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[CJ 2006#37]ChinaJoy会場で見かけたゲームエンジンあれこれ
2006/07/31 18:43
 中国産のゲームでも,自社製のゲームエンジンを使用しているというものが少なからずある。機甲世紀完美世界をはじめ,今回のChinaJoyの記事でも,独自エンジン使用というタイトルがいくつか見られるはずだ。
 オンラインゲームエンジンの場合,サーバーとクライアント,および開発ツールと,制作しなければならない範囲は広く,開発は簡単ではない。今回のChinaJoy会場で,ゲームエンジンをメインにしてブースを出していたのは,BigWorld TechnologyとJCL Gamesの2社のみだった。

●BigWorld Technology
 BigWorldは,以前の奥谷海人氏の連載記事からも漏れてしまっているくらいマイナーな存在ではあるが,なかなかユニークなゲームエンジンを制作している会社である。

 BigWorldが開発しているBigWorldエンジンは,その名からも想像できるように,でっかいマップを低負荷でハンドリングできるという特徴を持ち,その上に存在するキャラクター数が非常に多くても大丈夫という,ちょっと特殊なゲームエンジンである。
 多くのゲームエンジンは,FPSを主目的に制作されている。FPSで通用する性能があれば,ほかのゲームでもこなせるというのは,一面の事実ではあるが,ハンドリングできるキャラクター数が少なすぎたり,マップが固定式であったりなど,FPS以外では使いにくい場合もあった。
 BigWorldでは,最初からロードバランシングを考えたサーバークラスターを構成している。そして,私見を言うならば,LOD(Level of Detai:距離によってキャラクターモデリングやテクスチャなどを間引いて処理を軽くすることl)が秀逸である。かなり複雑な形をしたキャラクターを大量に表示しても,負荷があまり高くならない。もっとも,これはLOD用のデータを山ほど用意しておくことが前提なので,メモリなどそれなりの資源も要求されそうではある。グラフィックス表示機能に関しては,かなり高レベルな仕様も備えている。

BigWorldの地形エディタ。直接線を引いたりして自在に地形が描けるのだが,なにか,よく見ると木の枝がそよいでいたりする。これって,真上から見ただけのリアルタイム映像?

 BigWorldは,フランス産のMMRPG「Dark and Light」で採用されているのが有名なのだが,はるか遠くのマップ上のキャラまで見えるという特徴を持つこのゲームに日本からアクセスした場合,残念ながらガクガク状態で快適なプレイは困難だった。地平線のあたりにいるはずのキャラクター名まで表示される仕様だったので,それはちょっとやりすぎという雰囲気はないでもなかったし。
 装備のカスタマイズ範囲の広いMMORPGというジャンルなので,LODデータが間に合っていない,もしくはキャラクターを見つけたときに,LODデータを大量に作成しようとしているのではないかと思われる。あるいは,あまりに多くのキャラクターを扱うため,ヨーロッパまでの距離の遠さが致命的になってしまったのかもしれない。


 非常にたくさんのキャラクターを表示することを得意とするためか,BigWorldの採用例(わずか4例だが)の半分は,中国産のタイトルとなっている。ちなみに採用タイトルは,Dark and Lightのほか,Neteaseの「天下弐」(Neteaseブースにはタイトル名以外なにもなかったが),TianChengの「創造Online」,Metro-Goldwyn-Mayer Studiosの「Stargate World」だ。

 会場では,内部に設置したサーバーを使ってではあるが,さまざまなデモが行われていた。試しに,マップ内に300人ほどキャラクターを出してもらったが,目立って処理が重くなるようなこともなく,「1000人でも大丈夫だ」と余裕の発言も聞かれた。ただ,これはデモ用に作られたデータでの話であって,あらかじめ入念に最適化されているということは割り引いて考えなければならないだろう。
 日本人だと分かると「セガは好きか?」と謎の問い掛けをされた。話を聞くと,鈴木裕氏と広井王子氏が熱心に見て回っていたのがご自慢のようだ(まあ,展示会なのであちこち見て回るくらいは誰でもするだろうが)。サーバークラスタのマネージメントなど,大規模処理を指向したゲームエンジンということで,現状ではぱっとしないものの,将来的には大化けするかもしれないエンジンである。この機会に名前を覚えておくのもよいだろう。



●EdgeX 
中国産のゲームエンジンとして展示されていたJCL GamesのEdgeXは,FPS用のエンジンだ。MMO FPSエンジンということで展示されていたが,現状では32人までに対応ということで,FPSエンジンとしては一般的な数字である。会社を作って間もなく,デモも作ったばかりとのことで,完成度はまだ高くない。水面などで一部Shaderが使われていたりするものの,現状ではごく普通の機能だけ調えたエンジンとの印象である。今後に期待というところだろうか。



●Deja
 余談気味だが,香港ブースで会った香港大学の先生が研究室で作っているというゲームエンジンのデモも見せてもらった。残念ながら,画像素材がないので詳しい説明はできないのだが,機能自体は一般的なゲームエンジンがサポートしているものと大差がないように思われる。ボリュームシャドウや物理演算までをサポートしており,小ぢんまりとしているものの,それなりの実用性を持つものに仕上がっているようだった。
 それを使って研究室の4人が2週間をかけて制作したというゲームも見せてもらったが,一応の体裁が整った3Dゲームになっていた。3Dキャラクターのアニメーションなどを含むもので,一通りの動きは可能であった。
 これが大学生/院生によって作られているというのだから,ゲームエンジンの制作もハードルが下がってきているのかもしれない。



 なお,2005年のChinaJoy会場で見られた中国産のOrigo Engineは,今年は出展されていなかったものの,Webサイトを見るとこちらも完成度を上げてきており,すでに実用状態にある模様だ。
 玉石混交という感は拭えないが,各社の独自エンジンを見ても,中国の基礎技術レベルは急速に向上しつつあることが分かる。来年の状況が楽しみだ。(aueki)


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http://www.4gamer.net/news/history/2006.07/20060731184342detail.html