AMD,2008年に投入の次世代モバイルCPU&プラットフォームを紹介
2007年5月18日,AMDは次世代モバイルCPUとプラットフォームを,2008年中頃に市場へ投入すると発表した。開発コードネームは,CPUが「Griffin」(グリフィン),プラットフォーム名が「Puma」(プーマ)となる。 GriffinとPumaは,2009年のリリースに向けて開発が進められている,GPU(グラフィックスチップ)統合型CPU「Fusion」ベースのノートPCに向けた第3のステップとされ,その中間点として,GPU(グラフィックスチップ)との“付き合い方”に,一つの動きがあった。また,消費電力低減に向けての方策もいくつか打ち出されたので,現時点で明らかになった内容を,ざっとまとめてみることにしたい。
報道関係者向け事前説明会で登壇した,日本AMD マーケティング本部 プロダクトマーケティング デスクトップ・モバイルプロダクトマネージャー 土居憲太郎氏(左),と,同社ジャパンエンジニアリングラボ(JEL)所長 福井健人氏(右) 。福井氏は架空の動物であるGriffinについて,資料を手に説明していた
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■「既存の技術を集めてフルスクラッチされる」 ■次世代モバイル向けCPU,Griffin
明らかにされたGriffinのデザイン。二つのコアに挟まれたブロックの大きさが気になるが,デザインについて具体的な言及はなかった。なお,CPUソケットの仕様は非公開
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まずはGrffinから紹介しよう。福井氏によると,Griffinは同氏が所長を務めるJELが携わってきた最初のCPUという。「Turion 64 X2」をベースに改良を加えたようなものではなく,既存のAMD64プラットフォームで培われている技術をモジュールとして集めて,「フルスクラッチで」(福井氏)一からモバイル用途のために作り上げられたCPUであり,主に以下のような特徴があるとされている。- 65nm SOI製造プロセスを採用
- CPUコアは最大2個搭載可能
- コア×2とノースブリッジ部で別々のPower Planeを持つ「Split Power Plane」構成になっており,動作クロックと動作電圧を別個に設定可能。これを利用して,CPU実行中の負荷状況に応じて2個のコアそれぞれの動作クロックと動作電圧を動的に変えられる「Dynamic Performance Scaling」を採用する。動作クロックは9段階に変化
- 大容量のL2キャッシュを搭載(具体的な容量は非公開)
- DDR2メモリコントローラの,モバイル用途への最適化(詳細は非公開)
- HyperTransport 3.0対応。消費電力を低減しつつ最大パフォーマンスを得るため,上り下りそれぞれx16/x8/x4/x2/停止と5段階の帯域幅設定を持ち,必要なときに必要な帯域幅を利用可能だ。これは後述するチップセット「RS780M」とセットで実現される
■Puma=RS780Mチップセットは ■DirectX 10&UVD対応,フレームバッファも用意
チップセットの概要。「AMD 780G」の派生的な(AMD M780G?)名称になる気配だ。内蔵グラフィックス機能について,プログラマブルシェーダ4.0に対応しているかどうか明言はされなかった
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続いてPumaプラットフォームだが,プラットフォームといっても,基本的には旧ATI Technologiesの開発チームによるRS780M(開発コードネーム)+SB700チップセットが基本的にはそのすべてである。 RS780M+SB700の概要は右のスライド,ブロックダイヤグラムは下のスライドを参照してほしい。グラフィックス機能はDirectX 10&UVD対応で,「R600のテクノロジを採用した」(土居氏)グラフィックス機能を内蔵し,システム全体の消費電力低減に貢献するというローカルフレームバッファ(下のスライドでL.F.Bとあるのがそれだ)もサポートする。ローカルフレームバッファは,スライドだとDIMMになっているが,マザーボード上にチップを実装することも可能だそうだ。もっとも搭載コストを考えると,実際にローカルフレームバッファを用意するノートPCがどれだけ出るかは議論の余地がありそうだが……。
外部ディスプレイ出力としては,HDMI Audio対応のデジタルYCbCr&RGB(HDMI)をサポートするほか,次世代ディスプレイインタフェースの一つ「DisplayPort」も利用可能となる。Intelの「Intel Turbo Memory」(開発コードネーム「Robson」)対抗となる「HyperDlash」用の独自インタフェースも,SB700側に用意される。HyperFlashは,インタフェースだけをAMDが用意し,パートナー企業が実際の製品を用意するとのこと
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PowerXpressの概要
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なお,現行のモバイル向けチップセット「AMD M690」で導入された「バッテリー駆動時は内蔵グラフィックスを利用してバッテリー駆動時間を最大化し,ACアダプタ給電時は(ノートPC内部にある)外部GPUを利用することで,パフォーマンスを最大化する」機能「PowerXpress」に関して,RS780Mでもサポートされる旨が明らかにされ,さらに踏み込んだ説明がなされた。 PowerXpressと似たような機能は,国内で販売されているノートPCですでに実装されているが,既存のノートPCでは,切り替え時にシステムの再起動が必要と指摘した福井氏によると,「PowerXpressでは,フレームバッファ内にあるデータの移動に必要な時間くらいしか,切り替え時間はかからない。最終的には,ユーザーが体感できないレベルに持って行きたい」とのことだった。
なお,PowerXpressをATI Mobility Radeonが利用できるのは言うまでもないとして,GeForce Mシリーズでも利用できるのかは気になるところだ。その点について聞いてみると,「PCI Express接続なので,RS780Mの外部GPUとしてGeForceを利用することはできる。しかし,PowerXpressはRS780Mの機能であり,旧ATI Technologies製GPUとの組み合わせでサポートされることになる」という答えが返ってきたことは,付記しておきたいと思う。
いずれにせよ,今回の説明は2008年中頃投入の製品についてのものなので,少なくとも1年以上先の話になるわけだ。ノートPC環境,そしてノートPCを利用したゲーム環境に今すぐ何かしらの影響があるわけではない。 ただ,先の「Phenom」も含めて,AMDの方向性や進捗状況がある程度示されたことは,将来のゲーム用PCをどうするかのヒントになるという意味で,素直に歓迎すべきだろう。今後も,定期的に情報が出てくるのを期待したいところだ。(佐々山薫郁)
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