベント
 アイ・オー・データ機器(以下,IOデータ)のゲーマー向けディスプレイブランド「GigaCrysta」が,2014年10月の設立から10周年を迎えた。
 その節目にあたる2024年10月15日,同社は,東京都内でブランド10周年の記念イベントを開催した。イベントの目玉は,東京ゲームショウ2024直前に発表された10周年記念モデル「LCD-GCQ271UD」だ。

LCD-GCQ271UD。Focus Modeが動作中なので,ゲーム画面の周囲に枠が表示されている
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 イベントでは,LCD-GCQ271UDの特徴である「Focus Mode」(フォーカスモード)の開発に協力した明治大学総合数理学部 専任教授の中村聡史氏も登壇して,Focus Modeを実現した研究について説明した。
 本稿では,中村教授の研究に関する説明を中心に,イベントの概要を紹介しよう。

Mini LEDバックライト採用で税込直販価格が6万4900円というコストパフォーマンスの高さで話題の27インチ液晶ディスプレイ「LCD-LDQ271JAB」も出展
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東京ゲームショウ2024では参考出展だったホワイトのゲーマー向け液晶ディスプレイ「LCD-GD242UDW」は,発売が決定した
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父ノ背中のあびんつ氏(左)と,IOデータの山形 誓氏(右)
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 イベントは,IOデータでGigaCrystaのブランドマネージャーを担当する山形 誓氏と,ゲストとして同社がスポンサードするプロチーム「父ノ背中」のあびんつ氏が登壇。父ノ背中の代表であるてるしゃん氏も,北海道からオンラインで参加する形で行われた。
 あびんつ氏は,もともと実家が石川県金沢市にあるIOデータ本社に近いとのことで,同社を以前から身近に感じていたそうだ。

山形氏が披露したGigaCrysta 10年の歩みを示す年表
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 イベントの主役であるLCD-GCQ271UDのFocus Modeとは,27インチサイズ,解像度2560×1440ドットの画面中央に,24インチサイズ相当で映像を表示する機能だ。これにより,ゲーム映像がeスポーツの競技会でよく使われる24インチ級のディスプレイと同じ見た目のサイズになるので,違和感なくプレイできるというものである。解像度2560×1440ドットの映像を,ディスプレイ側で縮小して24インチ相当の部分に表示するので,Windowsやゲーム側からは,2560×1440ドットのディスプレイに見える仕組みだ。
 27インチサイズの中央に24インチ相当の映像を表示する機能を持つeスポーツ向けディスプレイは,BenQ製品などに以前からある。しかしLCD-GCQ271UDのFocus Modeの大きな違いは,24インチ部分の周囲,本来なら何も映像を表示しない黒枠の部分に,10秒間隔で明滅する白い枠線を表示していることだ。

Focus Modeの枠部分を拡大した写真。白い枠線はゆっくりと明滅する
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 これにより,単に黒枠を表示しているだけよりも,ゲーム映像に集中しやすくなる。だから「Focus」=集中するモードというわけだ

 技術アドバイザーとして,Focus Modeの開発に参加した中村教授は,まず,中村研究室でどのような研究を行っているかを簡単に説明した。

中村聡史教授(左)とタイトル(右)
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 中村研究室では,人間を深く観察,考察することで問題を発見して,「ひとの『モチベーション』をデザインする」という方向性で研究を行っているという。
 ユーザーインタフェース(以下,UI)の研究も,その一環というわけで,中村教授は「間違えやすいUI」の例として,横線で区切られた署名欄のどこに書くのが正しいかという例を挙げた。筆者も在外企業との誓約書のやり取りで,困惑することがたまにあるが,横線の上に書くか,下に書くか,どちらが正解というルールはなく,国によって異なる場合があると,中村教授は説明する。
 中村教授は面白い例として,「ポツダム宣言」に各国の代表がサインした書面を挙げた。カナダ代表が署名の位置を間違えて書いてしまったので,以下に続く国の代表も書く位置がずれてしまったというものだ。

横線の上に署名を書くか,下に書くか,迷う場面は残念ながらよくある(左)。国際的な文書の署名欄でも,そういうことは起こったというポツダム宣言の例(右)
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 そんな中村教授が,Focus Modeにつながる研究を始めた切っ掛けは,「周辺視野」を活用することで,コンテンツの楽しみ方が変わるのではないかというアイデアだったという。
 そして,研究を進めていくうちに,注目したい映像の周辺にノイズを表示して減衰させることで,集中を促せることが分かってきたそうだ。研究成果は,もちろん公開されていたので,それをたまたまIOデータのスタッフが目にして中村研究室に接触したことが,Focus Modeの誕生につながったわけだ。

周辺視野に錯視をもたらすノイズを表示し,それを減衰させると映像への集中を促せるという
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 余談だが,筆者はいわゆる映像酔い(3D酔い)しやすい質なので,あるとき,周辺視野と映像酔いの関係を調べたことがある。そのときに,中村研究室で行われた周辺視野に関する研究に行き当たり,興味深く拝見したことがあった。IOデータ機器がLCD-GCQ271UDを発表したときに,中村研究室の名前があったので驚いた,と同時に納得したものだ。

 中村教授は,ディスプレイ側で周辺部分に映像を表示することには,利点もあると説明する。研究室では,映像を表示するアプリ自体に周辺へのノイズ表示を行う仕組みを組み込んだり,映像表示アプリを全画面に表示したうえで,サイズを調整して周辺部分にノイズを表示するといった仕組みを採用していたそうだ。しかし,当然ながらこのような仕組みは,余計な処理負荷が必要であるし,どんなアプリでも利用できるわけではない。
 その点,ディスプレイ側で周辺部分に枠線を表示できるLCD-GCQ271UDであれば,アプリは選ばないしPC側に特別な負荷をかけることもないと,中村教授は述べた。たしかに,どんなアプリでも利用できるし,OS側に特別な設定やアプリの実行も必要ないというのは,大きな利点だろう。

アプリ側で周辺視野部分にノイズを表示する方法は,処理負荷が増えるうえにどんなアプリでも利用できるわけではないという問題があった(左)。LCD-GCQ271UDのFocus Modeなら,そういう問題はなく,ゲームだけでなく作業用アプリでも恩恵を得られる(右)
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 中村研究室ではほかにも,周辺視野や視覚に関する研究を進めているとのこと。たとえば,視線追跡技術(アイトラッキング)を用いてユーザーの視線を認識して,周辺視野に当たる映像をぼかすことで集中を促進するといった研究も行っているそうだ。CG映像における「フォビエイテッドレンダリング」は,描画負荷を下げるための技術だが,注視すべき映像への集中を高めるのにも役立つということだろうか。

周辺視野をあえてぼかすことで,映像への集中を高めるという研究も
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 また,色覚にハンデがある人でも,問題がない人と同じように改善していく色覚特性の研究として,「Among Us」を用いた検証を行ったという例もあるそうだ。最近では,色覚へのハンデを考慮して,ゲームにおける警告表示などの色を,他の色に置き換えられるゲームは増えつつある。しかし,まだまだ少ないのが実情だ。
 こうした研究とその成果が広がれば,色覚のハンデによってゲームを楽しみにくいということも減っていくかもしれない。

Among Usを用いて,色覚特性とゲームプレイへの影響を検証した研究のスライド
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 イベントではほかにも,GigaCrystaの今後の展開なども説明された。そのひとつとして,プロ格闘ゲーマーのMOV選手へのスポンサードを行うことが発表されたほか,eスポーツをテーマにした漫画「マタギガンナー」とのコラボレーションも行うとのこと。10周年の節目を迎えたGigaCrystaの今後にも注目したい。

EVO 2024の「ストリートファイターIII 3rd Strike」で優勝したMOV選手(左)へのスポンサードを発表。引退した猟師が対戦ゲームで活躍するという異色のeスポーツ漫画「マタギガンナー」とのコラボも実施する
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アイ・オー・データ機器のGigaCrysta製品情報ページ

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