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[韓国ゲーム事情#540]不正プログラム販売者に懲役および罰金刑
2006/05/12 18:19
Kimの韓国最新PCゲーム事情#540

ソウル地方裁判所刑事地方法院,「リネージュ」用不正プログラム販売者に,懲役および罰金刑の判決(2006/5/12)

Text by Kim Dong Wook特派員


 ソウル地方裁判所刑事地方法院は5月3日,「リネージュ」用不正プログラム販売者に対しNCsoftが申し立てていた刑事訴訟の判決として,Ryu被告に懲役6か月(執行猶予2年),Chang被告に罰金1000万ウォン(約119万円)の支払いを命じた。

 NCsoftは2004年6月,同社が開発/運営しているMMORPG,リネージュ内で,自動的にモンスターを倒し,アイテムを収集できる不正プログラム「Lin Mate」を発見。Lin Mateが,正規プレイヤーの邪魔をし,NCsoftの開発/運営業務を妨害しているとして,この不正プログラムを販売していたRyu被告とChang被告を,警察庁サイバーテロ対策センターに刑事告発していた。
 Lin Mateは,RMTを目的に台湾で開発され,アジア地域に流通している悪名高い不正プログラム。Ryu被告らは,台湾からこの不正プログラムを輸入し,韓国のリネージュプレイヤー達に対し,オンライン販売していたという。

 NCsoftは訴状で,Lin Mateはゲームサーバーに虚偽パケットを送信し,運営を妨害するものであり,これを販売する行為が業務妨害に相当すると同時に,開発/運営元の同意を得ずにゲームのプログラムを改変することは,プログラム著作権の侵害であるとしている。

 この訴訟を担当したソウル地方裁判所刑事地方法院のChoi Ho Sik判事は,「Ryu被告らの行為は,ゲーム会社の業務を妨害するものであり,またコンピュータプログラム保護法にも違反する重罪であるため,懲役刑と罰金刑を下すことにした」と語る。
 一方,NCsoftの関係者は,「今回の判決は,MMORPGにおいて不正プログラムを配布する行為がゲーム会社に対する業務妨害にあたることを認めた最初の判例になるので,大きな意味がある。RMTを目的に不正プログラムを使用する事例も多くなってきているが,健全なオンラインゲーム文化を形作るうえでも,今回の判決は重要だ。NCsoftは,今後とも不正プログラムに対し,厳正な対応をとっていく」とコメントしている。


 以前にもお伝えしたが,韓国では不正プログラムを利用してMMORPGをプレイしている人が非常に多い。とくにLin Mateのような,Auto Mouse類(マウス操作自動化ソフト。関連記事は「こちら」)は,MMORPGプレイヤーの必需品(?)になっているほどだ。これまでに登場したAuto Mouseの種類は数百を超えているし,価格も1000円程度から10万円程度のものまでさまざま。このあたりも,人気を証明しているといえるだろう。

 こういった不正プログラムが人気を集めている背景には,韓国人達のせわしなさがあるようだ。何に対しても「早く,早く」と叫びがちな韓国人達は,オンラインゲームにおいても自分のキャラクターレベルを,一秒でも早く上昇させたがる。その欲望を満たすためには,不正プログラムの使用もいとわないというわけだ。また,高価な不正プログラムを購入しても,これを使用して入手したレアアイテムをRMTなどで販売すれば,利益を上げることすらできる。

 会社員のKown Sang Min氏は,「実は私自身,不正プログラムを使ってキャラクターのレベルアップをしている。というのも,仕事が忙しく,MMORPGを十分に楽しむ時間的な余裕がないからだ。MMORPGをプレイしている仲間達のうち,70〜80%はAuto Mouseを使っている」語ってくれた。

 オンラインゲーム専門家のYoon Young Jin氏は,不正プログラムについて,「どんなMMORPGでも,ヒットを記録すれば必ずAuto Mouseが登場する。もちろん,純粋に自分のキャラクターレベルを上げるために使っているプレイヤーもいるが,大部分はRMTのための手段として悪用しているというのが,韓国市場の現実だ。ゲームの開発元は,不正プログラムを閉め出すためのパッチを作っているが,いたちごっこに過ぎず,時間の無駄と言えるだろう。例えば『Granado Espada』(邦題 グラナド・エスパダ)のように,ゲームのシステムとして自動的に狩りを行うような要素を取り入れるなど,新たなシステムを確立しないことには,たとえ判決が出たからといって不正プログラムがなくなるわけではない」と,やや悲観的だ。

 ともあれ,不正プログラムとRMTの連動が,ゲームメーカーにとっての悩みの種であることは,疑いようのない事実である。


リネージュ
■開発元:NCsoft
■発売元:エヌ・シー・ジャパン
■発売日:2002/02/12
■価格:1400円/月
→公式サイトは「こちら」

【この記事へのリンクはこちら】

http://www.4gamer.net/news/history/2006.05/20060512181951detail.html