[E3 2006#043]Ubiブースで新しい「Splinter Cell:Double Agent」の姿を垣間見た
スーパースパイ,サム・フィッシャーが四たび,我々の前に姿を現す。2006年4月予定だったUbisoft Entertainmentの「Tom Clancy's Splinter Cell: Double Agent」の発売が9月に延びた。E3会場のUbiブースにでっかいサムの看板が掲げられているのを本人が見たら,きっと「オレがここにいるとは思わなかったなあ」と皮肉の一つも出さずにはいられない,よく考えてみると,あんまり友達にはしたくないタイプの中年男が,再び帰ってきたのだ。
タイトルである“ダブルエージェント”が如実過ぎるほどはっきり示しているのは,今回はサムが二重スパイをする,ということだ。二重スパイは「ふたえスパイ」と読まずに,ぜひ「にじゅうスパイ」と読んでいただきたいが,つまりは「味方のふりをして敵に潜入」するエージェントのことである。 かつてのように敵地に物理的に潜入して情報を奪取するのではなく,テロリスト組織に仲間として潜入して敵の壊滅を図るという,前三作には見られなかった新しい展開なのである。そのため,サムは計画的に犯罪者として収監され,敵組織に接近するのだった……,というお話。おまけに,最愛の娘サラが自動車事故で亡くなり,心に痛手を受けているという,ますます男ばっかりのキャスティングが予想される設定まで付くのだ。これまでのように,シニカルな軽口を叩きながら任務を軽々とこなす,今流行の“ちょいワル”系(本当は,誘拐,暗殺,破壊工作なんでもこいの極悪系だが)の彼のまったく違った側面が見られるかもしれないのである。
考えてみると,これはうまい設定だ。サムの面白さは,誰も殺さず,痕跡も残さず潜入することにある。難しい任務には大抵「相手を殺してはいけない」という縛りがあり,そのためいろいろとストーリーを工夫して,CIAに潜入させたり,敵か味方か分からないので殺さないようにしたりなどなど,何かと苦労させられたのだが,ダブルエージェントであれば,必然的に相手を殺さずに任務を遂行しなければならないケースが増えてくる。だが,そのせいで思いもよらない事態も発生する。 公開されていたムービーでは,テロリストの仲間になったサムにボスが「まずいことになった」と言いつつピストルを渡し,「奴を始末しろ」。見ると,そこには囚われのランバート大佐(前三作通じての上司にして友人)の姿が。撃つか,助けるか,どうするサム? といった具合だ。私なら撃っちゃうけど。大佐だし。 本作にはこういった決断を迫られるシーンが何か所か登場し,それによってストーリーが分岐するゲームシステムになっている,とのこと。最大の目的は,カバーを見破られないことなのだが,その目的のためテロリストの言いなりになって悪事に手を染め続けていくと,やがてワシントンの本部がサムの忠誠心に疑問を持ち始める。娘を失い,精神的に不安定になっているだけになおさらだ。いっそのこと,エージェントからテロリストに転向,なんてこともできるらしい。まさかとは思うのだが,うーむ,分からない。 もちろん,テロリストの命令に逆らってばかりだと,当然ながら今度は敵から疑いの目を向けられる。いつものように,現れる敵を次々と倒して進んでいくというわけにはいかないのだ。
そんなストーリーなので,今回,サムのトレードマークともいえる三つ目の暗視ゴーグル,サーマルビジョン,多目的ライフルといったハイテク装備が使えない場面が増える。「自分で買いました」と言い訳しても通じないからだ。彼が頼れるのは鍛え抜かれた自分の肉体のみ。ブース内で行われてたプレイでは,どこか南アメリカあたりの貧しい街角を進むサムが。だが,時刻は真昼間で,腰をかがめてひっそり歩いてはいるが,その姿は丸見えである。本作には,こうした白昼のシーンやオープンスペースが前作以上に多く登場するらしい。つまり,これまでとは違った戦いを要求されるのである。 はしごを昇り,洗濯物をかけるロープを伝い,屋根を歩く。戦車に爆弾を仕掛けて吹き飛ばし,銃を撃って敵をおびき寄せ,その隙にトラックの下に潜り込むサム,といった感じのデモプレイが続き,ぱっと見,スプリンターセルとは思えないくらいだった。 また,今回のサムと彼の装備にはパラメータが付き,任務を達成するたびに潜入スキルが上がったり,暗視ゴーグルが改良されたりするRPG的な要素も加えられている。 任地も,雪と氷に包まれたどこか寒いところから,シンガポール,ロサンゼルス,そしてニューヨークなど,スパイ活劇らしくロケーションも豊富。 正直,ここまで変わってしまうとサムのサムらしさが楽しめるのかやや不安でもあるが,前三作で順調に進化を続けてはきたとはいえ,飽きられる前にここらでちょっとした改革が必要なのは事実だろう。9月,どんな姿であの男が現れるのか,今から楽しみだ。(松本隆一)
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