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AMD,Torrenzaの進捗状況を解説。実機デモンストレーションも
2007/03/14 22:35
説明会でTorrenzaの現状について説明するDavid Rich氏(Director, Commercial Solutions, AMD / President, HyperTransport Consortium)
 AMDの日本法人である日本AMDは14日,AMDの推進するコプロセッサ戦略「Torrenzaイニシアチブ」(以下Torrenza)の進捗状況を解説する報道関係者向け説明会を開催した。
 4Gamerでも何度かレポートしているので憶えている人もいると思われるが,Torrenzaは,CPUとそれを補助する「コプロセッサ」を組み合わせて,システム全体の処理能力向上を図ろうという,AMDの将来構想のひとつだ。コプロセッサは一般に,PCI Expressなどの汎用バスへ接続して用いられるが,TorrenzaではHyperTransport接続の拡張バス「HTX」のスロットに接続することで,低レイテンシでメインCPUとデータのやり取りができる選択肢が用意されているのが特徴だ。

データ量は飛躍的に増大しており,CPUの性能向上との間にギャップがある。そのギャップを埋めるのがTorrenzaだとRich氏
 説明会では,AMDの商業向けソリューション担当ディレクターで,HyperTransportの普及を目指す「HyperTransportコンソーシアム」の会長も務めるDavid Rich(デイビッド・リッチ)氏が登壇。
 「CPUの性能上昇と,処理すべきデータ量の増加との間にはギャップがあり,そのギャップを埋めるのがTorrenza」と述べ,パートナー各社がHTXカードの開発を進めていることや,また将来の展開として10GbitイーサネットやGPGPU(General-Purpose GPU),マルチエレメントSIMDなどがあり得ると説明した。

 さて,氏の説明は(残念ながら)さほど新味のある内容ではなかった。その分注目を集めたのがTorrenzaの実働デモだ。今回は,HTXスロットを搭載するTyan Computer製マザーボードをベースとしたデモ機が用意され,いわゆる設計ソリューションプロバイダの一社であるCeloxicaの日本法人,日本セロックシカによる,HTXカードを利用したデモが行われたのである。

デモ機の中身。Opteron 2000シリーズを搭載したデュアルCPU構成だ
 Celoxicaは,独自のコンパイラ技術でスタートした企業だが,現在はFPGAやCPLDなどプログラマブルロジックの設計ソリューションを手がけている。プログラマブルロジックというのは簡単に言うと「内部の回路が自由に変えられるLSI(≒チップ)」で,CPUとは違い回路そのものをプログラムで変更できる。
 開発には,Xilinx製FPGAの場合は「Verilog」などといったように,独自の言語が使われる――最近ではC言語に近い「SystemC」などという言語も使われている――のだが,Celoxicaはコンピュータ上の一般的なプログラミング言語で作成されたソフトウェアをプログラマブルロジックに落とし込む技術を持っているという。要するに,一般的なソフトウェアによる処理の一部をハードウェアに置き換えられるわけである。
 CeloxicaのHTXカード「RCHTX」はXilinx製FPGA「Vertex-4」を搭載しており,Vertex-4をプログラムすることで,さまざまな用途に対応するコプロセッサとして機能させられる製品だ。CPU単独で計算するのに比べ,財務処理(モンテカルロ法を利用した投資関係のシミュレーション)は24倍,石油・ガス探査における人工地震データ処理は26倍,遺伝子探査の処理では64倍もの高速化が達成できるという。

RCHTXと,同カードが接続されていたHTXスロット(写真中央にある3本のスロットの一番上)。RCHTXには,一つヒートシンクの貼られたチップがあるが,これもVertex-4


 正直,難しすぎて何が何やらという人もいると思うが,4Gamer的には「Torrenzaによるコプロセッサの威力は相当なものなのだ」と捉えておけば十分だろう。RCHTXは,ほとんど“FPGAが載っているだけ”のような製品だが,FPGA自体は安価なチップだから低コストで特定の処理を高速化できるわけで,学術計算や時間が重要なビジネスなど,ハイパフォーマンスコンピューティングの分野から注目を集める可能性は高そうである。

人工地震データの処理が24倍になるとされ,「CPU単独の処理ではコマ送りにしか見えなかった画像が,RCHTXを利用するとリアルタイムのアニメーションのように動く」というデモも行われた


RCHTXはすでに入手可能なTorrenzaソリューションであると謳うスライド
 もっとも,我々一般PCユーザーが今すぐTorrenzaの恩恵を受けられるかというと,(ここまででうっすらと気づいている人も多いと思うが)どうやらそういう状況ではなさそうである。
 コプロセッサにおいては,「膨大な計算の繰り返し」ほどハードウェア化しやすく,また効果が上がりやすく,この種の計算は,デモで実例が示されたような科学技術分野やシミュレーションには非常に多い。しかし一般向けのソフトでは,それほど多くある処理ではないのだ。

 ゲームという観点から考えると,すでに拡張カードが投入されている物理計算はTorrenza向きといえるのだが,ゲームで利用できるようにするためにはAPI(アプリケーションプログラムインタフェース)の整備が必須になる。だが,今回の説明会では,たとえばWindowsにおいてAPIをどうするといった話はまったくなかった。
 Torrenzaは今のところ,科学技術計算などといった特定用途に向けたソリューションといっていいだろう。HTXスロットを搭載するマザーボードや,実働するHTXカードをこの目で見られたのは収穫だが,この技術がゲーマーのところへ降りてくるまでには,まだ相当な時間がかかりそうだ。(米田 聡)


そのほかのハードウェア
■開発元:各社
■発売元:各社
■発売日:-
■価格:製品による

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http://www.4gamer.net/news/history/2007.03/20070314223522detail.html