FFXI,二人のオンラインプロデューサーにショートインタビュー:「FFXIにおけるワールドワイドでのプレイヤー共存」
今年のE3 2006でも,自社ブースでさまざまなタイトルを展示していたスクウェア・エニックスだが,PC関連で展示があったのは「Final Fantasy XI Online: Treasures of Aht Urhgan」のみ。そろそろ次世代の“オンライン版FF”などの新作発表があるものかと期待していたが,まだまだお預けのようだ。 とはいえ会場は,いつもどおりの混雑具合。来場者でパーティを組んで強力なNPCと戦うイベント「Heroes Combat」や「Boss Battle Bush Breakthrough」「アサルト」なども開催され,熱気に満ちていた。そんな中,ブース内で陣頭指揮していた同社のグローバル オンライン プロデューサーSage Sundi氏を発見。FFXIの欧州での展開を取り仕切るヨーロピアン オンライン プロデューサー室内俊夫氏も一緒だったので,これ幸いとばかりに時間をもらって話を聞いてみた。(星原昭典)
■IME機能を要望するアメリカ人プレイヤー達
グローバルオンラインプロデューサー
Sage Sundi氏
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4Gamer: なんだかいつも海外でしかお会いしませんよね。
Sage Sundi氏(以下,Sundi氏): アメリカとかドイツとかね(笑)。
4Gamer: まぁせっかくの海外ですし,欧州のオンラインプロデューサーもいらっしゃっているようですし,海外でのFFXIのユーザーさんについて教えていただけませんか。お二人の立場からいっても,一番しっくりくるネタかと思いますし。
室内俊夫氏(以下,室内氏): そうですね。開発ではないので今後のバージョンアップのこととか新作のこととか聞かれてもお答えできませんし。
4Gamer: お二人がオンラインプロデューサーとして海外のFFXI事情を見ていて,海外の――日本から見て,ということですが――プレイヤーって,我々日本人が英語版のサーバーで遊んでいるようなものですよね。そのへん,彼らはどんな風に考えているのですかね?
Sundi氏: んー,同一サーバーに違うリージョンの人がいることについて,どう考えているかということですよね?
4Gamer: ええ,そうです。たいていのMMOは日本人プレイヤーが海外サーバーに「間借りする」側なんですけど,FFXIに関しては逆じゃないですか。彼らってそれをどう考えているのかなぁ,と思って。アメリカ人から見たら,結構レアな事例ですよね,きっと。
Sundi氏: なるほど。それこそ我々が海外サーバーで遊ぶときのような感じですね。“いろいろな意見の人がいる”という部分では,まったく変わらないです。すごく日本びいきな人もいるし,なんでこっち(海外)にサーバーがないのかと言う人もいるし。
4Gamer: 日本のプレイヤーの考えていることって,こちらでもなんとなく分かるし聞けば理解できるのですけど,海外のプレイヤーの考えていることって,今一つ見えにくいですよね。個々には色々分かっても,全体像となるとボヤけちゃうし。
Sundi氏: そうですねえ。でもE3とかファンフェアとかで海外プレイヤーと直で話をするんですが,日本のゲーマーを尊敬している人が多いですよ。最大限効率的なプレイという意味も含めて,「日本人はプレイがとてもうまい」というイメージを持っています。日本人とプレイしたいし,そのプレイスキルに興味があるし,その文化を知りたいという欲求は当然のように持っていますね。
室内氏: ですね。「日本人が英語がダメだというのなら,こっちが日本語を使うから,英語版クライアントに日本語のIMEを入れてくれ」というリクエストも結構ありますよ。もちろんすごく多い数ではないですが,目立つほどには。
■リージョン別サーバーの存在意義
ヨーロピアンオンラインプロデューサー
室内俊夫氏
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4Gamer: 私自身は海外サーバーでずっと遊んでいたし違和感ないんですけど,日本人プレイヤーの中にはそういうのに慣れてない人も多く,「FFは日本のものなのになんで外国人が来るの?」とか「リージョン別にサーバーを分けてほしい」と思っている人も多いですよね。
Sundi氏: 現在のあり方だと,地域によってプレイタイムが異なることで生じがちなダウンタイム(人が少なくてパーティなかなか組めないなどといった余分な時間)が生まれないという利点があります。日本サーバーだけにすると,昼間スカスカ夜ギチギチという状態になりますよね,きっと。昼間にプレイするという人もいるわけですし。
4Gamer: それはそうですね。
Sundi氏: リージョンが混じった同一サーバーだからこそ,ダウンタイムがないわけです。機器が節約できるというビジネス面での利点だけで同一サーバーにしているわけではありません。また,競売所システムによって言葉や時差の壁を越えてプレイヤー同士が取引を行えるため,ヴァナ・ディール全体の経済が飛躍的に活発化することにも目的があります。 ただまぁ,お国柄による違いはどうしても目に付くでしょうね。アメリカでのサービスが始まった頃に「シャウトがうるさいんです」っていうGMコールが来たことはありましたね,確かに。
室内氏: 「まずはtellで声をかけてみてから……」という奥ゆかしい日本人の中に,「誰かいるー?」と,とりあえず大声で叫んでみる人達が来たわけですから,それでコールしたくなるのは,まぁ分かります。プレイスタイルの差は出ますよね。
Sundi氏: でもそれはほかのMMOでも普通にあることですよね。そういう人もいる世界なんだな,というだけのことだと思います。 地域によってサーバーを分けるというチョイスもあったのかもしれませんが,分けたほうと混ぜたほうと,どっちがよかったのかというと……。
4Gamer: というと……?
Sundi氏: 両方を試せるわけではなかったので,分からないですよね。答えはないです。しかも,すでにそうなっている(=混じった状態になっている)のを,これから分けるというのはできません。北米サービスが始まる前にも何度も検討はしましたし,今からは無理です。
室内氏: 先日のファンフェスティバルで,ドイツ語版,フランス語版の発売をアナウンスしたんです。現在ドイツやフランスでプレイしている人達は,母国語ではない英語でプレイしている人達でして,この人達の状況って,英語サーバーに日本から乗り込んでいって楽しんでいる日本の人達と似ていると思います。
4Gamer: ええ,まったく同じですね。
室内氏: そこに「ゲーム内テキストが母国語で読めるバージョンが出ます」というアナウンスがあった。そのことはおおむね好意的に受け入れてもらえていたのですが,やっぱりあったのが「でもそれってさ,要は“お子様”が増えちゃうんじゃないの?」という意見で,その反応がまたほかのプレイヤーに共感できることだったりもしますよね。
4Gamer: どこも同じようなことを言うのですね……。
室内氏: みたいですね(笑)。
4Gamer: しかし英語版を遊んでいるドイツやフランスの人って,英語版MMOの中に日本人コミュニティができるのと似たような形で,英語版の中のドイツ人コミュニティ,フランス人コミュニティというのを形成しているのですか? Sundi氏: そうです。
4Gamer: なるほど。確かに英語版MMOの中で日本人コミュニティを作っている人達は,基本的には成人以上の人が多く,若い人……というか子供というかなんというか,そんな人達が自分達のコミュニティに入ってくることに対して,ちょっとナーバスになっている部分がありますよね。 ちなみにヨーロッパマーケットって,やはりドイツあたりが一番大きいのですか? EQ1のころから「ドイツ」という印象が強くて。
Sundi氏: MMORPGに関しては,やはりそうだと思います。「World of Warcraft」「Dark Age of Camelot」「EverQuest」もそうですし。ただしFFXIでは,現状欧州ではイギリスのユーザーが一番多いです。イギリスはこれまではFPSしか売れない国という印象でしたが,WoWが売れた以降は変わってきているみたいですね。
室内氏: 新ハードなんかは,イギリスって広まるの早いみたいですよ。
Sundi氏: ヨーロッパって「EU」とかって今はまとめちゃいますけど,たくさんの国に分かれているせいか,浸透が妙に遅いんですよね。時間がかかります。……そういえば,FFXIプレイヤーはヨーロッパでは何か国くらいにいるのだろう?
室内氏: ヨーロッパ全体で実際に会員がいる国は,30数か国くらいかな? 北欧とかロシアもいます。ロシアなんかは公式には売ってないはずですけどねえ(笑)。
■GMポリシーの統一に向けて
4Gamer: そんな全世界同一サーバーで,GMも同じサーバーに日本語GM,英語GMがいる状況ですよね。それってコンセンサスをとるのがすごく難しそうだと思うのですが。
Sundi氏: そうですね,いまじゃドイツ語GMとかフランス語GMまでいますからね。コンセンサスを取るのが難しかったのは,確かです。 で,実はこれまで北米のサービスはSony Online Entertainmentへ外注をお願いしていました。もちろんスクウェア・エニックスのコントロールの基で,というのが前提ですが。でもこのたび,この外注をやめました。全部自社でGMを持つことにして,4月にオペレーションセンターを立ち上げて,いま北米はロサンゼルスのオフィスを中心にやっています。欧州方面もその方向で動いています。
4Gamer: 地域によって出やすい要望,出にくい要望の傾向ってありますか?
Sundi氏: 日本ではニュース一発出せば済むものが,アメリカでは割とそういうものをこまめにチェックしていない人が多いのかな,と思うことはありますね。GMコールの数で言うと,アメリカは日本の3倍くらいでしょうか。ただその中には「こんちわー」とか「新作っていつ出るの?」とかいうのもありますけど(笑)。
4Gamer: アメリカのプレイヤー数は日本の3倍もいないですよね?
Sundi氏: それはないです。半々くらいです。
4Gamer: 年齢層とか男女比ってどうでしょう。
Sundi氏: アメリカもヨーロッパも日本と変わらないと思います。やはり女性よりは男性が多くて,若い人が多いです。
4Gamer: コミュニティの形成のされ方みたいな部分で違いはありますか? 日本だと有力なファンサイトがあったりしますよね。
Sundi氏: ファンサイトというか,StraticsとかAllakhazamとか,あのあたりが中心になりますね。そしてそれらに加えてオフィシャルなフォーラムを置くというMMOが多いですね。
4Gamer: アメリカやヨーロッパのMMOはオフィシャルにフォーラムが設置されているのが普通ですもんね。そういえばFFXIはアメリカにもオフィシャルフォーラムはないですね。
Sundi氏: ないです。1地域だけにあるという状態はあまりよくないと思いまして。日本でもβでは開けていましたが,様子を見た結果として,置かないでおこう,となりました。 日本語という言語の性質なのか,根が真面目で真剣なプレイヤー達が多いからそうなってしまうのか,公式フォーラムだと「オフィシャルに何かをしゃべる」という形になってしまうんですよね,どうしても。海外のMMOGの公式フォーラムってすごく軽いですよね,運営とかDev(=開発)の人間も「あ,ごめんごめーん」みたいなことすぐ言っちゃいますし。そういうのって日本では難しいようです。 ただその掲示板とかファンサイトリンクとかに関しては,いくつか,次の動きを考えています。コミュニティ関連の企画はしばらく動かしていないので,そろそろやりますよ。
4Gamer: お。それってどんなことですか?
Sundi氏: まだ言えません(笑)。でも相当昔からあたためてきたアイデアで,Webベースです。近々公(おおやけ)になると思いますよ。
4Gamer: 残念。では楽しみに待っています。お忙しそうですしそろそろおいとましようと思いますが,最後にひと言,何か読者にメッセージをお願いします。
Sundi氏: オンラインゲームの世界って,本当にいろいろな人がいますよね。その中でどう動くのが正解なのかは,ビジネス的にもコミュニティ的にもゲーム的にもまったくFixしていない状況です。いろんな作品が出ていろんなことを見てきて,だいたい分かったかなと思ったらWoWがあんなこと(編注:異例の世界的大ヒット)になりましたし。 オンラインゲームの世界はまだまだ進化している途中だから,色んなことを一概に決めつけたくありません。できる限り多くの選択肢を残しつつ,オープンにやっていきたいと思っています。
4Gamer: どうもありがとうございました。(2006年5月12日収録。ロサンゼルスにて)
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