[COMPUTEX 2007#10]AMDの次期主力チップセット「AMD 790X」続報。Phenom FXによるデュアルCPU環境を構築することも可能?
AMDのリファレンスボードである「Hammerhead」(開発コードネーム)
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[COMPUTEX 2007#07]のレポート記事でお伝えしたとおり,マザーボードベンダー各社は,AMDの次期フラグシップチップセットとなるAMD 790X搭載マザーボードをCOMPUTEX TAIPEI 2007(以下,COMPUTEX)に参考出品した。 開発コードネーム「RD790」で開発が進められてきたAMD 790Xは,HyperTransport 3.0やPCI Express Gen2といったAMDの次世代プラットフォームを担う製品だ。マザーボードベンダーの関係者によれば,AMD 790Xを2個用いることで,Phenom FXによるデュアルCPU環境を構築することも可能だという。
(左)CPUとAMD 790Xノースブリッジ間は,より高速なHyperTransport 3.0で結ばれる。このため,リファレンスデザインではチップセットとCPUソケットを最短距離で結べるように工夫されている
(右)AM2+パッケージのCPUでは,パッケージ内でCPUコアとは別に,ノースブリッジ部へ独立した電源を供給する「Split Power Plane」を採用する。そのため,VRM(Voltage Regulator Module)はCPUコア用の4フェーズPWMに,ノースブリッジ用の1フェーズを加えた5フェーズ構成になる
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■情報が錯綜するHyperTransport周り
AMD 790Xでは,PhenomでサポートされるHyperTransport 3.0が,CPUとノースブリッジの間での接続に用いられる。HyperTransport 3.0は,片方向最大2.6GHzで動作し,両方向で5.2GT/sの転送レートを実現するという。ASUSTeK Computerは,「M3A32-MVP Deluxe」のスペックとして“System Bus 5200MT/s (HT3)”とポップで説明していたが,これはそういった事情による。 しかし,AMDに近いOEM関係者は,「HyperTransport 3.0の動作クロックは,CPUの動作クロックとも関係があるため,AM2+パッケージのCPUを利用する限り2GHzに留まる」と説明する。 実際,ECSブースに展示されたAMD 790X搭載マザーボード「KA4 MVP」の動作デモ機近くに置かれたスペック表では,“HT2000”(HyperTransport 2000MHzの意)と書かれているなど,AM2+世代HyperTransport 3.0の動作クロックについては,情報が錯綜している模様だ。
(左)ASUSTeK Computer「M3A32-MVP Deluxe」のスペック紹介ポップ。“System Bus 5200MT/s(HT3)”とある
(右)KA4 MVPのスペック表記。下のロゴ部分に“HT2000”の表記が……
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(左)ECSのAMD 790X搭載モデル「KA4 MVP」。展示されている製品は,AMDのリファレンスボードをそのまま使ったものだったが,ECSによれば,最終的なモデルではPCI Express x16スロット×3構成となり,低価格化が図られる可能性もあるという
(右)KA4 MVPのライブデモ
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ノースブリッジとなるAMD 790Xは,合計42レーンのPCI Express Gen2をサポートする。マザーボードベンダーに聞いた話を総合すると,サウスブリッジのIXP 600との間にHyperTransport接続は使われておらず,PCI Express Gen2 x4での接続となるようだ。つまり,グラフィックスカードや拡張カードに使えるレーン数は,合計38レーン分となる。 PCI Expressは,レーンという単位で管理されており,接続するデバイスに必要な帯域幅に応じて,PCI Express x1/x4/x8/x16のいずれかの形で提供できる。スロットにおいても同様で,x1/x4/x8/x16用のスロットが用意されているが,上位互換となるため,x1のカードをx16のスロットに差しても(規格上は)動作する。x16のカードの通信速度をx8以下に制限することも可能など,非常にフレキシブルな構成が可能になるのが特徴だ。 これは,NVIDIAのnForce 4 SLIチップセットを例として挙げるのが分かりやすいだろう。nForce 4 SLIでは,グラフィックスカード1枚差しのときはx16モードで動作するが,2枚のグラフィックスカードでNVIDIA SLIを構築すると,通信速度がそれぞれx8モードに制限される。PCI Expressの通信速度は,BIOSやOS上でスロットに対する割り当てレーン数を容易に振り分けられるように設計可能なわけだ。 少々話がそれたが,AMD 790Xでは,グラフィックスカード用にPCI Express x16×2(32レーン),拡張カード用にPCI Express x1×6(6レーン),サウスブリッジとの接続用にPCI Express x4という割り当てになっている。グラフィックスカードを4枚差しする場合は,PCI Express x8×4となる。このあたりの詳細は,以下のチップセットブロック図を参照してほしい。
AMD 790Xのブロック図。図を作成したときの情報が古かったため,HyperTransport 3.0の動作クロックが間違っているのはご容赦を。正しくは2.6GHzとなる
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今回のCOMPUTEXでは,GIGA-BYTE TECHNOLOGY(以下GIGA-BYTE)やMSIが,PCI Express x16スロットを4本備えるマザーボードを出品していた。これらは,グラフィックスカード2枚構成の場合PCI Express x16×2で動作するが,4枚構成にした場合すべてのスロットがx8で動作することになる。 GIGA-BYTEの「GA-M790-DQ6」では,PCI Express x16スロットがAチャネルとBチャネルに分かれており,ブルーのスロットはx16のマスタースロット,オレンジのスロットはx8のスレーブスロットという構成になっている。各PCI Express x16チャネルには,PERICOMのPCI Expressスイッチチップ「PI2PCIE」が搭載されており,オレンジ色のスロットにカードを差したときには,マスタースロットがx8接続に切り替わる仕組みだ。
(左)GIGA-BYTEのAMD 790Xマザーボード「GA-M790-DQ6」
(右)GA-M790-DQ6のPCI Express x16スロット構成。PCIE_16_A1やPCIE_8_A1というシルク印刷を見て取れる
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■今のところ次世代サウスブリッジ搭載例はなし
今回のCOMPUTEXで,マザーボードベンダー各社が展示したAMD 790X搭載マザーボードは,筆者がチェックした限り,どれもAMD 790Xと現行サウスブリッジであるIXP 600(SB600)の組み合わせによるものだった。 AMD 690Gチップセットなどで用いられているIXP 600は,PCI Express 1.1(Gen1)世代の製品だ。先にも述べたように,AMD 790Xマザーボードと接続したとき,ノースブリッジとの間はPCI Express Gen2 x4で接続される。 その基本機能は,Serial ATA II×4,IDE(Ultra ATA/100)×1,USB 2.0×10,HD Audio×1となる。AMDは次期サウスブリッジ「SB700」の開発を進めているが,その量産開始予定は2007年第4四半期と,AMD 790Xの量産スケジュールに遅れる。製品をいち早く投入するため,ひとまず現行サウスブリッジのSB600と組み合わせたという台所事情もあるようだ。 取材時,マザーボードベンダーによってAMD 790X搭載マザーボードの発売時期が大きく異なっていたのだが,これにはどうやら,サウスブリッジにIXP 600を採用するか,SB700の出荷待ちかという裏事情が関係しているようである。(ライター:本間 文)
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