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「ファイナルファンタジーXI」の違反行為対応部隊STTに,半年ぶりにインタビュー
2007/07/07 14:53
 スクウェア・エニックスは6月26日,MMORPG「ファイナルファンタジーXI」(以下,FFXI)で,いつものように規約違反者への一斉対処(関連記事)を発表した。“いつものように”とはいえ,やや趣が異なっていたのはプレイヤーであれば承知済であろう。事実上,「RMT購入者」に対して大きく踏み込んだ告知となっていたのだ。表現手法も,これまでの「RMTに関与していた」というやや遠回しな言い方が,はっきりと「売買に関与していた」という表現に変わっている。また,これまで月単位で書かれていた対処数がより短いスパンで書かれているなど,スペシャルタスクチーム(以下,STT)が,いままで以上にアクティブに活動していることを感じさせるものになっている。
 そもそもその発表前の6月15日にSTTは,その活動成果,そして今後の活動方針をまとめたレポートを公開(関連記事)しており,その中で「購入者へのより厳しい対処を毎月実施する」と明言している。これを明確に受けた形での一斉対処は,いよいよ“買うこと”にメスが入ったかと関心を呼んでいた。

 そんな,今まで以上の意気込みを感じさせるSTTについて,スクウェア・エニックス,FFXIプロデューサーの田中弘道氏,グローバル オンライン プロデューサーのSage Sundi(セイジ・サンディ)氏,グローバル コミュニティー プロデューサーの室内俊夫氏に話を聞いてみた。半年前のインタビューとまったく同じメンバーだ。
(左から)グローバル オンライン プロデューサー Sage Sundi氏,プロデューサー 田中弘道氏,グローバル コミュニティー プロデューサー 室内俊夫氏


■STTが結成されて半年,どのような動きがあったのか

4Gamer:
 本日はお時間をとっていただき,ありがとうございます。ちょうど半年くらい前にインタビューさせていただきましたが,この半年間で,FFXIのRMT市場はどんな動きがありましたか? ……市場という表現もどうかと思いますが。

Sage Sundi氏:
 市場ときましたか(笑)。でもまぁ確かに,市場というくらい大きいかもしれませんね。
 この前のスクウェア・エニックスパーティ公式サイトで発表したように,FFXIを取り扱うRMTサイト自体は減っています。初めは,ピンポイントで目立つサイトを取り締まるという方法を取っていましたが,途中から,根元を取るという感じに戦法を変え,その効果が出てきたのがこの2,3か月だと思います。半年前に比べると,効果が出ているのをプレイヤーも感じることができていると思いますよ。

4Gamer:
 確かに,発表のグラフを見ると,3分の1くらいになってるようですね。

Sage Sundi氏:
 ええ。実は,STTを立ち上げたときの部内目標がありまして……。

4Gamer:
 部内目標……。

Sage Sundi氏:
 やはり「ここを目標にしよう」というものがないとね,やっぱり(笑)。それを鑑みると,もっと減っていないといけないんですよ。その期限が7月末になっているんですよね。

室内俊夫氏:
 そんなことまで公開してチームにプレッシャーを与えなくても……。

Sage Sundi氏:
 いやいや,言ったからにはキチンとね(笑)。正直なところ,いま現在では当初目標の70%以上は達成しています。我々自身の目標が期限に間に合うかどうかは分かりませんが,それに向けて頑張っているところです。

4Gamer:
 なるほど。ということは,お約束の“いたちごっこ”に関してはほぼ解決しているんですか?

Sage Sundi氏:
 ええ,ほとんどは。あと,前は月一というスパンでの公式サイト報告を行っていましたが,今回から週一〜隔週で行っている様々な対処について報告をする形に変えました。

4Gamer:
 それは,月末に1回だと,その日程を考慮したうえで対応する人がいるからという理由ですか。

Sage Sundi氏:
 そうです。見つけたらその場で素早く取り締まらないと逃げられちゃうので,短いほうがいいだろうということです。また,例えば1万アカウントを消したとしても,物凄い勢いで帰ってきます。そういう再入会などに対応するためには,やはりもう少し頻度を増やさないといけないと感じていました。
 あと,実際は日々色々なことをやっているのですが,公式サイトでの報告しか見えないプレイヤーさんから見れば,月に一度しかやっていないと感じられてしまうかもしれません。それもあって,このような形にしました。

FFXIの公式サイトに掲載されたSTTのレポート。そこでRMT取り扱いサイト数の状況が公開された


■プレイヤーの報告が非常に有効なデータに

4Gamer:
 規約違反者などを見つけた場合などのプレイヤーさんからの報告は,どんな感じですか。

Sage Sundi氏:
 先日,STTへの報告用にメールフォームをオープンしたのですが,まだ1か月経っていないというのに,すでに何百本もの報告がきています。それを次回のレポートのときに詳しく出すことになります。

室内俊夫氏:
 正確に言うと,今日(編注:インタビューは7月2日)までで1000件ちょっとの報告がきています。その中身は色々で,狩り場にいるハンターの報告,この人がRMTをやっています,この人が寝釣りをやっていますという報告,RMTサイトのURLや,こんなツールが流行っていますよ,という情報提供など,かなり多種多様になってますね。

Sage Sundi氏:
 ものによって,そこから詳しく調査していったほうがいいもの――つまり,RMT関連であればそのグループ全体を調査する場合などですね――もあれば,さくっと対処する場合もあります。また,その投稿情報を使って,不正行為や狩り場独占などがいまどこではやっているのか,といったことを調べられるなど,様々な面で非常に役立つデータになっています。我々も精一杯やっていますが,このサーバー数とこのプレイヤー数ですから,どうしても限界はあります。プレイヤーの皆さんには本当に感謝しています。

4Gamer:
 まだ半月ほどですよね。それで1000件ですか。

Sage Sundi氏:
 開始当初に一気にきた感じですね。これからは徐々に減ってくると思いますけど。というか,減らないとマズイですけど。

田中弘道氏:
 というわけで,このインタビューを読んでいるみなさん。報告用のメールフォームができたので,GMコールではなく,ぜひともそちらからお願いします。

Sage Sundi氏:
 報告目的のGMコールも大変ですからね……。お褒めの言葉をいただけるのは嬉しいですが。

田中弘道氏:
 この間のスクウェア・エニックスパーティで,お礼のGMコールの話をしたからじゃないかなぁ(笑)。

Sage Sundi氏:
 いただくのは,叱咤激励含めて色々,ですが(笑)。しかし,それらが非常に貴重なデータになっていることは間違いありません。
 ところでこれを機に説明しておきたいことが一つあります。みなさんの声の中には,報告したら自分はどうなるのか,これが変な風に使われたり,間違って使われたりしないのだろうか,という心配もあるようです。変な風には使いませんし,間違いないよう最大限注意を払ってますので,次回のレポートでは,このように使っているので大丈夫ですよ,という部分を,出せる範囲で出していきたいと思っています。

FFXIの公式サイト,サービス&サポート「メールでのお問い合わせ」に追加されたメールフォーム。ここから得られるプレイヤーからの情報が貴重なデータに


■これまでも行われていた購入者への対処はより明確に

4Gamer:
 お,それは次回のレポートが楽しみですね。
 購入者への処罰の件についてもちょっと聞かせてください。むろん以前から手はつけていたと思うのですが,前回の一斉対処ではわざわざ言葉も変えていましたし,その数も想像より多かったように思います。今回はあらためてその意志を表明した,と考えてよいですか?

Sage Sundi氏:
 そうですね。おっしゃるように対処は以前からやっていたんですが,約束したということもあり,今回は「売買に関与」という形で報告しました。確かに,とうとう来たか! という見方をされたりしてますね。

4Gamer:
 正直なところ,購入しているほうも,「まさか(処分は)こないだろう」という意識があったのではと思います。

Sage Sundi氏:
 これを機に,買う人も控えてくれればよいのですが。

田中弘道氏:
 電話もいっぱい入ったようですよ。

Sage Sundi氏:
 歴史に残るくらいの電話がきましたね。でもみなさん素直なのか「やってないよ」という電話より,「どうなるんですか?」という電話が多かったです。「何日間で勘弁してもらえるのか」「強制退会になっちゃうのか」という問い合わせがその大半ですね。

4Gamer:
 電話で問い合わせてくるんですか……。

Sage Sundi氏:
 自分の置かれている立場がちょっと分かりづらいのかもしれませんね。システム的にも,エラーメッセージが表示されるだけですし。ほかのメーカーさんが運営しているオンラインゲームと違って,表のメールボックスに情報が届いているわけではないので,何をされたか,どうなったのかが分かりにくいというのはあると思います。

4Gamer:
 それは改善される予定ですか?

Sage Sundi氏:
 改良の余地はあります。ご存じのようにプレイオンラインのメールアドレスを使っていることに起因しているのですが,ここは将来何かの方法をもって手を講じる可能性はあるかもしれません。

4Gamer:
 聞き方がちょっと難しいのですが,購入者といえど,一般プレイヤーであることには変わりありませんよね。規約違反者には違いないのでそのアクション自体には何ら疑問も不満もありませんが,そこまで深く――ほかにあまり例を見ないほど――立ち入って厳しい処置を下すということに対して,STTとしてどのような考えで臨んでいるのでしょうか。

Sage Sundi氏:
 もちろんお客様ということに変わりはありません。そこは間違いありません。
 しかしながらFFXIは,全世界がつながっていて一つのサーバーでプレイしているわけですから,RMTとそれに伴う様々な問題は,通常のハラスメントと同じ「迷惑行為」に当たる部分だと考えています。とりたててRMTだけを目の敵(かたき)にしているわけではなく,ほかの懲戒処理と同じ扱いです。運営チームの基本前提は,お客様が楽しむことを守るという大前提に基づいたものですから。

4Gamer:
 なるほど。極めて分かりやすい意見ですね。とはいえ,国内運営の作品で購入者に手を入れるというのは,これまでほとんどなかったように思います。

Sage Sundi氏:
 そうなんですか? ……そう言われてみれば聞いたことありませんね。もっとも,うちの場合もそのほとんどは72時間のアカウント停止で,実際にBanになったのは実質40人ほどです。

4Gamer:
 その境目は何ですか?

Sage Sundi氏:
 過去に規約違反やら何やらやっていたとか。いわゆる“前科”ですね。

4Gamer:
 では変な聞き方ですが,“初犯”は見逃すわけですか?


Sage Sundi氏:
 見逃すわけじゃないです(笑)。公式サイトにも出しているように,最大72時間の停止です。証拠も十分に固まってますし,これだけ分かりやすいものなので,本来であれば強制退会でも良いとは思います。そういう意味では甘い処分とも思えますが,警告という意味を大きく含めています。

4Gamer:
 一種の温情措置という感じですかね。

Sage Sundi氏:
 警告として以前からメールを個人宛に出しているのですが,それがあまり効果がないのかもしれませんね。本人にしか届かないので,表立っての効果も期待できませんし。
 もちろん,プレイヤーがハラスメントを行ってしまえば一発Banです。例えば,公序良俗違反バリバリの名前でキャラを作って走り回ったりすれば,プレイヤーに対する最高の懲戒処理である一発Banが行われるわけです。それに比べれば一段軽かったかもしれませんね。

4Gamer:
 なるほど。今のところは前科持ちかどうかで決まっているわけですね。

Sage Sundi氏:
 正直なところ,それが一部であればそれほどの影響はないとは思いますが,それが何十人,何百人といく規模になると,全体的なバランスに関わってきますからね。

毎月公開されている規約違反行為者の対処情報(左)と,STTのレポートで公開された2006年10月から2007年3月までの対処されたアカウント数(右)


■RMT行為は,ログの前では決して逃げられない

4Gamer:
 ところで,例えば今回の72時間の停止期間を経た人ですが,再犯率はどれくらいあると思いますか?

室内俊夫氏:
 ほとんどなくなると踏んでいます。中にはまたやる人もいるかもしれませんが,今回の反響は相当大きかったので。電話の中には「もうしません」と謝った人も多かったですしね。

Sage Sundi氏:
 つまり「(RMTは)分かってしまうんだ」ということは,本人達にも分かったはずなんです。

室内俊夫氏:
 ばれっこないと思っていたという部分があると思うんですよ。RMTに関与する人は,「ばれたら仕方ない」という人と,「ばれっこないから大丈夫」と思っている人の2パターンいて,今回に関しては後者が多かったのではないかなと思っています。

Sage Sundi氏:
 中には,とりあえず「やってない」と言ってみる人もいますけどね。

室内俊夫氏:
 何件かありましたね。もちろん,問い合わせがあれば再度全部チェックを掛けるんですが,100%見事にアウトです。

Sage Sundi氏:
 その後「あ,そうですよね」とか「やっぱりですか」とか(笑)。

4Gamer:
 とりあえず言ってはみるんですね(笑)。

室内俊夫氏:
 ダメ元で言ってみる人もいますね。結局,再調査して詳しく説明すると「あぁダメか」といった感じですが。

4Gamer:
 そのうちブラックマネーのロンダリングノウハウが溜まったりしませんかね。……ログがあるので,ありえないか。

室内俊夫氏:
 動きは100%把握できますからね。時間はかかるかもしれませんが,ログでそのすべてが把握できます。

Sage Sundi氏:
 監視の目をいったんかいくぐる方法はあるかもしれませんけどね。でも100ギルずつに分けて送るとか,非常に面倒くさい方法だと思うんですよ。とりあえず徹底的に調査して対応するので,FFXIでRMT行為をやると面倒で割に合わないと思っていただけるくらいにはがんばります。

4Gamer:
 さて今回,購入者への処罰を厳しくしたように見える発表が出ました。RMTという行為に限って言うならば,おそらくは「売り手→作り手→買い手」というプライオリティだと思うのですが,もうだいぶ最後のほうまで来てる感じですね。

Sage Sundi氏:
 日米合わせて,一度プレイヤーの声を拾ってみたんですが,結果は「購入者をどうするつもりなのか」という声が物凄く大きかったんですよ。実際は対処をしているけど,分かってもらえていないのかな,というのがありました。ですので今回は,対処してますよと公に言いたかった部分もあります。

4Gamer:
 購入者がいなければ生産者はいなくなるわけですから,重要なポイントですね。

Sage Sundi氏:
 購入者だった人が,ある日を境に生産者になっちゃったりもしてますけどね(笑)。

■さまざまな手段で行われるRMTに対して
■変化していくルールと捜査方法


4Gamer:
 敢えて聞いてみたいのですが,何をもってRMTの購入者と判断していますか?

Sage Sundi氏:
 まず海外/日本を含めての法務に確認し,サービス面,サポート面での問題がないかなど,世界間での話し合いを行っています。それらを経て,このルールでやろうと決めているわけです。具体的にはちょっとご勘弁ください。もちろん,間違うことがないように,判断は厳密に行っています。もちろん手作業のミスは別の問題ですが。

4Gamer:
 なるほど。ということは,確定された線引きがあるわけですね。

Sage Sundi氏:
 ええ。ただ,買う側も売る側も方法が変わってくる。ですから,その線引きのルールも毎月のように変えています。

4Gamer:
 RMT行為そのものの変化に対応しているわけですね。

Sage Sundi氏:
 ええ,対応していかないと,その方法に追いつかないですね。最初は簡単なものだったんですが……。

室内俊夫氏:
 手を変え品を変え。

4Gamer:
 より複雑化している感じですか?

Sage Sundi氏:
 ええ,複雑化してますよ。非常に調べにくくなっています。こちらもログの見方を変えてみたり,調査の方法をいくつか使ってやってみたりとかで対処しています。そこで一番頼りになるのは,やはりプレイヤーさんからの報告ですね。

4Gamer:
 なるほど,どんどん情報を送ってほしいところですね。

Sage Sundi氏:
 あと予想はしていたのですが,過去に対処済なので安心していたところが,いつの間にか復活していることもあります。そういった,過去を振り返らなければならない部分があって,プレイヤーさんからの“またここが復活している”といった情報はとても役に立っています。

4Gamer:
 変な話ですが,業者の稼ぎ用アカウントをアカウントごと購入した場合はどうですか?

Sage Sundi氏:
 見分けは付きにくくなりますね。

室内俊夫氏:
 パッと見の登録情報は,まったく関係のない第三者の誰かになっている。もちろん登録情報を見て,怪しい怪しくないは感じられますが,そこでは白黒つけられませんね。しかし色々なログと付き合わせれば,手間は掛かりますが必ず分かります。

4Gamer:
 明らかにアクションが変わりますからねえ。

Sage Sundi氏:
 先ほどの複雑化ですが,隠し金庫などに大量にお金を貯めていると,つぶされたときに痛いということで,分散していったり,細かい単位で売買されるようになっています。そのため,探す量,作業量は倍ぐらいにはなっていますね。

室内俊夫氏:
 極端な例でいうと,受注生産型(編注:買いの注文が入ってからギルを作るタイプ。即納ではなく納期がある)のようなパターンもあります。

Sage Sundi氏:
 もちろん,それはそれで分かりやすいんですけどね。

4Gamer:
 ところで今回の一斉処分発表は,消したギルの総量が前回の発表とほぼ変わらないな,と感じたのですが。

Sage Sundi氏:
 凍結ギルは毎回,対応するときに何種類かのカテゴリごとに集計しています。たいがいの場合は“金庫”などが含まれるので,額だけ見るとかなりのものになりますね。
 しかし「FFXIの世界をきれいにする」という観点から言うならば,ギルそのものが消えるよりは稼ぎ頭になるキャラクターが消えたほうが効果は大きいです。

4Gamer:
 ただ,発表の字面だけを追った場合,例えばですが,前回は60億ギルでした。今回も60億ギルでした。そして仮に次回も60億でしたとなると,プレイヤーには効果ないじゃないかという見られ方をするのではないかと。

Sage Sundi氏:
 あぁ,そういう意味ですか。なんだか今回はぴったりになったんですよ。

田中弘道氏:
 意図したわけではないのですが。

室内俊夫氏:
 偶然ではありますね。しかし段々と落ち着いてきているかな,と。

Sage Sundi氏:
 減ってきているはずですが,たまたまどこかの隠し金庫が出てきたとか。

田中弘道氏:
 我々もそこまでは把握できていませんが,実は業者さんの月間生産量がそれくらいで,それを根こそぎ凍結しているからかもしれませんが(笑)。

4Gamer:
 そうだとしたら結構な量を生産してますね。

Sage Sundi氏:
 何百アカウントも使って,尋常ではないプレイ方法で稼ぐわけですしね。

■RMTという要素が薄れることによる影響

4Gamer:
 しかしこれだけワールドがきれいになっていくと,違う問題が発生するのではないでしょうか。これはSTTの管轄ではないと思いますが,せっかく田中さんがいらっしゃることですし,聞かせてください。
 ギルがこれだけ減っていくと,当然デフレが進んでプレイヤーに様々な影響が出ると思うのですが,その部分について田中さんのお考えを聞かせていただけると。

田中弘道氏:
 ある一定のレベルで物価が安定するはずなんです。それと合わせて,色々な追加要素を数か月に1回入れて,どんどん変動させていく。業者など第三の要素がなくなれば,経済の動きが把握しやすくなります。

Sage Sundi氏:
 開発側でも,日々のモンスターによって生成されるギルや,クエスト,プレイヤー間での取引だったりをずっと見ていくので,STTによって影響が出てくるということがないように常に気をつけています。

田中弘道氏:
 例えば,ワールド内でギルが減少傾向にあると分かれば,我々もギャンブル要素などを導入しやすくなります。うまく回っていけば,今後は夢のあるコンテンツをいろいろ提供できるのではないかなと思ってます。

4Gamer:
 なるほど。とはいえ1プレイヤーとしては,安定するまでの過渡期が一番大変ではないかと思っています。欲しいものは買えず,かといってお金はいままでどおりにしか稼げず,というか。そのあたりは,何か手を講じたりするのでしょうか。

室内俊夫氏:
 必ずしもSTTによるバランス変化でやっているわけではないのですが,先月のバージョンアップでは,アウトポストのテレポサービスの利用額を下げたり,リンバスへの挑戦に必要なアイテムの値段を下げたりとか,随時手は入れています。

Sage Sundi氏:
 おっしゃるように,競売の金額など,大量に売っていた人がいなくなることで,一時的に一気に値段が上がったりはあると思います。しかしそこは,徐々に一般の生産者によって本来の姿に戻っていくと思います。しばらくは耐えていただくよりなく,過渡期の間は影響があるでしょうね。

4Gamer:
 コンテンツの中にはおそらく,インフレ時の相場に合わせて付けた値段もあると思います。そのあたりはどうでしょう?

Sage Sundi氏:
 そこも手は入れているはずです。もし「忘れているのでは?」という部分があれば,ぜひフィードバックしていただきたいです。

田中弘道氏:
 とはいえ,システム側が付けた値段にそんなに高いものはないと思います。高額商品はやはりプレイヤー間の取引で生まれるものかと。逆にギル総量が減ってくれば,その分,システムがプレイヤーに撒けるお金も増やせるので,お金が稼げているという感覚が得られるようになるのではないかな,とも思っています。

■STTの今後の活動は,いよいよ次の段階に?

4Gamer:
 話を戻しまして,今後もSTTは,今までと変わらず,売り手側と買い手側の両方に,どんどん手を入れていくというモードですか?

室内俊夫氏:
 ハンターもそうですね。

4Gamer:
 そういえばハンターは減りましたか?

Sage Sundi氏:
 大分減りましたねぇ。寝釣りもそうですし,狩り場占拠もそうだし。

室内俊夫氏:
 いわゆるファーマーというやつですね,プレイヤーが一番目にする機会が多いのは。「いつもの狩り場に,いつもいるあいつら」でしょうし,そういう報告が一番多いです。あと競売などもそうですが,数の暴力でこられると,まじめに狩りをする人や,合成をする人のやる気が削がれてしまう。そういう意味でも重要なところだと思います。

4Gamer:
 ところで,ハンターの国籍は偏っていたりします?

室内俊夫氏:
 割合でいえば北米アカウントが多いですが,実際にプレイしている人がどこの国かは分からないですね。彼らは諦めずにアカウントを取得しては帰ってきます。

4Gamer:
 客観的に見て,FFXIはRMTマーケットからすれば「御三家」の一つですから,だいぶ“頑張る”んですね。

田中弘道氏:
 ほかにも,新興勢力があの手この手で出てきています。

4Gamer:
 それは既存の業者とは関係のないラインで?

Sage Sundi氏:
 ええ,関係ないラインで。そういう新興勢力で,大きなところが結構でてきていますよ。やはり,儲かりそうだという匂いがあるんでしょうかね。

4Gamer:
 そんなに儲かるものなんですねえ。

Sage Sundi氏:
 彼らにとっては,そのMMOが潰れても,どんどん新しいのが出てくるからいいや,という程度なんじゃないでしょうか。

4Gamer:
 しかし,それでもこの半年でかなりの成果が出ていますよね。

Sage Sundi氏:
 本当に減りましたよ。RMTサイトが3分の1になっているのは前のグラフのとおりですが,先ほど述べたように,当初ターゲットにしていたところは7〜8割近くがなくなっています。しかも,途中で路線変更しつつやっているので,当初の目標からターゲットがずいぶん増えていますが。

室内俊夫氏:
 ここにきて,メールフォームを設置したのはとても意味があると思います。あらかた手はつけたけれど,みなさんはどこが気になりますか? と聞けることには大きな意味があります。

Sage Sundi氏:
 あとはシャウトですね。消えている場所もありますが。まだ一部で残っている。シャウトは目立つので,業者がいっぱいいるように見えてしまうんですよね。仕方のないことですが。

室内俊夫氏:
 人が多いところでないと,シャウトの意味がないですからね。

4Gamer:
 そんなこんなで,ずいぶんと色々なものが進んでいますが,今後はどのように活動を進めていく感じですか?

Sage Sundi氏:
 前のインタビューのときに,表の組織,RMTのウェブサイトや金庫があるくらいまでは見えていて,その裏にハンターがいるということをお伝えしました。現在は,その部分の解明が終わり,そこへのメスが7〜8割方終わったというところですね。今はほぼその集大成にきています。そこで,上半期までに当初持っていたターゲットに関しては一度終えてしまい,その次の段階に入りたいかなと思っています。
 あとは再発問題。業者が戻ってくるのを一定ラインではせきとめていますが,それをどの段階で対処するのか。高レベル帯のキャラクターが残っていると,それによる稼ぎキャラのPL(パワーレベリング)があるので,そこもどう止めていくかですね。

4Gamer:
 だいぶ細かい部分にまで手を付け出していくんですね。今回のハッキリとした意志表明を機に,ますますの活躍に期待しています。本日はありがとうございました。

 購入側としてのRMT利用者を,ハラスメントなどのその他の規約違反行為と同様に厳しく対処していくというスペシャルタスクチーム。言うは易いが,実際に企業が「お客様」を自ら遊べないようにすることは,想像を超える難しい決断になるはずだ。それを「普通にプレイしている人に対して間接的であれ,迷惑になっている」というシンプルかつ明瞭な理由で捌くSTTは,いよいよもって「FFXIをきれいにする」(前回のインタビューより)ことに本腰を入れて取り組み始めている。購入者がいなくなれば当然販売者も淘汰されるわけで,その抜本的問題に手をつけた意義は,非常に大きい。

 前回の記事は,STTそのものの珍しい存在意義から,RMTなどの話に終始してしまった感があるが,ここで改めて読み直してみてほしい。彼らの主張と行動は,この半年間,驚くほどにブレていない。

 いまだ業界の根底に潜む「RMT」というグレーな問題を,法や組織に頼ることなく自らの力で率直に解決していくスペシャルタスクチーム(余談だが,英語での名前は『スペシャルタスクフォース』なので,Sage Sundi氏は日本でも「STF」とよく間違える)。今後のさらなる活動に期待しつつ,このような活動が各社に広がっていくことにも期待したい。結局は,各社が自力で解決するしかない問題なのだから。(Interview by Kazuhisa,Text by Nobu,photo by kiki)

−−2007年7月2日収録


ファイナルファンタジーXI
■開発元:スクウェア・エニックス
■発売元:スクウェア・エニックス
■発売日:2002/11/07
■価格:オープン
→公式サイトは「こちら」
ファイナルファンタジーXI アトルガンの秘宝
■開発元:N/A
■発売元:スクウェア・エニックス
■発売日:2006/04/20
■価格:オープンプライス
→公式サイトは「こちら」
ファイナルファンタジーXI プロマシアの呪縛
■開発元:スクウェア・エニックス
■発売元:スクウェア・エニックス
■発売日:2004/09/16
■価格:オープン
→公式サイトは「こちら」
ファイナルファンタジーXI ジラートの幻影
■開発元:スクウェア・エニックス
■発売元:スクウェア・エニックス
■発売日:2003/04/17
■価格:オープンプライス
→公式サイトは「こちら」

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http://www.4gamer.net/news/history/2007.07/20070707145352detail.html