「LieVo」「Gallop Racer ONLINE」「Heroes of Annihilated Empires」などの詳細レポート&担当者にも話を聞いてみた
テクモは2006年8月28日,東京都千代田区の秋葉原コンベンションホールでプレスカンファレンスを開催し,同社の新しいオンラインゲーム事業である「LieVo」と,新作ゲームなどの発表を行った(関連記事)。 そのうち,4Gamer読者にとってとくに気になると思われるトピックを挙げてみよう。
■テクモとSeedCが共同運営するオンラインゲーム事業「LieVo」 ■「WarRock」「Gallop Racer ONLINE」の国内サービス ■「Heroes of Annihilated Empires」の日本語版パッケージ販売 ■「BASTARD!! ONLINE」(バスタード!! オンライン)の新情報
カンファレンスの終了後,「Gallop Racer ONLINE」「Heroes of Annihilated Empires Episode I 〜 黄泉の国 アトランティス 〜」「BASTARD!! ONLINE」の担当者に話を聞けた。この記事では,それぞれの担当者のコメントを交えつつ,先日掲載した記事ではお伝えし切れなかった,各サービス/タイトルの詳細についてレポートしよう。 なお「WarRock」については,開発元の韓国Dream ExecutionでCEOを務める,Youn-Ho Jang(ジャン ユンホ)氏に話を聞けたので,後日あらためてインタビュー記事を掲載する予定だ。
■LieVoではコミュニティの醸成に ■重点を置いたサービスを提供
テクモは,このLieVoのことを“オンラインゲームプラットフォーム”と表現している。これは,今後の展開を見込んだうえでの,さまざまな意味を込めた呼称であると理解できる。 だが,先のことはとりあえず置いておくとして,2006年10月10日にスタートするLieVoとは一体なんなのか。ゲーマーの立場で見た場合,いわゆる“ゲームポータルサイト”という認識で間違いないだろう。 現在SeedCが運営しているゲームポータル「ブロードゲーム」のコンテンツはLieVoに引き継がれ,今後,WarRockやGallop Racer ONLINEをはじめとする厳選されたタイトルがラインナップに追加される予定だ。
LieVoは,単に“ゲームをプレイできるサイト”というわけではなく,下記のようなサービスや機能を提供していくという。
・攻略情報Wiki よく知っている読者も多いと思うが,Wikiとは,ブラウザ上で内容を追加/更新/編集できるWebサイトを構築するためのシステムの一種だ。 あるオンラインゲームがサービスインすると,有志のグループがWikiを立ち上げ,そこにプレイヤーが集い,自分達の手でそのゲームに関する情報を蓄積していく……という流れは,最近ではポピュラーになりつつある。自分が遊んでいるオンラインゲームの情報を探すうち,そのゲームのWikiにたどり着いた経験のある人も多いだろう。 そのようなWikiの運営/管理は,有志がボランティアで行うケースがほとんどだが,LieVoでは,それ自体を一つの機能として提供するというわけだ。
・SNS こちらもあらためて説明するまでもないかもしれないが,SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)とは,ある程度クローズドなコミュニティの形成をサポートするサービスのこと。日本では「mixi」がとくに有名だ。LieVoには,このSNSの機能が実装される。
・Superモール LieVoでは,ゲーム内通貨を用いてのオークションやアイテムトレードを行える。オークションや無人販売の仕組みを備えているゲームは少なくないが,LieVoで提供されるタイトルでは,それらをゲームの中ではなく,ゲームポータルであるLieVo上で行えるのだ。 また,異なるゲーム間でのアイテムトレードを可能にする計画もあるとのこと。なかなか興味深い試みだ。
・ギルドマップサービス これは,仲間がどのゲームのどの場所で遊んでいるかを,ゲームにログインすることなく,LieVo上で確認できるサービス。 Webブラウザからゲーム内のチャットに参加したり,ギルドのステータスや大規模PvPの戦況を,Webページ上で確認したりできるサービスはすでに存在しているが,それらと同種のサービスだ。
テクモによるLieVoの説明には,「Web2.0」というキーワードが何度も使われていた。Web2.0とは,将来のウェブそのものを指す,やや漠然とした言葉ではあるが,その特質とされている事項に共通する要素がある。 その要素とは,ユーザーが積極的に参加したり,コンテンツの作成/編集に関わったりできるということだ。つまり,WikiやSNSの本質はとてもWeb2.0的であるといえる。 LieVoでは,そのようなことを行える下地,環境をユーザーに提供していきたいということなのだろう。
また,ゲームポータルの機能の一つとして,プレイヤー自身が情報を書き込めるWikiのようなサービスを提供する試みには,なかなか興味深いものがある。 日本でMMOゲームをサービスしているパブリッシャの多くは,公式フォーラムの設置に積極的とはいえない。そのような状況の中,LieVo上でWikiがいかに運営されていくか,またその内容はどのようなものになっていくのか,とても気になるところだ。
■無料と有料のサービスで構成される ■「Gallop Racer ONLINE」
Gallop Racer ONLINEは,人気シリーズ「Gallop Racer」としては初めてのPC版であり,また初のオンライン専用タイトルでもある。詳細についてはこれから詰めていく部分もあるそうで,やや断片的になってしまうが,現時点で分かっていることをまとめておこう。
LieVoのコンテンツの一つとして提供される本作は,ほかのタイトルと同様,基本プレイについては無料となっている(アイテムは有料)。 プレイヤーはアバターを作成し,「ギャロップレーサースクエア」と呼ばれるロビーで,ほかのプレイヤー達とのコミュニケーションを楽しめる。アイテムを購入すれば,アバターにいろいろな格好をさせて個性を発揮できるわけだ。
ゲームにログインした後,まず人の集まっているロビーに移動。“ルーム”を作成し,対戦相手が集まったらレースを開始する……というのが,基本的なプレイの流れ。最大18頭でのオンライン対戦をサポートしている。 レースでは,これまでのシリーズ同様,ジョッキーとして馬をコントロールすることになる。操作はマウスのみで行えるように設計されているとのことだ。
本作は,コミュニケーションとレースのみを楽しめる無料の「フリーモード」と,それらに加えて馬の育成を行える「シーズンモード」で構成されている。 シーズンモードの楽しさは,手塩にかけた馬に乗り,レースに勝利したときの喜びを味わえることだけではない。育て上げた馬は戦績次第で種牡馬となり,その能力は子馬に引き継がれる。例えば,対戦相手の乗っている馬が,かつての自分の愛馬とつながりのある馬だったりすることもあり得るわけだ。
LieVoがスタートする10月10日の時点では,提供タイトルに日本で開発されたゲームは含まれない。本作は,LieVoで提供される初の国産ゲームということになる。 非常に知名度の高いGallop Racerシリーズの最新作である本作が,いかに多くのプレイヤーを惹き付けられるか。これは,LieVoの今後を占ううえでも,非常に重要なポイントだといえるのではないだろうか。
■「Heroes of Annihilated Empires」の ■日本語版パッケージ販売
Heroes of Annihilated Empiresは,コサックスシリーズでRTSファンを中心にその名を知られる,ウクライナのデベロッパ GSC Game Worldの最新作だ。テクモは本作を日本語にローカライズし,「Heroes of Annihilated Empires Episode I 〜 黄泉の国 アトランティス 〜」(以下,HoAE)というタイトルで販売する。
コサックスシリーズとは異なり,本作はファンタジー世界を舞台とするRTSだ。プレイヤーが操作できるのは,「エルフ族」「アンデッド」「ドワーフ族」「クライオ族」の4種族で,各勢力には3人のヒーローユニットと多数のオリジナルユニットが用意されている。 軍勢の大部分を構成する一般ユニットとして,勢力ごとに異なるものが用意されており,またユニットを増産するための経済システムも,勢力によって異なるという。
本作でとくに興味深いのは,「RTS vs RPG」という謳い文句で紹介されていた,ユニークなゲームシステムだ。 プレイヤーはゲームを進めていくうえで,多数のユニットからなる大軍団を率いて敵と戦うか,あるいは一体のヒーローユニットを,多数のユニットと一人で渡り合えるほどに成長させるかを選択できる。 ヒーローユニットが登場するRTSでは,同ユニットを中心とする部隊を編成して戦いに臨むのが一般的な戦法で,もちろんHoAEでもそれは可能だが,ヒーローユニット単体に重きを置いたプレイもできるようになっているのだ。
コサックスシリーズには,数千ものユニットによる非常にスケールの大きな戦いを表現できるという特徴があった。HoAEが搭載するゲームエンジンは,そのコサックスのエンジンが刷新されたものなので,大規模な戦いを表現できるという特徴は受け継がれている。 もちろんグラフィックスの向上にも力が注がれたとのことで,ライティング/シャドウ効果,水面/魔法/昼夜の表現には見るべきものがあると感じた。
タイトルに「Episode I」と付いていることからも分かるように,HoAEは,三部作の一作めという位置付け。シリーズ全体の世界観や背景のストーリーは,ウクライナのファンタジー作家Ilya Novak氏による,全5巻のファンタジー小説に基づいている。 本作(Episode I)のストーリーは原作の第3巻,Episode IIは第4巻,Episode IIIは第5巻がそれぞれベースになっているという。
原作小説のユニークなところは,私達が生きる現代まで続く,数千年に及ぶ物語であること。HoAEで描かれているのは,紀元前のアトランティス大陸で繰り広げられた戦いという設定なのだ。 ムービーやスクリーンショットを注意深く見ると分かるのだが,どうやら本作には,現在の兵器である戦車が登場する(!)らしい。そのあたりのミステリについては,ストーリーが進むにつれて明らかになっていくのだろう。
発売は2006年内の予定。海外では10月か11月に発売されるとのことで,さほど待たされることなく日本語版を楽しめそうだ。
テクモのマルチコンテンツ事業部プロデューサーを務める河野順太郎氏に,HoAEについて話を聞いた。 LieVoと同じタイミングで発表された本作だが,河野氏によると,マルチプレイモードをLieVoに対応させる予定はないとのことだった。 また,日本語にローカライズするのはテキスト部分のみで,音声については英語のままだという。河野氏は,日本語の音声を入れることもできたが,ゲームの雰囲気を大切にすることを優先し,テキストのみを翻訳することに決めたと説明してくれた。
4Gamer読者としては,テクモが今後,海外のPCゲームを日本で販売していくのかどうかが気になるところだろう。この点について河野氏は,下記のようにコメントしてくれた。
「一昨年あたりからテクモでは,コンシューマ機以外の分野にもビジネスを展開すべく,計画を進めてきました。今回のLieVoもその一環です。その動きの中で海外のPCゲームにも目を向けてみたところ,意外なほど多くの良作があることが分かったのです。 そして今回,いろいろと見て回った中でとくに光っていた開発会社がGSCだったのです。 これからもGSCに限らず,海外のPCゲームのクリエイターとのコネクションを通じ,ビジネスを模索していきたいと思っていますので,GSC以外のデベロッパの作品をテクモが取り扱う可能性もありますね」。
■原作者 萩原一至氏も期待を寄せる ■「BASTARD!! ONLINE」
現在テクモが開発中のBASTARD!! ONLINEは,人気コミック「バスタード!! −暗黒の破壊神−」(以下,バスタード!!)をベースとするMMORPGだ。
今回のプレスカンファレンスでは,東京ゲームショウ2006(TGS 2006)で公開予定のCGムービーが上映された後,特製ポスターのプレゼントに関する発表が行われただけで,残念ながら,ゲームに関する具体的な情報は一切明かされなかった。 それだけではとてもさびしいので,前出の河野氏と,テクモ 執行役員 ハイシナジープロダクション エクゼクティブプロデューサーを務める原尾宏次氏に直接,ゲームについて聞いてみた。
テクモ 執行役員 ハイシナジープロダクション エクゼクティブプロデューサー 原尾宏次氏
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原尾氏: BASTARD!! ONLINEついては,ご紹介したいことがたくさんあるのですが,残念ながら詳しくお話しできる段階ではありません。
4Gamer: 東京ゲームショウ2006以降は,これまでよりも速いペースで情報が公開されると期待してもいいのでしょうか。
河野氏: (しばし考えて)そうするつもりでいます。このゲームは,「バスタード!!」という並々ならぬ人気コミックを原作とする“大作”です。それだけに,ファンの皆さんにとても期待していただいていることは,私達もよく理解しています。 私は原尾と一緒に,原作者である萩原一至先生に,開発の進捗を報告しに行くことがあるのですが,実は先生ご自身からも,もう痛いほどに期待していただいていまして……。
原尾氏: お話ししていてすっごく感じるんですよ(笑)。
テクモ マルチコンテンツ事業部 プロデューサー 河野順太郎氏
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河野氏: ファンの皆さんの期待も,萩原先生の期待もとても大きい。それほどまでに期待される価値のあるタイトルなのだと,認識しています。 そういう作品ですから,これまで,慎重に一歩一歩前進しては少し後退し,また前進しては戻り,といった作業を繰り返してきました。その結果,そろそろ開発のスピードを上げられるかなあ……というのが現在の状況なのです。
原尾氏: 期待していただいていいと思います。テクモのゲーム開発というのは,Gallop Racerにしろ「モンスターファーム」にしろ,「新しい遊びを提供したい」というところからスタートしています。 BASTARD!! ONLINEの場合は,原作を読んでいると「バスタード!!だったらこうあるべきだろう」と思える要素がアイデアとして浮かんできますので,それらを実現すべく,新しいシステムやマップなどの開発に取り組むという感じで進めています。
4Gamer: なるほど。それでは,かなり目新しいゲームになっているということでしょうか。
河野氏: 現在,非常に多くのMMOゲームがありますよね。そのような状況で,「この作品は,完全に似たものがないゲームです」とは言いづらいですね。ですが,BASTARD!! ONLINEとはこういうゲームです,と説明されたとき,「ああ,そうなんだ!」と強い関心を持てるようなゲームを目指し,内容を磨いていきたいなと思っています。
ゲームがどのようなものになっていくのかは,まだ本当に分からないのだが,開発は“バスタードならではの個性”を大切にする方向で,慎重に進められているようだ。「単なる原作持ちゲーム」などとは呼ばせない,オリジナリティ溢れる内容を持ったゲームへと仕上がっていくことを,原作を読んで育った一ファンとしては願ってやまない。(ライター:星原昭典)
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