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極私的コンシューマゲームセレクション:第6回「ボクサーズロード2ザ・リアル」
2007/06/25 21:11

» 4Gamer編集部のスタッフが,個人的に注目/思い入れたっぷりのコンシューマタイトルを紹介していく「極私的コンシューマゲームセレクション」。第6回は,かつて「4D Boxing」に燃え過ぎてキーボードを壊しまくったほか,リアルにボクシング経験のある武闘派の山が,PSPの「ボクサーズロード2 ザ・リアル」を紹介する。


■プレイステーションの名作ボクシングシミュレーション
■「ボクサーズロード」の続編が11年の時を経て登場


 「ボクサーズロード2 ザ・リアル」(以下,ボクロー2)は,1995年に発売された,プレイステーション用タイトル「ボクサーズロード」(以下,ボクロー1)の続編だ。
 当時,コンシューマゲーム機におけるボクシングゲームといえば,アクションゲームがメインだった。それはそれで良作タイトルも多くあるのだが,そんな中,ボクロー1の登場は非常に衝撃的だったことを今でも覚えている。
 印象的だったのは,当時のプレイステーションタイトルらしくフルポリゴンだったこと。しかもゲームに登場する,選手の食事もフルポリゴンという斬新さ。筆者はうな玉丼を食べたくて仕方がなかったのだが,ボクロー1のプレイ経験者なら,同じようなことを考えたことが一度や二度はあるはずだ。たぶん。
 ビジュアル面のインパクトだけでなく,そのゲーム内容も非常に濃いものだった。ボクロー1は,試合中はプレイヤーが実際に操作するアクションゲームとしての要素はあるが,その土台は,ボクシングというスポーツを緻密に再現したシミュレーションである(ボクロー2にも当然その要素は受け継がれている)。



 そんなボクロー1は,奥深さを備えたボクシングゲームとして,ボクシングファンだけでなく数多くのゲーマーに愛され,販売数40万本以上のヒット作品となった。しかし,その後はとんと続編の話が聞こえてこなかったため,筆者の中では伝説の名作として心の引き出しにしまわれかけていた。
 しかし,ボクロー1発売から10年が経過した2005年12月,アーテインからボクロー2がPSPで発売されると発表された。
 アーテインは現在,ボクロー1を発売したニューの親会社となっており,開発は,かつてボクロー1を開発したスタッフ達が中心となって立ち上げた有限会社Grand Prixが行っている。ボクロー1を手がけたスタッフ達の手による純粋な続編となれば,これはファンとしては期待せずにはいられない。
 正直,ちょっとだけボクロー1のことを忘れかけていたのだが,このニュースを聞いた瞬間に当時の熱い想いが甦り,首を長くして発売を待ったのである。

 そして2006年9月28日,多くのファンの声に応える形で登場したボクロー2は,ボクロー1を,グラフィックス面のみならず,シミュレーション性や収録しているデータのボリュームなど,あらゆる面で大幅に進化させたタイトルである。日本プロボクシング協会(JPBA)公認の本作は,77ジム139選手が実名で登場する。ボクシングゲームとしてはおそらく初となる,実名選手が多数登場するという点も,ボクシングファンにとっては嬉しい要素だ。





■練習と食事のバランスどりは難しいが
■その試行錯誤が楽しい


試合以外のフェーズのグラフィックスには,さほど派手さはない。時間の経過とともに各種のパラメータが変化するの見て,「練習がハード過ぎるかな」「減量の効果で体にキレが出てきたな」などと把握できるようになってきたら,一人前(?)のボクロー2プレイヤーだ
 ボクロー2というゲームは,プレイヤーが自分の分身となるキャラクターを作成し,トレーニングを積み重ねてプロボクサーデビューし,ゆくゆくは世界チャンピオンを目指すというのが大まかな概要だ。その流れを説明すると,「マッチメイク」「トレーニング」「試合」の三つのフェーズを繰り返していくことになる。
 ボクサーの育成に最も大きく関わるのは,当然ながらトレーニングであり,このフェーズでは主に,練習メニューとスケジュールの決定,食事の管理を行う。
 強いボクサーにするためにひたすら練習させればいいかというと,もちろんそうではない。疲労が溜まれば練習の効率は下がるし,試合でも十分な力を発揮できないからだ。
 そして,ボクシングにつきものなのが“減量”。リミットまで体重を下げるために食事を制限すれば,練習による疲労は溜まる一方だし,かといってお腹いっぱい食べてばかりいると,試合の直前に苦しい思いをさせることになる。
 強いボクサーに育てるには,栄養のバランスを考えることも重要で,目指しているボクサーのタイプ(相手の懐に入ってパンチを打ち込むインファイターや,フットワークを駆使して相手と距離をとりつつ試合をリードするアウトボクサーなど)によって,摂取すべき栄養も変わってくる。
 体重の変化に気を配りつつ練習と食事を管理し,一人前のボクサーに育てるのはそうたやすいことではないし,だからこそ,自分が育てたボクサーが成長し,試合に勝ったときの喜びは,そりゃあもうひとしおなのだ。



■ジャンルは「スポーツ&ドラマ」

 使い古された表現ではあるが,ほかのスポーツと同様,ボクシングは“筋書きのないドラマ”だ。二人のボクサーが,試合に向けてひたむきに練習を積み重ね,リングという華やかな場所で殴り合いを展開する。そして試合が終われば,リングを照らすライトが,勝者と敗者の姿を鮮やかに浮かび上がらせるのだ。
 そのコントラストはあまりにも強く,時としてある種の残酷さすら醸し出す。そんなボクサー達の姿に,人は鮮烈な感動を覚えずにはいられない。……と,ややスポーツライター風に表現してみたが,筆者としては,試合の裏にある人間ドラマを見ることこそ,ボクシング観戦の醍醐味ではないかと考えている。

 で,ボクロー2の話に戻すと,公式サイトに,本作のジャンルが「ドラマ&スポーツ」と紹介されているではないか。そう,ボクシングは筋書きのないドラマであり,ボクロー2は,そのボクシングというスポーツを通じてプレイヤーの心に大きな感動を与えてくれるゲームなのだ。このジャンル名を見て,きっと開発スタッフもボクシングを愛してやまない人々なのだろうなあと思い,嬉しくなってしまった。

体型や顔などの外見を緻密にカスタマイズできるのは,ボクロー2の大きな魅力。メモリースティックに入れた自分の写真を取り込む機能も。自分の分身となるキャラクターの作成についつい真剣になり過ぎてしまい,プレイ自体をなかなかスタートできないのも悩みの種


■ボクサー「やま」が歩んだボクシング人生

丸井ジムの門を叩いた「やま」。これからやまのボクサーズロードが始まるのだ
 ボクロー2におけるボクサーの人生は十人十色。ここでは,筆者が手塩にかけて育ててきたとある選手の,山あり谷ありのボクサー人生を振り返ってみよう。

 「やま」は,1983年生まれの17歳。ボクシングはおろか,スポーツ経験にも乏しいやまだが,持ち前のひたむきさで練習をこなしていき,ほかの練習生から一目置かれる存在となる。そして入門から4か月後,初めてプロテストを受験した。
 プロテストで行われる,ほかの受験生とのスパーリングでは,ダウンを1回ずつ奪い合う接戦を演じたものの,結果は残念ながら不合格。1度や2度の失敗にめげず,周囲の励ましに心を奮い立たせ,その2か月後に行われたプロテストでは,対戦相手をノックアウトし,見事スーパー・バンタム級のB級ライセンスを取得したのだった。

 デビュー戦をKO勝利で飾ってからのやまのボクサー人生は,まさに順風満帆……のはずだった。やまはその後,デビューから6連続KO勝ちを記録し,プロになって1年ほどで参戦した新人王トーナメントでも順調に勝ち進んでいったが,その準決勝戦に落とし穴が待っていたのだ。
 短い期間で数試合を戦い抜く新人王トーナメントでは,体重や体調の管理がとても難しい。やまはウェイトコントロールで失敗を犯し,試合直前の数日間,飲まず食わずでのハードな練習を余儀なくされる。
 このことが災いし,ベストからはほど遠いコンディションでリングに上がることになり,対戦相手の強力なコンビネーションパンチを浴び続け,ノックアウトされてしまった。
 体調管理の失敗がやまにもたらしたツケは,敗北ばかりではない。アゴの骨折だ。一度骨折をすると,完治するまで数か月の間試合を行えないだけでなく,以後,強いパンチを受けたときに再び骨折する危険性が高くなる。
 ここからやまのボクサー人生は,対戦相手だけではなく,自身のケガとの戦いとなっていったのだった……。



■ダウンの応酬の末,世界チャンピオンの座に

 その後やまは,ボクサーとしての才能を開花させる。一気に日本チャンピオンの座まで駆け上がり,これを3度防衛。国内最強の名を欲しいままにする。

 ある日,所属ジムの会長からアメリカ進出の打診を受け,これを承諾した。アメリカではケガの再発に悩まされたが,専属ドクターとして招へいした「Dr.スフェリカル」のサポートを受けつつ試合を重ね,2年後にWBSの世界ランク1位に登りつめた。
 そしてついに,世界タイトルマッチが実現。東京ドームを舞台に,WBSのチャンピオンベルトを懸けた戦いのゴングが打ち鳴らされた。試合はダウンを応酬する展開に。力強いコンビネーションパンチでやまからダウンを奪うチャンピオンに対し,やまは得意とする切れ味の鋭い右カウンターパンチで反撃した。
 WBSではフリーノックダウン制が採用されており,10カウント以内に立ち上がりさえすれば,試合が止められることはない。このルールは,これまで6年ほどの間,スタミナ向上に重点を置いてトレーニングを積んできたやまに有利に働く。
 ロッキー・バルボアのように,倒されても倒されても起き上がる,チャレンジャーのやま。パンチ力に長けたチャンピオンであったが,とうとう戦意を喪失し,リングで仰向けになったまま10カウントを聞いた……。

ダウンの応酬の末,とうとうやまがチャンピオンベルトを手中に収めた。ジムに入門したときから彼を見続けてきただけに,感慨はひとしお


 夢にまで見た,チャンピオンベルトを手に入れた。とはいえこれは,やまのボクサー人生の一つの通過点に過ぎない。目指すは,あの具志堅用高選手の持つ,連続防衛回数の日本記録(13回)の更新だ。
 ……とまあついつい熱が入ってしまい長くなってしまったが,ボクロー2はこんな具合に,“ボクサーという生き方”を疑似体験し,そこにあるドラマを存分に堪能できるゲームなのだ。

 本作には明確に示されたゴールはない。世界チャンピオンになることはボクサーとしての大目標だが,防衛回数記録の更新やベルトの統一,2階級以上の制覇など,目指すべき目標はさまざま。世界チャンピオンにならず,日本チャンピオンのベルトを守り続けることも,立派な目標だ。
 まさに,本作のゴールはボクサーの数だけ用意されているのだ。噛めば噛むほど味の出る,スルメイカのようなゲームといっていいだろう。
 ちなみに256試合を戦うと,全パラメータが最高のスーパーボクサー「Master Sugar Ray」と対戦できるようになるという。道のりは非常に険しいが,Master Sugar Rayと戦い,勝つことを目指してみるのも選択肢の一つだろう。

■育てるボクサーごとに,いろいろなドラマを味わえる

 筆者は,やま以外にも数多くのボクサーを育ててきたが,ボクサーごとに実にさまざまなドラマが待っている。もちろんハッピーエンドばかりでなく,ジムの資金が底をついたり,実力差のあり過ぎる相手と戦ってボコボコにされ,再起不能になったりして,ゲームオーバーになってしまうこともある。
 当然ながらプレイヤーとしては,ゲームオーバーになることはとても悔しい。しかし,ボクシングという世界には,成功する選手もいればそうでない選手もいる。いや,むしろ成功する選手はほんの一握りに過ぎず,大部分は無名のまま引退していくのだ。
 選手の育成がうまくいかなかったり,ピークを過ぎてなかなか試合に勝てなくなったりすると,引退の二文字が頭をよぎる。強いボクサーを育てるという意味では不本意な結果ではあるが,それを「ボクサー人生の一つなのだ……」という具合に味わえるようになれば,ボクロー2の楽しさはさらに広がるのではないかと,筆者は思っている。

さまざまなタイプのボクサーを育てられるのは,ボクロー2の大きな魅力。筆者としては,最も尊敬するボクサーの一人で,「Master Sugar Ray」の名の由来になっていると思われる,シュガー・レイ・レナードのようなボクサーを育てることが大目標だ


■今度はボクローのオンライン化に勝手に期待

 ボクロー2を愛してやまない者として期待せずにいられないのは,ボクローのオンラインゲーム化である。ボクロー2は,アドホックモードでの通信対戦機能を備えており,プレイヤーが育てたボクサー同士を戦わせることが可能だ。これはこれで十分に面白いのだが,その場に集まらないと対戦できないというのは社会人にとってはちょっとつらい。ほかのプレイヤーとオンラインで同じ世界を共有し,ナンバーワンボクサーを決する仕組みがあったら,最高に楽しいと思うのだ。


■■山(4Gamer編集部)■■
FPSやスポーツゲーム全般をこよなく愛する,4Gamerでは数少ないパパさん編集者。4GamerではMacintosh系の記事を担当することが多い。惚れたゲームをとことんやり込むので,原稿にもその愛情があふれていることがしばしばだが,その愛情がお子さんにも向けられているのか少々心配である。



ボクサーズロード2 ザ・リアル
対応機種:PSP
メーカー:アーテイン
発売日:2006年9月28日
価格:6090円(税込)
CEROレーティング:B(12歳以上対象)
公式サイト:http://br2.ertain.com/

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極私的コンシューマゲームセレクション

第2回「シムシティDS」(ニンテンドーDS)
第3回「美味しんぼ DSレシピ集」(ニンテンドーDS)
第4回「あつまれ!ピニャータ」(Xbox 360)
第5回「Gears of War」(Xbox 360)
第7回「アイドルマスター」(Xbox 360)



連載:コンシューマゲームセレクション
■開発元:4Gamer
■発売元:4Gamer
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