「女神転生IMAGINE」,プロデューサー谷川ハジメ氏が語る開発秘話とアップデート予定,そして未来像について<前編>
ここはケイブの受付。女神転生IMAGINEのPOPがあるのはもちろんだが,アーケードの縦スクロールシューティング「虫姫さまふたり」が置いてあったり,ミニ四駆のコースがあったりと,遊び心たっぷりである
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正式サービスが開始され,いよいよ本格的に動き出したMMORPG「女神転生IMAGINE」(以下,IMAGINE)。コンシューマ版で人気を博した女神転生シリーズのファンを取り込むだけでなく,新規ユーザー開拓にも積極的に動いており,ガンホーゲームズでも6月からサービスが提供される予定だ。 先だって開催された記者発表会では,今後導入が予定される要素のいくつかがお披露目されたが,その具体的な内容までは公開されなかった。 IMAGINEの全貌はいまだ謎に包まれており,これからどのような進化を遂げていくのか,もっと詳しく知りたい人も多いだろう。かくいう筆者もその一人だ。 というわけで今回,開発兼運営元のケイブにおじゃまして,IMAGINEのプロデューサーである谷川ハジメ氏に,いろいろと話を聞いてきた。 正式サービス開始直前というハードスケジュールのさなか,記者説明会で発表された内容を踏み込んで教えてもらうだけでなく,まだ確定していない中長期的な計画についても,現時点でのプラン/アイデアを聞かせてもらえた。 なお,いろいろと有意義な話が聞けたのだが,そのボリュームが多くなりすぎてしまったので,恐縮だが前編/後編の2回に分けさせていだだく。掲載が遅くなり,読者の皆さんをお待たせしてしまったが,まずはインタビュー前編をお伝えしよう。
4Gamer: 本日はよろしくお願いします。ついに「女神転生IMAGINE」が正式サービス開始となりますが,まずは基本プレイ無料+アイテム課金というスタイルを採った理由を教えてください。
ケイブ オンラインゲーム部 プロジェクトディレクター 谷川ハジメ氏
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谷川ハジメ氏(以下,谷川氏): ケイブとしては,IMAGINEを女神転生ファンが集まる仮想コミュニティにしたいという思いが第一にあって,それはファンが集まらないと始まらない。そうなると基本プレイ無料というスタイルがいいんじゃないかというのが主な理由ですね。 ただ,質の高いアップデートを継続的に続けるには,会社である以上なんらかの収益源は必要なので,アイテム課金という形になりました。ゲーム内広告も最近は盛り上がってきていますが,まだ日本では,収益が成り立つまでには至らないですよね。
4Gamer: 女神転生ファンのためのコミュニティですか。
谷川氏: ええ。IMAGINEでプレイヤーが「居続けたい場所」を用意するのが,僕達の役目かなと考えています。
4Gamer: なるほど。そのための基本プレイ無料なんですね。
谷川氏: これはあくまでも個人的な話ですが,基本プレイ無料というのはあまり好きじゃないんです。 ゲームクリエイターとしては,やっぱりゲームデザインで真っ向勝負したいって気持ちがあるんです。直接的にゲームに対する評価が,利用料金につながるのが正攻法じゃないのかな,という考えがあります。アイテム課金制だと,有料アイテムの魅力がメインなのか,と思ってしまう部分もあるんですね。 もちろん,ゲーム自体が面白くないとアイテム課金もビジネスとして成り立ちませんから,間接的にはゲームデザインに対して対価を支払ってもらっているんですが。
4Gamer: なるほど。そういう意味では,ゲームが面白いからなのか,アイテムが魅力的からなのかは,境界線が曖昧ですね。
谷川氏: そうなんですよね。
4Gamer: ちなみに,オープンβテスト段階で,登録会員数と同時接続者数はどれぐらいですか?
谷川氏: 会員数は約13万人で,同時接続だと数千人の規模ですね。
4Gamer: 思いのほか少ないような気もしますね。
谷川氏: これには理由があるんです。このゲームには,ギルドメリットみたいに接続時間が長ければ得になるシステムや,接続したままでトレードを自動処理する露店みたいな仕組みを実装していないんです。 なのでプレイヤーの皆さんは,ゲームを遊び終えるとログアウトするって傾向がありますね。あとは,BOTみたいな自動実行ツールを使ったキャラがほとんどいないというのがあります。だから同時接続者数は,純粋にゲームをプレイしている人の数字なんです。
4Gamer: なるほど。会員数については,事前の予想どおりの数といえますか?
谷川氏: あまり伸びなかったな,というのが正直な感想ですね。クローズドβテストで8万人以上の応募があったことから考えると,もうちょっと伸びてもよかった気がしますね。ただ,この数字に関しては予想の範疇だったので,悲観も楽観もしてないです。といっても,かなり下のほうではありますけど(笑)。
4Gamer: これからはどれぐらいの伸びを期待していますか?
谷川氏: 今のところいい感じなんですよ。オープンβテスト開始後のアカウント登録数の伸びはけっこうよいので。IMAGINEをプレイするために必要なPCスペックの引き下げ施策に取り組んでいて,さらに多くの人にプレイしてもらえるよう努力しています。
■IMAGINEとしての制作期間は10か月半程度 ■作業の絞り込みとプロトタイピングの省略が重要?
4Gamer: では続いての質問です。本作は,「真・女神転生オンライン」として開発がスタートし,その後,紆余曲折あってIMAGINEとしてリリースされたわけですが,IMAGINEとしての制作期間はどれぐらいですか?
谷川氏: クローズドβテストが始まったのが2006年の11月で,私がIMAGINEに参加してから,そこまで持っていくのに10か月半※ぐらいですね。
※真・女神転生オンラインからIMAGINEとして再スタートし,基本的な企画変更やMMO化など準備期間含めると,ケイブとしては1年3か月程度要したとのこと。
4Gamer: 1年切ってるんですか? それは驚異的に短いですね。
谷川氏: 参加するとき,最初に「1年以内にサービスインする」と決めていたので,まずは短期間で確実にリリースできる道を考えました。まあ,結果的には1年以上かかっちゃいましたけど(笑)。 具体的には,絞り込みとプロトタイピングの省略ですね。アイデア自体はいっぱいあったんだけど,あんなことやこんなことができます,って作っちゃうと広がりすぎて1年ではできなかったので,絞って絞って最低限必要なものだけにしました。
4Gamer: そぎ落とす作業をとことんやったわけですね。確かに,クローズドβテストが最初に始まったときは,本作のメインともいえる悪魔合体すら実装されてませんでしたもんね。
谷川氏: ええ。ミニマムな構成でスタートさせようということですね。そのために,いろんなゲームのリファレンスを行いました。それがプロトタイピングの省略ということなんですが。
4Gamer: リファレンスというと?
谷川氏: 言葉どおりなんですが,ほかのゲームの素晴らしい部分を参考にしています。もちろん,女神転生らしいアレンジなり消化なりはしていますが。 というのも,これだけゲームが世にあふれている状態で,まったくのオリジナルを作るというのはとても難しいことだし,それが最も優れているとも限らないです。すごくいいものがあるんだったら,それは使わないと。だから,「このゲームは僕の脳内からすべて絞り出しました」なんてことは決して言いません。
4Gamer: 確かに,どのゲームでも,多かれ少なかれ過去のゲームに何らかの影響を受けていると感じますね。
谷川氏: また,まったくのゼロからスタートしたら,今だったら開発に5〜6年はかかりますよね。とにかくタイトルを出してプレイヤーに提供しないと,ゲームの業界が盛り上がっていかないでしょう。また,開発に時間がかかるというのは,開発者にとってもよくないことだと思うんです。
4Gamer: それはどのようなことがよくないのでしょうか?
谷川氏: 20代から30代のいい時代に,1〜2年という短いサイクルでゲームを作ることを経験してきた人は,その後,どこにいっても短い期間でゲームを出せるようになります。3年以上かかってもリリースされないようなゲームの開発にしか携わっていない人は,やはりゲームを短期間では出せません。そんなクリエイターを育てても仕方がないので。
4Gamer: なるほど。含蓄のある言葉ですね。プレイヤー側としても,ゲームは開発期間が短いほうが嬉しいですね。
谷川氏: なんか話がそれちゃいましたね(笑)。
4Gamer: では,次の質問を。2月にオープンβテストをやるという発表が急遽なされたわけですが,この理由を教えてください。
谷川氏: 当初の計画では,オープンβテストをやるつもりだったんですよ。ただ,実際にクローズドβテストが始まってから,思ったよりも長引いてしまったんですけど,正式サービスの開始時期はずらしたくなかった。それでオープンβテストは省略しちゃおうと思っていたんです。 クローズドβテストに参加してくれたプレイヤー達ときっちりやれば,いきなり正式サービスにうって出ても勝算は十分あるだろうと。
4Gamer: それがなんでまた方針を変更したんですか?
谷川氏: 2007年の頭に,原点に戻って「いや,待てよ。プレイヤーにトライアルの期間で評価してもらうことが必要なんじゃないか」と思い至ったんです。このまま正式サービスを始めたとして,リテールパッケージがいきなり売れるほど,完成度の高いものを僕達は示せていないんじゃないかな……と。 なので,もっと広い層のプレイヤー達にIMAGINEをテストプレイしてもらって,完成度をさらに高めたいという主旨で,オープンβテストをやることにしました。
4Gamer: ちなみに,当初の予定ではいつ頃正式サービスを開始するつもりだったんですか?
谷川氏: 本当は3か月くらいでβフェーズを終わらせて,2007年初頭に始めたかったんです。電撃的に(笑)。
■「女神転生IMAGINE」の海外展開も視野に ■近日中に実現するなんてことも?
3月27日に行われた発表会で登壇したときの谷川氏
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4Gamer: 2007年6月に,ガンホーゲームズでのサービスが始まります。並行パブリッシャでの運営を提供した理由,ガンホーさん※をパートナーとして選んだ理由を教えてもらえますか?
※ガンホー・オンライン・エンターテインメント
谷川氏: 女神転生ファン以外の新しいプレイヤー層を獲得したいという面での期待ですね。ガンホーさんはオンラインゲームの老舗で,運営面で経験が豊かなので頼りにしています。
4Gamer: そのほかのパブリッシャについてはどうでしょう? 海外展開の可能性もあったりしますか?
谷川氏: 海外展開はぜひやりたいですね。アジア/欧米を問わず,家庭用ゲーム機で女神転生シリーズが発売されているので,成功する可能性はあると思います。 また,MMORPGの輸入物といえば韓国産のものがメインですが,日本発のものも出したいなあと。現地のパブリッシャも直近で出せるタイトルを求めているようですし。
4Gamer: 求めている? ということは,すでに話が進んでるんですか?
谷川氏: ええと,そのあたりはノーコメントとさせてください。 ただ,日本語はマルチバイト文字なので,アジアにせよ欧米にせよ,ローカライズするときの作業は比較的楽だと思います。 ローカライズでは,美しさというか言葉にこだわりたいので,最終的には現地の人に翻訳をしてもらうつもりです。現地の人じゃないと意味がおかしいって気がつかないところってあるじゃないですか。
4Gamer: 確かに,翻訳はゲームを楽しむうえで重要な要素ですもんね。ローカライズといえば,フィールド内の表記とかはどうでしょう? 場所によっては,新宿とか思いっきり漢字で書いてあったりしますが。
谷川氏: あぁ,それがありましたね。ゲーム内に“絵”としておいてあるものは,よっぽどの要求がない限りそのままですね。日本が舞台という設定なので。
■今後もダンジョンを優先的に実装予定 ■“横殴り”の問題解決も図りたい
4Gamer: では,今度はゲームの内容についてお聞きしていきます。IMAGINEで,物語のベースを「真・女神転生I」と「真・女神転生II」の間である空白の10年に設定したのはなぜでしょう。
谷川氏: 真・女神転生シリーズは,Iが現代劇で,IIが近未来劇です。その間が10年空いていて,「この間に何があったんだろう?」という僕らなりのテーマは前からあったんです。 そこを突いていければ,“もしも”の物語を作れるなと思ったのが最初ですね。IとIIの間を補完するものを提示する義務が,後進の開発者である我々にはあるんじゃないか,と思って作りました。 ただ,今回僕らが“もしも”の物語をIMAGINEで提示しましたけど,これが正解で絶対正しい,とは思ってないんですよ。IMAGINEで表現した僕らなりの「空白の10年」があるように,女神転生シリーズのファンそれぞれにとっての「空白の10年」があると思うので。
4Gamer: 確かに,空白の10年について自分なりのイメージを広げているコアなファンもいるでしょうね。
谷川氏: ええ,だからそこを否定するのではなく,想像するという“IMAGINE”なんです。 今回,10年ぶりくらいに女神転生シリーズの開発に携わることになって,本当に楽しいと感じています。以前は,自分らしい斬新なゲームデザインなんかにプライオリティを高くおいていて,続編じゃないものを作りたいなあって気持ちもありましたから。続編はスケールアップ,ボリュームアップしか活路を見いだせないという流れになりがちですよね。作るのが難しいです,正直に言うと。
4Gamer: 先にできあがったものがあると,縛りも多くなりますね。
谷川氏: でも今回,IMAGINEの話をもらったときは,純粋に「ああ,久々に『女神転生』作りたいな」って思えましたね。続編であっても面白いものを作ろうというモチベーションが持てるようになりました。今回,アトラスさんとの共同開発ということもあり,僕のずっとあとにアトラスに入って女神転生を作っていたスタッフが,今IMAGINEを一緒に作ってくれてたりするので,とても楽しいです。
4Gamer: では,そろそろIMAGINEのゲーム内容についての質問に移りたいと思います。正式サービス開始時にプライベートダンジョンが増えましたね。追加されるのはフィールドじゃないかと推測していたのですが。
谷川氏: 当初の計画はもっとオープンフィールドのほうが多く,できあがっているものもあるんですが,あとから作ったダンジョンでも,ほかの要素よりも先に入れてますね。
4Gamer: それはなぜですか? ダンジョンをいろいろ攻略できるのって,いかにも女神転生っぽくていいとは思うのですが。
谷川氏: それはこちらも同じことを考えているんですよ。「ダンジョンこそ女神転生だ」という人も多いですから。 開発としても,女神転生らしさを強調するには,ダンジョンを多く入れたほうがいいんじゃないかと思ってます。オープンフィールドで女神転生“らしさ”を表現するのは難しくて,いま苦労しているポイントでもあるので。
4Gamer: そのほかにも理由はありますか?
谷川氏: ダンジョンを多くした理由としては,限定した空間に人を入れておきたいという開発側の狙いもあるんですね。“横殴り”の問題※をなんとかしたいんです。
※IMAGINEでは,敵悪魔を倒したときに,攻撃を加えたキャラクターで経験値が分配される。それを利用して,他プレイヤーが戦闘中の悪魔に攻撃することで,経験値の一部を横取りする行為を指す。
4Gamer: なるほど。プライベートダンジョンだとパーティを組んでいるわけですから,横殴りの概念というか,そう思われることが起きないですね。
谷川氏: ええ。ただ,それで解決というわけじゃなくて,ほかにも対応策を考える必要はまだまだあるんですが。 ちなみに,ダンジョンの入場メンバーを5人に制限しているのは,フレームレートを落とさず表示できる限界と,プレイヤーが把握できる人数から決めています。サーバーでマッシブに処理しているという点ではフィールドと変わらないので,MOダンジョンって表現は正しくないんですけどね。ゲーム設定に限った話です。 やろうと思えば,50人でもできるんですよ。ただ,そんなにいたら描画が遅くなるし,誰が誰だか分からなくなっちゃいますよね。
4Gamer: 確かに,街なんかで人が増えるとフレームレートが一気に下がりますね。ボス戦なんかでフレームレート落ちてカクカクになったらかなりしんどそうですね。
谷川氏: さっき出た話ですが,ダンジョンだけじゃなくてフィールドでも横殴りの問題は解決させたいと考えているんです。それが解決すれば,フィールドはもっと活用できる場所になると思うんですが,まだ具体的な対応策は思いついていません。 あとは,戦闘以外でアイテムが手に入る要素が実装されれば,多少緩和されると思うんですけど。……難しいですね。
■IMAGINEでは“転生”ではなく“憑依”? ■2人め以降のキャラクターを作成する必然性
4Gamer: 正式サービスで,レベルキャップが60まで一気に引き上げられましたね。
谷川氏: 最初は50まで,って計画だったんですけど,僕の意見で変更しました。レベルキャップが存在するのは,悪魔を用意する制作限界という理由もあるんですけど,IMAGINEを遊んでいる人は強い悪魔を仲魔にしたいでしょうから。
4Gamer: IMAGINEでは,レベルを上げる目的が「強い悪魔を仲魔にする」って,ハッキリしていますよね。
谷川氏: そうですね。IMAGINEの場合は,自分を強くするためとか,次のフィールドへ進むためとかいうよりも,いろんな悪魔と交渉して合体させて連れて歩きたいから,という方向にレベリングの目的が集約されるんです。
4Gamer: レベルが上がると同時に,最寄りの邪教の館に駆け込みますもんね。
谷川氏: プレイヤーの皆さんは早くシヴァを作りたいでしょうし,レベルキャップとかはやめようと。出し惜しみせず,なるべく早い段階でレベル99に到達できるようにしようと考えています。ちなみに,女神転生シリーズの慣例にのっとって,レベル上限は99にするつもりです。
4Gamer: それだと,すぐレベル上限に達しちゃいそうですね。
谷川氏: まだお話しできませんが,レベル99以降もお楽しみはもちろん用意してますよ。純粋なやり込み要素ですね。ヒントを出すと,レベルが上がったときに,「メインキャラ」と「サブキャラ」に女神転生らしい因果関係を持たせようと。
4Gamer: ……それは転生ですか?
谷川氏: 転生もアイデアとしてはあったんですが,僕の中では“憑依”で固まりつつありますね。まだ構想中の段階でしかありませんが。 正式サービスから,2人め以降のキャラクターを作成できるようになるので,プレイのある一定のポイントで,肉体と精神についてのテーマを扱いたいんです。
4Gamer: そのテーマは女神転生っぽいですねぇ。
谷川氏: でしょう(笑)。プレイしている人がいうところの「キャラ」と「中の人」の考えを,MMOゲームのバーチャルと重ねたいんです。アカウントのキャラクターを使っているのはプレイヤーである私です,という考え。そこになにかしらのエッセンスを入れて,システムで表現したいんですね。 プレイヤーが操作しているのは精神,キャラクターは肉体。ということがある日分かるという。それを“憑依”という形で表現できれば面白いかなって考えています。
4Gamer: ……憑依,ですか。
谷川氏: これが成立すると,キャラクターA,B,Cを一人のプレイヤーが操作しているのも説明がつくんですよ。Aで育てた精神をBに入れてといった影響の仕方も考えられますし,ゲームにも必然性が出てきますよね。過去の経験というのが別のキャラクターに生きてくるとか,成長にいろんなキャラクターでのプレイ体験が影響するようにしたいなと。
4Gamer: 確かにそれは面白そうですね。難しそうですけど。
谷川氏: このシステムに関しては,自分のアカウントだけじゃなくてもいいんじゃないかと思ってます。友達が持っているキャラクターに自分の精神を入れる,みたいなことも出来れば楽しいでしょうから。同じようなことをやっているゲームがあまりないので,これは挑戦になるんですけど。 例えば,キャラクターのレベルを上げるには時間がかかるので,初めてプレイする人がIMAGINEの本当の楽しさを知るまでは時間がかかりますよね。でも,ちょっと友達の高レベルキャラクターを貸してもらえば,ゲームの楽しさを先取りして体験できます。 また,プレイヤー同士でも,近接武器タイプとガンナータイプそれぞれを育成するのは時間がかかりますが,それも友達のキャラクターをちょっと貸してもらえば,育成傾向を体感できるのでメリットになるかなと。
4Gamer: なるほど。単純にシステムとしても便利そうですね。複数キャラクターを持つ必然性があるMMORPGって見たことがないので,ぜひ見てみたいですね。
谷川氏: レベルが低いから一緒に冒険できないよ,みたいなときに,武器をあげるから一緒に行こう,みたいな感覚で,じゃあセカンドキャラ貸してあげるよ,みたいな。高レベルのキャラクターを借りて,冒険に出かけるとかね。それができれば,初心者でもいきなり強いキャラで爽快に遊べるから楽しいでしょう。
4Gamer: 遊び方にも幅ができそうですね。
谷川氏: MMORPGって,プレイヤーは別人格を作るつもりでキャラクター制作をしますけど,それを扱っているうちに自分と同化してくるんですね。愛着が湧くというか。そうすると,また別の変身願望が出てくる。そこで別のキャラに憑依できるようにしておけば,その願望も満たされますし。 ……まぁ,まだ全然固まっていないアイデアなんですが,将来的には入れたいなって。
4Gamer: 今しゃべっちゃうと,ほかのゲームで使われちゃうかもしれませんよ?(笑)
谷川氏: それはもう作り手としては本望です。もしこれを見て,ほかのクリエイターさんが「これいいな」と思ったのであれば,どんどん使ってくださって構わないですよ。だって,僕らだってほかのゲームのいい部分からインスパイアを受けて,ゲームを作ってるんですから。
■消耗品は有料だけではなく同類のアイテムも用意 ■目下の課題は「マッカ余り現象」の改善
4Gamer: では続いて,有料アイテムについて教えてください。消耗品では,CPを消費して買うものと同様のものをゲーム内で手に入れられますか?
谷川氏: はい,消耗品については,基本的に同類のものがありますね。ただ,効能はCPを消費して買うアイテムのほうが高いです。 衣装については,有料アイテムのアドバンテージは見た目だけです。とくに性能に優れているというわけではありません。こちらはどちらかというと,自己表現のためのアバター的なものです。アドバンテージがあるとしたら,長い間着られるように耐久値が高くなっているところですね。
4Gamer: それらの耐久度を増やすアイテムなどは発売されませんか?
谷川氏: いまのところ計画してないです。プレイヤーの皆さんから,同様のご意見を多数寄せていただいているので,それをくみ取りながら検討して,バランスを取っていきたいとは思っているんですが。 狩りという行為で,世界にどんどんマッカが生み出されると,それをなんらかの形で消費させていかないといけません。そこでアイテムを元通りに戻せてしまうと,いつか世界にマッカもアイテムもあふれてしまいます。世界として健全でなくなっちゃうんですよね。
4Gamer: ゲーム内の経済が破綻してしまうわけですね。
谷川氏: そうですね。お金もアイテムも,ルールの必然があって減らしていかないといけない。そういう意味でアイテムには耐久値を設定してあります。ただ,マッカについては,“余り現象”を指摘されているので,なんとか対策を考えなきゃいけないんですけどね。 これの理由は分かっていて,正式サービス前はアイテム数を絞っていたこと,エンチャントや改造といった要素が入っていないことで,ゲーム内でマッカを使うという手段が少ないためです。近いうちに,この対策もしなきゃいけないとは考えています。
4Gamer: アイテムといえば,トレード機能でレアアイテムを「売ります」「買います」ってのをよく見るんですが,トレードリストを新規作成するとき,参考価格が入っているのっていいですね。
谷川氏: 日本人って,売る側も買う側も相場をすごく意識するでしょう。あれを入れておくと,トレードしやすいと思うんですよ。相場価格を表示しておくことで,売る側にもメリットが出ます。 今は,評価値が決まっていますけど,最終的には,ユーザートレードの結果集計を反映して,本当の相場みたいにデイリーで更新するというシステムにしたいと思っています。
4Gamer: なんか生々しいまでにライブ感がありますね。
谷川氏: ちょっと詳しく説明しましょう。そのシステムでは,取り引きが成立すると,現在の相場価格を足して2で割って,新しい相場価格が出るというのを延々と繰り返していくような感じですね。試作版を作ってみたのですが,いい感じの数字を出すし,取引件数が増えるほど正確になっていきますね。 導入するとしたら,取り引きが少ないアイテムについては精度が低いので,取引件数が一定の係数以下だったら見送って参考価格が入るという形になるんじゃないかなと思います。
4Gamer: トレードも面白くなりそうですね。
谷川氏: トレードでは別のことも考えていて,標準取り引き額の範囲を定めて,その範囲外の取引はできないようにしたいんですよ。今のトレードって,売る側がだいたい底値をつけて,無意識にダンピングする傾向があったりするので。正当な評価をシステムが保全することで,売る側にもメリットがあるようにしたいんです。
4Gamer: なるほど。売る側にやさしいっていうのは,トレードが活性化しそうでいいですね。
谷川氏: あと,いわゆる業者さんが,特定のアカウントにアイテムやマッカを集中させにくくするという意味もあります。業者さんに「やめてください」といってもやめてくれないと思うんで,システム的にやりにくくしてしまおうという。 ケイブとしては,IMAGINEの運営と開発の両方を行っているので,その強みを生かして,ソフトウェア上でBOT,チート,マクロについて対応し,それでもできないものは人的に,というようなアプローチをしてみたいなと。そういうものを生み出さない世界の仕組みを考えるということも僕らの役割ですね。もちろん,実際の導入についてはプレイヤーの意見を聞くなど,慎重に行う必要があると考えてます。
4Gamer: 法の整備に近いものがありますね。
谷川氏: そうですね。開発は面白いゲームを作るだけじゃなくて,その世界がどうあるべきか,考えないといけません。システム上でアンフェアなものが噴出すると,そのゲームそのものがダメなものになってしまう。運営だけの会社ではなかなかできないことを,僕らは考えていかないと。それがケイブらしさかなとも思います。
……と,話が盛り上がってきたところで恐縮だが,かなりのボリュームとなってしまったので,今回はここでいったん終了。今後のアップデートについての具体的な話や,谷川氏が抱くIMAGINEの未来像など,本インタビューの後編は4月20日(金)に掲載予定なので,ちょっとだけ待っていてほしい。(ライター:midi,photo by kiki)
インタビュー後編は「こちら」
(2007年4月2日収録)
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