LANパーティ「BIGLAN socket3」レポート 「ラグのない環境でわいわい楽しむ」魅力を伝えていく試み
ゆりかもめのテレコムセンター駅近くにあるビジネスビル,TIME24でBIGLAN socket3は開催された
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2006年5月3日から5日までの3日間にわたって,東京はお台場地区にあるTIME24ビル1F タイムプラザで「AMDプレゼンツ BIGLAN socket3」(以下BIGLAN)が開催された。 初開催は2005年夏で,今回が3度めとなるBIGLAN。コンセプトは「BYOC」(Bring Your Own Computer)で,北米を中心に盛り上がりを見せているLANパーティの一種である。
■LANパーティとは何なのか LANパーティと言われても,漠然としたイメージしか湧かないという人は少なくないと思う。BIGLANの期間中には「Quake 4」の勝ち抜き大会や賞金付きトーナメント,「Battlefield 2」のミニ大会など,FPS系のイベント内イベントが多数企画されていた,などと聞くと,ゲームのテクニックを競うe-Sports関連のイベントと理解する人も多いのではなかろうか。
だが,BIGLANは,もっと“ゆるい”イベントだ。それこそタワー型の大型筐体を中心に,参加者が自分のPCを持ち寄ってLANでお互いに接続し,ラグのない快適な環境で,ネットワーク対応/専用ゲームをワイワイ楽しみましょうね,というものである。
例えば前出のBattlefield 2対戦も,予定時刻になると声がかかって,数人がプレイ開始。スタッフの実況や解説が加わり,それに呼応する形で途中から参加者が増えていくといった感じ。勝敗は重要でなく,純粋に対戦を楽しむ。別に全員が参加するわけではなく,Battlefield 2の対戦参加者のすぐ近くでは,数名が「スカっとゴルフ パンヤ」をプレイしていたり,別の場所では持ち寄ったニンテンドーDSで対戦している人がいたり。 e-Sports関連のイベントにありがちな「カッチリしたルールやスケジュールがもたらすハードルの高さ」のようなものはなく,参加者は終始,思い思いに遊んでいた印象だ。
左:ヘソだしルックでなかなか目のやり場に困るBIGLANクイーン。おやつタイムになると彼女らは各席を回ってお菓子を配ったりしていた
中央:BYOCのしやすさを重視してか,いわゆるキューブPCを持ち込んでいる参加者もいた
右:FPSの対戦が行われている横で,スカっとゴルフ パンヤに興じる人も
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■BIGLANが集める期待と直面する課題
「今回は新規の参加者も増え,まさに『LANパーティ元年』になったと思います」と,KINTAこと長縄実氏。現在もさまざまな企画を考案中とか
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BIGLANに自分のPCを持ち込んだ参加者は30名前後。これがBYOCのイベントでなく,誰でもPCゲームに触れられるようなものであれば,もっと多くの参加者を集められるような気もするが,BIGLAN実行委員会の委員長,長縄実(KINTA)氏は,あくまでBIGLANを,LANパーティとして広めていきたいという。「Pingの値を気にしてプレイするオンラインと,オフラインのLANパーティでは,同じゲームでもプレイ感覚が大きく変わってくることへの驚き。そして何より,同じ場所に集まって遊ぶ楽しさを,LANパーティで共有したい」(同氏)とのことだ。
ゲームの勝敗やプレイテクニックにこだわった“ゲーム大会”は国内e-Sportsの関係者に任せる。BIGLANでは,いわゆるピラミッドの底辺部,ネットワークにつながったゲームのプレイヤー人口を増やすところに注力していく予定だと,長縄氏は語る。「PCゲームとかコンシューマゲームとか,あまり区別してないんです。ゲームというジャンルをすべてひっくるめた形で,LANパーティを広げていきたい」(同氏)。 今回,Xboxのニュースサイト「XNEWS」と協力し,Xbox 360のミニ大会をBIGLAN内で開催していたが,こういった動きを今後も続けていくとしていた。
左:Xbox 360をプロジェクターで楽しむ。BIGLANではこんな光景も見られた
中央:アクティビジョン・ジャパンのスポンサーブースではAlienware製PCにインストールされた「The Movies 日本語版」をフリープレイできた。さらにはゲーム自体の無料貸し出しも
右:PC関連製品販売代理店のアスクブースでは,同社取り扱いグラフィックスカードの無料貸し出しサービスを行っていた。人気があったのはAGPインタフェースの製品で,古めのシステムで頑張っている人は多いらしい
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では,BIGLANはどこへ向かおうとしているのかというと,これには少々あいまいな部分がある。BIGLANはあくまで,和気あいあいとした,LANパーティの場を提供するものであるという方針自体に異を唱えるつもりはまったくないが,現実問題として,“ちょっと規模の大きいオフ会”というイメージがぬぐえないのも事実だ。日頃からそのコミュニティに参加していない人からすると,非常に足を向けづらい。実際に,スポンサー企業のとあるスタッフは「もっと一見客が来て,イベント自体が盛り上がってくれないと……」と本音を漏らしていた。
まぁ,参加費はBYOCで3日分6000円(事前予約の割引でも4500円)と決して安くはない。それを払って重いPCを持ち込み,滞在し続けるというのは,いろいろ大変である。よほど好きな人でもない限り,最初の一歩を踏み出すのはかなりハードルが高いと思う。
もちろん,実行委員会側でも課題は認識しているとのことで,現時点では詳細を明かせないとしながらも,いろいろと参加者を増やすための方策は練っているという。 また,すでにBIGLANの公式サイトでも公開されているとおり,次回「BIGLAN socket4」は2006年8月11〜13日に秋葉原で開催される予定と,今回のBIGLAN会場で発表されている。 秋葉原であれば,少なくとも立地面での不利はかなり改善されるはず。次回開催でどれだけの新規参加者,あるいは新規参加者予備軍を確保できるかが,BIGLANの今後を占うに当たって重要な意味を持ってくるだろう。
いい意味でもそうでない意味でもマイナーなイベントに留まるのか,オンラインのゲーマーを包括的にカバーする一大イベントに成長していくのか。次回のBIGLANは一つの試金石になると感じた。
BIGLANでは筐体のハデさを競う「デコパソコンテスト」も開催されていた。まだまだ本腰を入れている参加者の数は多くないが,本気モードの参加者は,ただ光るだけでなく,PC内にジオラマ風の箱庭を作るなど,一歩先行く作品を作り上げていたのが印象的
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■スポンサーのAMDは“PCゲーム協会”設立を目指す
日本AMDのUze社長。同行していた日本AMDのスタッフに「日本で開催されるゲーム系のイベントにはAMDがスポンサーにならなきゃダメだ」と言っていたほど,ゲームに理解のある社長だったりする
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BIGLANの会場には,日本AMDの代表取締役社長であるDavid M. Uze(ディビット・ユーゼ)氏が,2人の息子連れで登場。氏はエンタープライズ市場で知られた人物なのだが,実はかなりのゲーム好き。「いったんPCゲーミングを体験すれば,コンソールでは満足できなくなるほど楽しい。北米などに比べると,日本はPCゲームの市場が小さく,世界とのズレを感じます」とのことで,BIGLANのようなゲームイベントのスポンサーとなっているのは,現状を少しずつでも変えるためだという。 実際,日本AMDは現時点で2007年いっぱいスポンサー契約を行っており,「大きくなっていく限り,BIGLANのスポンサーであり続けたい。もちろん,ほかのPCゲームイベントに対しても,積極的に協力していきます」(Uze氏)。
また同氏は,AMDが中心となって,PCゲームの普及を目指す“PCゲーム協会”のようなものを作る構想を明かした。CPUメーカーのAMDなら,すべてのゲームデベロッパ/パブリッシャに対して中立であり,どこかの企業寄りになることはないというメリットを述べたUze氏は「PCゲーム業界は任天堂やソニーに比べるとまだまだ小さい市場ですが,皆が手を組んだ力は大きな武器になります」と,PCゲームの普及に力を入れていくと力説。2006年5月中にも,企画の詳細を練って詰めていき,ハードウェアメーカーやゲームメーカーに参加を呼びかけていくとした。
確かに国内PCゲーム業界では,中心となってリードしていく存在が欠けているように思う。Uze氏がいうところのPCゲーム協会が,最終的にどのような形で結実するのかはまだ分からないが,AMDが本気でPCゲーム市場に取り組んでくれれば,PCゲーマーから見て,これはかなり頼りになるのではなかろうか。(三須隆弘)
ひとしきり会場を回った後,Uze氏はQuake 4を,Uze氏の息子2人は「Unreal Tournament 2004」をプレイしたりしていた
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