レトロゲームブームの背景,懐かしのあのゲームをもう一度

  次へ

Text by 鎌田重昭

 近年,レトロゲームと呼ばれる'80 〜 '90年代のテレビゲームやPCゲームが,ちょっとしたブームとなっている。年配(といっても30〜40代)の人達にとって懐かしく,その頃を知らない若い人にとっては新鮮なゲームだからであろう。

 ゲームと一口にいっても,その種類やレベルによって,それこそ初めてのテレビゲームと呼ばれる「ポン」から最新の「ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君」まで,ピンからキリまでの違いがある。面白さにそれほど違いがあるかというと,感じ方は人それぞれではあるがかえって単純なゲームのほうが取っつきやすくハマりやすいという傾向があるほどだ。
 最近のゲームソフト,とくに大作と呼ばれる作品はどんどん肥大化している。画像やサウンドは映画と見まごうばかりの迫力となり,内容も奥の深いものとなった。半面,理解するのが難しいゲームシステムや,プレイするのにまとまった時間が必要という点が,ユーザー離れの一因となっている。
 ちょっと空いた時間に手軽に楽しみたい,あるいは難しいゲームはちょっと……という人にとって,レトロゲームは格好の材料だ。しかも,人気のあったタイトルが厳選されて提供されているので,いわゆる"クソゲー"と呼ばれたハズレを引く可能性も低い。
 また,最近のゲームを理解するうえでプレイしておいたほうがよいソフトも少なくない。なぜこのシリーズが人気があるのかといった点から,こういうゲームはこのようなシステムがベースにあるから,こうやってプレイすると楽しいといった深いところまで,さまざまな楽しみ方をすることができる。
 今回の記事では,現在提供元が拡散するレトロゲームサイトをまとめて紹介していこう。
 この記事を読んだあとにでも,ちょっといつものハードなゲームを攻略する手を休めて,こうしたレトロゲームサイトを訪れてみたらどうだろうか。忘れていたような何かに出会えるかもしれない。

 

レトロゲームを網羅することをめざすアミューズメントセンター

公式サイトは「こちら」

 アミューズメントセンター(以下,AC)はゲームを中心とした会員制アミューズメント・ポータルサイトだ。レトロPCゲームの販売サイト「プロジェクト EGG」をはじめ,ゲームソフトやゲーム関連書籍,グッズの販売を行うサイトが参入している。AC会員に登録することによって,各サイトのサービスをシームレスに利用することができるシステムとなっている。各々のサイトの内容は,別項で紹介していこう。

 ACの会員登録は無料となっており,年会費等も一切ない。会員登録を行うと,サイト内のすべてのサービスに同じID/パスワードでログインできるようになる。各々のサイトの有料サービスを利用するときには支払いの手続きだけすればよいので,いちいち会員登録をする手間が省ける。
 ACの利用にはクレジットカードが必要だ。また,Yahoo!やhotmailなどのフリーメールアドレス,携帯電話のメールアドレスではクレジットカード決済が利用できないので注意しよう。
 またACに所属,提携する各サイトでは,利用できる有料サービスや購入できるゲームソフトは非常に多くの種類があり,それぞれ推奨環境や料金が異なる。同じサイト内で販売されているゲームソフトでも推奨環境に大きな違いがあるので,利用する場合は必ずその都度推奨環境や料金などを確認するとよいだろう。

2004年9月に始動した

公式サイトは「こちら」   配信タイトル一覧は「こちら」

サイト紹介
 「PLUS」はAC会員専用の有料サービスで,平成16年9月からスタートした新しいレトロゲーム配信サイトだ。趣旨はEGGと同様だが,内容や利用方式での差別化を図っている。現在はコンパイルが発売していたMSX用のミニゲーム集を中心に8タイトルがアップされているが,徐々にタイトル数が増加しているので,これからの充実が期待される。前述のACサイトという構成上タイトルごとに推奨環境が異なることがあるので,利用する場合は必ずそのタイトルごとの推奨環境を確認するとよい。

システム紹介
 まずAC会員に登録し,そのID/パスワードでログインする。ソフトを購入するためには「サービス登録」が必要。会費は月額315円(税込み・初月のみ630円)で,ゲームの購入代金とは別に支払う。PLUSで配信されるゲームは,「PLUSランチャー」という専用ソフトでダウンロード/起動/削除/アップデート等を行うので,まず会員専用トップページよりPLUSランチャーをダウンロードし,インストールを実行する。
 インストールが完了したら,サイト上のPLUSページにアクセスし,ログイン後にページ上部のメニューよりカタログページにアクセスして購入するゲームを選択,購入処理を行う。そのあとPLUSランチャーで購入したゲームをダウンロードし,起動するとプレイができるようになる。
 基本的に,1度購入したゲームはサービス解約後もプレイできるので,普通にパッケージで購入したのと変わらない。料金はミニゲームが複数含まれる「DSコレクション」シリーズが1575円(税込),単独パッケージの「ソードワールドPC」などが1050円(税込)だ。相場からすると少し高いと思われるが,これからに期待したい。

ゲームピックアップ

ソードワールドPC
 「ソードワールド」は,グループSNEが制作した純国産のテーブルトークRPG(TRPG)だ。TRPGとは多人数でプレイするテーブルゲームで,用意されたシナリオとルールにしたがって,サイコロを振ったりしながらゲームを進める。このゲームシステムがPCゲームと相性がよく,ファンタジー系のTRPGはPCゲームのRPG,戦争系のTRPGはPCゲームのSLGのベースとして数多くの移植作品を生んだ。
 ソードワールドは,プレイ人口が一番多い作品であり,フォーセリアという世界を舞台にストーリーが展開されていく。ちなみに有名なロードス島もフォーセリアの一部。原作のシステムに忠実なこの作品をプレイすると,実際にTRPGでプレイしているような感覚が味わえると同時に,RPGというゲームの源流をかいま見ることができるだろう。

 

あのコンパイルの名作を配信するゲームサイト「あいきゲーム横町」

公式サイトは「こちら」   配信タイトル一覧は「こちら」

サイト紹介
 かの有名な落ちゲー「ぷよぷよ」を始め,「魔導物語」など数多くの名作をリリースしたのがコンパイルである。拡大路線の不振から経営が破綻し2003年に解散してしまったが,そのソフトの営業権を引き継いだのがアイキだ(ただし,ぷよぷよはセガに売却)。アイキは過去のタイトルを販売するだけでなく,「ポチッとにゃ〜」をはじめとする新しいラインナップの開発にも力を入れている。
 このサイトはそんなアイキのPC用ソフトを販売しているゲーム配信サイトだ。本格派RPGからキッズ向けアクションまで,そのジャンルは幅広い。

システム紹介
 購入方法はとても簡単だ。ソフトウエア一覧から購入したいソフトを選ぶと詳細が表示される。説明のページに購入用のリンクがあるのでそこをクリック。表示される使用許諾契約書を確認したら,AC会員に登録が済んでいれば,その「ID」「パスワード」でログイン。クレジットカードでの決済を済ませれば目的のゲームをダウンロードすることができる。
 ソフトの扱いは基本的に店頭でパッケージを購入したのと同様だ。価格はゲームによってさまざまだが,流通コストやパッケージ代が含まれていない分,割安感は高いだろう。

ゲームピックアップ

Pa☆パ☆ぱずる たぬキッズ
 シンプルな面クリア型のパズルゲームだ。こだぬきを使ってキツねをオリで捕まえるという単純なルールだが,木/岩などの障害物をうまく利用しないとクリアできない。ゲームはシンプルだがコミカルなグラフィックとパズルとしての面白さから,第3作までリリースされている。
 なんといっても魅力なのはその価格で,525円(税込)という手軽さだ。ちょっと仕事の手が空いたときなど,気分転換にいかがだろうか。

 

独特の世界観を持つイタチョコショップ

公式サイトは「こちら」   配信タイトル一覧は「こちら」

サイト紹介
 イタチョコシステムは,独特なゲームシステムやサウンドで話題となり,ファミコンソフトとしてもリリースされた「ボコスカウォーズ」の作者薇醤(らしょう,と読む)氏が運営するソフトハウスだ。当初はMacintosh用のソフトとして1994年に「ヘナチョコダービー」をリリースし,以降独特の世界観を持つゲームをMacintosh用にリリースした。
 当時Macintoshのソフトでちょっとした流行となっていた「不条理ゲームソフト」のブームにも乗り,マック専門誌Macfanにて漫画「巨人のイタチョコの星のシステム」が連載(1995年11月1日号から1999年3月15日号)されていたこともあって,マックユーザーの間では知名度が高い。
 イタチョコショップでは,数々の名作(迷作?)がWindows 98/Me/XP用にリメイクされ,販売されている。

システム紹介
 購入方法はとても簡単だ。ソフトウエア一覧に購入用のリンク(ボタン)があるのでそこをクリック。表示される使用許諾契約書を確認したら,AC会員に登録が済んでいれば,そのID/パスワードでログイン。クレジットカードでの決済を済ませれば目的のゲームをダウンロードできる。
 ソフトの扱いは基本的に店頭でパッケージを購入したのと同様で,現在アップされている作品はどれも2100円(税込)だ。Macintosh版の同タイトルが現在どれも1500円であることを考えると,ちょっと割高な感じが否めない。

ゲームピックアップ

あの素晴らしい弁当を2度3度
 時代はなつかしき昭和,場所は工場や住宅の立ち並ぶどこかの"街"。ここはかつて大弁当屋が街の弁当を一手に引き受けていたが,主人の死去により,店は「マニアック弁当」「注文の少ない料理店」の2店舗に分かれ,骨肉の争いを始める。さらに全国チェーンの強大なる弁当屋「ぼかぼか弁当」が暴力をも伴う強引さで街に出店してきた。いったい街はどうなってしまうのだろうか。そして先代の残した謎の言葉「ハルマゲ丼」とは?
 基本的には経営シミュレーションゲームのハズだが,そこはイタチョコ流のテイストが満載で,広告戦略にチンドン屋,妨害工作に犬をけしかけるなど,ハチャメチャなコマンドが並ぶ。普通のPCゲームとはちょっと違う世界が満喫できるだろう。

 

ゲームの原点を探る!プロジェクトEGG

公式サイトは「こちら」   配信タイトル一覧は「こちら」

サイト紹介
 「プロジェクトEGG」(以下,EGG)は,老舗のゲームソフト会社ボーステックが運営する総合エンターテインメントサイト「ソフトシティ」内で展開しているレトロゲーム配信サイトだ。ソフトシティ自体も完結サイトだが,EGGはACとも提携しており,ACに登録した会員はACの「ID」「パスワード」でログインでき,ACでの決済ができる。
 1980年代に登場したシャープのMZシリーズ,NECのPC-6000,8000シリーズ,富士通のFM-7シリーズなどのパソコンやMSXのゲームソフトを中心に,200タイトルを超えるレトロゲームを全て1000円未満の価格で販売している。

システム紹介
 まずAC会員に登録し,そのID/パスワードでログインする。EGGからソフトを購入するためにはソフトシティ会員登録が必要だ。会費は月額315円(税込,初月のみ630円)で,ゲームの購入代金とは別に支払う。
 提供されるゲームソフトは現在のPC環境でプレイができるようリメイクされているので,特別なブラウザ等は必要ないが,プレイ開始前にユーザー認証を行う必要がある。この認証には,会員専用アクセスツール「プロテクトEGG」を使用する。この認証ソフトは無料でダウンロードでき,一度認証を終えてしまえば,ダウンロードしたゲームはローカル環境で楽しめる。
 もともと別々のポータルサイトがリンクしているので,一見分かりにくそうに感じるが,一度登録を済ませてしまえば手間はかからないので心配はいらない。
 提供されるゲームソフトは全て1000円未満で,現在のOS用にリメイクされているので単独での起動が可能だ。各タイトルは購入という手続き上,一度認証がすめばソフトシティ退会後もプレイでき,普通にパッケージで購入したのと変わらない。自分だけのレトロゲームのライブラリを作りたい,というような人にとってはリーズナブルな価格設定といえるだろう。

ゲームピックアップ

ドラゴンスレイヤーシリーズ
 日本ファルコムがPC-8801用にリリースし,アクションRPGというジャンルを確立した記念碑的な作品。現在なお続くドラゴンスレイヤーシリーズの第1作でもある。2作めにあたる「ザナドゥ」はPCゲームソフトとしては異例ともいえる大ヒットとなった。
 アイテムを利用しながら謎を解いてダンジョンを進むという,パズル的な要素も人気の理由の一つで,ファミコンでヒットした「ゼルダの伝説」など,数多くの作品に影響を与えた。
 一つのゲームジャンルの原点となった作品を,じっくりと味わってみてほしい。

銀河英雄伝説シリーズ
 このサイトを運営しているボーステックの看板ソフト。純国産長編スペースオペラとして名高い,田中芳樹原作の「銀河英雄伝説」をベースとした宇宙艦隊戦シミュレーションだ。熱狂的なファンも多い原作の設定を忠実に再現し,作品の展開に沿ったシナリオを採用している。ゲームとしての完成度も高く,原作のファン以外に多くのゲームファンを引きつけた。
 プレイしている時は,宇宙艦隊の旗艦で指揮をとっている気分にひたれること請け合いだ。筆者にとっても当時パソコンゲーム雑誌で足かけ3年に渡ってリプレイ記事を担当したことがある,思い出の作品である。

レトロPCゲームとは

 1980年代,個人で使用することを目的としたコンピュータ,パーソナル・コンピュータ=パソコンが登場した。それまでは企業向けの高額なコンピュータしかなく,個人で楽しむには基板に部品を挿して自作するマイクロ・コンピュータ=マイコン程度だったのだ。それでも個人の趣味としては高価で,モノクロディスプレイに文字を出力できるようなシステムを持っている人は羨望のまなざしで見られたものだった。
 シャープのMZシリーズ,NECのPC-6000シリーズ,富士通のFM-7シリーズなどのパソコンの登場は,そんなマイコンファンの世界を一変させた。本格的なプログラムを使えるコンピュータが,個人で買えるようになったのだ。
 パソコンが登場した当初は,自分でプログラムを組んで楽しむのが普通だった。そのうち,パソコン雑誌などにゲームのプログラムが掲載されるようになり,これを見ながらパソコンに打ち込んで遊ぶという使い方が提供されるようになった。もちろん,1文字でも打ち間違えると正しく動作しないという大変なものだったが,プログラムの構造を理解するには打ってつけの素材であり,学生の頃にこれで遊んだのがきっかけでプログラマやSEになった,という人は多い。
 まもなく,このプログラムを当時のメディアであるカセットテープに収め,販売するビジネスがスタートした。ゲームソフトメーカーの登場である。今は大手のコーエーやハドソンといった企業も,こうしてビジネスをスタートしたのだ。パソコンショップなどは秋葉原など特殊な立地のところにしかなく,ほとんどの人は雑誌の通販コーナーでソフトを入手していた。
 ゲームは単純なアクションやシューティングのゲーム,テキストをベースとしたアドベンチャーゲームなどだったが,「ウィザードリィ」「ウルティマ」「ローグ」といったRPGの原点ともいうべき作品の登場はこの頃であり,現在のパソコンゲームのスタイルがほぼ確立したといえるだろう。
 ホビーユースを前面に出したMSXシリーズが登場し,パソコンがPC-8801シリーズなど2世代目に入る頃になると,相対的に価格が下がったパソコンは爆発的な広がりをみせる。ゲームソフトの需要も一気に高まり,メディアもROMカートリッジやフロッピーディスクへと進化して,パソコンゲームの黄金時代を迎えた。
 レトロPCゲームという言葉に正確な定義はないが,おおむねこの時期にリリースされたパソコンゲームのことを指す。プログラムの容量は小さく,ハードの能力の限界も低かったのでシンプルな作品がほとんどだ。しかし,現在のパソコンゲームの原型はほとんどがこの時期の作品であるといっても過言ではないのだ。
 年配の人は当時を懐かしく思い出しながら,若い人はゲームの原点を求めて,それぞれにいろいろな楽しみ方をできるのが,このレトロPCゲームなのだ。

Copyright(C)D4 Enterprise,inc.All Righs Reserved.
「ソードワールドPC」(C)H.YASUDA & Group SNE/T&E SOFT/D4Enterprise
「Pa☆パ☆ぱずる たぬキッズ」(C)AIKY
「あの素晴らしい弁当を2度3度」Copyright (C) 2004 iTAChoco Systems (C) 2004 D4Enterprise,Inc. All Rights Reserved. (C) 2004 D4Enterprise,Inc. All Rights Reserved.
「ドラゴンスレイヤー」(C)NIHON FALCOM CORPORATION
「銀河英雄伝説」(C)2002 田中芳樹・TKKW (C)2000 BOTHTEC (C)2002 Micro Vision ORIGINAL MECHANIC DESIGN 加藤直之
  次へ