[E3 2007#43]特別企画:「ファイナルファンタジーXI アルタナの神兵」では,つまりどういう拡張が行われるのか? FFXI開発の中心人物達がE3に来ていたので,色々と聞いてみた
5月12日,13日に開催された「SQUARE ENIX PARTY 2007」で,「ファイナルファンタジーXI アルタナの神兵」(以下,アルタナの神兵)が突如発表された(関連記事)のは,多くの「ファイナルファンタジーXI」(以下,FFXI)ファンにとって,記憶に新しいところだろう。「アトルガンの秘宝」に次ぐ,FFXIの新たな拡張データディスクとなるアルタナの神兵は,しかしその発表当時は,そのタイトル名と,東の国でも西の国でも,さらに北でも南でもない場所が舞台ということ,そして「時」がキーワードになるということくらいしか,明らかにされていなかった。 そしてちょうど2か月後となる7月12日,ファン待望の追加情報が公開された(関連記事)。が,……正直,物足りなかったという人も多いのではないだろうか。新ジョブの追加はあるのか,結局“どこ”(もしくは“いつ”)が舞台なのかといった,具体的な情報はほとんど出ていなかったからである。 公開されたのは,いくつかの設定画と,その簡単な説明。そして,以下のような詩だけ。
かつて、この地で戦争があった ヴァナ・ディールを震わせる 大きな大きな戦争があった……
数多の兵士の生命を奪い 数多の若者の未来を奪い 数多の子供の幸福を奪った 暗く、儚く、そして哀しい時代……
けれど…… 同じ時を歩んだ者だけは憶えている
そこにも、たしかに希望はあった 心を許し合う仲間がいた 道を切り拓く英雄がいた 力を認め合う宿敵がいた
そして、ぼくらは今 同じ時を歩み始めようとしている……
もちろん,これらの情報からあれこれ推測するのも,ファンの楽しみの一つであることは否定しない。しかし,やはりもう少し具体的なことが知りたいと思うのがファン心理というものではないだろうか。 この発表が行われた日本時間7月12日は,アメリカでE3 Summit 2007の真っ最中。そして,FFXIプロデューサーの田中弘道氏をはじめとした,アルタナの神兵(というかFFXI全体)に関わる中心人物の多くが,E3 Summitに参加しているというのだ。これは,E3 Summit取材班としては,直接彼らに会い,アルタナの神兵についてあれこれ聞いてくるしかない。 FFXI情報をこまめに追っている人ならば,海外メディアなどですでに掲載されている彼らへのインタビューから,そのガードが,とてつもなく堅いのはご存じかもしれない。なかなか思うように聞きたいことを引き出せなかったが,それでもいくつか,非常に興味深い話題も飛び出ているので,アルタナの神兵の内容をあれこれ推測する一助としてほしい。
なお,せっかくそうそうたるメンツにお会いできたので,アルタナの神兵に関わらない話もいくつかしている。その点はご了承を。
左から,プロデューサー 田中弘道氏,プランナー 小川公一氏,グローバル オンライン プロデューサー Sage Sundi氏
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■戦争がテーマ? ■一つの新要素を中心とした拡張データディスク
4Gamer: 本日はよろしくお願いします。まずはみなさん,E3お疲れ様でした(編注:このインタビューは,E3 Summit最終日である現地時間の7月13日,それもE3閉幕直前の午後3時頃から行われた)。
田中弘道氏(以下,田中氏): そちらも取材,お疲れ様でした。ここまで様変わりしたE3は初めてなので,僕らもとまどいました。
4Gamer: 今年から生まれ変わったE3 Summit,どう思いました?
田中氏: まぁ色々思うところはありますが,……もうこの形では,来年はないかもしれませんね(笑)。もう一回同じものに戻るのか,もしくはなくなるのかするのじゃないでしょうか。
4Gamer: 割と多くの人が同じ感想ですね(笑)。事前のアポがないものはほとんど見られないため,“発見”する楽しみが失われてしまった感はあります。 まぁおかげで,喧噪の中ではなく,このように静かな場所で取材できるというのは,嬉しい変化ですけど。
※その後,ひとしきり新E3に関する話で盛り上がるが,ここでは割愛
4Gamer: さて,次のご予定もあるということですので,そろそろ本題に入りますね。 本題というのは,もちろんアルタナの神兵についてです。アトルガンの秘宝や,それまでの拡張データディスクは,どれも基本的に既存のプレイヤーを対象としたものですよね。今回も同じと考えていいのでしょうか?
小川公一氏(以下,小川氏): 基本的には,そのとおりですね。
4Gamer: アトルガンの場合,色々とバラエティに富んだ要素があるということもあって,幅広いプレイヤー層に向けたものとなっていましたが,今回はいかがでしょうか?
小川氏: これも「基本的に」という言葉がつきますが,高レベル層を基準に考えています。もちろん低レベル層を切り捨てているわけではなく,そちらにも対応する予定です。あくまで,重点が高レベル層寄り,という感じですね。
4Gamer: なるほど。具体的には,どういったものが高レベル向け,低レベル向けの要素なのでしょうか。
小川氏: うーん,すみません。さすがにまだそこまではお話しできません。
4Gamer: そこをなんとか,せめて方向性だけでも。
小川氏: そうですね……。今回,新しいジョブが入ることが決まっているので,レベル30未満の方はそれを目指すという楽しみ方ができるでしょう。また,どうしても追加するエリアのモンスターは高いレベルが基準になるので,高レベルな人はそちらを楽しんでほしいですね。
Sage Sundi氏(以下,Sundi氏): 基準という意味では,確かにレベルの高いキャラクターに置いています。しかし,もちろん初心者向けのコンテンツもあるので,ご期待ください。
4Gamer: ではアトルガンの秘宝と同様に,アルタナの神兵も,レベルに関係なく多くのプレイヤーが楽しめるものになるという感じですかね。
田中氏: まぁ,アトルガンも最初は高レベル向けって言ってたんですけどね……(笑)。
小川氏: 徐々に難度が低くなりましたからねー。
4Gamer: そういえば,プレイヤーの中にはアトルガンの秘宝のコンテンツが消化しきれていない,そもそもストーリーが完結すらしていない状況での,アルタナの神兵発表に,驚いていた人もいるようですが。
小川氏: ストーリーは,もうすぐ完結させる予定です。ただアトルガンの秘宝は,バージョンアップ前にコンテンツをいろいろと追加していったのですが,今回は,そういった作り方はおそらくできないと思うんです。今回は,ストーリーとシステムを並行して調整していくことになるでしょう。
4Gamer: ボリューム的にはいかがでしょう? アトルガンの秘宝は,もう盛りだくさんという感じでしたが,また同じような感じでしょうか?
小川氏: そうですね。ただ,方向性が変わってくると思います。
4Gamer: といいますと?
小川氏: アトルガンの秘宝だと,バラエティに富んだものを次々に導入していった感じですが,今度は,一つのものを中心に,どんどん拡充していく感じになります。
4Gamer: その,一つのものとは?
小川氏: うーん,それはまだご勘弁を……。
4Gamer: なにとぞヒントくらいは……。
小川氏: まぁ,コンクエスト,ビシージの延長線上にある,新たな要素ということですね。
4Gamer: 先日の発表にある,「大きな大きな戦争」に関係ありますか?
小川氏: それがテーマですからね。この新要素が,拡張データディスク全体の柱になります。
4Gamer: なるほど,ちょっとだけ分かってきました。
アルタナの神兵のコンセプトアート。ここからも,戦争がテーマになっていることがうかがえる
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■新ジョブは,既存のジョブをサポートするようなものに
4Gamer: ところで,ここまでの話の中で,どうしてもスルーできないのが,新ジョブについてです。
小川氏: ええ,追加しますよ。
4Gamer: ほかのメディアさんのインタビューを見ていても,この件に関しては,凄く口が堅いようですよねぇ。
小川氏: 本当にまだ,何も言えないですよ。すみません。
4Gamer: そういう答えだろうとは思っていたのですが,そこをなんとか。
小川氏: そうですね……。これまでのジョブの役割を保ちつつも,新たな可能性を探るようなジョブといいますか。
4Gamer: うーん。分かったような,分からないような。
小川氏: こういう表現が限界なんです。すみません。新たな役割を持たせることができるか探りつつ,サポートジョブとしても役に立てば,という風に,現在調整を進めています。あと言えるのは……一つではない,というくらいですかね。
田中氏: 既存のジョブは,役割がかっちり決まっているんですよ。ですので,どうしても間を埋めるようなものにはなりますね。何かに特化したようなジョブだと,前のジョブを殺してしまうわけで。
小川氏: 足りていないだろうものを,補う感じになりますね。
4Gamer: 中間職,という感じでしょうか。
小川氏: まぁ,まったく新しいものは難しいですね。
4Gamer: なるほど。そういった新しいジョブが,いくつ……。
田中氏: (ほかのスタッフが何か話そうとするのを制して)一つ以上です(笑)。
4Gamer: つまり,まだ秘密ということですね(笑)。
■英雄達と共に戦う? クリスタル戦争の時代が舞台に
4Gamer: ところで,これは質問というより確認ですが,発表された詩にあった“大きな大きな戦争”というのは,クリスタル戦争のことですよね。
田中氏: そうです。
4Gamer: ではプレイヤー達は,クリスタル戦争での英雄達と共に戦うことになるのでしょうか?
小川氏: その時代に生きている人は,おそらく登場してくるでしょうね。だから,そういう場面もありえると思いますよ。
4Gamer: その中で,プレイヤーはどのような立場に置かれるのでしょうか。アトルガンの秘宝のような,傭兵的な立場とか?
小川氏: これも,現時点では明言できませんが,プレイヤー達がその場所に行かなければならない,なんらかの事情ができるでしょう。それは,追々発表していきます。
4Gamer: 分かりました。ともあれ,クリスタル戦争になんらかの形で関わっていくと。ということは,FFXIのオープニングムービーで見られたような戦闘が繰り広げられるんでしょうか。
小川氏: まぁ,あれがまさにその時代ですからね。
4Gamer: オープニングムービーといえば,こんな豪華なスタッフ陣に対して,細かすぎる質問で恐縮なのですが,あの姉弟が再登場したりしますか?
小川氏: うーん,まぁ登場するしないは別にして,あの二人の話は,プロマシアで明確にしているので,今回新たにスポットを当てることはありません。
田中氏: 登場についてはなんとも言えませんが,あれが中心になることはないですね。
4Gamer: 分かりました。ところで,公開された資料の中に,サンドリア王国軍少年騎士団の絵がありましたが,サンドリアがメインの舞台になるのでしょうか?
小川氏: いえいえ,今出せる情報が,あれだったというだけです。とくにクリスタル戦争時代には,アルタナ連合軍(編注:獣人軍に対抗するための,サンドリア,バストゥーク,ウィンダス,ジュノの四大国家による連合軍)があったので,そのあたりは出てきますね。
4Gamer: なるほど,クリスタル戦争時代全体が描かれているのですね。しかし,この時代……つまり過去の世界が舞台だとして,通常のヴァナ・ディールと,自由に行き来できるものなのですか?
小川氏: まぁMMORPGですから,みなさん元の世界にも,やるべきことがありますよね。だから,行ったらずっと帰れませんでした,ということにはしませんよ。そこは,割と自由になっています。
4Gamer: 自由に行き来できるということは,現在のヴァナ・ディールで得たアイテムを過去に持ち込んだり,逆に過去のものを現在に持ち込んだりといったことも可能ですか?
小川氏: そこも,とくに制限を設けるつもりはありませんね。
4Gamer: 競売なども?
小川氏: ものにもよるとは思いますが,やはり制限は考えていません。
4Gamer: では,拡張ディスクを持っていない人も,過去の世界のアイテムを手にすることができるのでしょうか。
小川氏: はい。
4Gamer: この流れだと,もう答えは分かっているも同然なのですが,一応確認程度に,もう一つ似たような質問を。 クリスタル戦争時代ならば,まだアトルガンの存在は知られていませんよね。アトルガンで追加された青魔道士,コルセア,からくり士なども,この時代に行けますか?
小川氏: ええ。行けないようにはしません。ただ,そういったあたりを利用したネタ/話が出るかもしれませんね。
4Gamer: なるほどなるほど,色々と安心しました。そういう意味では,通常のエリア追加と近い形になるわけですね。 では逆に,通常のエリア追加……つまり現代にエリアを追加する予定はありますか?
小川氏: それはありません。今回追加するのは,すべてクリスタル戦争時代のエリアです。
4Gamer: 現代ではとくに変化はないのでしょうか? 過去の行動によって,何かしら変わってくるとか。
小川氏: 過去の行動は,元の世界に影響を与えます。それがないと,「過去」を扱う意味がないと思っていますので。
4Gamer: しかし,一口に影響といっても,色々と考えられますよね。具体的には……。
スクエニ一同: ……(笑)。
4Gamer: ううむ,ガードが堅い。では極端な例を挙げてみましょう。例えば,過去の行動によって,元の世界の姿がダイナミックに変わってしまう,なんてことはないですよね。
Sundi氏: それはありませんね。
4Gamer: 逆に十分あり得るところでは,同じNPCでも,過去での行動によって会話内容が変わってくる,というのが考えられますが。
小川氏: まぁ当然,それはありますね。そういったものから,……ひょっとしたら,モンスターに何かが起こるかもしれません。
4Gamer: 何かと言いますと?
小川氏: いやいや,モンスターに何かが起こるかも,と言っただけです(笑)。そういう感じで何かあるのかもというくらいに考えておいてください。
田中氏: 実は,FFXI開発初期の頃にも一度,時間軸で隔たれた世界という構想があったのですが,そのあたりも含め,結構大きな話になっていたんですよ。
小川氏: あれは……(笑)。
田中氏: それこそ,一度行ったら二度と戻れないような(笑)。
小川氏: さすがにダイナミックすぎて,実現は無理でした。
田中氏: そういうわけで,今回の時を越えた世界というテーマは,開発初期の頃から寝かせていたネタではありますね。どういう形での実装になるのかは,現在調整中ですが,ぜひ楽しみにしていてください。
4Gamer: 分かりました。過去と現在がどうリンクするのか,期待していますね。
小川氏: そこが肝になってくると思います。
■ウィンドウモードを正式実装
4Gamer: クリスタル戦争時代全体が舞台になっているといっても,現在存在するエリアすべての過去が,エリアとして登場することはないですよね。拡張データディスクで追加されたエリアを除いた,基本パッケージ部分の過去に行ける感じでしょうか。
小川氏: まぁ,おおむねそう考えていただいて問題ないと思います。
Sundi氏: エリア数でいえば,基本パッケージ版とほぼ同じですね。
4Gamer: 分かりました。では,エリア追加以外の要素についても教えてください。何か,システム的な大きな変更の予定はありますか? 例えばレベルキャップの開放とか……いや,レベルキャップの開放については,おそらく今回もないだろうなと思っていますが(笑)。
田中氏: ええ,レベルキャップの開放は,メリットポイントのシステムに完全に移行していますので,今後もずっとないと考えていただいていいですよ。
小川氏: あとは,既存のジョブに関しても,新ジョブの入るタイミングですので,何かと変更が出てくるでしょう。 また,戦争に関わるところで,先ほども話したコンクエスト,ビシージに次ぐ,新しいシステムを導入します。これがゲーム全体に関わる,ものですね。
4Gamer: アルタナの神兵の中心になるという,新システムですね。
田中氏: あとこのタイミングで,これまで要望が高かったものをいくつか入れます。例えば,これは海外メディアからも非常に要望が高かったのですが,ウィンドウモードでのプレイを可能にします。
4Gamer: それって,結構大きな話ですね。でも,不正行為防止の観点からは,英断だったんじゃないですか?
田中氏: ウィンドウモードに関しては,これまでにも色々な理由から非対応にしてきましたが,時代の流れというのもあり,今回正式対応に向けて開発を開始しました。アルタナの神兵のリリースと同時期ぐらいには間に合わせたいと思います。
4Gamer: なるほど,これまでウィンドウモードが実装されていないのは,不正対策だとばかり思っていました。
田中氏: 実は,ウィンドウモードの実装が,不正対策にもつながっているんですね。というのも,どうやら不正な外部ツール――外部ツールはすべて不正なわけですが(笑)――に,OSをハックして,無理にウィンドウモード化するものが存在するようなんですよね。あれは非常に危険なので。
4Gamer: だったら,正式にウィンドウモードを用意しようと。
田中氏: ええ。そういったツールを利用した危険なプログラムも存在するようですし。
Sundi氏: ウィンドウモードを可能にするものって,大抵,それだけじゃないんですよね。一緒にいろいろなマクロツールがついてきちゃうものが,多い。ウィンドウモードだけを利用したい人まで,そのような危険なプログラムに手を出してしまうという事態は,非常に問題です。だから,正規で用意するんです。
田中氏: そういったプログラムは,OSの深いレベルでいろんなことをやっているので,非常に危険なのです。
Sundi氏: そういったものが実際に使われてしまっているという現実があるので。
4Gamer: MMORPGって,どうしてもプレイに時間がかかってしまいますからね。その間,FFXIがPCを占領してしまうのでは,困ってしまう人もいるかもしれません。
Sundi氏: 同時にメッセンジャーを使いたいとかね。そういった,通常の動機から使いたいという人がいるので,今回実装に踏み切りました。
田中氏: あと,FFXIをリリースした5年前は,PCのスペック的にも,ウィンドウモードで動かすのは危険が大きかったというのも理由です。しかし今のPCなら,その点も大丈夫かな,と。多少は遅くなりますよね。
4Gamer: ちなみに,同時起動は可能ですか?
Sundi氏: うーん,どうだろう。プレイオンライン側でも同時複数起動はできなくしていますので。
■2007年冬発売。それってつまり,いつ?
4Gamer: さて,お時間も迫っていますが,まだまだ聞きたいことが残っているので,今から細かい質問を,Q&A形式で続けて出していきますね。 ヤグード教団軍が出てくるということは,オズトロヤ城なども大きく関わってきますか? またオークだとダボイ,クゥダフではスヴァール城などの存在も大きく関わってきますか?
小川氏: 公開した中に,それらに関連する画像もあるので,ええ,そこから推測してみてください。
4Gamer: 分かりました。 ジュノを中心とした3国首都への攻撃,例えばビシージのようなモンスター軍による定期的な襲撃と,それに対応するイベントなどもあったりしますか?
小川氏: 例の,今回の柱となる新要素が,ビシージなどで得た経験を生かしたものになりますので,自ずとそういった要素は入ってきますね。
4Gamer: ミスラはもともと住んでいる土地が違ったと思いますが,クリスタル戦争時代の世界では,ミスラの故郷なども関わってきたりしますか?
小川氏: 話が出ないことは,おそらくないと思いますよ(笑)。
4Gamer: 本当,細かい質問だというのに,すべてお答えいただいてありがとうございました。まぁだいたい聞きたいことは聞いた気がするのですが……何かまだ隠していたりしませんか?(笑)
小川氏: うーん,出し尽くしたかな……。
Sundi氏: (小川氏に向かって)なにあんちょこ見てるんですか(笑)。
小川氏: これを見る限り,言っていいのに言っていないことは,もうなさそうですね(笑)。
4Gamer: ところで,リリース時期は「2007年冬」のままですよね。ただ日本のゲーム業界の冬って,結構曖昧な言葉じゃないですか(笑)。つまり,これはいつなんでしょう?
Sundi氏: 4月でも冬と言ったりね(笑)。でも2007年と言っているからには,年内の予定ですよ,もちろん。
4Gamer: では年内は約束していただけると。
小川氏: 約束……目標ということでお願いします(笑)。
4Gamer: ホリデーシーズン前が理想的ですよね。
小川氏: もちろんそれを目標に頑張っていきます。
田中氏: 開発目標としては,もう「日」まで決まっているんですが,発表するには早すぎますね。あとは,これからどれだけ頑張れるかです(笑)。
4Gamer: 月並みな質問ですが,現時点で何%程度の完成度なのでしょうか。
小川氏: まだ33%,という感触ですね。
田中氏: ただ,マップに関しては,ほぼ全部できていますよ。
小川氏: そうですね。「土台」はできていて,そこに乗っかる「バトル」とか,「動くもの」がこれからと。その三つのうち一つができたという意味での,33%です。
田中氏: どうしてもバージョンアップと並行して進めているので,なかなかそちらに集中できないのが悩みどころですが,とはいえホリデーシーズンあたりを目標に,みなさんの前にお届けしたいですね。
4Gamer: 分かりました。順調に開発が進むことを期待しています。ちなみに,何か苦労しそうなパートってありますか?
小川氏: 例の柱となる新しい要素の部分ですね。
4Gamer: 新要素……早く具体的に知りたいですねぇ。
田中氏: そもそも,我々の間でもかっちり決まっているわけじゃないので,今ここで何か話しても,後で変わっちゃう可能性が高いんですね。しかるべき時期に発表します。
4Gamer: 分かりました。そのしかるべき時期を楽しみにしています。
■いよいよヨーロッパで本格展開
4Gamer: せっかくこのような皆さんが揃っているので,アルタナの神兵以外の話も,少しお聞かせください。 ドイツ語版,フランス語版が発売されて,プレイヤー層に変化はありましたか? 以前のお話では,ヨーロッパのプレイヤーの半分はイギリスからの接続とのことでしたが。
Sundi氏: ドイツ語版,フランス語版を出したのが4月ですから,そんなに大きな変化は見られないのですね。今のところはやはり,UKが中心となっています。プロモーション的なことも含めて,ドイツ語,フランス語のプレイヤーは,まだこれから増やしていこう,という段階です。 それこそ8月にドイツのライプチヒで行われるGC(Games Convention)で,大きくプロモーションしたいですね。 ちなみに来週(7月16日の週),ヨーロッパで廉価版を発売します。廉価版は,4.99ユーロ(約800円)となっています。
4Gamer: 日本や北米でのプレイヤー数は安定期に入っていると聞いていますが,これでこれから夏にかけて,ヨーロッパの新規プレイヤーが増えそうですね。
田中氏: 日本と北米は,微妙に季節的な変化はありますが,おおむね落ち着いていますね。
Sundi氏: ヨーロッパでの展開に,ぜひご期待ください。
4Gamer: ほかの国への展開は考えていますか?
Sundi氏: うーん……。(田中氏のほうを向いて)いかがです?
田中氏: 正直,今の延長上のやり方では,もう限界かもしれないと思っています。
Sundi氏: 同時バージョンアップというのがねー,うちは特徴としてやっていますので。
田中氏: ドイツ/フランス語版がここまで遅れたのって,同時開発を行う体制を作るのに時間がかかってしまったからなんですよ。日本の開発陣の中に,ドイツ語とフランス語のトランスレーターが必要になるわけで,そういう人材を確保するのが大変だったんです。ちなみに今,各言語で二人ずつ雇っています。それをほかの地域へ拡大するというのは,現段階では考えていないですね。
4Gamer: 例えばアジア地域への拡大,ってことになると,またトランスレーターを大勢確保しなければいけなくなる,と。
田中氏: うちにはスクウェア・エニックス チャイナという会社があって,ずいぶんそっちから,FFXI中国版を出せとせっつかれたのですが,なかなか実現できないですね。中国って,かなり特殊な国で,FFXIは全世界共通のサーバーを使っているのですが,中国はそれができないんですね。
4Gamer: 「World of Warcraft」でも,中国語版だけ独自サーバーですものね。
田中氏: ええ,中国に独自サーバーを作らなければならない。つまり完全に別のサービスになってしまうので,なかなかそれをやるには勇気がいるんです。
4Gamer: しかし不思議なものですね。ほかのメーカーさんからは,なんとか中国に進出したいというお話をよく聞くのですが,御社の場合は,求められているのに断っているとは(笑)。
■田中氏の関わっている次世代MMORPGは,いつ発表?
4Gamer: FFXIからは離れてしまうのですが,せっかく田中さんがいるのでぜひ聞いておきたいのが,開発していることだけはずいぶん前から明らかになっている,次世代MMORPGについてです。以前には,2007年のE3で発表されるという噂もあったのですが……。
田中氏: 終わっちゃいましたね(笑)。
4Gamer: となると次のタイミングは,8月のドイツ(GC),もしくは9月の東京ゲームショウあたりかなぁ,と。
田中氏: メディアさんとしてはそう考えるのかもしれませんが,開発側からしてみたら,なかなかそう簡単にはいかないですね(笑)。発表できるときに,します。
4Gamer: 簡単にはいきませんか……,残念(笑)。
田中氏: 実は,昨年の9月に,一度仕切り直しをしているんですよ。これは,社内的に全プロジェクトに対して行っていて,これまで,それぞれのチームが個別に次世代機向け/次世代OS向けのソフトを開発していたのですが,それをすべてまとめて,一個のプログラマーチームというものを設けたのですね。 そこが,FFXIIIとして開発していた旧称「ホワイトエンジン」や,我々が次世代MMO用として制作していた次世代エンジンなどを引き継ぎ,旧FFXIIチームなどのプログラマーも合流したうえで,スクウェア・エニックスの共通開発エンジンというものを作っていて,それをベースに,すべてのゲームを作っていこうとしているんです。ただ,そのエンジンがまだ完成していないので,そのリリースを待って,今まで作ってきたものを載せたいと思っています。
4Gamer: 今まさに,そのエンジンを開発中というステータスなんですね。
田中氏: そうなります。
4Gamer: となると,まだ発表には時間がかかりそうですか。
田中氏: 僕らもまだ,いつどうというのが分からない状況ですからね。共通開発エンジンで,どこまでのことができるのかも分からないわけで。ただもちろん,そこに載っける企画などは,順調に進んでいますが。 土台さえできれば,そこに組み入れて作っていきます。
4Gamer: 今の時点で,何か内容について聞けることはありますか? 本当に一切,何も情報出ていませんから。
Sundi氏: 一切出していませんもん(笑)。
4Gamer: 4Gamerとしてこれだけは聞いておきたいのは,引き続きPC版での展開が考慮されているのか,ということです。
田中氏: Windowsはマストだと思っています。それ以外に,PlayStation 3やXbox 360も,可能ならやっていきたい,という感じです。プラットフォームに関しては,FFXIと同じスタンスでやっていきます。
4Gamer: MMORPGですよね?
田中氏: はい。ただ,それがFFXIとどういう関係にあるのかは,まだ話せません。
4Gamer: 実に聞きたいのですが,先に釘を刺されてしまったようです(笑)。
田中氏: ただ,FFXIではないですね。世界的なつながりは,一切ない。……までは,これまでも言っていますね。
Sundi氏: 開発しているメンバーは同じチームです。
4Gamer: システム的なつながりはありますか?
田中氏: まぁせっかくプレイオンラインにはフレンドリストなどの機能がありますので,そことか,ニュースツール,GMのサポートポリシーとかは引き継ぎたいですね。
Sundi氏: できたコミュニティを壊すことは,もちろんしないつもりですよ。
田中氏: あくまで“作品としては”,FFXIと何もつながりがない,ということです。
4Gamer: GMポリシーまで引き継ぐのならば,アイテム課金制とか,公認RMTがあるとか,そういったゲームにはならなそうですね。
田中氏: そういったことは一切考えていません。もちろん時代の移り変わりというのはあるので,今後どうなるかは分かりませんが。新しいビジネスモデルというものを,一切考えていないということはないですよ。
4Gamer: 今頭の中にあるゲームは,そういうものではない,と。
田中氏: そういうことです。
Sundi氏: 今もオプショナルサービスがあるじゃないですか。そういうオプション的なことは,今後あり得ますよね。
田中氏: ただ個人的には,現金主義になっちゃうのは,プレイヤーにとってどうなのかな,という風に思っています。
4Gamer: そこの公平さを守るために,スペシャルタスクチームが頑張っているわけですね。 さて,そろそろくどいと怒られそうですが(笑),結局次世代MMORPGは,いつ頃発表されるのでしょうか……。
田中氏: いや,本当に,何もまだお伝えできることがないんですよ。何か言える時期が来たら,すぐにお知らせしますので,今しばらくお待ちください。
■始まったばかりのワールド移転サービスについて
4Gamer: かしこまりました。うーむ,この方角は攻めても何も出てこなさそうだから,残り時間はわずかですが,FFXIの話に戻っちゃおうかな(笑)。実は先ほどから,何か大事なことを聞き忘れている気がしていて……。
田中氏: たぶん,あれですね。(Sundi氏のほうを向いて)あれ話したいんじゃないの?
4Gamer: ぜひ,それ,お願いします。
Sundi氏: いや,実はどこのメディアも聞いてくれないなぁと思っていることがありまして。最近始めた……
4Gamer: ああ,それだ! ワールド移転サービスのこと聞かせてもらわないと。始まったのって,6月中旬頃ですよね。直前にこんな大きなイベントがあったのをすっかり忘れていました。 実は,私の周りだけかもしれませんが,ワールド移転サービスに対して,不安視している人が何人かいたんですよ。なんでもありになっちゃうんじゃないかとか,ワールドを減らすための布石ではないかとか。
Sundi氏: それは誤解ですね。過去からのデータを探ると,移転ができないからやめちゃう,という人が多いんですよ。あるいは,友人がFFXIプレイしていることを知ったんだけど,自分の遊んでいるワールドと違った,ということもよくあるようで。確かに,RMTに使われるんじゃないかとか,心配する声もあったのですが,実際に移転したいという要望が非常に多く,多少の危険を冒してでも,導入することにしたんですよ。
4Gamer: なるほど,確かに,ワールド移転ができるだけで,やめる人の数は減るかもしれませんね。
Sundi氏: ええ。だから我々としては,FFXIの活性化のために,このサービスを開始したんです。
田中氏: このサービスがあることで,戻ってくる人もいるでしょうしね。
4Gamer: 実際に始めてみて,状況はいかがですか?
Sundi氏: 残念ながら細かい数字まではいえないのですが,かなりの数ですね。合計では,万単位です。これはアカウント単位なんで,キャラで考えたらもっともっと多いと思います。 ただ,どのワールドも,これだけの数が出たけど,同じだけの数が入ってきているという状況で,バランスは取れましたね。
4Gamer: 偏りが出るんじゃないか,という心配もありましたが,それは杞憂だったと。
Sundi氏: そうですね。もちろんごく一部はありますが,まぁほとんど,バランスよくばらけています。その一部も,全体の数字から見れば,想定内の動きです。
4Gamer: 傾向として,何か特徴的なことはありますか? 同じ国の人が集まったりとか。
Sundi氏: とくにはないですね。ミクロな視点では色々とあると思いますが,全体から見たら,誤差の範囲です。実際に想定していたほどの影響は,なかったです。 結局のところ,アクティブユーザーである50万人以上が,どっかのワールドに集まろう,と声を合わせるのは,無理だと思うんです。コミュニティもこれだけ大きいと,さすがにうまくならされるといいますか。どこそこに行きたいという人がいれば,そこからよそに行きたいと思う人がいる。50万以上という数字の上では,それらは綺麗に相殺されて,バランスがとれてくるんです。
田中氏: あとまぁ,さすがにワールドの5割が動くとかはありませんしね。
Sundi氏: もちろん今後,何か偏りが出てきたら対策を考えないといけないかもしれませんが,今のところは,このままで問題ないだろうなと思っています。
4Gamer: ちなみにこういうサービスって,初日に集まるのは当然だとして,その後も継続的に利用されるのでしょうか。
Sundi氏: ええ,コンスタントに。
4Gamer: 1日数十人くらい?
Sundi氏: それ以上ですね。
4Gamer: このあと,こういったオプショナルサービスで,何か検討されているものはありますか?
Sundi氏: とくに予定はないですが,プレイヤーさんから要望があれば,これからも検討/導入していきます。ちなみに欧米でも,もうすぐレジコード販売を始めますよ。
4Gamer: なるほど。では日本ではとくに,今決まっているものはないと。
田中氏: 要望としては,一つのアカウントから,別のアカウントにキャラクターを分けたいというものが常にあるんですが,これはキャラクター売買につながるので,さすがに難しいと。
Sundi氏: そこは最後まで議論したんですけどね。今のところの結論は,「しない」ということです。
4Gamer: 分かりました。……って,すみません,いつの間にか時間いっぱいですね。ではまた近いうちに,色々と聞かせてください。
田中氏: そうですね,もう少し話せることが増えていると思います。
4Gamer: 次はドイツかな……。お互い東京の会社なので,いくらでも国内で会えるわけですが(笑)。
田中氏: そうですね,どこでもどうぞ。
4Gamer: 分かりました。みなさん,長時間ありがとうございました。
冒頭にも書いたように,なかなかガードが堅かったが,それでも,ずいぶんとアルタナの神兵の姿が見えてきたのではないだろうか。 8月にはドイツのGC,9月には東京ゲームショウと,このあとも大規模なゲームショウが続くが,その中で,また新たな情報が出てくることは想像に難くない。2007年内には遊べそうなアルタナの神兵,今はアトルガンをじっくりと味わいつつ,これまでに出ている断片的な情報からあれこれと全体像を思い描きながら,お待ちいただきたい。(Iwahama)
(2007年7月13日収録)
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ファイナルファンタジーXI |
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