ASUSTeK,「Intel P35」搭載のR.O.G.シリーズ新作マザーを予告
Derek Yu氏(Product Manager,Motherboard Business Unit,ASUSTeK Computer)
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ASUSTeK Computer(以下ASUSTeK)は,2007年6月5日から台湾で開催されるITトレードショウ「COMPUTEX TAIPEI 2007」のプレビューを都内で開催。その場で,同社のゲーマー向け製品ブランド「R.O.G.」(Republic of Gamers)の未発表新作「Blitz Extreme」「Blitz Formula」を公開した。価格未定ながら,2007年6月下旬発売予定とのことだ。 ASUSTeK本社のR.O.G.担当プロダクトマネージャー,Derek Yu(デレック・ユー)氏いわく「世界初公開」となる両製品のポイントはどこにあるのか。今回は明らかになったポイントをお伝えしたいと思う。
Blitz Extreme(左)とBlitz Formula(右)。両製品に共通して拡張スロット構成はPCI Express x16 ×2(レーン数については後述),PCI Express x1 ×3,PCI×2。サウスブリッジはICH9Rとなっている。Blitz Extremeに差さっているカードは「SupremeFX II」で,これも後述する
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■CrossFireのボトルネックを解消する「CROSSLINX」と ■上位モデルの水冷対応がBlitzのキモ
“CROSSLINXチップ”。サードパーティ製のチップを利用しているとのことなので,おそらくPCIe−PCIeブリッジあたりではないだろうか。なお,ヒートパイプではサウスブリッジとつながっているが,内部的にはもちろんノースブリッジと接続している
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Blitz ExtremeとBlitz Formulaは,ともに2007年6月4日に正式発表予定となっているIntelの次世代チップセット「Intel P35 Express」を搭載したマザーボードだ。Blitz ExtremeがDDR3メモリ,Blitz FormulaがDDR2メモリに対応することを除くと,「Penryn」(ペンリン,開発コードネーム)世代の次世代デスクトップCPUとシステムバスクロック1333MHzをサポートすることなど,基本的な仕様は変わらず,以下のような特徴を持っている。- CrossFire動作時のボトルネックを解消する「CROSSLINXテクノロジ」(CROSSLINX:クロスリンクス)を採用
- Blitz Formulaはヒートパイプを利用したチップセット冷却機構を搭載。上位モデルのBlitzは水冷対応のヒートパイプ機構「Fusion Block System」を採用する
- “オーバーボルテージ”動作時に,Vcoreを安定供給する「Loadline Calibration」(ロードラインキャリブレーション)対応
- 一般的なマザーボードでは選択できない,豊富なメモリクロック設定を提供する「Super Memspeedテクノロジ」採用。これによりDDR2-1066やDDR3-1333もサポートする
- メモリスロット専用の2フェーズ電源回路を搭載(メイン電源回路は8フェーズ)
- 機能とノイズ対策を強化したサウンドカード「SupremeFX II」同梱
- “オーバークロックで目指したいCPUのプロセッサナンバーを選択するだけ”の自動オーバークロックシステム「CPU Level Up」を採用
- 各コンポーネントごとに独立した電圧設定が可能。電圧設定の危険度はBIOSと,マザーボード上のLED「Voltiminder LED」(ボルティマインダーLED)から判断できる
- 標準でノースブリッジとサウスブリッジの温度を監視,さらには(詳細は不明だがオプションでは)GPU温度も監視可能で,いずれかが一定温度に達した段階でシステムをシャットダウンする「COP EX」(Component Overheat Protection - EX)搭載
- POSTコードを表示するLED「LCD Poster」を,(各所からの要望に応えて)I/Oインタフェース部から外付けに変更。ケースの裏に回り込まなくてもPOST状況を確認できるようになった
- ケースに組み込んだ状態におけるオーバークロックテスト時の検証作業を容易にするため,I/Oインタフェース部にCMOSクリアスイッチ「ClrCMOS」を用意
- 「3DMark06 Advanced Edition」「S.T.A.L.K.E.R.: Shadow of Chernobyl」「Kaspersky Anti-Virus」のフルバージョン標準添付
CROSSLINXテクノロジの概要。2本めのPCI Exrpress x16スロットがサウスブリッジを経由した4レーン接続にならないため,ボトルネックが生じないという
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ずらずらとポイントを並べてみたが,まず注目したいのはCROSSLINXテクノロジだ。これは一言でまとめると,ノースブリッジとPCI Express x16スロットの間に入って,ATI Radeonが2枚差さってCrossFire動作するときにだけ,16レーンを8レーン×2に分割する機能だ。Intel製チップセットでは,これまで“X”型番の一部でしか,16レーンを8レーン×2に分割することはサポートされていないが,CROSSLINXテクノロジにより,“P”型番のIntel P35 Expressでも,8レーン×2のCrossFireをサポートするというわけである。 まあ,互換性の問題もあって,CrossFireに本気で取り組んでいるゲーマーは4Gamerの読者アンケート結果を見てもかなり少ないので,ゲーム用途における実用性は少々微妙だが,デスクトップ向けIntel製チップセットでのNVIDIA SLIが許可されていない以上,Intelプラットフォームで最大パフォーマンスを狙うのなら面白いかもしれない。 ちなみにNVIDIA SLIの実現可能性についてYu氏は「NVIDIA次第だ」と笑っていた。まあ,現時点では夢物語だろう。
Fusion Block Systemの概要
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次にFusion Block Systemは,ノースブリッジ部を水枕にして,サードパーティ製の水冷ユニットと組み合わせることでBlitz Extremeを水冷化するものだ。「一般的なマザーボードで水冷システムを導入しようとすると,水枕を取り付ける場所が複数に及び,グラフィックスカードと水枕が物理的に干渉してしまったり,複数のポイントを冷却するためにポンプを大型化する必要が出てくる。その点Fusion Block Systemでは,ノースブリッジ部に水枕があらかじめ取り付けられているので手間が減るほか,拡張カードと干渉することはなく,ポンプもノースブリッジとCPUを冷却できるだけの規模のものがあればいい」と,Yu氏はその利点を強調していた。
上段はBlitz Extremeにおける熱移動のイメージ。水冷ユニットを取り付けた場合には,ノースブリッジ部の温度が低くなるため,ここにすべての熱が集まってくるイメージだ。Blitz Extremeは空冷でも利用可能で,その場合はVRM部に熱が移動し,最終的にCPUクーラーの風でケース外へ出される。下は会場にあったデモ機とボードを撮影したもの
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BIOSに用意されているCPU Level Upのメニュー
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このほか説明に時間が割かれたのは,新たな自動オーバークロックシステムであるCPU Level Upだ。BIOSから「オーバークロックによって到達したいCPUのプロセッサナンバー」を選択すると,当該プロセッサナンバーのクロックに到達するよう,自動的に(マザーボード内部で持っているプロファイルを利用して)FSBクロックや各コンポーネントの動作電圧が引き上げられる。技術的な詳細については追って明らかになるとのことなので,続報に期待したい。
左上:CPU Level Upから,FSBクロックを500MHzに指定する「Crazy」を選択したところ,起動しなかった。そこで,一部手動で設定を行って無事起動……というデモ
右上:Loadline Calibrationと,メインメモリ用の電源回路の概要
左下:外付けになったLCD Poster
右下:熱を直接PCの外へ出せるようになったI/Oインタフェース部。「ゲーマー向けマウスやゲームコントローラはUSBが標準になったが,キーボードはまだPS/2が多い」(Yu氏)とのことで,キーボード用のPS/2コネクタが用意されている
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DDR2対応の上位モデル「P5K Deluxe/WiFi-AP」。2007年6月上旬発売予定で,予想実売価格は3万7000円前後
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なお,ASUSTeKは同時に,一般ユーザー向け「AI Lifestyle」ブランドの新製品「P5K」シリーズについても概要を公開した。Intel P35 Expressもしくはグラフィックス機能統合の「Intel G33 Express」を搭載する7モデルは,すべてが高温環境に強いとされる導電性高分子アルミ固体電解コンデンサを採用するほか,Super Memspeedテクノロジも全モデルでサポート。自作初心者が“カードの差しミス”を起こしてしまわないよう,拡張カードが正常に差さっていないときには警告LEDを点灯させる「AI Slot Detector」といったあたりが,新しい要素となる。 マザーボードの価格は従来(の同じ位置づけのASUSTeK製品)よりも若干高くなっているが,それでも,より品質を重視する方向で舵が切られていることは注目したい。かなりプレミアムな価格になると思われるBlitzはちょっと手が出ないという自作派のPCゲーマーにとって,P5Kシリーズは興味深い製品群になりそうだ。(佐々山薫郁)
括弧内は発売予定時期と予想実売価格。ゲーマーにとって意義深い,Intel P35 Express搭載モデルのみ紹介する。上段は左からDDR3対応のハイエンド「P5K Deluxe/WiFi-AP」(6月上旬,4万2000円前後),DDR2対応のエントリーハイエンド「P5K-E/WiFi-AP」(6月上旬,3万1000円前後)。下段はDDR2対応のミドルレンジ向け「P5K」(6月上旬,2万4000円前後)とDDR2/3コンボの「P5KC」(6月中旬,2万8000円前後)だ
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