[TGS 2006#55]「Hellgate:London」日本語版の開発状況やいかに? Bill Roper氏インタビュー
このページを読もうとしている人には,今更説明するまでもないだろうが,Bill Roper(ビル・ローパー)氏は,かつてBlizzard Entertainmentにおいて「Diablo」「StarCraft」「Warcraft」といった歴史的名作シリーズの制作に携わった人物である。 しかし氏は,「World of Warcraft」の制作中にBlizzardを突然辞め,新たにFlagship Studiosを設立。Flagship社の第一弾として開発されているのが,「Hellgate: London」だ。 ちなみに昨年(2004年)の東京ゲームショウでは,本作がナムコ(現バンダイナムコゲームス)グループによってパブリッシングされることが発表されたが,今年はプレイアブルな状態で展示された。しかもすでに日本語ローカライズが施されたバージョンである。
さて,そんなBill Roper氏に対し,わずかな時間ではあるがインタビューを行った。プレス発表会を約2時間半前に控えた,あわただしい中のインタビューだったが,それでもいくつか貴重な話を聞けたので,ぜひご覧いただきたい。
■東京ゲームショウで,日本語版を公開!
(左から)通訳を務めていただいた,バンダイナムコゲームス 名倉幹夫氏,Flagship Studios CEO Bill Roper氏,同グローバルマーケティングコミュニケーション 担当ディレクター Tricia Gray氏
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4Gamer: 今日はよろしくお願いします。時間もあまりないので,早速本題へと入りますね。ナムコとの販売契約発表から,ちょうど1年が経過しました。この1年を振り返ってみてどうですか?
Bill Roper氏: この1年間,バンダイナムコゲームスとの関係は凄く充実しているよ。今回の東京ゲームショウで初めて日本語バージョンを展示できたことで,それを証明できたと思う。
4Gamer: そうですね。国内で初めての出展にもかかわらず,すでにローカライズが施されてるというのにとても驚きました。
Bill Roper氏: そうだろう?(笑) ローカライズは何か国かのバージョンがあるけど,これらを全世界で同時に発売できるよう,最大限に努力してるよ。本国では英語版の開発作業が真っ最中で,それとローカライズ作業を並行して進めるのは,正直なところとても難しい。でも,それだけの価値はあると思ってるよ。
4Gamer: ローカライズや開発作業の際,どの部分に重点を置いていますか?
Bill Roper氏: 単純に翻訳するだけじゃなくて,Hellgateの世界観の細かいニュアンスを忠実に再現するのに苦労してる。そのためにバンダイナムコゲームスのローカライズスタッフも,毎日のように日米間を飛び回ってくれているよ。
4Gamer: 製品版の全世界での同時発売は,もう確定事項と受け止めてよいのですか?
Bill Roper氏: うーん……(ちらりと横のスタッフを見て),まだ断言しちゃいけないんだよね(笑)。ただ,それを前提に開発を進めてるのは確かだよ。
4Gamer: 東京ゲームショウ2006の開幕と同時に,展示されていた日本語バージョンを急いでチェックしてきました。例えばアイテムの名称がカタカナといった翻訳ルールは,完全にFixされてるんでしょうか?
Bill Roper氏: いや,今回の出展は東京ゲームショウ2006のために仕上げた特別なバージョンだよ。これが確定ではないし,これからフィードバックを元に変えていく可能性は十分にある。
4Gamer: そうなんですか。個人的には,文字フォントがもう少し雰囲気があるものだと嬉しいかな,と思いました。 そういえば,ゲーム内のオプションで言語バージョンを切り替えられる,といった仕様にしますか? 例えばGuild Warsのような感じで。
Bill Roper氏: マルチランゲージは技術的には可能だよ。でも,Hellgateは発売される国によってパブリッシャが違うということもあって,言語はそれぞれで完全に固定されると思う。
4Gamer: なるほど。ゲーム内のアイテム,モンスター,NPCとの会話,システムメッセージといったジャンルごとに,英語/日本語を切り替えられると嬉しいのですが。
Bill Roper氏: そういう人って多いのかな? もし要望が多ければ,そのようにすることは可能だと思うよ。
■Hellgate: Londonの開発状況について
4Gamer: 以前,2006年内にクローズドβを行うと言っていましたが,それに向けての進捗はどうですか?
Bill Roper氏: もちろんやるよ! まだ人数までは決まっていないけどね。
4Gamer: 現在のクラスは,まだTemplerとCabalistの2種類しか公開されてませんよね。クローズドβではどこまで実装されるのでしょうか?
Bill Roper氏: それ以外の残りのクラスについては,11月頃にアナウンスできるかもしれない。悪いけど,現時点では答えられないんだ。
4Gamer: 11月ですね。……約束ですよ(笑)。 ところで,ビジネスモデルについては確定したのでしょうか?
Bill Roper氏: うーん,それについても,まだ答えられる段階じゃないかな。
4Gamer: では,答えられるような質問をしていきますね(笑)。日本語に限らず,各国の文化を反映させた特別なモンスターやアイテムは導入しますか?
Bill Roper氏: そういった要素はぜひとも導入したいね。ちなみに今回のTGSデモバージョンも,刀の“ムラマサブレード”やTempler用の和風鎧を実装してるんだ。日本に限らず販売地域に合わせたスペシャルなアイテムを,こういったイベントで紹介するのもアリだと思う。
4Gamer: おお,それはいいですね。 そういえば,もう,会場にはもう行かれたのですか? Diabloシリーズがヒットした日本では,今回のHellgate出展を楽しみにしているファンも多いかと思いますが。
Bill Roper氏: 実はまだ行けていないんだ。この後にプレス発表会も控えてるしね。でも,かつて日本ではDiabloがヒットしたし,彼らがHellgateを見て実際にどう思うか,とても気になるよ。後でもちろんブースを見に行くつもりさ。
4Gamer: Hellgateも,日本人の好みだと思いますよ。ただ,日本人はRPGは好きですが,FPSはまだまだ市民権を得ていない,というのが実情ですね。HellgateはFPSライクな要素があるので,その点が不安だったりするのでしょうか?
Bill Roper氏: 確かにHellgateはFPSの要素も含んでるけど,実際に遊べばまったく気にならないと思うよ。一人称視点が苦手な人は,三人称でもプレイできるし,キャラクターのレベルアップや武器のカスタマイズといったRPG的な要素もたくさん取り入れてるからね。
4Gamer: ええ,私も同意見です。同じくユーザー層に関係した質問ですが,最終的な必要マシンスペックは決まりましたか?
Bill Roper氏: 「World of Warcraft」と同じくらいかな。できるだけロースペックのPCで遊べるようにしたいね。
4Gamer: そういえば,先ほども会場でプレイしていたのですが,時折処理がカクっと引っかかっていたのが少々気になりました。E3のときのバージョンでは,そういうことはなかったと思うのですが。これは何か原因があるのですか?
Bill Roper氏: それは本当かい? あとで確かめないといけないな。
4Gamer: ええ。マシンスペック面に関しては徹底したポリシーがあるだけに,珍しいなと思いました。
Bill Roper氏: Hellgateはランダムマップを生成してるから,ゲーム開始直後はそれでハードディスクにスワッピングを行ってる可能性はある。あと,今回は開発中のバージョンを特別にローカライズさせたから,そのあたりの処理がスローダウンさせているのかもしれない。いずれにせよ,製品版ではそのようなことはないと保証するよ。
4Gamer: それを聞いて安心しました。
■で,いつ出るの?
4Gamer: あとは,製品版がいつ出るかですね(笑)。現在の開発進行度は何パーセント程度ですか?
Bill Roper氏: それはとても難しい質問だなあ(笑)。というのも,現時点のパーセンテージが仮にあったとしても,開発が進むにつれ目標のラインが変わってしまうんだ。トータルでの完成度は間違いなく上がっているけど,目標もどんどん高くなっていってるから,パーセンテージはちょっと把握できないね。
4Gamer: なるほど,Bill氏がヒットメーカーとなっている理由の一端が見えた気がします(笑)。ああ,もう時間ですね。では最後に,一言お願いします。
Bill Roper氏: 今までさまざまな国でHellgateを出展してるけど,それぞれの国によって反応が微妙に違うんだ。だからこそ,こうやって各国を歩き回ってフィードバックを吸収しながら,皆に受け入れてもらうため努力してる。日本のプレイヤーがどのように受け入れてくれるかを直接見るのが,とても楽しみだよ。 今回東京ゲームショウに来られなかった人にも,いずれ,ちゃんとプレイできるようにするので,もう少し辛抱していてほしい。
4Gamer: 本日はありがとうございました。
筆者は過去に何度かBill Roper氏にインタビューを行っているが,それらの中でも今回は,とくに情報公開についてのガードが固いという印象を受けた。しかしそれは見方を変えると,βテストやその先のリリーススケジュールが現実的なものとなっている,ということかもしれない。 今回のインタビューで,Hellgateの発売がいよいよ迫っているんだな,という実感が得られた次第だ。突然のBlizzard退社から氏を見守ってきたファンの一人として,なかなか感慨深い。
なお,今回の東京ゲームショウ2006出展とタイミングを合わせて,「Hellgate: London 日本語版」の公式サイトが開設されている。Hellgateに興味のある人は,こちらも定期的にチェックしておくといいだろう。(ライター:川崎政一郎)
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Hellgate: London |
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