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中国IDFで発表されたIntelの新アーキテクチャ「Larrabee」の謎
2007/04/17 15:42
 インテルは中国で行われているIntel Developer Forumで,20を超える新製品や開発計画を明らかにした。そのなかには,すでに4Gamerでも紹介されている45nmベースの次世代CPU「Penryn」なども含まれるのだが,注目すべきはコードネーム「Larrabee」について,初めて公式情報が出てきたことであろう。

### 以下リリースより ###

 ゲルシンガーはまた、IAベースのプログラミング可能な高並列アーキテクチャーを基にした「Larrabee」(開発コード名)の開発を始めたと話しました。
 Larrabeeは、既存の多くのソフトウェアを使ったプログラミングが可能であり、一秒に何兆回という浮動小数点演算を行えるテラフロップ性能へと拡張できる設計になっています。Larrabee アーキテクチャーでは、科学技術計算、認識、検索、合成、視覚化、財務分析、医療アプリケーションなどに対応した機能が拡張される予定です。


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 ではLarrabeeは次世代Direct3Dに対応した単体GPUといわれているのだが(この発表以前のgoogle検索で10万件以上Hitする),今回の発表を見る限りIA(インテル・アーキテクチャ)ベースの高並列アークテクチャを使ったプロセッサと明記されている。念のために英文リリースを見ても,

Gelsinger said that Intel has begun planning products based on a highly parallel, IA-based programmable architecture codenamed "Larrabee."

のようにIAベースのアークテクチャとなっている。通常,「IA」といえば,IA-32またはIA-64を指す。となると,Pentium互換ないしItanium互換のコードが実行できるという意味に取らざるをえないのだが,単体GPUでそのような無駄の多い処理を行うとは考えにくい。

 処理内容としては,昨今のGPUと同等の「テラフロップス」単位の浮動小数点演算が実行できる,プログラム可能な高並列プロセッサということで,GPU内のストリームプロセッサと機能的にカブる部分は大きい。現状のアプリケーションで最もこの手の処理が必要とされているのは,シェーダプログラムであることも事実であろう。
 CPU統合型グラフィックスコアであれば意味は通るのだが,それなりにハイエンドな製品と仮定すると,予想されるダイサイズや消費電力から考えて,そこまで特異な製品を作るメリットというのはほとんど見出せない。
 あるいは,DirectX 11(?)世代のGPUでは,IA-32ないしIA-64のコードを直接実行できるようにするとも取れるが,まあ,そんな無駄の多いものをインテル以外のメーカーが許容するはずもないだろう。確かに,GDCの講演などでは,DirectX 10.1以降のGPUでは,汎用プログラムの実行を強化する方針とはなっているのだが……。
 
 実際のところ,今回の発表ではLarrabeeはGPUであると明言されているわけではなく,素直に読めば,高並列の浮動小数点演算機能(SSEの強化版?)を搭載したCPUアーキテクチャの開発発表である。
 問題は,シェーダ処理に使用できるかどうかだが,シェーダ処理に使わないのであれば,HPC(科学技術計算など高性能を必要とする処理)専用のアーキテクチャと予想される。この場合は,4Gamer的には縁がない話である。シェーダ演算で使えるものであれば,頂点シェーダやジオメトリシェーダはともかく,ピクセルシェーダをCPU内で処理するのはオーバーヘッドが大きすぎる。GPUの演算部分を補うものとするには,GPUコアそのものをCPUに内蔵した統合型にするしか手はない。
 巷で噂されていた単体GPU開発計画が変更されたのか,はたまた周囲を煙に巻くため紛らわしい表現(誤解の余地はほとんどないのだが)を使ったのか,それとも本当にIAベースのGPUなのか。疑惑のプロセッサLarrabeeの続報に注目したい。(aueki)


そのほかのハードウェア
■開発元:各社
■発売元:各社
■発売日:-
■価格:製品による

【この記事へのリンクはこちら】

http://www.4gamer.net/news/history/2007.04/20070417154239detail.html