「生きる」が意味するゲーム展開は? MMORPG「エミル・クロニクル・オンライン」,2007年の施策をめぐるインタビュー
今回取材に応じてくれた3人。中央が制作担当 岩田容賢氏,右が宣伝担当 山本征幸氏,左が宣伝担当 佐野圭介氏
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大型アップデート「SAGA 5」の第1弾が実装されて10日。正式サービス1周年を記念するアニバーサリーイベントも同時開催されて,連日賑わいを見せるMMORPG「エミル・クロニクル・オンライン」(以下,ECO)の世界だが,そんなタイミングで,ガンホー ECO制作担当の岩田容賢氏,宣伝担当の山本征幸氏と佐野圭介氏に時間をもらって,今回のアップデートに関する詳しい情報や,第2弾以降のSAGA 5,そしてSAGA 6をはじめとするその先の展開などについて話を聞いた。 いささか気の早い話ではあるが,来年(2007年)のECOが何を課題とし,どういった展開になるのか,制作者の談話から読み取ってほしい。
■新たなストーリーの出発点「トンカ」
制作担当 岩田容賢氏
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4Gamer: 本日はよろしくお願いします。まずは無事第1弾が導入されたSAGA 5について。以前のインタビューで,SAGA 4でECOのひととおりの要素が揃ったとお聞きしましたが,だとするとSAGA 5は長い目で見て,次なる展開への入り口なのでしょうか? それとも逆に,SAGA 4までを補足する存在なのでしょうか。
制作担当 岩田容賢氏(以下,岩田氏): どちらの要素も含んでいますが,新しいステップと位置付けています。ECOで最初に企画していた,中央の都市と東西南北4か国が揃ったという意味で,SAGA 4で一区切りついたのは確かです。 実際,ECOの重要な要素である飛空庭が作られる場所としての「トンカ」の構想は作品企画段階からあったのですが,その実装は前述の4か国を作ってからと考えていまして,大陸内ではないどこかにある,という設定に留まっていました。
4Gamer: なるほど,予定そのものはあっても,細かく決まっていたわけではないと。
岩田氏: ええ。飛空庭がどういうもので,どんな位置づけにあるかという部分を先に描いてから,それを補足する形でトンカの細部を決めていったのです。結果として,現在の「飛空庭とマリオネットの島」という形になりました。その意味で補足要素でもありますが,実を言うと,次の展開につながる要素はすでに盛り込まれています。
4Gamer: 一番気になるのは次の展開につながる部分なのですが,まずはトンカそのものについてお聞きします。トンカでは町の景観のみならず,NPCのデザインまでもが,ほかの地域とは異なります。今後の新規実装地域でも,こうしたコンセプチュアルなデザインが適用されるのでしょうか。
岩田氏: そうですね,例えばトンカのNPCについて言うと,作品企画時の仕様書段階からラフデザインがありまして,それが反映されたものです。そうしたデザイン画は,主に作品立ち上げの段階でちょっとずつお目にかけていますので,逆にどこかで見たという記憶のあるプレイヤーさんもいるかもしれませんね。
4Gamer: おお,そんなに早期から絵柄があったんですね。
岩田氏: NPCはとくにそうですが,新たな都市や地方が増えていく場合,そこに合った新たなものが配置できるようにしています。従来の例で言うと,寒いノーザン地方の女の子が防寒用にフードをかぶっているというのがそれに当たります。今後とも基本的に――イベントや特別なダンジョンなど大がかりな設定がある場合,それが優先されてNPCが既存のものになることもありますが――地域のカラーを打ち出したものにしていきたいと思っています。
4Gamer: トンカはいわばマリオネストとマシンナリーの町ですが,マリオネスト総本山やマシンナリー本部では,今後職業に関わるイベント/クエストが提供されるのでしょうか。
岩田氏: その予定です。ファーイーストでは,バックパッカー系のギルドマスターが集まっている寄り合い所があって,そこでイベントやクエストが受けられる,といった形になっていましたが,まだトンカではそうしたものが設定されていません。ただし,マシンナリー本部ではご存じのとおり,マシンナリーが乗れる「二足歩行ロボット」の染色ができるようになっていたりと,すでにいくつか特殊なイベントが用意されています。 とはいえ,まだまだ「本部」といった名称に見合うだけの数は用意されていないので,今後順次実装していきたいと考えています。
■新ネコマタ「茜」と新マリオネット「ピーノ」
宣伝担当 山本征幸氏
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4Gamer: では次に,今回新たに実装されたネコマタ「茜」と,マリオネット「ピーノ」の楽しみどころについて教えてください。
岩田氏: 茜に関しては,これまでのネコマタと同様に,入手クエストでさまざまな設定が分かるようになっています。最初は主人公以外の者に憑いているネコマタが,どんな性格やどんな設定で,どのようにして「ネコの魂」が引き継がれるかといったところですね。 また,これもこれまでのネコマタイベントと同じく,ほかのネコマタを連れていくと全員がしゃべりますので,より詳しく分かると思います。それ以外にもいろいろな状況に合わせてしゃべりますので,聞いてみてください。すべて確認するのはなかなか大変かもしれませんが(笑)。
4Gamer: 確認もそうですが,作るほうが大変ですよね,これ。
岩田氏: うーん。考えてみると例えば次のネコマタのセリフは,茜がしゃべるぶん増えるわけで……一度やり始めてしまったら後には引けないわけですけど,実は大変だなあと(笑)。ただし,茜はいまのところ最後に得られる形になっていますので,茜を入手してからほかのネコマタのイベントをやった場合,さすがに茜に合わせたセリフが出る,ということはないですけどね。
宣伝担当 山本征幸氏(以下,山本氏): ゲーム内で一緒にいた人が既存のネコマタ全員を連れていて,一緒に話を聞かせてもらいました。そのとき僕はネコマタの藍ちゃんを連れていたんですけど,藍ちゃんだけでは聞けない話とかがあって,ちょっと悔しかったです(笑)。
4Gamer: 一ファンとしての感想というわけですね(笑)。では,ピーノについてはどうでしょうか。
岩田氏: ピーノの入手イベントでは「マリオネットってそもそも何なの?」というところが,ある程度理解できます。ただしこのクエストは,どちらかというと今後の展開の布石になっています。ピーノ自体については,トンカのNPCにいろいろ聞いてみるのがよいと思います。ちなみに性能は,テクニカルジョブ「マリオネスト」のスキルで扱えるものと同等です。
4Gamer: お,ここで今後の展開の布石,ですか。
岩田氏: はい。ピーノ入手クエストの中には,ネコマタ「山吹」の入手クエストと同様に,ちょっとした暗号が隠されているんですが,それを解くと今後のことが少し分かるようになっています。 トンカという町で,今後とくにストーリーに関わるイベントはないのですが,ピーノのクエストでは,完遂後にマリオネストマスターに話しかけると「その件は現在調査中なので」という答えが返ってきて,これが次につながるわけです。 今後のアップデートで新たな情報を得たら,それを持ってマリオネストマスターの元に戻ると,そこから話がまた始まるといった形にしたいですね。
4Gamer: マリオネットに関して,今後,例えばトンカの住人のように,持ち主とゴーレムが会話できる方法が用意されるとか,新しい構想はありますか。
岩田氏: うーん,ゴーレムとして使う場合は,プレイヤーキャラクターと入れ替わりになりますからね。マリオネストなどで疑似的に使役することはできますが,もともとマリオネットは,自分がのりうつるか自分の代わりに使役できる,といった形で設定されていますので,ペットのような扱いにする構想は,今のところありません。
4Gamer: なるほど,トンカの追加がマリオネットの全般的なシステム拡張につながるわけではないと。
岩田氏: ええ。ただ,戦闘やアイテム売買といった使い方のほか,今後マリオネットシステムがどうなっていくべきかに関しては,飛空庭と同じく何が必要とされているかで考えたいですね。もっと戦闘に特化したタイプのマリオネットを登場させたりとか。 例えば「マリオネットでしか戦えないマップ」を作って,みんなでマリオネットになって戦うんだけれども,数分(※通常は3分だがマリオネストのスキルを使うと延長が可能)経過したら元に戻っちゃうからどうしよう,みたいな感じの(笑)。今はまだ,「どうやったらECOの楽しさを生かした形で実装できるか」を考えている段階です。
■男の子向け,女の子向け,3種類の飛行帆
4Gamer: 続いて飛空庭ですが,今回のアップデート項目の中で,プレイヤーの期待が大きいと思われる,飛空庭の改造について教えてください。とくに飛行帆のお話をぜひ。ECO祭では,画面で示された以外にも種類があるというお話だったように記憶していますが。
岩田氏: 飛行帆については先日のECO祭で,カッコいいタイプや可愛いタイプがあることに触れて,カッコいいタイプの例であるロケット型のものをスクリーンでお見せしました。 逆に可愛いタイプはというと,羽根の形をした「ウイング飛行帆」というのがあります。ぱたぱた動くわけではないのですが,飛んでいくときにきらきらしたエフェクトが付きます。 入手時に,NPCのセリフとして「男の子ならロケット飛行帆,女の子にはウイング飛行帆が人気ですよ」といった風に,ゲーム内で案内しているんですけど。
4Gamer: ECOらしいアプローチかもしれませんね。
岩田氏: 一番面白いタイプはブーストかもしれません。そのNPCに話しかけるとき,プレイヤーキャラクターがブーストを装備していると「背中がむずむずする」というメッセージが出ます。そこでNPCが「それ背負い魔ですね,飛空庭に乗りたがってますけど載せますか?」というようなことを聞いてくるんです。そこで載せると「ブースト飛行帆」になります。ただ,載せてしまうと背負い魔はなくなってしまう。ブーストはかなりレアなので,ゲーム内で3回ぐらいNPCが「本当にいいんですか」と念を押す形になっています。
山本氏: マーシャも「ブースト飛行帆」ですが,実は大変なことだったんですね(笑)。
4Gamer: 飛行帆の種類は,今後も増える予定ですか?
岩田氏: そうですね。飛行帆はアイテムの形をとっていますので,付け替えが可能です。プレイヤーさんの要望があったり,ストーリーの展開で面白いアイデアが出てきたら,そのタイプの飛行帆を作る,ということも考えてます。単純にお気に入りを選ぶのではなく,その時々に応じたカスタマイズ性を持つ要素にしたほうが,よいと考えたわけです。
4Gamer: 羽根やロケットに関連して気になるのは,飛空庭の飛び方についてです。いかにも力学的に「飛んでます」というギミックなのに,マップ間移動は事実上のワープですよね? これは想定どおりなのでしょうか。
岩田氏: 実は最初,空のマップを作ってそこを移動していくといった案も出ていたんですが,それよりは移動が一瞬で終わり,見た目の演出パターンが多いほうがECOにとってよいのではないかということで,現在の形に落ち着きました。ですので,今後ともアイテムを増やし,演出にバリエーションを持たせていきたいと思います。
4Gamer: 移動以外の面で,飛空庭は改造できるようになりますか?
岩田氏: それについては,プレイヤーさんが期待する内容を考えながら検討している段階です。まだ仕様も固まっていないし,ジャスト・アイデアであえて踏み込むならば「複数の飛空庭が集まって要塞になる」とかが考えられますね。 もっとも,フタを開けてみたらプレイヤーさんはそんなことを望んでいなくて,空回りするという可能性もあります。それよりは,家具を100種類増やしてくれたほうがよいと思っているかもしれないし,例えば今はまだカラーリング変更しかできない下部,バオバブの木の根っこ部分を変更できないのが嫌なので,上部だけでなく全体をカスタマイズできるようにしてほしい,という要望が多いかもしれないですよね。まずはプレイヤーさんが何を求めているか,それを把握したいんです。
4Gamer: ふーむ。このゲームらしい発想ですね,そこは。
岩田氏: 現在多いのは,やはり家具や家を充実させてほしいという要望ですね。飛空庭に配置可能なフィギュアの元が集められるスキル「モンスタースケッチ」も,初期は違う用途で用意していたんですが,素材系からモンスターまでスケッチできるようにして,プレイヤーさんが自分で自由に好きなものを集められる,という形で付け加えたものです。ただしこれも普通の家具ではないわけで。 家具の入手方法は,今のところNPCから買ったり合成したりです。そこで例えば,まだ実装されていないエキスパートジョブLV40〜50のスキルに「家具作成」という専用スキルを入れ,それでしか入手できない家具を作るという方法も考えられます。そうすれば,バックパッカー系の人や生産を楽しむ人のお楽しみ要素になりますしね。とにかくアイテムやシステムは,プレイヤーさんの要望があれば,それが実現可能か積極的に検討していきたいですね。
4Gamer: すでに導入が決まっている家具アイテムなどはありますか。
岩田氏: 飛空庭のヒモのところに「〜の飛空庭」と看板が付けられますよね。あそこを「〜のお店」という形にして,中に入ると実際にお店のようなレイアウトになっている。そういう演出ができないかという要望をいくつかいただいていて。 路上に置く看板などはいくつか用意していたんですが,特化したものがなかったですからね。カフェタイプというか「個人でお店を出す雰囲気の家具や家などがあったらいいね」ということで,そちらはすでに開発にかけあっています。調整さえつけば,実装できると思います。
山本氏: (目の前に置かれたコーヒーを見ながら)コーヒーみたいな小さなものも,実装できるといいですよね。例えば「カレー作って」って言われたら,実際に作って出せて,それが食べられる,みたいな(笑)。オブジェとしてもいいじゃないですか。
岩田氏: そうですね。例えばゲーム内のペットなども,あまり普通のペットと意識しない人が多いらしくて(笑),ここまで犬小屋やペット用の柵といった要望はなかったんです。でも,あれば可愛らしいと思いますし,そうした要望があったら,ぜひ具体的に送ってほしいと思いますね。検討しますので。
■スタンプシステムと「シールダー」はSAGA5 第2弾で
4Gamer: 現状に続いてもう少し先のお話を。まずは「ECO祭」で発表されたスタンプシステムについて,あらためて詳しいところを教えてください。揃えるべきモンスタースタンプのカテゴライズ方法や,そもそもこのシステムの狙いなどについて。また,実装はどのタイミングになりますか。
岩田氏: SAGA 5の第2弾アップデートです。クリスマスやお正月などのイベントに付随する導入要素が,まだ年内から年明けにかけていくつか用意されていまして,それとの兼ね合いがあって実装時期がはっきりお伝えできないんですが。できれば年内,調整がつかなければ年明けになりますね。 内容としては,同じ種類,同じ系統のスタンプを集めていく形になりまして,そのカテゴリは複数用意しています。例えば「プルルシリーズ」というように,とにかくプルルの外見をしているものを集めるといったパターンや,「北に棲むモンスターを1セット」といった形のカテゴリもあります。 そうしたカテゴリごとにスタンプを集めていって,1カテゴリが揃うと報酬が得られるという形に調整しています。「モンスタースタンプ」というアイテムは,クリックするとスタンプ帳に押されてアイテム欄から消えます。スタンプ帳の上でカーソルを合わせると,バルーンヘルプで「何のスタンプ」という説明も出ますので,いま自分が何のスタンプを集め終わっているかを確認できます。 このシステムに関連したNPCやストーリーに関しては,「どうしてモンスタースタンプを集めるの」という理由説明部分の見せ方次第になってきますので,実際に実装されてからのお楽しみにしておいてください。
4Gamer: スタンプを集めやすい職業などがあったりはしますか?
岩田氏: スタンプの収集に関して,職業による差などはとくにありません。ただ,スタンプはモンスターを倒すことで手に入り,スタンプはモンスターのカテゴリや特定地域ごとに集めることになるので,その地域での戦いが得意だったり,そのモンスターを倒すことが得意な職業,またはその地域でずっと戦っている人なら,該当カテゴリのスタンプを収集しやすくなりますね。要はモンスターを倒しやすい人がスタンプを入手する確率が高い,ということです。 もっとも,そうした入手数や種類のばらつきは,スタンプアイテムを交換することにより,プレイヤーさん達自身で解消できるようになっています。スタンプ帳に押す前であれば,通常アイテム扱いで交換も可能ですから,苦手なモンスターだった場合は同じアカウントの別職業で挑戦するとか,自分では戦わずにほかの人との交換で集めることも可能です。
4Gamer: 交換できるのはスタンプアイテムだけですか? それを押したスタンプ帳は交換できないのでしょうか。
岩田氏: ええ。交換できるのはあくまでスタンプアイテムだけです。スタンプ帳まで交換できてしまうと,そもそも交換する意味がなくなってしまいかねないので。
4Gamer: スタンプ帳はアイテムとして扱われるのでしょうか,それとも一つのシステムとして,インベントリには入らなかったりするのでしょうか。
岩田氏: スタンプ帳はアイテム扱いです。作りかけの飛空庭のように,どこか別の場所に置いてあるわけではなく,飛空庭の起動キーと同じように持ち歩く形になります。うっかり捨てたりしないようにイベントアイテム化する必要があるんですが,そうすると倉庫には預けられなくなってしまって,100スロットあるインベントリのうち1個を埋めてしまいます。 ただ,実際にはそれより先にキャパシティやペイロードの限界に突き当たりますから,そこを考慮して重量などの設定をすれば,そう問題にはならないと思っています。スタンプ自体はストック可能ですし,使えば消失してスタンプ帳のパラメータとして管理されるようになりますから,邪魔にはならないです。
4Gamer: スタンプ帳はアカウント共通になるのでしょうか,キャラクターごとに持つ形になるのでしょうか。
岩田氏: キャラクターとアカウントの扱いは難しいところで,いま悩んでいる最中です。得られる報酬次第なんですよ。差し当たりアイテムがもらえる形で調整しているんですが,今後スキルや何らかの権利が受けられる形の報酬を出したい場合,アカウント単位だと,そのうち1キャラクターしか受けられなくなってしまいます。どちらにするかを最終的に検討している段階です。
4Gamer: ECOを含めMMORPGでは,インベントリデータベースのサイズは,やはり問題になるものでしょうか。今回のスタンプ帳は,アイテム数を増やさずにコレクションを楽しめる工夫なのだろうと受け取ったのですが,実際のところどうなのでしょう。
岩田氏: そうですね。確かにスタンプ帳に限らず,アイテムを増やさないためにNPCまたはキャラクター側の何らかのフラグに変換するのは,ECOの開発における基本的な手法の一つではあります。 MMORPGにおけるインベントリDBの運営管理は,まず問題ない水準から始めて,実際にプレイヤーさんが何人キャラクターを作るかなどを見極め,検証しながら進めていきます。もちろん,ECOが現時点で容量的な限界に近づいているというわけではなく,十分な余裕を持たせていますが。
4Gamer: アイテム/インベントリ管理の面では,やはり飛空庭と同じような論点で語るべき部分があるわけですね。
岩田氏: ええ。そしてECOでアップデートに当たってよく考えるのは,実装したいアイテムを(倉庫に移したりできない)「イベントアイテム」にしてしまうことの是非ですね。かといって普通のアイテムにすると,今の時点で倉庫がいっぱいだというプレイヤーさんも多いので,その声との折り合いに悩みます。
4Gamer: ふーむ,確かにそうですね。同じくスタンプアイテムをめぐってなのですが,スタンプをドロップするモンスターの割合は,モンスター全部と比べてどの程度でしょうか。また,冒険しながら倒したモンスターをノートに記録していくのだと考えると,なんらかの事典を作る作業になぞらえたりもできますが,そうした要素はありますか。
岩田氏: 現在設定されているもので100種類以上にはなりますが,全モンスターに付けるといった考えではないですね。先ほどお話したように,カテゴリ分けに意味を持たせていますから,例えば1体だけしかいないようなモンスターはどこに分類されるのかといった問題も出てきますしね。 プレイヤーさん同士でスタンプを交換したりして,一つずつ空欄を埋めながら,コミニュケーションと達成感を楽しんでもらいたいというのが一番の狙いで,それ以外の制約要素は逆に外してあります。コレクションとコミニュケーションが主体になっていると考えていただければと。
4Gamer: 純然たる当世風のコレクション要素というわけですね。続いて,かなり大枠でのお話になるのですが,例えば2006年は「暮らし」というコンセプトに基づいて飛空庭が実装されました。それに対して2007年のコンセプトは「生きる」です。これに合わせた大がかりな仕掛けが,何か用意されているのでしょうか。また,そもそも「生きる」とはどういった意味なのでしょうか。
岩田氏: うーん……制作サイドとしては端的すぎる言い方になりますが,どのゲームでも,アップデートの結果としてそのマップの「効率」がよければ留まるし,1回行って済むような場所なら2度と訪れないわけですね。そういった部分をなんとかできないかな,という考えが,「生きる」というコンセプトの根底にあります。 アクロニア大陸とそれ以外の島々,あるいはトンカなりで「生きる」ということを見せていければと。イベントを発生させて一時的にプレイヤーを集めるとか,それぞれのマップを効率よくしてしまう,という手段もないことはないですが,それだとあまり意味がない。そうでなくてこの大陸,このゲームの世界で「キャラクター達が生きている」ということを,どうにかして感じてもらえないかなぁ,と考えています。
4Gamer: ふむふむ,ただ稼ぎがよくなればそれで済むわけではないし,いわゆるやり込みに向いた場所を追加すればよいわけでもないと。
岩田氏: はい。とはいえ「それは具体的にどういうシステムですか」と問われると,正直言って「すいません,いま考えているところです……」となってしまうんですが(笑)。思想的には,スタンプにもそれが入っています。
4Gamer: ほう。それはどういった側面ででしょうか。
岩田氏: モンスタースタンプの入手自体は,出るまでモンスターを倒し続けるシンプルなやりこみ要素でもあるんですが,例えばスタンプを集めたいときに,もう高レベルキャラクターでは戦うような相手ではないモンスターとももう一度戦ったり,あのマップこのマップとあちこち行く必要が自然に出てきます。いろいろなマップや場所に意味を持たせることで,もっとフルに使ってもらえるようにしたいという意味も込められているんです。それが世界に生きるということにつながるというか。 今後もそういったこと,世界の中で「生きている」と感じられるものを念頭に置いて開発をしていきたいな,ということが開発側の指針でもあります。
4Gamer: それでは,新たなマップやダンジョンというよりも,既存のマップやアイテムなどに新しい意味を付与する方向と考えていいのでしょうか?
岩田氏: はい。そういった形が「生きる」という言葉で表したかったものに一番近いですね。効率による解決なら,やろうと思えばすぐにできるんですけど,「何かもっとほかの切り口はないのか?」というのを苦しみながら模索しているところです(笑)。
4Gamer: うーん,聞けば聞くほど大変そうな気もしますが,プレイヤーのために,ぜひがんばって面白いシステムを考案してください(笑)。では次に,これも注目度の高い背負い魔「シールダー」「メダマー」について教えてください。
岩田氏: 防御系の背負い魔,シールダーですが,背負い魔というからには翼のないエミル族だけが付けられる形にするのがベストだと思うんです。ただ,ブーストに関しても非常に多くの要望を得て,合成によって他種族も装備できる形にしましたので,そこは,ネコマタのように種族制限がない形にする可能性もあります。現在のところ,エミルのパターンを作ってみて,プレイヤーさんの反応を見ながら実装していきたいと思っています。 進行状況としては……SAGA 5中に実装できるよう,現在テスト中です。続く「メダマー」に関しては,まず「シールダー」の反応を見たいというのが正直なところですね。
4Gamer: ああ,なるほど,種族の問題がありましたね。ところで,手に入れやすさについてはどう考えていますか。
岩田氏: ネコマタ以外の背負い魔は,現在のところレアになっています。実のところECOでは,レアアイテムって割と少ないんですよ。手に入れようと思えば,たいていのアイテムは手に入る。1ワールド(サーバー)当たり1個か2個しかないアイテムというのは,それほどないのです。 むろん,背負い魔(ブースト)はワールドに1個2個というほど珍しくはないですが,そこを基準に考えた場合シールダーもそうした形にしたほうがいいのか,いま検討中です。ネコマタのようにイベントで全員入手できるほうがいいのか,それともブーストと同じくレアにしたほうがいいのか,ですね。
4Gamer: ことの性格が性格だけに,ダイレクトに意見を聞くわけにもいかなそうですが。
岩田氏: ですから,どちらかにして実装したとき,プレイヤーさんがどんな反応を示されるのか見てみたい,という感じです。そこでうまくいけばメダマーも同じ形で実装しましょう,となりますし,あまり反応がよくなかったり,ゲーム自体にとってベストでなかった場合には,また考え直さなくてはいけないだろうと。 実際,メダマーやシールダーのシステムやアイテムの形を作ること自体は,非常に難しいというほどではないんです。一番の問題は,入れるときのプレイヤーさんの反応,どうゲームを楽しんでもらえるかを予測することなんです。それを見ながら一つずつアップデートしていきたいと思っていますので,アップデートした折にはぜひご感想をお寄せください。
ECO祭で示された,スタンプシステムのイメージ図。当日は撮影お断り案件だったものの,実装の目途が立ったのか,お目にかけられるように
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■マイマイ島と,SAGA 6以降の展開は?
4Gamer: では,さらに先の展開について。ECO祭で「SAGA 6」という文字とともに示された「マイマイ島」ですが,もう少し詳しいことを教えてください。物語要素が強いのでしょうか? それともやり込み要素が主体なのでしょうか。
岩田氏: 実はピーノ入手クエストをやると,キーワードが出てきます。「あれ?」という感じの言葉が出てくるんですが,それはお楽しみということで。 マイマイ島について,通常フィールドでなくインスタンスダンジョンのような形がよいという要望が多ければそうしますし,通常フィールドもということであれば,半々にして同じマップを使ったインスタンスダンジョンを併設するといった形にもできます。
4Gamer: マイマイ島でのクエストやイベントは,同じくECO祭で述べられた3種族に関連したストーリー展開など,今後に繋がっていくものでしょうか。
岩田氏: ええ。つながるように作っているつもりなので,マイマイ島で体験したことも後々の種族の話などに関わってくると思っていただければと。例えばSAGA 5のトンカは,飛空庭とマリオネットの起源に関わる島ということなので,シナリオもそれがメインです。マイマイ遺跡については,すでに伝説として語られていますから「神話は史実だった」とか「実は先文明の話だった」という想像しやすい展開も,まあアリではないかと。ただ逆に,ただのおばあちゃんの昔話かもしれないわけですが(笑)。 実際にほかの種族の世界に行けるようになったら,その神話が本当になる「かも」しれないですけれど,現在のところはどれが本当の話でどれがただのお話なのかという部分を,想像しながら楽しんでいただければ嬉しいですね。
4Gamer: 今後のストーリーの核となる「天まで続く塔」ですが,おおまかにいつごろ導入されると考えておけばよいのでしょうか。
岩田氏: ええと,時期についてはお答えしづらいですね。まずは「天まで続く塔」につながるストーリーを鋭意制作中ですので,そちらの進捗次第でもあります。天まで続く塔が,エミル/タイタニア/ドミニオンの三つの世界に関わる存在となっていますので,まずは話がそこに収斂するのが先ですね。
4Gamer: ゲームより過去の時代を扱ったタイアップ漫画である「デルタサーガ」では,何かそれに関わる要素を盛り込んだりしていますか?
山本氏: デルタサーガでは,三つの世界に関わる話まではやっていませんが,そこにつながる設定を考慮に入れつつ制作しています。実は重要な要素が入れられているんですけれど,それについてはまだ説明されてないんですよね。ただし,いずれデルタサーガの中でもそれが見えるように作っています。
4Gamer: そもそも天まで続く塔はどこにあるのでしょうか。アクロニア大陸の未公開地域なのか,それ以外なのか,という点なのですが。
岩田氏: 基本的に,はまたアクロニア大陸から少し離れた島というか,場所になると思います。「実は最初から既存マップにあったが,超常現象で誰にも見えなかった!」とかはけっこう苦しい気がするので……(笑)。離れた場所にあって,飛空庭が出てきたことでそれが……といった流れになるんじゃない「かなぁ」と思っています。
4Gamer: なるほど,壮大なストーリーと思われるだけに,先が長そうですね。一転して細かい部分をお聞きするのですが,ダンプティーアイランドの今後について教えてください。
岩田氏: 常設か期間限定かで悩んでいるところなんですが,常設だと「いつでも行けるから」となりがちじゃないですか。いつでも行けるならアップデートされても行かないという人でも,期間限定ならつい行ってしまう……。 ダンプティーアイランドには,みんなで一時期集まってわいわい騒ごうという,縁日・お祭り的なものを置いていますので,それならダンプティーが何かやらかしたときという設定のまま,期間限定で開いたほうが面白いのかな? と,今のところ考えています。
4Gamer: これもECO祭の話題の続きになりますが,特殊職業「ブリーダー」は,いつごろ導入されるのでしょうか。
岩田氏: 実はECO祭のとき,開発の方にも来ていただいてたんですよ。イラストはもちろん渡していたんですが,事前に確約したわけではなかったんです。でもステージで「やります」って言っちゃったんで(笑),あのあと開発さんに「いやぁ,言っちゃったんで,開発お願いしますね?」って頼んじゃいました。そこからスタートですから,実装時期などもこれから詰めます。
山本氏: 言っちゃいましょうね,とかは言っていたんですよね(笑)。
岩田氏: 羽々キロさんにはもうイラストを描いてもらっていましたし,あとは公言してしまえばいいか! と。
4Gamer: うーん,いつもながらどこまでが演出か分からないエピソードですね。ところでブリーダーは,どういったスキルを持つようになるのでしょうか。
岩田氏: 職業の内容については,バックパッカー系のエキスパートジョブや,ストライカーなど一部職業だけが使える特定ペットへの専用命令スキルを,一括して使える,つまりすべての種類のペットに命令できる形です。そしてもちろん,ブリーダーだけが使えるすごいペット専用スキルも持つといった方向ですね。 ただしペットがいないと何もできない。ペットがいるからこそすごい,という。でも初期のペットは一撃で倒されてしまったりしますから,きちんと育てていないとツラい部分もある。そんなペット使役のスペシャリストになるようにまとめています。
4Gamer: ブリーダーのイメージイラストに描かれていたような,新しいペットは実際に追加されるのでしょうか?
岩田氏: 羽々さんにはすでに,新しい犬のイラストやテクニカルジョブの新規イラストなども描いていただいていますし,これから実装されるものもありますので,ぜひ期待していてください。 実は羽々さんには企画も手伝っていただいていて,例えばファーイーストの「ECO坊」なども,羽々さんから「こんなのどうですか」とプランをいただいたものです。本当に可愛かったので小さいのから大きいのまで作り,モンスターでもかまわないか確認してから実装したといった経緯があります。
4Gamer: なるほど,そういうことであれば,描かれたものにはきちんと意味がありそうですね。今度はゲーム内イベントの話になりますが,例えばキャストキャラクターを使ったゲーム内イベントなどは考えていますか?
岩田氏: キャストキャラクターに関しては,ECOではまだやったことがないのですが,これまでの経験上「非常に限られたプレイヤーさんに対して非常に熱いものを与える」という,一種の限定サービスのようなものになると捉えています。 ほかのオンラインゲームではよくあることですし,要望としてもいただいているので,一度チャレンジしてみるのも面白いとは思っていますが,正直なところコストパフォーマンス的にはよくないですし,一部のプレイヤーさんしか楽しめないところは,どうにも解決できないんですよね。 ECOで取り組むとすれば,既存のものと違う切り口で開発要素を組み合わせ,「運がよければ1.5倍楽しめるけれど,普通に参加しただけでも1倍は必ず楽しめる」という形を考えたいですね。
4Gamer: 常々気になっているのですが,これだけアップデート間隔が短いと,企画を打ち出すのがたいへんだったりしませんか。
岩田氏: ネタに関しては,実現可能性の高いもの低いものひっくるめて,すべて書き留めてあるので心配はないんですが,むしろ心配なのは,後からゲーム入ってきてくれるプレイヤーさんが,果たして全部把握できるか,という点で,そこは常に意識しています。 とにかく,新しく入ってきてくれることが重要で,今年のタイアップ内容にしても,新たにECOに興味を持ってくれるならば,きっかけは何でもかまわないと,ある種の割り切りを持って実施していたところがあります。
4Gamer: 「デ・ジ・キャラット」やら「新世紀エヴァンゲリオン」やらといった既存のキャラクターやアニメーション,つまりはまったく異なる物語の要素まで動員していますものね。
岩田氏: まあ,そう割り切れるのは,まったく異なる世界観の衣装やアイテムが入ってきたとしても,簡単に崩されたりしない世界を作ってくれる開発の方々のおかげです。なんといっても,羽々さんのデザインに敵うものはないと,思っているからでもありますが。 とにかく,新規の方々のサポートをしっかりとして,同時に(後から来ても分かりやすい)ストーリーで魅せていく,という方法もありかな,というところですね。
■コミュニケーションを主題とした謎の宣伝施策が
宣伝担当 佐野圭介氏
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4Gamer: ここまで主に開発/新規導入要素についてお聞きしてきましたが,今度は宣伝やタイアップといった周辺要素について。マーケティング的側面からいって,「生きる」というコンセプトは何を意味するのでしょうか。
山本氏: 自分なりに生きてほしい,自分なりの表現を見つけてほしい,という意味で捉えています。やりたい施策はいろいろあって,すでに発表したBABYさんとのタイアップ以外にも企画していることがあるんですけれど,それを順次ECOの中に取り込んでいき,先に岩田が述べた導入要素と併せて「生きる」ことを実感してもらえればと,思っています。
4Gamer: 自分なり,がキーワードですか。しかし,いまのお話でどうしても気になってしまうのは「企画していることがある」の部分です。どんなことをお考えなのか,ちょっとだけ教えてもらえませんか。
山本氏: 2007年のタイアップについては,佐野と一緒にいろいろ考えています。2006年がアパレルや食品などでしたので,それ以外にも新たな展開を考えていますが,今はまだ秘密です。ストーリーも関係させたいなあと思っているんですが,それは開発さん次第でもあります。
4Gamer: 秘密,ですか……。それはたいへん残念ですが,可能ならば次の機会にでもぜひ教えてください。ところで,施策発表のたびに気になっていることがあります。タイアップの内容はSAGA 5,6といった展開に合わせたものになっているのでしょうか。
山本氏: ええと,意識してはいますが,SAGAの進行に従っているわけではないですね。合意にいたったタイアップを形にする段階で,そのときのアップデート要素とイメージを合わせることを考えるとか,そういった具合です。 今回のBABYさんとのタイアップも,実を言うととくにSAGA 5だからというわけではないんですね。少女系のファッションブランドさんとのタイアップはかなり昔,昨年(2005年)の発表会時点ですでに考えていたことなんですね。今回時期的にいいかな,と思って話を持っていったら,スムースにご理解いただけて,「やりましょう」ということになりました。
4Gamer: マーケティングとゲーム展開の両方に関わるのですが,例えば2006年のタイアップ内容は,世の中にあるものをそのままECOに持ち込んで,主として外部からの導線を強化するという印象でした。2007年に向けて,逆にECOの側で意欲的,主体的に方向を打ち出すことを考えていますか?
山本氏: そうですね,今後は外部から持ち込んだものがECOの世界,世界観を広げるような連携を取っていきたい,とは考えています。先ほど述べたように,それには開発要素も関わらざるを得ませんが。アイテムを外部から持ってくるだけではなく,もっと楽しんでもらえる形,例えばイベントなどで盛り上げたいんですよ。例えば現在ゲーマーズさんがゲームの中でショップを開いていますが,そうした方法を広げていくのも一案です。 タイアップによって伝えたい部分としては,実はもう進めている企画があって,それは「人と人との優しさ」に集約されるものなんですが,まだ言えないんですよ。オンラインゲームって,やはりコミュニケーションを楽しむゲームなので,そのコミュニケーションの究極の目標を重ね合わせて入れたいなっていう。いまのところはここまででカンベンしてください(笑)。
4Gamer: うーん,オンラインゲームとしてのコミュニケーション,イベント,開発要素。それらを併せ持つタイアップの形ですか……。いろいろ想像してしまいますが,とりあえずはその一端が明かされる日が楽しみです。またまた話題は変わりますが,今後のオフラインイベントについてはどうお考えですか。
宣伝担当 佐野圭介氏: 今年の初めにECOケット,夏にコミケ出展,そして1年の締めくくりとしてECO祭をやりましたから,来年も同様の展開ができればと考えています。「生きる」というコンセプトをどう消化するかを突き詰めていますので,まずはそれをやっていきます。 ECO祭は想像以上にプレイヤーさんに好評で,「来てよかった」という感想をたくさんいただきました。ですので,引き続き「お出かけECO」やECO祭を,地方も含めて展開していきたいですね。大阪や名古屋などで開催すると,そこでまたワールドごとに人が集まって「同じワールドなんだ」というところから新しい交流が始まる。そうした展開も実際にあったので,これは大事にしていきたいと思います。
山本氏: ECO祭には会場面積の問題があって,どうしても抽選という形を取らざるを得なかったんですが,一番いいのは,今年の3月にやったECOケットのように,誰でも来られて誰でも楽しめる形です。ECOのオフラインイベントは今までずっと,プレイヤーさんが参加してステージで発表して,といった形でしたので,その形を崩さず,プレイヤーさんと一緒に創って楽しめるものを開催していきたいですね。
4Gamer: ECOケットの取材で,主催側にお話を聞いたときは,「2回目もなしとしない」くらいの印象だったのですが,ズバリ2回目はあるのでしょうか?
山本氏: 現在のところ,時期などをECOケット委員会の方と交渉中です。夏冬のコミケと重なるとどうしてもツラいので,それを避けてとか,いろいろ。ああしたプレイヤーさん主導のイベントは,「ラグナロクオンライン」でもそうですが,作品を盛り上げるのにたいへん重要ですから,ぜひやりたいですね。 そうそう,コミケの話が出たところで。今年の冬コミは,ブロッコリーさんのブースでECOグッズを販売するのと,「デルタサーガ」のコミックを販売するFlexComiX(ソフトバンククリエイティブ)さんのブースでも,大きくはできませんけど何かやりたいなと思ってます。
4Gamer: では最後に,マーケティングと開発/運営それぞれの面から見た,2007年の抱負をお願いします。
山本氏: 2007年はECOのストーリーをどんどん見せていきたいので,デルタサーガや携帯アプリなど外部の媒体も使って,ストーリーを広く紹介して,世界を広げていきたいと思います。また,プレイヤーのみなさんと一緒に創っていく,というスタンスは変わらないので,そのあたりも引き続き期待していただければなと思います。「みんなで作ろうキャンペーン」なども,これからもまだまだやりますよ。ただ,同じものの繰り返しになっては面白くないので,今,ちょうどネタを作っている段階なんです。来年以降かな。
岩田氏: 開発と運営ということで,ヘッドロックさんと二人三脚でやってきましたが,スタートして1年,開発は3年以上も関わっていただいて,ECOというものが形になってきたと思います。 開発は引き続きヘッドロックさんにがんばっていただいて,2007年の我々は完成したゲームの中,用意された世界やマップの中で「運営にしかできないこと」をやっていきたいと思っています。 考えてみればこれまでもガンホーがやってきたことなんですが,すでに完成しているゲームがあって,それをどう盛り上げていくかという部分に,力を入れていこうと思います。 オフラインイベントもそうですが,これまでにもダンプティーアイランドなど,うちのスタッフから提案した要素はあります。あの島に行ってイベントをひととおり楽しんだプレイヤーであれば,ダンプティー達のことはもう忘れないだろうと思うんですよね。でも,ダンプティーアイランドがなかったら,多分そんなことはなかったと思うんです。 ですので,今後はECOの中であまり日の目が当たらなかったモンスターやNPCをフィーチャーして,スポットライトを浴びせたりしていければと。開発は開発で進めてもらい,運営は新規プレイヤーにも既存プレイヤーにも楽しめる方向を考えていくのが2007年の目標です。もっともっとECOを知って好きになってもらうために,がんばっていきたいと思います。
4Gamer: 本日はありがとうございました。
ゲームの基本的な設定に関わるストーリー要素を展開させるとともに,ワールド全体をさまざまに使って楽しんでもらうこと。そして,開発のみならず運営側として新たな遊び方を展開し,プレイヤーコミュニケーションを含み込んだタイアップを実施する……。ECOの2007年コンセプト「生きる」をめぐって展開される施策は,実に広汎なものとなりそうだ。 インタビュー全体を通して印象に残ったのは,岩田氏がたびたび口にした「プレイヤーの反応を見ながら」「プレイヤーが何を望んでいるのか」という言葉であった。いやまあ,ここまで繰り返されると,ついつい「クリエイターとは,消費者自身がまだ気づいていない,半歩先の潜在的需要をすくい上げるものではありませんか?」などと茶化したくもなるが,これこそが,需要側と供給側が直接コミュニケーションをとってリアルタイムに作品を考え,変えていける,オンラインゲームならではの開発手法なのは間違いない。作品の性格もあるだろうが,プレイヤーコミュニティと真摯に向き合う,一つの形と評価できよう。 機械文明の残滓と魔法が混在するフュージョンファンタジー設定をうまく生かし,外部のギミックを積極的に受け入れてきたECOだが,本来のストーリーを語る2007年には,ECO自身の主体的な方向付けも,よりはっきり打ち出されるに違いない。それが明かされる日が実に待ち遠しい。(ライター:美緒)
(2006年12月11日収録)
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