[COMPUTEX 2007]AMD Phil Hester CTOインタビュー,GPUロードマップのアップデートも
Phil Hester氏(Senior Vice President and Chief Technology Officer, AMD)
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AMDは,2007年内に投入予定のクアッドコアCPU「Barcelona」(バルセロナ,開発コードネーム)に,CPUとGPUを統合する「Fusion」(フュージョン,開発コードネーム)を見据えた設計を盛り込む。 同社が目指すCPUコアの統合は,ヘテロジニアス型と呼ばれる,特定機能に特化した異なる種類のコアを統合する方向だ。AMDは8コアを1パッケージに収める“オクタコア”まではCPUのマルチコア化を進めていくが,それ以上のメニイコア競争には応じない構えだ。
AMDブースにあった,ゲームプラットフォームのデモ。Rubyの描かれたこのPCケースは展示専用で,一般販売の予定はないとのことだった。残念
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COMPUTEX TAIPEI 2007の期間中,4Gamerのインタビューに応じてくれたAMDの上級副社長兼最高技術責任者であるPhil Hester氏は,「マルチコア化だけを突き進めていっても,アプリケーション側の対応が追いつかない。ならば,ホモジニアス(※筆者注:まったく同じCPUコアを複数統合するタイプ)のマルチコア化を図るより,用途やプラットフォームに応じてヘテロジニアス(※種類の異なるコアによる統合)のマルチコアCPUを設計したほうが,処理効率は上がるはずだ」と述べる。アプリケーションレベルで考えて,むやみにメニイコア化を進めていっても,メリットは少ないというわけだ。 「ゲームアプリケーションのように,マルチコア化を進めるよりも高速化を図ったほうがよいプラットフォームもある。AMDは,Athlon 64 FXでゲーミングプラットフォームを確立したが,マルチコア時代も,AMDはゲームに最適なマルチコアのあり方を探っていく」(Hester氏)と,ゲームなど,さまざまな用途に特化したCPU統合を進めていく考えを示した。
消費電力面でのメリットを謳うスライド
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さて,Barcelonaが特徴的なのは,現行CPUと同じ65nmプロセスを採用し,かつクアッドコア化を図りながら,半導体設計レベルの最適化と先進のパワーマネジメント機能の採用で低消費電力を実現できるとされていることだ。 AMDは,COMPUTEX TAIPEI 2007の期間中に開催された発表会で,Barcelonaのシステムを公開し,現行のOpteronシステムと同等以下の消費電力に抑えることに成功したとアピールした。Barcelonaでは,CPUコアごとに複数の温度センサを内蔵し,コア周波数を動的に制御可能。また,メモリコントローラやHyperTransportリンクについても,CPUとは別の電源系統で制御できるようになるため,電力消費面でも効率的な処理ができるようになったというわけである。
デュアルコアOpteronサーバーとBarcelonaサーバーを比較したデモ。どちらの写真でも左がOpteron,右がBarcelonaだ。同じ半導体製造プロセスを採用し,かつCPU当たりのコア数が2から4へと倍増していながら,Barcelonaの消費電力はOpteronサーバーよりも抑えられている
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クアッドコアPhenom FX×2,ATI Radeon HD 2000によるプラットフォームとして,「FASN8」(First AMD Silicon Next-gen 8-core platform)も,COMPUTEX TAIPEI 2007で発表された
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ここでカギを握るのが,同社が「モジュラーデザイン」と呼ぶ,CPUコアや各種インタフェースなどを独立して設計し,それをシリコンレベルで統合するCPU設計方式の採用だ。これにより,各回路の消費電力を徹底的に引き下げていけるようになるうえ,モバイルやゲームといった,目的となるプラットフォームに特化したカスタマイズも容易になる。同社はすでにこのモジュラーデザインを採用し,モバイルプラットフォームに特化させた「Griffin」(グリフィン,開発コードネーム)を2008年にも投入する計画を披露しているが,デスクトップ向けCPUの「Phenom」にも,パフォーマンスに特化したモデルの展開があり得るだろう。実際,マザーボードベンダー関係者によれば,サーバーやワークステーションよりもCPUの消費電力を高く設定できるデスクトップPC(用のCPUとなるPhenom)では,Barcelonaよりも高い動作周波数を実現できるという。
さらにAMDは,Phenom世代プラットフォームで,最大5.2GB/秒の転送速度を実現するHyperTransport 3.0を有効にし,システムレベルでも高性能化を図る。Barcelonaと同じCPUコアを使うPhenom FXで,こうしたアプローチを採れるのは「モジュラーデザインによる柔軟性の現れ」と,Hester氏は説明する。
■AMD 790Xは2007年第3四半期に投入か ■RV670/RV660でPCI Express Gen2世代では先行へ
AMD 790Xノースブリッジ
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2007年6月5日の記事でお伝えしたとおり,AMDの次期主力チップセット「AMD 790X」を搭載したマザーボードがCOMPUTEX TAIPEI 2007で展示されたが,市場投入時期などの続報が得られたので,報告しておきたい。 OEMベンダーやマザーボードベンダーによると,AMDは,Intelの「Intel X38 Express」投入に,AMD 790Xを正面からぶつけたい考えのようだ。2007年7月中にも,大手マザーボードベンダーに量産版のチップセットが出荷され,8月下旬には搭載製品が市場へ投入される,という流れになると思われる。
2007年7月下旬の市場投入が予告されているASUSTeK Computer製AMD 790Xマザーボード「M2A32-MVP Deluxe」
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ただし,大手PCベンダー関係者によれば,Phenomの市場投入時期は早くとも2007年11月以降にずれ込んでおり,また,Phenomプラットフォームでのサポートを模索しているDDR2-1066の標準化についても,年末にずれ込むのは必至という状況だ。PCI Express Gen2世代のグラフィックスカードも,2007年第4四半期の話になる。 DDR2-1066についてはメモリ価格の急落を受けて,大手メモリチップベンダーが賛同の意向を示しているため,標準化も不可能ではないとされる。しかしながら,AM2+パッケージのCPU(=Phenom)にDDR2-1066,PCI Express Gen2といった,AMD 790Xでサポートされる目玉機能のすべてが先送りされるなかで,チップセットだけ先行して投入されることが,どれだけのインパクトを生むかは疑問だ。実際,「PCI Express Gen2プラットフォームの主導権をIntelに譲らないためだけに,AMD 790Xの投入を前倒しした」と指摘する関係者もいる。
ところで,PCI Express Gen2に関する取材を進めていくなかで,AMDがコードネーム「RV670」「RV660」という,PCI Express Gen2世代のGPUを開発しているという情報がOEMベンダー関係者からもたらされた。 R680など,ハイエンドGPUの投入も一部で噂されているようだが,両製品はいずれも「ATI Radeon HD 2900」と「ATI Radeon HD 2600」の“間”に投入される見込みで,製造プロセスは55nm(現在のATI Radeon HD 2000シリーズは65nm)へ移行する。投入時期は2007年第4四半期とされ,グラフィックスカードベンダー関係者は,「PCI Express Gen2への移行では,AMDがNVIDIAに先行するだろう」と述べる。
PCI Express外部電源コネクタを持つTul「PowerColor HD 2600 XT DDR4」。大きめのカードデザインは,“150W超時代”の名残?
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なお,現在のややちぐはぐな製品ラインナップについて,AMDに近いグラフィックスカードベンダーは,「ATI Radeon HD 2600 XTは,当初150W超のカードデザインで設計が進められていた。しかし,AMDとの統合でモバイル用途のデザインを優先することになって,結果的にパフォーマンスが犠牲になった」と説明する。しかし,「ATI Radeon HD 2900 XTやATI Radeon HD 2600 XTは,消費電力さえ気にしなければ,かなりのオーバークロック耐性がある」と,チップそのものの素性はさほど悪くないと分析する関係者は多く,それを根拠に,55nmプロセスを採用するRV670/RV660へ期待を寄せる声は少なくない。 また,AMDは第3世代の統合型シェーダアーキテクチャを採用した「R700」(開発コードネーム)の投入を前倒しする計画も持っていると伝えられており,2007年後半にかけて,大がかりな巻き返しが図られることになりそうだ。(ライター:本間 文)
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