[E3 2006#062]PCとXbox 360間で対戦可能なFPS「Shadowrun」はWindows Vista専用で登場
MicrosoftはE3 2006開催のタイミングで「Live Anywhare」という構想を発表した。Live Anywhareについては別記事ですでにお伝えしているが,簡単にいうと,現在のところはXbox 360とXbox専用のネットワーク「Xbox Live」に,PCやPDA,携帯電話などを接続し,オンラインで融合する仕組みのことだ。 将来的にはいろいろな仕掛けが考えられているようだが,ひとまずPCゲーマーにとっては「Windows Vistaで,Xbox Liveに接続可能になり,Xbox 360(やXbox)のプレイヤーと,プラットフォームの垣根を越えてマルチプレイを行えるようになる」ということを覚えておきたい。 そして,このLive Anywhereに初めて対応して登場するゲームが,E3 2006でMicrosoftのPCゲームブランド「Games for Windows」ブースとXbox 360ブースの両方で展示されていた「Shadowrun」である。
■同名TRPGの世界観を(一部)借りた ■テクノロジーと魔法のFPS
「Shadowrun」は近未来を舞台としたチームベースのFPS。プラットフォームを越えた対戦プレイをウリとするタイトルということもあり,シングルプレイキャンペーンのようなものはなく,マルチプレイにフォーカスした内容になるとのこと。ただし,Botなどを使った一人での練習やミニゲーム的なものは用意されるようだ。
ユニークなのは,マルチプレイ専用タイトルであるにもかかわらず,なかなかに凝ったバックグラウンドストーリーが用意されていること。以下,概略である。
西暦2012年,地球上に魔法が復活した。実は魔力というものは,5000年ごとに全地球上に現れたり消えたりするものだったのだ。魔力の復活は地上にさまざまな変化をもたらした。多くの人間が普通に魔法を操れるようになり,さらに一部の人々は,先祖返りなのか,エルフやドワーフといった種族へと変身してしまった……。
「どこかで聞いたような?」と思った読者はTRPGファン,「似ているけど細部は全然違うような?」と思った読者は,熱心なTRPGファンだろう。 そう,Shadowrunは同名のTRPG(テーブルトークRPG)の世界観を一部抽出し,再構成した世界をベースにしているのである。オリジナルのTRPG版Shadowrunとはそもそも年代が異なり,背景に流れる世界設定もかなり簡略化されているように感じるが,一方で「魔法が復活し,テクノロジーと共存している」「エルフなどの“亜人”(メタヒューマン)が存在する」といった,オリジナルのShadowrunを形作る重要な要素のいくつかは,確かに存在するのだ。
このような世界設定のなかにあって,プレイヤー達は「魔力を資源として欲する巨大企業の兵士」サイドと「魔法の神秘を守ろうとする守護者の一族」サイドに分かれて戦うことになる。このため,ゲームは基本的にチームベースのデスマッチということになる。 もっとも,ゲームは「テクノロジー対魔法」といった,単純なものになるわけではない。Shadowrunに登場するキャラクターは,テクノロジー兵器と魔法のどちらも使いこなせる。双方が同じ武器,同じ魔法を使って,同じ条件のもとで戦うゲームになるらしい。
Mitch Gitelman氏
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ブースで話を聞いた,デベロッパであるFASA Studioのスタジオマネージャー,Mitch Gitelman氏は,Shadowrunでとくに注目してほしいポイントとして「兵器も用いたFPSの戦闘に,さまざまな効果を持つ魔法が加わることで,これまでにないゲームプレイを体験できるところ」と述べる。 Shadowrunにおける魔法は,「ロケットランチャーの代わりにファイヤーボール」などといった,“FPSによく出てくるような兵器の代用品”ではないという。実際,今回展示されていたバージョンでは,短距離を一瞬で移動するテレポートや,壁や床を通り抜けるもの,クリーチャーを召喚して戦わせるものなど,いかにも魔法らしい魔法を利用できた。
なかでも興味深かったのは,回復魔法「Tree of Life」だ。 Shadowrunにいわゆるヘルスパックは存在しないため,体力を回復させようと思ったら,この魔法で“命の木”をその場に生やすしかない。命の木はその近くにいるものを回復させるが,この効果は敵味方関係なく発揮されるとのこと。つまり,実際のプレイでは誰かが生やした命の木をめぐって面白い戦いが繰り広げられそうで,思わずニヤリとしてしまった。
Shadowrunは現在のところ,Windows Vistaと同時期に発売すべく,開発が進められているとのこと。Live Anywhare対応ということもあって,なんとWindows Vista専用になるとのことだ。 正直なところ,Live Anywhereという大きなプランの尖兵としては,少々地味な印象も受けたが,これまでにない新しいプレイ経験というのには興味が引かれるのもまた事実。どのような作品に仕上がっていくのか見守りたい。(星原昭典)
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