[E3 2006#001]Microsoft,E3恒例のプレスカンファレンス開催
現地時間の5月9日(E3 2006開催前日),Microsoftは恒例のプレスカンファレンスを,ハリウッドの有名な映画館であるチャイニーズシアターを借り切って開催した。ほんの数ブロック離れた場所では任天堂が同様の規模の大きなカンファレンスを開催しており,今年のE3も,まずもってコンシューマ機が華やかであるなあ,と思わずにはいられないのである。 このページを読んでいる人に説明するまでもないかもしれないが,“日本”の“PCゲーム”情報サイトである我々4Gamerとしては非常に微妙なカンファレンスであり,何をどんな感じでお伝えしていいか,例年,ちょっとばかり悩みどころである。
ティブ エンターテインメント事業部担当副部長ピーター・ムーア氏
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言うまでもなく会場はXbox 360一色で,右を見ても左を見ても,文字どおり360度Xbox 360といった風情。日本市場において苦戦の伝えられる同機ではあるが,今この瞬間に限って見れば,すべての話題の震源地こそXbox 360なのである。素晴らしい。 ほぼ満席となった会場正面の大スクリーンにまず映し出されたのが,「Gears of War」だ。大変な重装備に身を固めた兵士が地球の奥深くから現れた異形のエイリアンを相手に激しい銃撃戦を繰り広げる三人称視点のシューターで,ほとばしる鮮血にXbox 360のグラフィックス能力を見せつける期待の一本である。発売予定は2007年。PC版に関しては不明。 とりあえず,つかみはオッケーとばかりに,続いてスポットライトを浴びて壇上に立ったは,Microsoftのエンターテイメント事業部担当バイスプレジデントのPeter Moore(ピーター・ムーア)氏。同氏はまず,Xbox 360の現状報告を行った。彼の言葉によれば,Xbox 360はすでに設置ベースで500万台に達しており,年末に向けて160以上の最新ゲームのタイトルが用意されているとのこと。 そして,彼の言葉を実証するように,多数のソフトのプロモーションムービーがスクリーン上に流れていった。登場したソフトのうち,目立ったものを挙げれば,レースゲームの「Forza Motorsports 2」,話題のBioWareが開発中のRPG「Mass Effect」,可愛い,というか謎の動物ピニャータ(一種類ではない)達と楽しく遊ぶファンタスティックな「Viva Pinata」(邦題 あつまれ! ピニャータ),キューエンタテインメントのファンタジーアクション「Ninety-Nine Nights(N3)」,これを外すとアメリカ市場が黙っていないアメフトシミュレーション「Madden NFL07」といったところか。
これら一連の映像が流されたあと,ゲストの紹介などちょっといろいろ飛ばしちゃうけど,やがて,おもむろにジャケットを脱ぐムーア氏。その左の腕にはなんだか見慣れたロゴが描かれている。カメラが接近すると「Ground Theft Auto IV」の文字が。おお,GTAの最新作はXbox 360独占? と思ったものの,まあ,プレイステーション3版と同時にXbox 360版も発売される,というアナウンスだったわけで,ニュースバリューとしてはミディアムクラスといったところ。もっとも,MicrosoftとGTAシリーズを制作するRockstar Gamesは,今後密接な協力関係のもとに,Xbox 360独占のタイトルを発表していくとのことなので,これは今後の成り行きがちょっと注目される話だろう。Rockstar Gamesには,GTAシリーズ以外にも「MAX PAYNE」シリーズなど,気になるタイトルが多いからだ。
その「MAX PAYNE」を制作したRemedy Entertainmentが開発中のサイコスリラーアドベンチャー「Alan Wake」も,プレゼンテーションに登場した。それは,Microsoftの新しいコンセプトである「Games for Windows」についての説明の中でのことだった。ここから,我々PCゲームファンも気になる,Windows Vistaとゲームとの話になっていった。「Windows Vistaは,これまでMicrosoftが発売したもののうち,最もゲームに親和性の高いOSになる」とコメントするムーア氏。 スクリーンに描き出されたのは,「ファークライ」でヒットを飛ばしたCrytekが制作中の「Crysis」。燃え上がる空母や煙の向こうから襲ってくる迫力あるエイリアンなど,これまでカッコいいXbox 360の波状攻撃を受け「Xbox 360ってすげー」という気分になっていたきわめて影響を受けやすい我々取材班の気持ちを,「やっぱPCだよー」にハッと引き戻したといえば,その迫力を分かっていただける……と嬉しい。 まあ,なんにせよ,Windows Vistaと新しいDirectXが生み出すリアルなゲームは,前述の「Alan Wake」の美しい自然の景観や,「Flight Simulator X」に見る航空機のディテールや雲の質感,そして「Fable 2」の迫力ある映像となってゲーマーを楽しませるとMicrosoftは主張するのである。さらにその先には,Xbox 360とPCとモバイルをXbox Liveを使い有機的に結合する「Live Anywhere」と名付けられたまったく新しい環境を提唱している。 というわけで,ここでサプライズゲスト,Microsoftの会長兼チーフソフトウェアアーキテクトであるビル・ゲイツ氏その人が現われ,この新しいコンセプトについて説明を開始したのである。生ゲイツの登場は予告されていなかっただけに,ちょっとびっくり。
Microsoftの提唱する新しいゲーム環境「Live Anywhere」を熱っぽく語るビル・ゲイツ氏
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「Live Anywhereでは,プレイヤーはPCやXbox 360といった環境にとらわれることなく,常時接続ができるエンターテイメントの中心となり,慣れ親しんだXbox Liveの操作性により,場所や機器に関係なく,ゲームやフレンドリスト,デジタルエンターテインメントをいつでも利用できるようになります」(意訳)と語るゲイツ氏。これにより,PC,Xbox 360,携帯電話の利用者が同時に,一緒にゲームを楽しめる画期的クロスプラットフォームのオンラインゲーム環境が実現するというのである。 さらには,2006年内に600万人に達すると予想されるXbox Liveの会員と,MSN MessengerとMSN Games上でカジュアルゲームを楽しむ2500万人を結びつけることも視野に入れた壮大なビジョンを実現させるステップも踏み出したところだと語る。 そのため,年内にもPCとXbox Liveの接続を可能とし,Windows Mobileから携帯電話への各種ゲームサービスを開始するとしている(日本でのサービスに関しては未定)。
この新コンセプト「Live Anywhere」はOSとゲーム機という二つの領域をフォローするMicrosoftならではの壮大なもので,我々PCゲーマーにとっても無関係ではないかもしれない。
そして「Halo 3」のプロモーションムービーが流れる中,プレスカンファレンスは終わりを告げたのである。ゲイツ氏の,ちょっぴり熱がこもった演説が長引いたためか,閉会となったのは予定より10分ほど遅れの13時前。その後は,向かいのRooseveltホテルでのレセプションに移行した。 レセプションは,軽食やドリンクをいただきながら,会場内のあちらこちらに設置された展示品を楽しんだり,MSの実力者達としばしご歓談したりといった場。4Gamerとしては,展示品の中にPCゲームはないかと探し歩いたが,やはり多くはXbox 360のタイトルであった。渡された会場内の地図には「Crysis」の展示スペースがあったのだが,駆けつけてみると,それっぽいものは影も形もなかったのはなぜだろう。 一方,最も大きなスペースが用意されていたのは,発表会でもオープニングを飾った「Gears of War」である。これも展示はXbox 360版であったが,E3 2006の中では4Gamer読者にとって見逃せない目玉タイトルの一つとなりそうだ。 せっかくなので実演を見せてもらったのだが,内容はさきほどの発表会とほぼ同じで,同じステージの一部始終を,もう少し詳しく紹介したという程度。「リロードの仕方には2種類あるんだ」とか「こうやって遮蔽物に身を隠すんだ」といったことを見せてくれた。
中庭のプールサイドも多くの人で賑わっていたが,その片隅の色っぽいコテージの中には,どういうわけかダブルベッドに腰掛けたビル・ローパー氏がおり,数人の取材スタッフに囲まれながら「Hellgate: London」の実演をしてみせていた。本当,いつもどこかでHellgateの実演をしている人である。
このカンファレンスに参加した4GamerスタッフがどちらもFPS好きだったというのもあるかもしれないが,今回強烈に印象に残ったのは,「Gears of War」と「Crysis」の2本。このところ「ゲーム=Xbox」という雰囲気のあったMicrosoftが,Windows Vistaの発売で再びPCゲームに目を向けた雰囲気の漂うカンファレンスであり,まあ,深読みしようと思えばいろいろできるような気はするが,なんにせよ今後の同社の動きには我々も注視していく必要があるだろう。(松本隆一 / Kawamura)
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