インタビュー
「World of Tanks」「World of Warships」のアジア地域ディレクターインタビュー。コロナ禍を乗り越え日本でも活発に展開していく
今回はアジア地域で「World of Tanks」と「World of Warships」フランチャイズのRegional Franchise Directorを務めるEric Shin氏にインタビューする機会を得た。日本での展開や,コラボの人気ぶりなども聞いてきたので,ぜひチェックしてみてほしい。
4Gamer:
よろしくお願いします。
最近だとWargamingの日本における活動があまり活発ではなかったイメージですが,それはなぜなのでしょうか。
新型コロナウイルス感染症の影響はもちろんありました。
私自身は2017年に入社し,World of Warshipsを担当し,2023年にWorld of Tanksも任されるようになりました。両方のタイトルで過去やってきたものとは違う,いろいろなことをやっていくために,戦略の変更に力を入れています。
私がWorld of Warshipsの担当になったあとは,例えばアズールレーンなど,コラボイベント自体はそれなりの数をやってきました。一方でWorld of Tanksは,ガールズ&パンツァーとのコラボを継続していますが,ほかにコラボできるものがあまり多くありませんでした。コラボできる作品はすごく限られる状況であり,新しいことをやりにくかったというのも,その理由になります。
ただ,日本市場を軽視していたわけではありません。これまでも日本市場向きのイベントも実施してきましたし,これからもより一層,日本市場に向けた活動を活発に行っていきたいと思っています。
4Gamer:
Wargamingにとって日本の立ち位置はどういったものなのでしょうか。
Shin氏:
日本はほかの地域と比べて,ミリタリーに関する理解力がすごく高い地域だと感じています。ほかのアジア地域にもミリタリー好きな人はいますが,日本は群を抜いてますね。例えばですが,広島の呉にある大和ミュージアムといった軍事博物館などは,ほかの地域では見られない規模です。日本のプレイヤーのミリタリーに関する知識量の多さが,そういった面からもうかがえます。
また,アニメコンテンツに対する熱量が非常に高いです。ほかのアジア地域でも人気はありますが,やはり日本は別格です。日本という市場は,アジアの中で特殊な立ち位置にあると我々はとらえています。
4Gamer:
アニメとのコラボなどを積極的にやっていますが,硬派なミリタリーファンにどう受け入れられているのでしょうか。
Shin氏:
硬派なミリタリーファンには,いわゆる,オタク系と分類されるコンテンツが受け入れられないというのは理解しています。アズールレーンなどの美少女系のコラボコンテンツは,コアなミリタリーファンの多い,北米や欧州地域ではネガティブなコメントも過去にはありました。
とはいえ,長年コラボを続けてきた結果,そういったプレイヤーたちも寛大になり,彼らに受け入れられるようになってきたと感じています。
その大きな理由は,アズールレーンも蒼き鋼のアルペジオもハイスクール・フリートも,World of Warshipsとテーマが同じ,軍艦艇を扱っているという共通点があったことだと思います。今後も,World of WarshipsやWorld of Tanksと共通点を持ったもので,より多くの人に楽しんでもらえるコラボをやっていきたいとは考えています。ですが,そうしたコラボができる作品は多くないので,難しい状況ですね(笑)。
コラボの候補が少なくなっていく中で,注目したのがSFで,銀河英雄伝説 Die Neue Theseともコラボしました。こちらは一部のプレイヤーに楽しんでもらえたのですが,アズールレーンコラボなどを楽しんでいてくれていたプレイヤーには,そこまで受け入れられなかったのかなという印象があります。
今後どうコラボコンテンツを広げていくかと考え,過去にプレイヤーから好まれたものをしっかりとリサーチしたうえで出した結論は,「艦船というテーマにこだわらないといけない」という意識をなくし,より新しいことに挑戦するということでした。
そういった考えのうえで,「ブルーアーカイブ」とのコラボに挑戦したわけです。
4Gamer:
アニメとのコラボはアジア向け施策という印象が強いです。欧米での反応はいかがでしょうか。
Shin氏:
EUや北米でも歴史好きのミリタリープレイヤーと,カジュアルなプレイヤーに分かれています。カジュアルとはいっても,戦車や艦船を使った対戦を好む,どちらかと言えばコア寄りのカジュアルなのですが(笑)。
我々のゲームではコラボコンテンツを強制的にプレイさせるようなことはしていません。そしてコアなミリタリーファンのプレイヤーも,コラボコンテンツがゲームに必要であることは理解してくれています。その結果として,うまく,すみ分けができているので,コラボをするから否定されるといったことはありません。
一方で,カジュアルプレイヤーはそういった拘りがありません。ですが,アニメとのコラボは日本やアジア地域に根差したものなので,そのコンテンツについての知識がなく,「これはいったい何なんだ?」と驚かれることは多かったです。
とはいえ,カジュアルプレイヤーにも,艦船や戦車が好きな人は多いので,そのつながりから「海外ではこんな作品があるんだ」と気に入ってくれる人もいますね。グローバルに長くコラボを続けていられるのが,その証拠になると思います。
4Gamer:
アニメ系のコラボと,スタートレックやトランスフォーマーなどのコラボでグローバル的な反応の違いはありますか。
Shin氏:
数字で見ても,アズールレーンやホロライブとのコラボでは,やはりアジアでの評判がいいですね。スタートレックやトランスフォーマーなどのコラボは,欧米の評判がいいです。
ただ,アジアの文化を欧米に,欧米の文化をアジアに持ってきて親しんでもらえるような,そんな架け橋になれればいいとも思っていますね。
4Gamer:
コロナ禍前の日本では,オフラインイベントを多くやっていたイメージですが,今後もそういったイベントを増やしていくのでしょうか。
Shin氏:
オフラインイベントも積極的にやっていきたいと思っています。昨年はWorld of Shipsで,EPT(Eat Play Talk)イベントを実施しました。今年からはWorld of Tanksも担当するようになったので,そちらでも同様にイベントを展開していきたいですね。
かつて実施した大和ミュージアムのオフラインイベントも反響はよかったので,今後もそういった活動をやっていけたらと思っています。
また,アズールレーンの6周年のイベントにはパートナーとして我々も参加しました。コラボしたタイトルとも良好な関係を続け,コラボ相手のイベントに参加して,お互いを盛り上げていけるような展開も考えています。
4Gamer:
今後の日本展開について教えてください。
Shin氏:
これまでWargamingとして日本でやってきたのは,PC版のWorld of WarshipsとWorld of Tanks向けのものが多かったです。現在は,コンソール向けにも,スマートフォン向けにもフランチャイズを展開しているので,それらのタイトルでも活発に仕掛けていきたいですね。
4Gamer:
日本のIPでコラボしてみたいものはありますか?
Shin氏:
タイトルは言えませんが1つありますね。。艦船関係だともうそことコラボできれば,すべてのピースが埋まるのに,というものですね。
4Gamer:
では最後に日本のファンにメッセージをお願いします。
Shin氏:
Wargamingはファンの皆さんの声をしっかり聞いております。我々がどう受け入れられているか,というのも理解しているつもりです。Wargamingは26周年を迎えるわけですが,それは支えてくれたファンのおかげです。
昔は日本のIPやオタク文化などが,社内で理解されませんでした。ですが,日本のプレイヤーからのサポートのおかげで,社内での理解度も上がり,多くのコラボレーションを行うことができました。
現在も継続してコラボを実施しているアズールレーンやハイスクール・フリート,ホロライブなどは,日本以外の地域での知名度はそこまで高くありませんでした。ですが,それを実施できたのは日本のプレイヤーの後押しがあったからです。
海外でそうした広がりを見せることができたのも,日本のプレイヤーの協力のおかげです。これからもWorld of Ships,World of Tanksを問わず,より多く,より良いコンテンツを皆さんにお届けできればと考えております。
4Gamer:
ありがとうございました。
「World of Warships」公式サイト
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